BanG Dream!×仮面ライダー詰め合わせ(になる予定) 作:湯豆腐に季節のエクレアを添えて~
久しぶりの主人公の戦闘シーンです。
本当に、久しぶりです。
・・・・・今回の話しも楽しんで頂けると幸いです。
力が溢れるーーーー。
もう、何も怖くない。
僕は、腕の中の祥ちゃんを強く抱きかかえながら、そう強く感じた。
ーーーーーそのまま、力強く地面に着地する。
ドスンッという激しい音と共に、地面が少し揺れた。
「・・・・祥ちゃん・・・。・・・行こう・・・」
「えぇ・・・。朔・・・」
僕の、その言葉に、祥ちゃんは、静かに、けど、確かに頷いてくれた。
ふと、窓に反射している自分の姿を見る。
黒い身体を、血のように赤い鎧で包みこみ、肩や足には、重厚な銀色の鎖―、カテナが巻き付けられている。
顔はマスクで覆われ、翼を広げたコウモリの形をした両眼が、陽光を反射させている。
・・・・自分は、こんな姿をしていたのか、と改めて認識する。
普段は、暗闇ばかりで戦っていたから、その全容を確認することは、あまりなかったけど・・・。
今は、この姿になれて良かったと思えた。
そう、腕の中にいる祥ちゃんを見つめながらーーー。
『見つけたぞ、キバ!』
『今度こそはーー!』
四方八方から、殺意を剝き出しにしたファンガイア達が集まってくるのが分かる。
・・・・気が高揚し過ぎて、彼らの事を忘れてしまっていたようだ。
でも、もう、何も気にならない。
もう・・・、これっぽちも怖くない。
祥ちゃんを抱きしめたまま、一気に走り出した。
お姫様だっこのような姿勢のままでも、祥ちゃんは僕を信じて身を預けてくれている。
僕も、彼女の白くて綺麗な手を片手で握りながらーー。
『ゲフッ!?」
行く手を阻もうと現れた、蛾のようなファンガイアの頭を踏みつけ、跳躍し。
『貴様・・・っ!』
それを追いかけて地を蹴り、高く跳躍したハサミムシのようなファンガイアを右の拳で、地上へと撃ち落とす。
「・・・・沢山、いるね・・・」
空中で、下の様子を確認すると、街の路地が、気が遠くなるほどの不気味なステンドグラスの色彩で埋め尽くされていた。
こんなに大勢を相手するのは初めてだ。
・・・・・不安じゃないと言えば、嘘になる。
「朔・・・。邪魔になるなら。私はーーー。いえ、それよりも・・・」
腕の中の祥ちゃんが、揺れる琥珀色の瞳で、僕の顔を心底心配そうに見つめている。
・・・・・自分の手を取ってくれた彼女をこんなに早く、不安にさせてしまうなんて・・・。
「大丈夫。邪魔なんかじゃないから・・・。それより、ちゃんと掴まっててね・・・」
祥ちゃんをより強く抱きしめる。
地面に着地した直後、待っていましたと言わんばかりに、大勢のファンガイア達が僕たちを取り囲む。
虫のような姿をしている、インセクトクラスのファンガイアたちが群がりーー、
そして、そのままの勢いで、襲い掛かってくる
獰猛な爪と牙を剝きだしてーーー。
「・・・・朔・・・っ!!」
祥ちゃんの悲痛な叫び声が聞こえる。
ーーーーけど、僕はもう、あの暗い毛布の中の僕じゃない。
深く息を吸い込み、驚くほど落ち着いた動作のまま、一つの青いフエッスルを取り出して・・・・。
ーーーーキバットに噛み合わせた。
キバットの声と同時に、野性的な旋律が鳴り響き、獣の_____狼の遠吠えが、大気を震わせた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「・・・・・朔・・・・!!」
私は、私を強く抱きしめている彼の名を強く叫ぶ。
目の前に迫る怪物たち。
全て、朔に爪と牙を向けている。
獰猛な声で、彼に殺意を叩きつけている。
私がこの場にいることで、彼はまともに戦えず、無惨に傷ついてしまうのではないか。
こんな抜け殻の自分が、今の彼の抱えきれないほどの重荷になってしまっているのではないか。
その取り留めのない焦燥が胸を灼いて不安で仕方なくてーーー。
でも、差し伸べられた手を離すことが怖くて・・・。
怪物たちが襲い掛かって来る。
