再び図書館にテラスが来たとき、そこではマーゴとエマ、シェリーそして、ハンナがいた。
そこでなにかの本を広げて話をしていた。テラスは話に加わる。
「みなさんなんの話をしているので?」
テラスは本を覗き見る。すると、そこには13人が一つの剣のようなものに向かって願いを捧げている様に見えた。
そして、マーゴが説明をつけ加える。この儀式は『サバト』というものであること、そして、中央にいるのは大魔女であろうこと。
(本の内容であるが故に、本当に正しいかどうかは真偽不明...だけど、この屋敷にある魔女由来の物と考えるなら、かなりの信憑性があると考えるべきか...)
テラスはそう考えると別れを告げ、その場を見送った。
そして、ついでに起きたこととして、マーゴの魔法を見せてもらった。それは、『モノマネ』。人の声や物音を再現できるという能力だ。
この演芸目的でしか使えないような能力には、ついマーゴもため息をついているようだった。
テラスからしてみれば、マーゴが使える魔法がその程度の能力で良かったと思う。
テラスは魔法と人物を照らし合わせるリストにマーゴを加える。そして、毎回なんだかんだ少し見ていた配信で得た情報として、沢渡ココの魔法は千里眼であると判明した。
桜羽エマ...【不明】
二階堂ヒロ...【不明】
橘シェリー...【怪力】
遠野ハンナ...【浮遊】
氷上メルル...【治癒】
宝生マーゴ...【モノマネ】
紫藤アリサ...【パイロキネシス】
夏目アンアン...【不明】
沢渡ココ...【千里眼】
佐伯ミリア...【移り変わり】?
黒辺ナノカ...【幻視】
蓮見レイア...【視線誘導】
城ヶ崎ノア...【液体操作】
「そして、私の魔法が...【肉体操作】...まあ怪力が一人いるぐらいだし、ありうるか。それにしても、犯罪で使える魔法はもう少ない様に思える...だが、【移り変わり】と【浮遊】にはマークを入れておこう。この二つはバレない様に殺人、アリバイ工作に使える可能性がある...」
そうして、テラスはエマとヒロ、アンアンを除く全ての少女の魔法を知れたのだった。
_________
テラスは医務室を訪れていた。
最近のアンアンはとてもよく語ってくれた。まるでノアがいなくなった分を埋めるように。要らない情報などもあったが、それでもアンアンに関する沢山の情報をかき集めれた。
「キミは小説を書いたりもするのか」
「好きな事なんだな」
「ああ...ヤバイ!スゴクいいッ!激ヤバかもしれないッ! 」
そうやって、会うことを繰り返し、そして聞けた。
「ああ、なるほどなるほど...魔法は【洗脳】ねぇ...ありがとう。どれくらいの効力があるのかわからないから一回、私に向けて使ってみてくれない?」
テラスがそう言うと、アンアンは渋々と言った風に魔法を使う。
「...【ここにいろ】」
「おっと...ああ、ほうほう...」
立っていたテラスの足は動かなくなっていた。
だが...
「ほっと、意外となんとかなるな」
テラスはすぐに動きだしてみせた。その姿にアンアンは驚く。
『強めに魔法をかけたのに、どういう事だ?』
「あ、これ強めだったんだ。もしかして、私またなんかやっちゃいました?」
『またかどうかは知らんが、うむ』
「それにしても、【洗脳】ねぇ。使い勝手が悪そうな魔法だこと。というか、どっかで聞いたんだけどアンアンってシャワー浴びてないってマ?」
『...まあ、そうだな』
テラスはこれまでの会話の中で、アンアンが育児放棄の様な状態に陥っていたことを勘づいていた。それが魔法を知ったことで、薄々、【洗脳】の為だと察せたのだ。だからだろうか。
「......よし決めた!仕方ないから今日一緒に入るか!」
『...シャワーなんて浴びなくていい』
「そう言うと思ったよ。女の子がそんなこと言わない!」
そうして、テラスとアンアンはしばらく関係を持った。
...アンアンがとても幼い様に見えたからか、それとも単純接触効果という物だろうか。テラスは本来の目的であった、『皆の魔法を知る事』を達成した後も定期的にアンアンの様子を見にきていた。
それは、かけ値なしの友情か、はたまた母性か...
