ごっどいーたーの日記   作:林檎

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 ×月▽日

 

 

 昨日は途中で騒動があったから日記を途中までしか書けなかった。その点については詫びたいと思う。でもさ、あの騒動はありえないと思うんだよ。

 

いやー、だってさ適合試験がうんぬんとかアナウンスで聞いてたら真っ白な壁をシユウが突き破ってこんにちはしてきやがった。ん? 意味が分からないって? 俺も分かんない。

 

シユウってほら 硬い翼手を持つ人型のアラガミでさ ー、翼手を用いた武人のような肉弾戦を繰り広げるかと思えば掌エネルギーを集中させてかめはめ波を出してくる奴。

 

そんなアラガミが壁突き破って中に入ってきたら、普通の感覚持ってる人はビビってチビるよね。まあチビった俺は普通の感覚を持ってる人だから良かった。

 

ここで普通なら適合試験に失敗したときに備えて何かしらゴッドイーターが配置されてるとか思うわけよ。いつまで経っても……出て来ない。これはもうフェンリルが俺に死ねって言ってるような気がしてならない。

 

 なんか目の前でシユウ先生が手招きして掛かって来いやーアピールしてくるけど無理だろ。まだ適合試験すらしてないんだ、どうやって戦えと。上からアナウンスで神機を取って戦えとか言われた。あれはもしかして幻聴だったのかもしれない。

 

シユウが待ちきれないのか床を蹴った。それと同時に俺も涙と鼻水をまき散らしながら断頭台みたいな神機が置かれた台に手を置く。失敗したらどうなるとか、もう考えていられなかったのは仕方ないよね。目の前にシユウが翼広げて突っ込んでくるんだもん。つい反動で「ひ、ひいぃぃ!?」とか叫んじゃう。

 

神機の適合試験ってさ物凄く痛いみたいだよね。俺の場合は恐怖が勝ったらしくて痛みが何にもなかった。というより多分、シユウに思いっ切り吹っ飛ばされた痛みが強過ぎて感じなかったんだよな、たぶん。

 

適合試験の後は優しいチュートリアルがある展開じゃん? 俺、ないからね。ゲームでいえばOP見た後にもう目の前にシユウが手招きしてるパターンですよ。泣きながら立ち上がって神機に視線を移してみるとあら不思議。旧/近距離型――クレイモアじゃないですか。その艶やかな刀身を眺めてから俺は地面に涙を落としながら床を蹴った――。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 旧人類の最後の砦。旧日本自衛隊が対アラガミ戦用に模索して作られた前線基地。今はフェンリルが基地を改築して研究所として使っていたが、先日ヴァジュラ及びヴァジュラテイルの群れによって研究所を放棄する形で難を逃れた。

 

研究所には貴重な資料がまだ残されており、雨宮リンドウと橘サクヤはヴァジュラ討伐と資料の回収のために赴く。その土地は人が住むには適しておらず、毎日死者が出ているとの報告も受けていた。

 

だがそこにまだ年端もいかない幼い子供が発見され、さらにはヴァジュラテイルの群れを嘲笑うかのように廃材のみで群れを錯乱させたと聞く。

 

そこにペイラー・榊は目を付けた。劣悪な環境に対応する肉体、アラガミを恐れるどころか神を嘲笑うかのように闘うその心に胸を打たれ――血液検査を行なうように指示を出す。

 

それは神からの贈り物としかいえない。偏食因子への適正率は高かった。しかも彼は研究者でも解けないであろう偏食因子の難解資料を読み解き、流れる水のように書いたらしい。全て答えは合っていた。ゴッドイーターとしての肉体・成熟した頭脳はもはやペイラー・榊が惚れ込むものだった。

 

「な――ッ!? あれはシユウ堕天種!? ここは極東支部のど真ん中だぞ!!」

 

「榊博士!! 今すぐ別室に待機させているゴッドイーターの投入を!!」

 

「――落ち着きたまえ。彼は歓喜の涙を溢れさせているじゃないか」

 

 ペイラー・榊は慌てふためく研究者達を制した。そう、彼はシユウ堕天種を前に笑っていたのだ。これからアラガミを倒せるのだと、奇声を上げてその喜びを表現する姿にはペイラー・榊ですら畏怖するものを感じた。

