BanG Dream!×仮面ライダー詰め合わせ(になる予定) 作:湯豆腐に季節のエクレアを添えて~
今回は、ちょっと短めです。
ただ、物語の大事な転換点であるので、お見逃しなく・・・。
『・・・大丈夫、怒ってなんてないから。・・気にしないで?』
そんな風に私を心配して。
朔は、私の頬に流れ落ちる汗を拭いながら、優し気に話してくれていた。
どこまでも優しい手つきで。
どこまでも、私のことを想ってーーー。
『睦ちゃん、おかえりなさい。ご飯出来てるよ』
朔が玄関から出て、私にそう言ってくれた。
「・・・うん・・・」
そのまま、朔の家に入って、温かいご飯を食べた。
本当に、温かかった。
『・・・・祥ちゃんには、まだ会えてない。・・・・けど、大丈夫だから・・・。ちゃんと、睦ちゃんが、祥ちゃんに会えるようにするからね・・・』
私を祥に会わせようとしてくれた。
ちゃんと、祥と話をするために。
そよ達の説得もしてくれた。
そして、私は祥と話すことが出来た。
祥にちゃんと謝ることも出来た。
それだけじゃなくて、CRYCHICの皆で、演奏も出来た。
凄く、楽しかった。
あの時は、初めてギターを歌わせてあげられたと思った。
バンドが凄く楽しいと思うことが出来た。
・・・・・また、明日からもずっと、みんなと一緒にCRYCHICがやりたい。
心の底から、そう思った。
けどーーー。
それは、違うって教えて貰ったから・・・。
他でもない、朔に。
朔が変なTシャツに着替える前に、私に言ってくれた。
私の髪を愛おしそうに撫でながら、静かに、優しく。
CRYCHICはもう、ないんだって・・・。
皆も、それが分かってて・・・。
ちゃんと終わらせるために、ここに来てくれたんだって・・・。
最初は、分からなかった。
でも、祥が演奏中に泣いてるのを見て。
皆の涙の意味が、少しずつ分かって・・・。
私の我儘で、CRYCHICを続けるのは、良くないことなんだって思った・・・。
凄く寂しかったし、哀しかったけど。
祥を苦しませたくなかったから・・・。
それに、私には、朔がーーーー
『・・・朔。・・・今度、デートに連れて行って下さる?・・・私の手を引いて・・』
いるはずなのに・・・。
祥が、朔にあんなことを言った。
朔の頬にキスをした。
それを受け止めた朔も、耳の裏まで真っ赤に染め上げて、凄く、凄く幸せそうに微笑んでいた。
祥が幸せそうで。
朔も嬉しそうなのに。
・・・・凄く、胸が苦しかった。
上手く呼吸が出来なかった。
苦しくて、苦しくて、仕方がなかった。
RINGから出た後も、それは止まらなかった。
ライブハウスを出た途端、私は、一緒に帰ろうと言ってくれた祥と朔から、強引に別れた。
二人とも、私を心配してたけど、断った。
今の祥と過ごしたら、また祥を傷つけてしまうかもしれなかったから。
私の中で、何か良くないものが溢れ出てしまいそうだったから。
一人でトボトボと歩いて。
歩いてーーー。
どうすれば良いか、分からなくて。
それで・・・。
「睦ちゃん、ちょっと良いかな?」
後ろから声がした。
聞き覚えのある声。
少し余裕がない声。
「私、睦ちゃんを手伝うことができると思うんだ」
私は、少し躊躇いながらもーーー。
けれど、もう、この現実に耐えきれなくて、縋るようにして。
彼女の____初華の手を取った。
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「睦、今日はここまでにいたしましょう」
「・・・・うん。分かった・・・・」
私は、睦と一緒に並び、机に向かって教科書とノートを広げていた。
お互い、しばらく学校に行っていなかったのだから、仕方のないことだ。
睦の通う月ノ森の方は、羽丘よりも進んでいたが、このペースでいけば、今、学校で教えられている範囲にはすぐに追いつくだろう。