「ありがとう、テラス」
アンアンは言葉を口に出した。テラスは珍しいことに若干驚きつつも、なんのことかわからなかったが、とりあえず返しておく。
「いいってことよ」
テラスはガキ大将にでもなりきるが如くそう言い、その場を去った。
「アンアンが喋るなんて珍しいこともあったもんだ」
テラスのリストの中にアンアンの名前が入る。
夏目アンアン...【洗脳】
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最近では牢屋敷はすっかり脱獄ムードとなってる。
どうやら、エマ達は気球を作ってここから脱出しようとしているらしい。
たまに、夕食時にもいない事から、相当気球作りにお熱だろうということが伺えた。
夕食時、テラスはとある人物に声をかけた。
ーーーヒロだ。
「やあヒロ。昔話してもらっても構わない?じゃないと全国ランキングトップ2のキミを、ヒソカ顔で『君を壊したい...』とか言わないといけなくなる」
「...昔話か、キミには感謝している。が、果たして話す事が正しいことだろうか。あれらはキミにも大きな痛手を負わせたはず。都合よく忘れているなら、そのままでも...」
「それは違うよ。というか、どんなことがあったのか俄然聞きたくなった。という事で、ほら、ささっさと話しちゃって。聞き耳立てれる範囲に人はいない様だし、別に大丈夫でしょ」
「そうか。私も一度は断ったが、やはり、君はそういう奴なんだな...」
ヒロは語り出す。テラスの過去を。
「因みに、先の話はなんのランキングだ?」
「厨二度ランキング」
_________
「まあ、私だったらしそうな事だったかな」
「それに、私がイジメられていた...ね」
夕食後、テラスは檻房の中、ひとりごちる。ヒロが語ってくれた過去は一部不明瞭な部分があるものの、簡単なものだった。
私はどうやら、月代ユキという人間を助けたらしい。それと、イジメられていた。聞く限り、結構どっぷりイジメられていたそうだ。
「うーん、それにしても月代ユキ...ねぇ。ダメだ。やっぱりなんも思い出せない」
テラスは月代ユキという存在をひたすら反芻するが、特に記憶が回復するなどという事はなかった。
そうして、その日を寝て過ごした。
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ある日、娯楽室に赴いたテラスは唐突に感謝された。
「テラスちゃん、ありがとう」
「ん?なにが?」
テラスは欠伸をしながら返事をする。
「裁判場でおじさんを庇ってくれたこと...」
「あー、その事ね。別にいいよ。私がただ、ナノカの言動に証拠不十分を感じただけ。間違っていることをただ、間違っていると言っただけ」
「テラスちゃんてさ...」
「優しい...よね」
「はぁ?またぁ?私言ったよね?ただ間違った事をって。私はただ...」
テラスの否定に、被せる様に言う。
「それでも、おじさんは、テラスちゃんは優しい子だなって思うよ」
「...あっそ、なら勝手に思っておけ。...あーあ、そうだ、ならキミの魔法の正体でも聞いちゃおうかな?」
テラスは冗談を言う様に言った。実際、冗談だ。だが、ミリアは...
「うん。いいよ」
「そうだよね。まあダメなのはしってたさ...って、は?」
「いいの。テラスちゃんなら言ってもいいと思える。...不思議だね...」
そのミリアの表情から、なにか悪いものを察したテラスは、
「......いやなら言わなくていい」
そう言うが、ミリアは大丈夫と答える。そうして語られるミリアの過去。
「私はねーーー」
ミリアは話始めた。自らの過去を。グループの中で自らの淫らな姿を晒されたこと。それを【入れ替わり】の魔法を使い、弁護士のおじさんに助けてもらった事を言った。
それに対してテラスは
「そう言う胸糞は大っ嫌いなんだ...」
そう、感想を漏らした。
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テラスはその日の夕食を食べた後、檻房に戻ってた。そうして、最近研究が進んでいる本の解読について考えていると、地下から悲鳴が聞こえた。
テラスはすぐに駆け出した。
そして、地下の懲罰房にたどり着いたとき、テラスは見てしまった。
「ミリア...っ!」
そこには、磔にされたミリアが死んでいた。
そして、また開廷される。凄惨な裁判が。
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裁判後、テラスは壮絶な虚無感に襲われていた。
「......アンアン」
看守に連行される彼女を見て、テラスはつい足の力が抜けそうになる。だが、精神一本でそれを乗り越える。
「...テラス...」
アンアンもテラスを見つめてきた。
テラスは質問する。
