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炎上したログハウスの扉をこじ開けると、ハンナが首を吊って死んでいた。
今回、テラスは事件に関わっている。だが、それは『意図』したものだ。
テラスが行ったことは些細なことだ。
シェリーがゲストハウスを持ち上げる際、その重荷を背負っているが故の足跡。それを残さない様にテラスが舗装をしたのだ。
1人ではできないことを、もう1人加わるというマンパワーで証拠隠滅を図った。
...つまり、テラスはシェリーの共犯者となったのだ。
他にも細工を施した。そう簡単にはバレずに、そして、これはシェリーにもバレない様にだが、最終的にテラスに票が入る様に仕向けた。
...だが、結局その裁判では相変わらず、エマとヒロの活躍により、シェリーが犯人だということが暴かれた。今回は、偽装工作がされているという可能性に皆が気づき始めてから一気にヒロが大躍進を果たした...という形だった。
そうして、自供を始めた。
「ええ、そうです。私がハンナさんを殺した犯人です」
そう言うと、シェリーはぽつりぽつりと語りだす。
「みなさん...あまり、偽造工作を行ったテラスさんを責めないであげてください。本当は私1人で行うつもりでした」
「でも、そこで現れたのがテラスさんでした。テラスさんは言いました。『ハンナを殺すのなら私も手伝わせろ』と」
全員の目がテラスに向けられる。テラスはただ、裁判の終焉を見届けるだけだ。
「私にも理由はわかりません。ですが、裁判の最中で思ったこととしては、テラスさんはきっと、私の身代わりになろうとしたのでしょうね」
「...テラスさんは、とても優しい方なんでしょう。その行動原理がなんなのかはまだ、私にもわかりませんが、私1人で完結させようとしていた事に、何かしらの不条理を感じて彼女は彼女なりに私と共犯し、そして、私を救おうとしていた。ありがとうございます。テラスさん」
そこまでいうと、シェリーは看守に連行されていった。連行されるシェリーの背を見ながら、テラスは呟く。
(......この殺人は自殺幇助に近い。なれはてと化し、皆を殺したくなかったハンナが、自らが死ぬ事をシェリーに任せたと言う構図だった。シェリーはハンナを慮り、ハンナもそれを受け入れていたのだ。だから、私はシェリーが死ぬべきではないとして証拠隠滅...偽装工作を行った。ハンナもある意味、尊厳死と同じ...と言えないだろうか...)
そう、心を納得させるための言葉を心の内で思う。
が、
テラスは証言台は叩いた。全力で叩いた。
(うっせえんだよ...なにが、『尊厳死と同じ』...だ。そうじゃない...そうじゃないだろっ!ハンナ!シェリー!!)
シェリーは処刑台に立つ。
シェリーが火に炙られている中、テラスは無言でその裁判を見送る。囮にもなれず、なんら状況を変えられない己の無力感に支配されながら。
各々に糾弾されながらも、シェリーは刑にかけられた。シェリーは炙られながらも、丁寧に、返答していく。そして呟く。
「私、人を殺したことがあるんですよ。きっとその時から、心が壊れちゃったのかな...」
「...」
「テラスさんには...感謝してるんです。事件の共犯者と...なってくれて。私達のことを考えてくれて...」
火に炙られながらも、シェリーは言った。
その残酷な結末の前に、テラスは、テラスは...
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裁判が終わった後、テラスは檻房で横になっていた。
今日の裁判は酷く疲れたと、テラスは感じていた。ただ処刑を見るだけでなく、改めて己の倫理観、思考形態とも向き合うことになったのだ。疲れて当然だろうと思う。
(今の私は知識があるだけの赤ちゃんみたいなもんだ...やっぱり、記憶喪失っていうのは大きい障害だね。もしも昔の私だったら的確なウルトラCをかませてたのかな?でも、記憶を失っても私の根本は変わらない気がする。だったら、きっと昔の私も今日と同じ事をしたのだろうか...)