私は、それに対して、幼子のように強く目を瞑ることしかできない。
そうして、彼の血のように紅い真紅の胸元へと、縋るようにその顔を深く埋める。
そんな私を意に介さず、凶刃が朔にーーーー
『・・・・・っ!』
『何だ・・・・っ!』
届く事は無かった。
身体を強く揺さぶられる感覚と共に、怪物たちの驚愕と動転に満ちた悲鳴が聞こえる。
・・・恐る恐る目を開ける。
目を開けると、すぐに彼の血のように紅い胸元がーーー。
見えなかった。
私の目の前に広がっていたのは、真紅ではなく、群青色。
驚きに、目線を上に上げる。
「・・・・朔・・・?」
彼のマスクの形は変わらない。
・・・・けれど、今の彼の複眼は、夜空の月のような黄色ではなく、鋭く冷たい青色へと変貌を遂げていた。
そして、左腕は、狼の毛並みや牙を連想させる、極めて鋭利で野性的なものへ。
私の背中を支えている彼の指先は、厚い鉄板をも切り裂けそうな鋭い爪へと変わっている。
その変わりように、少し怯えたように彼の方を見る。
「うぉぉおおおおおオォォオオオォ!!」
朔が獣のような叫びを上げる。
怪物たちは、その声に気圧され、身を一瞬、竦ませる。
どこまでも、獰猛で。
周囲へ畏怖をもたらす声でーーー。
「さ、朔・・・?」
私は震える唇の隙間から、消え入るような懇願の声で彼に語り掛ける。
彼が、自分の知らない怪物になってしまったのではないか、という強烈な不安感。
そんなことがあるわけがない。
彼は私を救いに来てくれたのだ。
そう思っても、その考えを止められーーー
「・・・・な、なんちゃって・・・」
激昂の戦吼を響かせていた彼が、急にいつもの気弱そうな調子に戻って、困ったように左手でポリポリと頭を掻きながら、そう言った。
「・・・・え、あ・・・・・?」
その変わりように、虚を突かれ、私は気の抜けた声が出てしまう。
さっきまで獰猛な戦吼を上げていた群青色の獣とは打って変わって、彼はいつもの、私のよく知っているあの気弱な少年の調子で話しかけてくる。
「・・・ご、ごめんね・・・?ちょ、ちょっとテンション上がっちゃって・・・」
気まずそうに、目線を泳がせているような仕草でーーー。
そのいつもの優しい動作に触れた瞬間、私の張りつめた胸の奥の鎖が、ほんの少しだけホッと融けていくのを感じていた。
ーーーーだが。
「・・・・ちょ、ちょっと、祥ちゃん?・・・どうしたの?どこか痛い・・・?」
「何でもありませんわ」
「え?でも、何だか、少し機嫌が悪そうにーーー」
「・・・・何でも。あ・り・ま・せ・ん・わ」
「う、うん・・・・」
彼にからかわれたことに、不満と愛おしさを感じてしまい、思わず子供のような態度を取ってしまう。
・・・・こんなことをしている場合ではないのに。
彼に、抱きしめられていることに。
彼が、私の知ってる朔と変わらないことに。
どこまでも、どうしようもないほどに、安心してしまって・・・・。
『キバッ!覚悟っ!』
『忌み子がっ!・・・ここで切り刻んでくれる!』
我に返った怪物たちが、一斉に鋭い爪を剥き出しにして、彼に襲い掛かって来る。
でも、私には、さっきまでのような恐怖感は無くてーーー。
・・・・頬を冷たい疾風が掠めた気がして、私は一瞬だけ、静かにその目蓋を瞬かせた。
『ぐわっ!』
『何・・・っ!?」
私が気づいた瞬間には、襲い掛かってきていたはずの怪物たちが、まとめて虚空へと弾き飛ばされていた。
そして、私たちはいつの間にか、さっきのアスファルトの地面から、離れた空き家の屋根の上に着地していた。
この事態に、私の動揺は追いつかない。
ーーー蛾のような姿をした怪物が、私たちに襲い掛かって来る。
だが、その必死に繰り出された鋭い爪は、ただ虚しく、空を切るだけだった。
『・・・・なっ!』
私の顔を周囲の破片から守るようにして、優しく覆ってくれている朔の鋭い爪の隙間から、その怪物の無防備な後ろ姿が視界に映り込んだ。
怪物の驚愕の悲鳴など一切意に介することなく、彼はもう片方の手に握りしめていた短剣を振るう。