「祥ちゃん、睦ちゃん。お疲れ様、おやつ持ってきたよ」
カチャリと静かに扉が開き、お盆を手にした朔が、お茶菓子を持って部屋の中へと入ってきてくれた。
現在、私と睦は、朔の家で過ごしている。
お父様の所へ戻ろうとも思ったのですけれど、お父様自身が、まだダメだと言っていた。
お父様曰く、ちゃんと職に就き、私に胸を張れるようになるまで待って欲しい・・と。
自らの足で立つ覚悟を、そう真摯に語ってくれた。
・・・それが、本当に嬉しかった。
お父様が、また前を向いてくれたことが。
本当に・・・・。
「今日はね、ガトーショコラを作ってみたんだ」
朔は少し照れくさそうに微笑みながら、私たち二人へ、丁寧にお皿に載せられた美味しそうなガトーショコラを切り分けて渡してくれた。
朔は、私たちを家に入れてくれて、一緒に過ごしてくれている。
一緒にご飯を食べて。
部屋も貸してくれた。
久しぶりに、朔や睦と一緒に過ごすことが出来て、本当に充実した日々だった。
そんな満ち足りた想いを胸の奥で転がしながら、私は朔が作ってくれたケーキを口へと運ぶ。
甘すぎない、けれど濃厚で優しく、上品な味で・・・。
・・・・私好みのものだった。
一緒に持ってきてくれた紅茶も、柑橘系の華やかな香りが鼻腔をくすぐるストレートのアールグレイで、チョコレートの甘さに爽やかさを付け加えてくれてーーー。
「・・・・美味しい・・・」
「ほんと?・・・良かった・・・」
朔は安心したように胸を撫で下ろし、眼鏡の奥の瞳を優しく緩め、自らもフォークを手に取り始めた。
「睦ちゃんも、どうーーー、睦ちゃん?」
朔が、心配そうに睦の方を見ていた。
私もすぐに、睦の方を見る。
「・・・何でもない・・・」
睦は首を振って、そう言った。
確かに、いつもの睦のようだった。
特に変わった様子はない。
「・・・そう?何だか、少しだけ、ボーっとしてたような気がして・・・」
朔は戸惑いながら、睦の方をじっと見つめる。
心配しているように。
睦の顔を覗き込んでいる。
「大丈夫・・・」
睦が、小さく呟く。
その時の表情は、少し俯きがちで。
でもーーー
「ありがとう。朔・・・・」
あの子の頬が、ほんの少しだけ、赤く染まっているように見えて。
それが、私の心中をどうしようもなくざわめかせた。
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やっぱり、朔は優しい。
私のことを気に掛けてくれてる。
私のことを見てくれている。
私の違和感に気づいて、私をーーー。
『睦ちゃん!聞いて!お願い!』
頭の中で、声が響く。
モーティスの声。
余裕が無さそうに、必死に。
私に語り掛けてくる。
『・・・何・・・?』
頭の中で、モーティスに問いかける。
心の中の世界で、モーティスと直接話すことはせずに。
朔のことを見つめながら、モーティスと話す。
『睦ちゃん!あんなことしちゃダメだよ!・・・初華ちゃんに言われたことをーーー』
『黙って・・・。モーティス・・・』
モーティスの言葉を遮る。
さっきも、同じことを聞いてきた。
だから、さっき、ほんの一瞬だけ意識が現実から離れて、ボーっと硬直してしまった。
何度言われても、返事は変わらない。
『朔は、私の言うことを一つ聞いてくれるって言ってた。だからーーー』
『朔くんは、祥子ちゃんのことが好きなんだよ!?睦ちゃんが、一番分かってるでしょ!?』
『まだ、分からない・・・。・・・朔は、そう言ってない・・』
『言ってなくても、見れば誰だって分からないでしょ・・・!?』
モーティスが必死に、私にそう言っている。
それを聞き入れずに。
聞こえないふりをして。
「・・・朔、祥。私、行きたいところがある・・・」
私は、目の前で微笑み合っている朔と祥の二人に向けて、そう告げた。
