ソードアート・オンライン ─フィクショナル・テイル─ 作:三枝愛依
──謎の白い光に包まれ、気付いたらソードアート・オリジンの世界の中にいた。
僕は困惑と焦りが混じった心の中で、僅かな興奮も感じ、周囲を見渡すが、プレイヤーやNPCが多すぎて、自分の知っている人物たちがまるで見えない。
元は超人気のMMORPG。僕たちがやっていたゲームとは異なる、規模も遥かに大きい。
まだ現実として受け入れられない部分もあるが、それでも今はこの状況に適応し始めるしかない。
幸いにも、自分はLv300以上、フィールドに出現するNPCはLv80前後。
他プレイヤーともステータスでは圧倒的に格差がついている、まずは装備をチェックしよう。
僕は右の親指を自然と空に押し込む。
間違えた、コントローラーなんて存在しないんだ。
僕は気を取り直し、自身の2本の指で目の前の空を上から下へスワイプし、ウィンドウを開いた。
画面には自身のステータスが映る。
Lv300………ではなく、Lv1。
装備もお気に入りのアニールブレードではなく、初期装備のスモールソード。
困惑した、僕のステータスも装備も全部初期化されているのだ。
アイテム欄に結晶はない、武器欄に神器や青薔薇、金木犀もない。
ドロップ品なんてもってのほかだ、悪魔シリーズを集める苦労も知らないで………と怒りが募る。
しかし、大事なアイテムの欄にひとつだけ、セーブデータという名前のアイテムが入っていた。
タッチしてみると、白い光の玉が目の前に出現し、アイテム詳細には貴方の思い出と書いてある。
「……ん?あぁ、俺のデータがアイテム化したの?」
初期化されたのではなく、自身の全てのデータがこの玉になったらしい。
所詮はゲームだ、本来は存在しない仕様だが、それもまぁ困惑する理由にはならない。
だが、そうとなればこれは使うべきだろう。
周囲のLvは80前後、自分だけ1では話にならない。
非戦闘タイプのNPCや衛兵を見ても彼らはプレイヤーとは異なるので分からない。
そうなると、プレイヤーに訊ねるのが早いが……ファーストコンタクトは難しい。
てか、そうだ!フィールドに出てLv1で戦闘して、他のプレイヤーを見ればいいのだ。
彼らが格上すぎたら、玉を使えばいいし、Lv20やそこらなら使わなくてもいい。
初期に開放されるフィールドだが、新武器入手の試し斬りに赴くことはある。
そういう考えの猛者は、どの世界にもいるだろう。
僕は転移門広場の真ん中の転移門に立ち、初期に開放されるフィールドの名前を叫ぶ。
「転移!フォーニアス浸食丘陵!!」