蒼狼の凶暴な装飾に、眩い黄金の刀身が特徴的な短剣をーーー。
獰猛な一閃が、怪物の背中を真っ二つに切り裂く。
目にも留まらない連撃で、怪物の身体が削れていきーーー。
私が気づいたころには、目の前には、ただのガラス片しかなかった。
『貴様ァ!!』
屋根の下から、怪物たちの憤怒と怨嗟の声が響き渡る。
地を蹴り、大勢で群がってきている。
蜘蛛のようなファンガイアが糸を吐き出し、海老のような姿をしたファンガイアが泡を激しく吐き出してくる。
だが、それらが私たちの視界を覆うよりもーーー。
「・・・ふんっ・・・!」
彼が行動する方が速かった。
彼は短剣の柄に配置された、蒼狼の装飾に手を置く。
それを引き金にして、蒼狼の一対の紅い瞳がギラリと輝きーーー。
「・・・あっ!祥ちゃん!すぐに耳を塞いでっっ!」
「・・・・え?・・・・っ!」
慌てた彼の声に従い、強く、耳を塞ぐ。
その直後にーーー。
『ワォーーーーーーーーン!』
狼の凄絶なハウリングが鳴り響く。
それと同時に、青い衝撃波が激しい波紋となり、大気を幾重にも波立たたせていく。
その衝撃は、糸や泡をかき消し、目下の怪物たちに直撃する。
一度ではなく、連鎖的に音が伝わり、怪物たちを粉々に粉砕する。
また、鮮やかなガラス片が、美しく舞い散った。
『・・・・くっ!』
『怯むな・・・っ!馬鹿が・・・!』
その様子に、怪物たちは足を竦ませながらも、まだ凶刃を向ける。
それを見下ろした後、彼は静かに、手に持っていた短剣をーー。
Ⅲ世に噛み合わせた。
ーーーーそのまま、彼は深く身体を沈ませる。
どこまでも野性的に、どこまでも獰猛に。
ーーーけれど、私のスカートの裾が、汚れた民家の瓦に触れないように。
自らの左腕の爪を器用に浮かせ、どこまでも労わるようにして、私を気遣って優しく抱き留め直してくれる。
そして、短剣を口に咥え、四足の獣の姿勢のままで、一気に屋根の上から地上へと滑空するように駆け出した。
蒼い荒れ狂う魔力と疾風が周囲に渦巻き、その勢いのまま、目下の怪物たちへ疾走する。
すれ違いざまに、黄金の刀身が、怪物たちの肉体を電光石火の速さで次々と切り裂いていく。
素早く、けれど確実に、致命的な一撃を加えていく。
棒立ちのまま、硬直していた者は、そのまま一閃の元に両断され。
死に物狂いで立ち向かおうと武器を構えた者は、疾風と魔力、脚の膂力で弾き飛ばされ、その隙を狙い澄ました一撃に、無残に切り裂かれた。
「ウォォォォォォォォーーーーンッッ!!!!」
彼の、狼の遠吠えのような叫び声が街に響き渡ると同時にーーー。
バリンッ!、という音と共に、怪物たちが鮮やかなステンドグラスになって砕け散った。
粉々に砕け散った無数のステンドグラスの硝子細工が、陽光をキラキラと幻想的に反射させる中。
彼の纏う群青色の鎧は、元の真紅の姿へと戻っていく。
左腕を獰猛に覆っていた狼の鋭利な爪や、牙を模した彫像の装飾は、元の重厚な装甲へと戻り、銀色の鎖がそれに纏わりついた。
『ブォォォォーーーン!』
私たちの元へと、真紅の鉄馬______マシンキバ―が舞い戻ってくる。
騎手がいないにも関わらず、それは意志を持つ生き物ように、主の元へと戻って来た。
きっと、私には知るよしのない秘密があるのだろう。
「祥ちゃん、後ろに乗っててね」
「ええ・・・」
朔は、私をタンデムベルトの座席に座らせ、自らも真紅の車体に跨る。
どこまでも穏やかに、私の身を案じながらーーー。
「それじゃあ、行くよ・・・!」
彼はマシンキバーに深く跨ると、アクセルを一気に力強く引き絞って走らせた。
風を切り、どこまでも速く、走らせていく。
私は、後ろで、彼の背中越しにその風を感じる。
彼の愛車に乗るなんて、何時ぶりだろう。
最近だった気もする。
けど、それが、少し遠い記憶のように感じる。
気づいた時には、私は彼の背中に抱き着き、その腰元に両腕を強く回していた。
運転の邪魔になってしまうかもしれない。
彼の負担になってしまうかもしれない。
そんな考えを、今の私は持ち合わせることができなかった。
