ごっどいーたーの日記   作:林檎

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 ○月×日

 

  

 ――とりあえず状況を整理したいから今日から日記をこまめに書くことにした。

 

まずは状況確認だ。目覚まし時計の盛大なアラーム音で目が覚めた。まだ意識が朦朧として睡魔が襲ってくるので眠気覚ましに顔でも洗おうと自室を出て洗面所まで歩く。

 

問題はその後なんだ。洗面所のドアを開けたら――瓦礫の山々が延々と広がっていた。なんかの間違いだと思って後ろを振り返ると、ドアがない。

 

訳が分らない。こんなことってあるんだろうか。いや、いつから自分の家の洗面所のドアはド○えもんのどこでもドアになったんだろう。これが夢なら覚めてほしい。

 

世紀末の世界を具現化したような瓦礫の山を登っては降りるを繰り返す。最初はどこかのゴミ処理場? とかそんなこと思ってたらなんか違うみたい。

 

だってゴミとは違う血なまぐさい臭いがする。瓦礫にも乾いた血の痕みたいなのがべっとり付いてたし。

 

 一番大きな瓦礫の山の天辺まで登ると達成感を味わうのと同時に絶望した。瓦礫の山から見える炎上した建物。周囲を闊歩する化け物。なにより炎上した建物に掲げられた大きな旗。

 

〝フェンリル〟

 

両目から溢れる涙が止まらない。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 ○月△日

 

 

 昨日は瓦礫の山の一部と化して息を潜めて寝た。なぜかって? 自分の回りをウロチョロするオウガテイルから身を守るためだよ。だってあいつら、少しでも物音がしたら群れで近付いてなんでもかんでも鬼のような尻尾で叩き壊して鋭い牙で噛み砕くんだ。恐怖でチビッた。ははっ、ワロス。

 

本当は寝て起きたら全部夢でしたとかいうオチを願ってたんだけどそうはいかなかった。いやー、わかってたけどね? 現実逃避したくなるのが人間って生き物だと思う。ウトウトして眠れそうになったと思えば、なんか雄たけびみたいなの聞こえてくるし。

 

フェンリルの旗を掲げてる建物の中から雄たけびが聞こえてくる気がする。オウガテイルの群れが建物の中に入っていくのが見えた。オウガテイルの声とは別物だから縄張り争いでも始めるつもりなのだろうか。

 

正直、やめてほしい。とにかく瓦礫の山を吹っ飛ばされたら身を隠す術が無くなる。でもそろそろ動かなきゃいけない。この世界のどこに自分がいるのかわからないし。

 

でもひとつ分かったことがある。自分の身体が若返ってる。なんでって? 落ちてた鏡の破片に映る自分の姿が明らかに子供なんだよ。自分をそのまま小さい頃まで時間を巻き戻したような、言ってて意味が分からないけど。

 

 それにしてもまだ自分以外の人間を見かけない。まあそれもそうだよね、アラガミみたいな化け物がいるようなとこに人が住むなんてありえないし。とか書いてたら建物の中から近接型と遠距離型のゴッドイーターがガラスを突き破って外に出るのが見えた。

 

あれってゴッドイーター? ってか、ゴッドイーターしかいないよね。なんとなく見えてきた一筋の希望に嬉しく思ったら建物から飛び出したアラガミに絶望した。

 

トラに似た容姿を持つ大型のアラガミ。ヴァジュラさん。普通のゴッドイーターなら苦戦を強いられてもおかしくはない。さらにはオウガテイルの群れまで合流して二人のゴッドイーターを追いつめんと攻撃を仕掛け始める始末。

 

鬱陶しいオウガテイルのせいで名も知れない神機使い達は身動きをとれない。

 

 ここでピンチを救えたら……あのゴッドイーター達に今の状況の俺を助けてもらえるかもしれない。そんな淡い期待を抱く。正直、またチビりそうな自分がいる。でも今行かないと、もう自分が助けてもらえるチャンスが消えてしまうかもしれないと思うと身体が勝手に動いた。

 

恐怖で凍りついた笑みを浮かべながら「ハ……ハハッ……」と声を漏らして俺は近くの廃材を握る――。

 