そう、堂々巡りな思考をしそうな時だった。下段から声がした。
「...テラスさん、大丈夫でしたか...?」
「メルルか...」
同室ながら、テラスはメルルとそこまで話したことがない事を思いだす。
「...テラスさんには、大切な家族や友人はおりましたか?」
「そこら辺の記憶も欠けているんだ。だから、いたかどうかもわからない。もしかしたら、木のまたから生まれてきてるかもしれない」
テラスは自身の謎の格闘術や、自らが理解不能な精神性になぞらえてそう言った。
「木のまた...って、なんですか、それ」
メルルがおかしそうに笑う。
「そんぐらい出自不明ってことだよ。いや、エマとヒロとは同じ中学だったらしいし、案外、お嬢様系の家だったりするのかな」
テラスは情報として知っている。己が所属していたと言われている中学は、いわゆる進学校というものらしかった。
それに気づいた時、
(勉強とかだるそうだなぁ...)
テラスはなんてことを気ままに思ったりする。
そうやって、テラスは裁判の事を強引に切り替える。心にジクジクと痛むモノを無視しながら。
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そこにいたのは、テラス、ヒロ、マーゴの珍しい三方だった。
「ありがとうヒロちゃん、テラスちゃん。あなた達のお陰で研究が捗ったわ♡」
「御託はいい。さっさと研究結果を言ってくれ」
「...わたし、ほぼ何もしてないんだけど...」
頭脳労働という面で、テラスは弱かった。というか、ヒロが強すぎた。テラスはマーゴから持ってきてと言われた本や資料を持ってくるだけで殆どはヒロ、マーゴが研究をしていた。
「どうやら、大魔女を呼び出すためには13人の魔女が儀礼剣に向かって祈りを捧げなければならないようね」
「ありがとうマーゴ。だが、私たちはもう8人しかいない。折角集めた情報も無駄にしちゃうかも」
「いいえ、もしかしたらタイムリープをする方法...なんてものもあるかも知れないわ。そう合点して結論を早めちゃダメよ。テラスちゃん」
「私もタイムリープする方法を探してたんだからね!勿論そうだよ!メイ見たもん!」
テラスはふざけたようにそう言うものの、それはずっと探し求めていた物だった。それこそ、最初の殺人事件が起きた時から。
タイムリープーーーそれは全てを解決する可能性。
「うふふ...テラスちゃんは可愛いわね♡」
「...いや、姉さん。そんな風に言わんといて下さい。私にそう言う趣味はございませんよ」
「そんなくだらない話をしている場合か?それにタイムリープの可能性はあるかも知れない」
「あら、心当たりでもありそうね」
「...ただの当てずっぽうだ。正しくない事を言った」
「あらあら...」
「あの...私を置いていかないでくださる?」
剣呑とした2人の雰囲気にテラスは気圧されながら言う。
「と言うか、もしも戻ったとして、どうやってみんなを魔女にさせればいいんだ?」
マーゴとヒロは同時に口を噤んだ。
テラスは知っている。魔女と化すには魔女因子を拗らせる事、すなわち過度なストレスを与えなければならない。
...もしも、全員を魔女にさせなければならない時、大変なのはマーゴとヒロだろうなーとテラスは少し思った。ついでにと、テラスはマーゴに相談する。
「そう言えばマーゴ、ちょっと考えている事があるんだけどさ」
「なに?テラスちゃん」
「何かモノを消し飛ばしたい時、マーゴだったらどうする?」
テラスがそう問いかけると、マーゴは簡単そうにいう。
「逆位相を用いればいいのよ」
「逆位相?なんそれ」
「ノイズキャンセリングの仕組みって知ってるかしら?それと同じ事をすれば、最低でも音波は消せるわ」
「ああなるほど。ノイキャンね...ふーん...ありがとう。すごく参考になった」
そういうと、テラスは呼ばれてる時間に、遅刻しない様に図書室を出て行った。
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ログハウスの軒前で、テラスはナノカと会話を交わしていた。
「貴女は信用できる...」
「特に何かした覚えはないが?と言うか、忘れたとは言わせない。前の裁判の共犯者は私だよ。そんな奴を信用出来るって、あたまわるわるなんじゃないの?」