ただひたすらに、彼に強く密着する。
衣服越しに、鎧の硬さと冷たさが伝わってくる。
ーーーけど、それでも、彼が傍にいることに何よりも安心を感じた。
「・・・・祥ちゃん」
不意に、彼が静かに口を開いた。
マスク越しでも、その声ははっきりと聞こえた。
そしてーーー。
「今から、CRYCHICの皆の所に行こう」
そんなことを私に言った。
そんなーー、許されるわけがないことを。
「・・・・・ぇ、何を、言って・・・?」
驚愕に、私の唇から幽かな声が漏れる。
彼の言っていることが、私には理解できなかった。
私は、彼女たちに会う資格がない。
あの居場所を壊してしまったのは、他でもない、私なのだから。
私の所為で・・・。
「それに、睦ちゃんとも話そう」
自縄自縛の絶望に苛まれていた私の思考を遮るように、朔はまたしても、信じられないことを言った。
睦に?
私が?
私が壊してしまった、彼女にーーー。
会う?
話す?
どうやって?
どんな風に?
どんな顔をしてーーー。
考えても答えが出ない・・・。
分からない。
どうすれば良いのか・・・。
そもそも私が、また彼女に出会ってしまったら、また・・・・。
「大丈夫」
優しい声で、彼が告げる。
「大丈夫だから。だって・・・」
シャーという音と、大地を激しく蹴る足音が、背後から迫って来た。
「・・・・祥ちゃん。ちょっと待っててね・・・」
彼が憎々し気に、後ろを振り向く。
『待ちなさいッ!キバッ!』
『逃がすものかっ!』
『撃ち殺してくれる!』
下股を車輪にした蛸のような怪物に。
羊のような姿の怪物が、激しく疾走している。
遠くから集まって来た、ネズミのような怪物が、銃を放って来る。
激しい着弾音が周囲のアスファルトを弾き飛ばした。
「・・・・きゃっ!?」
「祥ちゃん!」
無慈悲に放たれた一発の銃弾が、私の頬を微かに掠め、生々しい鮮血が風に舞う。
その衝撃と恐怖のあまり、一瞬、両腕の力を緩めてしまいそうになる。
けれど、
「うん・・・。ありがとう。祥ちゃん。・・・大丈夫だからね・・・」
何とか、朔の背中から離れずにいることができた。
朔は、私のように、安心したような声を出し・・・。
そしてーーー。
「・・・・僕の祥ちゃんに、何してるの・・・・」
少し怒気を孕んだ声と共にーーー。
キバットに緑色の笛を噛み合わせた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
軽快で妖しい旋律と共に、一丁の銃が、僕の掌に現れる。
美しいメタリックグリーンで全体が統一され、銃身全体が、独特で生物的なフォルムを形成し。
前方の銃身は金色の装飾が施され、下部は、魚の鱗やエラを思わせるような段上の精緻なディテールが施されている。
銃身の中央には、魚の胸びれや背びれをイメージしたような3枚の緑色のヒレが放射状に飛び出し。
グリップの上部には、鎖に繋がれた、赤い宝石が埋め込まれている。
・・・・僕は、その銃を強く握りしめる。
ーーーその直後、未知の魔皇力が僕に流れ込んだ。
さっきの、青いフエッスルをキバットに噛み合わせた時のように。
あの蒼狼の短剣を手にした時のように。
僕の意識が、何かに塗りつぶされそうになる。
でもーーー、さっきと同じように。
それを強く捻じ伏せる。
こんなものに、屈している暇はないのだから。
今、大事な彼女が_____祥ちゃんが傷つけられたばかりなのだから。
今回は、咆哮すら上げずに、自分の力にすることができた。
「・・・・ふんっ!」
すぐさま、銃口の狙いを、真横に迫っていた、蛸のようなファンガイアに定め、迷いなく引き金を引いた。
水の銃弾が、直撃し、蛸のようなファンガイアは大きく態勢を崩す。
そして、そのままーーー。
下股の車輪を撃ち抜き、破壊する。
『く・・・ッ!』
相手は、一瞬にして時速数百キロでバランスを完全に喪失し、そのまま激しく路面へと転がっていった。
ガリガリ、バリバリと、自身が出したスピードの摩擦の重圧によって、相手の身体が削れていく。