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「ここが、睦ちゃんの来たかったところ?」
「・・・・うん・・・」
今、僕は、祥ちゃんと睦ちゃんと一緒に、カラオケルームにいる。
僕は、これまでの人生でこういう場所へと足を踏み入れるのは初めての経験だったので。
部屋のソファに腰掛けながら、少しソワソワと周囲を見回してしまっていた。
何だか入る前は、もっと不良たちの溜まり場のような。
治安の悪そうな空間を勝手に想像して身構えていたんだけど・・・・。
実際に中に入ってみると驚くほどに清潔で明るくて、正直、びっくりしている。
「ここは、確か・・・」
隣の祥ちゃんが瞳を僅かに揺らして、小さく、懐かしそうに声を漏らした。
確か、祥ちゃんと睦ちゃんはCRYCHICの皆と一緒に来たことがあったんだった。
前に、楽しそうに話してくれてた。
「・・・あ、飲み物を外の自販機で買って来るね」
ふと、頭に考えが浮かぶ。
歌うんだから、喉が渇くだろうし・・・。
飲み物を買ってこないとーー。
「大丈夫ですわ。・・・下の階にドリンクバーがありますから」
「あ、そうなんだ・・・」
祥ちゃんが、クスリと優しく微笑みながら、そう言ってくれた。
ドリンクバーがついてるんだ・・・。
思っていたよりも、凄いみたいだ、カラオケっていうのは・・・。
「私が取ってきますわね。睦、朔、何が良いですの?」
「・・・あ、それじゃあ、僕はコーラで」
「・・・私も・・・」
「えぇ。分かりましたわ」
そう言って、祥ちゃんが部屋の扉を開けて通路の方へと出て行った。
それを見送ってーー
『ピコンッ!』
「・・・ん?」
突然、軽快で無機質な通知音が、静まり返ったカラオケルームに響き渡った。
それは、スマホのメッセージアプリの着信音。
その音の発信源はーーー
「・・・睦ちゃん?」
睦ちゃんの方から聞こえた。
「・・・・友達から・・・」
睦ちゃんは、そう言って、手元のスマホを隠した。
絶対に、僕には見られないように。
僕に、見せないように。
まあ、僕も、スマホの中身を見せたいとは思わないし、睦ちゃんだってそうなんだろう・・・。
少しショックではあるけれど・・・。
「・・・あれ?でも・・・」
「・・・どうしたの?」
「・・・いや。何でもないよ・・・」
睦ちゃんの何処か、疑問を抱かせないような振る舞いに、口を噤んでしまう。
でもーーー
・・・・今は平日のお昼過ぎで。
学校はお昼の授業が始まっていて・・・。
睦ちゃんの友達は、同い年の女の子しかいなくて。
皆、今は、学校で授業を受けているはずで・・・。
授業中の彼女たちが、睦ちゃんへ向けてわざわざ連絡を寄越してくるだなんて、そんなことはーー。
ーーーー睦ちゃんは、誰から連絡を貰ったんだろう?
そんな疑問を抱いている内にも、睦ちゃんは、スマホでメッセージを打っていた。
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眩しかった、懐かしい思い出の場所に来ることが出来て、私は胸が焦がれるような多幸感で満たされていた。
CRYCHICの皆で、一緒に過ごした場所の一つ。
睦が戻ってきて、行きたいと言ってくれた。
・・・そのことが、何よりも嬉しかった。
睦が、あの日々のように、笑ってくれるのだという、期待と希望が胸の奥で大きく膨らんで。
私の足取りはどこまでも軽やかでーーー
「・・・・・祥ちゃん・・」
不意に、後ろから声がした。
聞き覚えのある少女の声。
今にも消え入りそうな声。
迷子になった子犬のような、どこまでも不安げなーーー。
「・・・初華・・・?」
振り返ると、金髪に紫の瞳をした少女___三角初華が後ろに立っていた。
私は、彼女の様子を見て、息を詰まらせてしまう。