「いいえ、これまでの、貴女のその献身や高潔さは、信用に値する...少なくとも、私はそう思ったわ」
「そんな事はないと否定しても無駄なのはもう学んでいるよ...で、そんなすっごく信用している私になにを聞かせてくれんのさ?」
そうして、ナノカは語り出した。今この状況が実質的な2週目であること。姉がなれはてとなり看守として使われていることを語った。
「お願いだわ。閃テラス...どうか、看守を、お姉ちゃんを救ってあげて...」
「元からそうするつもりだよ」
「え...?」
「看守はもともと私達と同じ様にここに連れてこられた囚人だ。それがマインドコントロールされて、看守として成り立っている...だったら、私は黒幕を許さない。そして、看守も...ナノカの姉さんも救って見せる」
「...やっぱり貴女に話して良かった。たくしたわ。閃テラス」
そう言うナノカの顔はどこか、決戦に挑む戦士の顔をしていた。
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雪の降る地にて、テラスとアリサは対面していた。そこでは、一触即発の雰囲気が流れていた。
「もう...私に近づくんじゃねえ...堪えきれそうにねえんだ...」
アリサがそう言うと、ボッと火をだした。いや、それはもはや、火とは言えなかった。
だが、その業火を前にしても、テラスの顔が歪む事はない。正々堂々と、アリサに向き直る。
「私の為に死んでもいいだって...?そんなの虚言だ!嘘偽りだ!それ以上...私に構うな!」
魔女因子に駆られて、アリサはテラスに魔法を放った。放ってしまった。アリサは自身で起こした業火を、やってはいけないことをしてしまったと、必死になってテラスに駆け寄る...そのはずだった。
———(『
どこかから、ピシュンと音が聞こえた。
テラスに当たったその瞬間、その業火はかき消える。
それは、テラスがもう2度とハンナの様な事は、殺人事件をもう起こさせないと誓って出来た技...だが、ここで発動させることができるとは、テラスも思っていなかった。なんといっても、机上の空論だった技だからだ。発動出来た理由....それが命の危険があったからか、それともアリサと話したかったからなのか...それはわからない。
だが、そんな内心を隠したテラスは言う。
「...これで対等に話が出来るな。アリサ」
その堂々たる姿を見て、観念したのか、アリサは語りだす。
自身が恵まれた環境で育ったこと。叱られずに育ったこと。そして、気を引く為に様々な悪虐に手を染めてしまったこと。
それを聞いた時、テラスはふと、アリサを抱きしめた。
「もう、大丈夫だ...」
「お前の前には...」
「私がいる...」
アリサはその言葉に、まるで新生児が母に抱く気持ちを抱いてしまった。そして、つい瞳から涙が溢れる。
「ありが...とう...」
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次の日、アリサは処刑代に乗せられ死亡していた。
テラスは吐きかけた。
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そうして、人は死んでいった。
そして、ナノカまで死に、その後の裁判にて黒幕が判明した。
状況は一変するーーー
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「...だって...」
「...最初から...」
「計画していた...通りなので...」
この牢屋敷の黒幕それは、氷上メルルであった。
メルルは語る。大魔女を見つけるためにこんな事をしていると言うこと。自身は真の魔女だということ、
そして、今回はもう終わりだと言うこと。
メルルは看守に告げる。
「看守さん、お願いします」
そう言うと、看守は残った少女、エマ、ヒロ、マーゴ、ココ、テラスに刃を向けた。
逃げる際、エマは脚をもつれさせて転んでしまう。
看守はその隙を見逃さず、そのギラリと光る鎌でエマの首を切ろうとする。エマは自身の死を幻視した。その瞬間だった。
「......ヒーロー見参」
テラスが鎌の凶刃からエマを救いあげた。
魔女図鑑:
【名前】閃テラス
【情報】『
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