だけど、そんなことは意に介さずに、再び、引き金を引く。
周囲に集まっていた、ネズミのようなファンガイア達へーー。
彼らは、軌道を予測し、銃弾を回避しようと動く。
ーーーーだけど、
『馬鹿な・・・っ!』
銃弾は、軌道を変え、彼らへと向かう。
僕の意のままに軌道を変えてーーー。
理屈は分からない。
知る必要はない。
大事なのは、その結果だけ。
祥ちゃんを傷つけた彼らに、銃弾が当たった。
それだけで、今は良い・・・。
僕は右手に銃を逆手に構えたまま、片手だけでマシンキバーのスロットルを開け、猛烈に疾走させる。
マシンキバ―は、片手の運転にも関わらず、バランスを崩さないで走っている。
そういえば前、キバットが呑気に『マシンキバーのアッパーカウルの中には、馬のモンスターの脳がそのまま生体パーツとして埋め込まれてるんだぜ〜』とか、言ってた気がする。
・・・・うん、今はこれ以上その生々しい不気味な仕組みについて考えるのを止めよう。
純粋に恐怖で背筋が凍るから。
それでも、まだ、追いかけてくる奴がいる。
『キバッ!覚悟しなさいっ!』
羊のような見た目のファンガイア。
地を駆け、マシンキバ―に迫って来る。
ーーー本当に、しつこい。
今は、構っている暇はないのに。
そんな風に苛立ちながら、僕はキバットに。銃の背びれのような装飾を噛み合わせる。
キバットがそう叫んだ瞬間、一際大きな、魔皇力が体に満ちる。
僕は加速するマシンキバーから強引に左足を出し、アスファルトの地面へと激しく接地させた。
摩擦の衝撃でマシンキバーの最高速度が僅かにガガガと落ちるが、そんなの今は一切気にしない。
左足を通じて、魔皇力がアスファルトの地面に伝わる。
そして、その走行の軌跡から、水がどんどん広がり、周囲が水に満ちていく。
それに動揺する周囲の声は耳に入れない。
カラカラと、ヒレのような装飾が回転し、銃口に水流が集まっていく。
そしてーーー、そのまま、逃げる彼らへ向けて、最後の引き金を全力で絞り込んだ。
巨大な水の銃弾が、相手に迫る。
彼は、何とか逃げようとしてたけど・・・。
ーーー銃弾は、先程と同じように、僕の意のままに動いてくれた。
逃げる相手を追いかけて、追いかけ続けて。
そしてーーー。
『ぐあぁああぁああっ!』
相手に直撃した。
着弾した際に、大量の水流を竜巻のように解放させ、周囲のファンガイア達も巻き添えにしてーーー。
飛び散った、無数の水滴に、今の僕の姿が映る。
エメラルドグリーンのような複眼に。
同様に染まった、胸部のプレート。
肩は魚の背鰭やエラを想起させる多層構造になっており、腕部から手甲にかけては魚の鱗のような独特のディテールが施されている。
いつものキバの鎧とは、また違う姿。
さっきは気づかなかったけど、これらのフエッスルを使うと、姿が変わるらしい・・・。
「あっ。そんな場合じゃなかった。・・・行くよ・・!祥ちゃん!」
「ええ。・・・お願いしますわ・・・。朔・・・」
少し不安げだったけど、祥ちゃんは頷いてくれた。
きっとーーー、高松さん達に会うのが怖いんだろう・・・。
どうすれば、良いのか、分かんないんだろう・・・。
『この時間に、RINGに祥ちゃんを連れてきて。睦ちゃんや高松さん、長崎さん、椎名さん_____CRYCHICの皆を集めるから・・・』
『話は、皆に通してあるから、君は、祥ちゃんのことだけ考えて・・・』
あの、得体の知れない、ワインレッドのスーツを着た僕_____紅朔という人のいうことを完全に信じたわけじゃない・・・。
けど、僕も・・・。
祥ちゃんが、前に進むためには、それが一番だと思ったから。
僕は、自身の愛車を、RINGに向かって走らせた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「祥ちゃん・・・。着いたよ・・・」
「ええ・・・。ありがとうございますわ・・・」
私は、マシンキバ―からゆっくりと降り、ライブハウス『RING』へと向き直る。