・・・・彼女の元から、私はいなくなった。
朔の手を取ってーーー。
何故、朔が、あんな乱暴な方法で私を連れだしたのかは分からない。
その理由は、私には分からない。
けれど、きっとそれは私のためで・・・。
そのおかげで、私は前に進めた。
これからは朔と二人で、年相応のあたたかい恋人としての関係を築いていけると、魂の底から信じることが出来た。
だから、もう、私はーーー。
「ごめんなさい・・・。私ーーー」
でも、彼女の苦しそうな様子を見ると、どうしようもなく胸が痛くなってしまう。
そうだ。
彼女には何の非もないのだ。
私のことを思って、自身の家にいさせてくれて。
傍にいてくれてーーー。
なのに、私はーーー。
「お願い、祥ちゃん・・・・。私、祥ちゃんとほんの少しだけ話がしたいの・・・・。本当に、ほんの少しだけで良いから・・・・っ」
彼女の目から目を逸らしたくなってしまう。
どうして。
彼女は私を責めないのだろう。
どうして責めてくれないのだろう。
どうして、そんなにも優しく、痛々しい眼差しで私をーーー。
私は、大切な友人が___初華が。
これ以上、苦しそうにしているのを見ていられなくて。
「えぇ・・・。分かりましたわ・・・」
ゆっくりと、首を縦に振った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「・・・・祥ちゃん、遅いね・・・。大丈夫かな・・・」
朔が、心配そうに祥のことについて話してる。
いつもの朔だった。
私が、憧れてた、祥のことが好きな朔。
だけど・・・。
どうしてなんだろう・・・。
それが、凄く嫌な風に映るのは。
朔は何も変わっていないのに・・・。
ずっと変わらないはずなのに。
多分、それは、きっとーーー
私が変わってしまったから。
朔が変えてくれたから。
苦しかった時に、私の汗を拭って家に入れてくれた朔が。
温かいご飯を作ってくれた朔が。
モーティスのことを説得してくれた朔が。
祥を連れてきてくれた朔が。
ずっと、私の傍にいてくれた朔がーーー。
だから、私は、もう誰にもーーー。
「朔。お願いがある・・・」
朔に、この願いを叶えて欲しい。
私を変えてくれる。
私を幸せにしてくれる。
その願いをーーー。
「うん。どうしたの?」
朔は、いつものように優しく微笑んでくれている。
優しい月の光のように私を照らしてくれるように。
そうだ・・・。
その前にーーー。
「朔に、伝えたいことがある・・・」
私の想いを。
朔に伝えたい。
この温かい気持ちを。
朔に分かって欲しい・・・。
「もしかして、それって・・・」
朔は、何かを察したように目を僅かに見開き、唇を開こうとしている。
やっぱり、朔は私のことを分かってくれてる。
「うん・・・。私、朔がーーー「モーティスちゃんのこと?」・・・え?」
私は、朔の言葉に言葉を失った。
何で、急に、モーティスの名前が出てーーー
「・・・・っ・・・」
突然、頭が痛くなって、視界がチカチカし始めた。
あの子が____モーティスが表に出ようとしている。
今までにないほどに力強くーーー。
抵抗しようとしても、敵わなくて。
私は意識を手放すしかなかった。
死にたくない。死にたくない!
消えたくない。消えたくない!
いらない子なんて言わないで!
どこまでも深い、水底で、私は溺れるながら、手を伸ばす。
『やめてっ!』
『モーティス、邪魔しないで・・・』
『朔、モーティスの事なんて気にしないでいい・・・』
睦ちゃんの声が頭に響く。
私を拒絶する声。
私を拒絶する言葉。
・・・睦ちゃん、あのね。
私、睦ちゃんを守るために生まれたんだよ。
私がいないと睦ちゃんが困るんだよ?
なのに、なんで、そんなに私のことを拒絶しようとするの?
どうして、私の言うことを聞いてくれないの・・・?
・・・・私はいらない子なの・・・?