 

あれこそが〝神を狩りし者(ゴッドイーター)〟の真の姿なのだと直感で分かってしまった。研究者達も目を大きく見開いて黙ってしまう。彼はまるで歴戦を闘い抜いたゴッドイーターのようにシユウ堕天種を圧倒していた。

 

迫り来る電撃を紙一重で躱してクレイモアで叩き斬る。その手数は圧倒的なものだ。シユウ堕天種の攻撃速度より彼の攻撃速度の方が凄まじい。その姿はアラガミという神に天罰を下す最高神のように見える。

 

「す、凄い……あ、あれは人なのか?」

 

「あれでまだ子供だと……末恐ろしい……」

 

「あれこそが、選ばれた者なんだよ」

 

 他の研究者達は恐れ多い様子で彼を見ている中、ペイラー・榊だけは笑って彼を見ていた。極東支部での彼のゴッドイーターとしての闘いは今、ここから始まる。ペイラー・榊は部屋の中に取り付けられたマイクを手に――。

 

「――おめでとう、キミは今日からゴッドイーターだ。名前を聞いてもいいかな?」

   

「……結城信(ユウキシン)

 

これから極東支部の神を狩りし者として語り継がれるであろうゴッドイーターの名を聞いた。それは先ほどまでアラガミを倒す荒ぶる姿ではなく、なんの変哲もない幼い子供にしか見えない。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 どうやらこれも試験の一種だったらしい。やっぱりそうだよね。だってさ、アラガミ出てきて俺が喰われたらもうお終いだし。そうだよね? ある意味で圧迫面接とかそういう類いのものだと解釈してみる。そうじゃなきゃ、あれしょっぱい水が目から流れて止まらないぞ。

 

シユウが怖すぎるのと偏食因子のせいなのか分からないけど、闘っている記憶があまりない。神機に脳味噌を支配されてるとかそんな馬鹿げた話はないと思うけど。シユウが電撃飛ばしてきたりしたのは不思議だった。かめはめ波じゃなかったっけ? 待てよ、アイツ本当にシユウか。思い出して見ればなんか色も違ったような気がする。

 

 まあチビってたのもどうやらバレていないみたいだったし、プライドとかは保てた。この身体でプライドとかないけどさ。あと、あの黒幕っぽいなんだっけ。腹黒っぽい眼鏡さんから名前聞かれたから素直に答えたら含み笑いされた。

 

これはアレか、もしかして狙われてるのかな。貞操の危機かもしれない。俺にはホモォとか興味ないから。あの時のこっちを見る変な目は忘れない。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 ×月□日

 

 

 今日から一週間の座学をやるらしい。ゴッドイーターとしての必要な知識やら装備の扱い方をミッチりと頭の中に叩き込まれる。もちろん、俺は医務室のベッドだ。シユウとの闘いで吹っ飛ばされたときに肋骨が折れていたらしい。全然気付かなかった自分も、もしかして人としての感覚が鈍りつつあるのかもしれない。

 

そんなことを考えていたら今日から自分の教官になったらしい雨宮ツバキさんが部屋の中に入ってくるなり早々に俺の顔面にビンタをしてきた。やっぱりあの時の適正試験のシユウの倒し方が悪かったに違いない。

 

怪我をしたらどうするとか、なぜ神機を手に持ったとか言われた。あれはやはり自分が怪我をしないように攻撃を避けながら素手でシユウをボコれという意味だったのか。

 

俺は考えが甘かったらしい。あの時は恐くて仕方が無かったとツバキさんに言うといきなり抱きしめられた。なんだこれは。彼女はどうやら飴と鞭の使い分けが上手いらしい。なんか香水の甘い匂いがする。

 

ツバキさんの温もりを堪能した後はやはり鞭でした。スタンドグレネードの使い方とかホールドトラップとか。実際に使うのには状況判断能力とか効かないアラガミがいるとか色々教わった。

 

俺としてはアラガミと闘いたくないし、喰われたくない。人間誰しも少しでも生き延びたいよね。

 

 

 

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