・・・・まだ、どんな顔をして、睦に、燈に、そよに、立希に会えば良いのか、分からない。
今にも震える膝から冷たいアスファルトの地面へと崩れ落ちそうになってしまう。
逃げたい。
目を逸らしたい。
忘れたままでいたい。
ーーーーけど。
「・・・・・祥ちゃん・・・」
「分かっていますわ・・・・。朔・・・」
朔が__誰よりも愛おしい彼が、私の手を引いてくれたあの時のぬくもりを、無かったことにしたくはなかった。
それに、何よりも、他ならぬ私がーーー。
『CRYCHICを辞めさせていただきますわ』
『あなた、ご自分のことばかりですのね』
『だから、私は祥子ちゃんが嫌い』
『睦ちゃんじゃなくて、祥子ちゃんが壊したんでしょ!全部、全部・・・・っ!』
自分自身の犯してしまった罪から逃げたくなかった。
彼に手を引かれたように。
私も、前に進みたかった。
「祥ちゃん・・・。行こう・・・」
朔が、私に、真っ直ぐと手を伸ばしてくれる。
けれど、
「大丈夫ですわ。・・・・朔、私はもう・・」
小さく、首を振った。
彼は、私のために、力を尽くしてくれた。
こんな私のために・・・。
これ以上は、彼に頼るわけにはいかない。
その様子に、少し目を見開きながら、少し寂しそうにしながらも。
朔はーーー、
「うん・・・・。頑張ってね。祥ちゃん・・・」
どこまでも実直な声音で、私の背中を押してくれた。
仮面越しに、いつもの気弱な調子で、優しく微笑みながら。
「ええ。行ってまいりますわ」
何を言われても仕方ない。
どれだけ責められても仕方ない。
そもそも、私には、そんな資格すらないのかもしれない。
けれど、それでも、前に進むために。
私は、歩みを進めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
祥ちゃんを見送った後、僕は、RINGから少し離れた場所へと歩いていく。
ーーーー僕自身も、前に進むために。
「・・・来ましたか。黒瀬朔」
一人の男が立っている。
長身痩躯。漆黒のロングコートを纏い、顔には知的な丸眼鏡。
あの日、水底のへと僕を容赦なく叩き落とした相手。
僕が、兄さんの次に恐れている相手。
ビショップが、そこに立っていた。
後ろには、筋骨隆々の野性的な___ビーストクラスのファンガイアと、爬虫類のような見た目をした___リザードクラスのファンガイアが並んでいる。
本当に、今回はこの男も、本気のようだった。
でも、そんなことは関係ない。
再び、あの青いフエッスルを使い、蒼狼の短剣を手に取った。
キバの鎧が群青色へと変わり、胸の内側から、獰猛で暴虐な野生の本能が溢れ出してくる。
その溢れんばかりの力を、今は、抑えることはしない。
「行きなさい・・・・」
ビショップが、後ろのファンガイア達に指示を下した。
どうやら奴自身は、最初からは自ら手を汚して動くつもりはないらしい。
・・・・僕が消耗するまで待つつもりだろうか?
・・・・けど、そんなことは些細なことだ。
ただ、僕は身体を地に伏せ、自身の中で暴れる野生のままにーーー。
目の前の敵を打倒すために。
・・・・前に進むために。
魂の底からの咆哮と共に、死力の渦の中へと激しく駆け出した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
少年は、自らに降りかかる火の粉を払いながら、愛しい少女を送り届け。
少女も、自身の過ちと過去から逃げないことを決めた。
少年は、敵へと駆け出し。
少女は、自身の愛しい過去へ向き直る。
ーーーーただ、前に進むために。
第十三話の閲覧ありがとうございます。
今回のフォームチェンジ、上手く書けたか、少し不安ですが・・・。
楽しんで頂けると幸いです。
ちなみに、私の好きなキバのフォームは、ドガバキエンペラーフォームです。
出る予定はありません。
次の回は、祥ちゃんがCRYCHICの皆とちゃんと話します。
誤字などがありましたら、報告お願いします。
あと、感想や評価などもモチベーションなどに繋がるので、よろしければ、ぜひ・・・・。