 

 

   * * *

 

 

 

「いやー、まいったなあ。これは」

 

「なに呑気に笑ってるのよ、リンドウ!! ヴァジュラテイルが群れをなしているなんて話聞いてないわ!! ヴァジュラだけならともかく、二人じゃこの数は荷が重すぎる!!」

 

「サクヤ……お前だけでも離脱しろ、退路は俺が切り開くから」

 

「なっ……何言ってるのよ!! そんなこと出来るわけがないでしょ! リンドウ一人を置いて逃げるだなんて!!」

 

「相変わらず良い女だなーサクヤは。でも、な――ッ!? なんであんなとこに子供が!!」

 

「は!? この周辺に人が住んでるわけなんて……ッ!」

 

 リンドウとサクヤは驚愕した。まだ年端もいかない子供が瓦礫の山の中から飛び出し、廃材を片手にヴァジュラテイルの群れを相手に突っ込んでいくではないか。

 

「あ、あいつ……笑ってるぞ!!」

 

「信じられない……ヴァジュラテイルの群れを相手に……しかもあの立ち回り!」

 

子供は身の丈はあるであろう廃材を振り回してヴァジュラテイルの群れをかく乱させて次々に足元を崩していく。とても子供の動きとは思えないものだ。しかも笑いながらアラガミに立ち向かうなどありえない。リンドウはヴァジュラに一太刀浴びせると、声を張り上げる。

 

「作戦変更だ。あの子供を連れて退避する!! サクヤ、俺の後に続け!!」

 

 

 

 * * *

 

 

 

 ○月□日

 

 

 あれから二日経った。どうやら二人のゴッドイーターは雨宮リンドウと橘サクヤだったみたい。なんかかなり若々しかったからすぐには気付けなかった。助けてもらった恩は返さないといけないので二人にはまた今度会えるようなことがあったら何かしらの形で恩を返そう。

 

メインキャラの二人に気付けなかったもう一つの原因はあのオウガテイルにもあると思う。ゴッドイーターで狩りまくったのでオウガテイルのパターンなんてお見通しと思っていた自分が憎い。

 

混乱してたからあんまり自信はないけどオウガ……テイルだよね? 神機なんて実際に使ったことないからわからないけどオウガテイルさん手強すぎてワロタ。なにあいつ、凄く恐かった。あんなのと戦うゴッドイーターは本当に凄いなと実感した。自分はただ廃材振り回しているだけだったけど。

 

 廃材振り回しただけなのに二人に助けてもらって、フェンリル極東支部の医務室で休まさせてもらえるなんて。温かいご飯にフカフカの布団は最高だ。最高だけど血液検査って言われて血を少し抜かれたけどなぜ血液検査なんてするんだろうか。

 

まああの瓦礫の山にいれば何かの細菌には感染していたかもしれないから、血液検査のことはあまり深く考えるのは止めようと思う。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 ○月○日

 

 

 今日は朝起きたら黒服を着た屈強そうな男達に囲まれながら契約書のようなものにサインさせられた。何の契約書なのかは黒服のプレッシャーで上手く読めなかったというのは書かなくてもわかるだろう。部屋の隅でナイスバディーのツバキお姉さまが不憫そうなものを見る目で見てきたが、何かマズイような書類だったんだろうか。

 

リンドウとサクヤさんも後からお見舞いに来てくれた。これから大変だろうな、とか。死ぬなよとか不吉なことを言われて恐くなってしまう。

 

確かに、退院したときの治療費とか今後の生活のことを考えていなかった。居住区みたいな場所とかフェンリルの児童養護施設とかでは生活できないのか。フェンリルの職員の誰かに相談してみよう。

 

誰か来たので相談しようとしたら赤紙を渡されて話も聞かずに部屋から出ていかれた。この赤紙はなんだ?

 

 

 

 * * *

 

 

 

 ×月□日

 

 

 天井から床まで真っ白な部屋に連れて行かれた。なんか処刑されるような気分。どこかのゲームでこんな部屋を見たような気がする。部屋の中央に精密そうな機械が見える。

 

まさかこれって――(ここで文字は途切れている)

 

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