『朔に、伝えたいことがある・・・』
そんな私の声も、睦ちゃんには届かない。
朔くんに、自分の想いを伝えようとしている。
初華ちゃんに、良いように丸め込まれて。
祥子ちゃんと朔くんが両思いなのにも目を逸らしてーーー。
『・・・もしかして・・・』
朔くんが何かを察したように口を開く。
それを、睦ちゃんは嬉しそうに朔くんの言葉を待ってーーー。
『モーティスちゃんのこと?』
「・・・・え・・・?」
朔くんの口から出たのは、私の名前だった。
睦ちゃんでも、祥子ちゃんでもなく、私の名前ーーー。
『僕も、ちゃんと、モーティスちゃんのことを知りたくて・・・』
『祥子ちゃんから、聞いただけじゃダメだと思ってたんだ・・・』
『・・・ちゃんと、向き合わなきゃダメだと思ってーーー』
嘘じゃない。
幻聴でもない。
朔くんが、私のことを知ろうとしてくれてる。
私のことを見てくれてる。
私のことを、求めてくれてる。
『前に、突き飛ばしちゃったこと、謝りたくて・・・・』
申し訳なさそうに、朔くんが言っている。
私のことを覚えてくれてる。
気に掛けてくれてる・・・。
『モーティスちゃんのことも。『自分がいらない子なんだ』なんて、そんな悲しいこと・・・。モーティスちゃん自身に思わせないから』
・・・前に、朔くんが言ってくれた言葉を思い出した。
ワインレッドのスーツを着て。
ベッドの上で優しく告げてくれた言葉。
あの時の朔くんの姿と、今の朔くんの姿が重なってーー。
そうだ・・・。
朔くんは約束してくれた。
だったら、私のこともーーー。
私は手を伸ばす。
水中からでも見える、確かな、お日様みたいな優しい光に向けてーー。
朔くんに向けてーーー。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「・・・・朔くん・・・」
突如として、僕の目の前に座る睦ちゃんの雰囲気が、ガラリと別人のものへと切り替わった。
僕の呼び方も、いつもの睦ちゃんから変わっていた。
前の僕なら、狼狽えてたけど。
今は違う。
逃げないって決めた。
それに、祥ちゃんや、長崎さん達からも聞いていた。
だから、すぐに何が起きたのかを理解できた。
「・・・モーティスちゃんだよね・・・?」
「うん・・・。そうだよ。私はモーティス」
どこか嬉しそうに、モーティスちゃんは笑っている。
睦ちゃんの静かな笑みとは違った、ふにゃりとした笑み。
同じ顔なのに、全然違う人みたいだ。
・・・・いや、実際に違う人なんだろう・・・。
「モーティスちゃん・・・。あのね、僕・・・」
モーティスちゃんに謝らないと。
パニックになって突き飛ばしちゃったことを。
ちゃんとーーーー。
「ううん。良いんだよ。朔くん・・・」
彼女は、優しそうに微笑みながら、そう言った。
その様子に、戸惑いながらもーーー
「その代わりに・・・、聞いて欲しいことがあるんだ・・・」
「・・・・え?・・・あ、うん・・・」
彼女が続けた言葉に、僕は静かに頷いた。
やっぱり、朔くんは、私のことを分かってくれる。
私のことを必要としてくれる。
嬉しい。
嬉しい・・・。
久しぶりに、朔くんと直接会うことが出来てーーー。
それが、本当に嬉しくてーーー。
視界が少しぼやけて。
頬を熱いものが濡らして。
顔も熱くなってきてる。
どんどん、暖かい想いが胸に広がって。
私は、それに突き動かされるまま、口を開いた。
ありがとう?
嬉しい?
傍にいて欲しい?
ううん。違う。
私が伝えたいのは、そんなのじゃなくてーーー。
『私・・・。朔のことがーーー』
ああ、そうだ。
私が伝えたいのはーーー。
「私、朔くんのことが好き」
「・・・・え・・・?」
朔くんがびっくりしたように目を見開く。
けれど、私はそんな朔くんの戸惑いなんて一切構うこともなく、一歩も退かずに言葉を重ね続ける。
「だから、私と付き合って」
睦ちゃんのためでも、他の誰のためでもない。
私だけの想いを朔くんに告げた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
少女は、自身の想いのために、嘘に塗れた者の手を取り。
少年に想いを告げようとした。
ーーーーだが。
死を迎えようとしていた人形が息を吹き返し。
人形は親愛なる少女の手を離れ。
自身の想いのままに動き始める。
どこまでも純粋な慕情に身を任せてーーーー。
第十六話の閲覧ありがとうございました。
睦ちゃんではなく、モーティスちゃんの方が告白しました。
・・・・いやぁ、これからどうなるんでしょうねぇ・・・。
これから先の展開も楽しみにして頂けると嬉しいです。
誤字脱字などがありましたら、報告お願いします。
あと、感想や評価などもモチベーションに繋がるので、よろしければ、ぜひ・・・