「...あの時、どうして私に『ありがとう』なんて言った?」
その質問にアンアンは答えなかった。だが一言。
「友達だと思っていた...我が輩には誰もいなかった...」
懺悔するように、そう言う。
テラスはその意味をしばらく考える。そして、気づく。そして、奥歯を噛み締めた。それが、吊った者に対するただの恨み節だったらなんて良かったことか。
そうして、刑は執行された。
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それからは特に同じような日々を過ごした。屋敷の中を捜索し、聞き込み調査をする。
変わったことは、明確に人と深く関係を持つことをやめたことだ。元からそう言う気質だったのだろう。テラスはそのこと自体に一切抵抗はなかった。
だが、ミリアやアンアンとの交流を思い出すたび、どうしても、胸が痛んだ。それでも、『全てを解決する可能性』についての模索をする事は諦めない。
だが、一向に見つける気配がない。
それでも、牢屋敷は止まらない。
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夕食を食べる食堂は、ずいぶんと静かになった様に感じる。いや、実際賑やかではなくなっているのだろう。だが、エマとシェリー、そしてハンナ、メルルのコンビは仲良しこよしの様だった。
テラスは聞き込み調査をする為に、そのグループへと突っ込んだ。
「よお、信号機コンビ共」
「あら、テラスさんでございますの。また私達に新たな情報がないか確認してきたのですの?」
「まあね。あと、皆んなの魔法がどれだけ発達しているのかを確認したい」
テラスがそう言うと、ハンナはどこか身震いをした。
「なら、私達はこれからピクニックに行く予定だったんです!テラスさんもいかがですか?」
そうシェリーがワクワクした様に言う。
ピクニック...それをする合理的意味をテラスは考える。そして、言う。
「ああ、いいよ」
_________
空を見上げると、箒で空をビュンビュンと飛んでいるハンナとシェリーの姿があった。2人とも楽しそうに飛んでいるのが見てる方からも伺えた。
エマもその様子を見て感激している様だった。
「みなさん...とても、楽しそうですね」
メルルは笑う。
だが、テラスはそれを見て、絶望的な面持ちになる。
「...最初、ハンナが飛べるのってどれくらいだったっけ?」
「確か、10センチ浮けるかどうかだった気が...します。...ああ...」
メルルも気づいた様だった。テラスは速急に手を打たなければならないとこの時感じた。
空をここまで自由に飛べる事...それがハンナがなれはてと化すのが近い事を意味していた。
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「ハンナ、何か悩みとかないか?」
「なんですの?その思春期の娘を前にした父親のようなセリフは...」
テラスの面持ちに、ハンナはつい軽口を叩く。
「何もないわけじゃ、ないんだろ?」
テラスは言う。
その落ち着いた目に、ハンナは観念した。
「お見事ですわ...わたくしはもう、魔女因子に体が支配されようとしているようですの」
「...そうか」
テラスは沈黙する。
そんな空気を変えようとしてか、ハンナは懐にからモノを取り出した。
それは、テラスを模した人形だった。
「...これは?」
「なにも、私に残せないわけではございませんわ!」
「そうか、ありがたく頂戴する」
テラスはお手製の人形を受け取った。
「...テラスさんも、私を慮ってくれてありがとうございまし」
「...そういうのはどうでもいいよ。で、これからどうするつもり?」
「...それは...なんとか生き残って見せますわ!何としてでも!」
ハンナはにこやかな笑顔をテラスに向ける。だが、その笑顔に対し、テラスは不安を隠せなかった。
だから、言った。
「もしも死にたいのなら...もしもその時がきたら、私が殺してやる。痛みもなく、楽に死なせてみせる...だから...」
最後まで諦めないでほしい。テラスはそう言おうとして、顔を振った。なんて、なんて傲慢な発言なのだろうと。身を改めたから。
怪物になりたくないが故に死にたがっている少女を前に、諦めないでほしいと言うほど、愚かな事は、我儘な事はないだろうと悟ったからだ。
その言葉に、どこか大人びた様子の...いや、微笑みを浮かべたハンナが答えた。
「いいですわ...」
「だって...」
「わたくしを殺していい人は世界に1人しかいないですもの」
「...」
その様子を見てテラスは、ある決心をした。
それはーーー
本日は3話投稿します。これで毎日投稿し続けての8話投稿です。作者のやる気と狂気にご照覧あれい!
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