ソードアート・オンライン ─フィクショナル・テイル─   作:三枝愛依

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ネームドモンスター

──悲鳴のある場所に駆けている最中、クエストエリアに突入したが、それは無視して赤宝箱のあるフィールドボスのもとまでやってきた。

 

やはり、自身が知っている灰色の巨大なイノシシ系のボスモンスター。

エクストラ ボア コマンダーだった。

 

奴はMMORPGに慣れていない初心者でも、レベル差をしっかりと埋めてしまえば大したことのない敵だ。

しかし、今そのボスモンスターと戦闘しているプレイヤー達は動きから見ても、イノシシ系のモンスターだと言うのに真正面から勝負を仕掛けている。

 

この世の中のどこに、正面からの突進が強いイノシシに対して正面から勝負を挑むバカがいるのだろうか。

そういえば、いたな……先程の私だ。

 

序盤のモンスターに苦戦しているパーティーに私は声を大にして呼びかける。

 

「助けが必要ですかーっ!!」

 

私のレベルは1だ。

だが、こいつの攻撃パターンは全て理解している上に、こいつを簡単に倒す方法も知っている。

もし、彼らが私を必要とするなら、その時はレベル制MMORPGにおける、レベルを知識で覆す方法とやらを伝授してやろう。

 

「た、助けてくれっ!このままじゃ、パーティーが全滅しちまう!!」

 

見たところ、三人パーティーのようだが既にふたりが地面に倒れて蘇生のインタラクトが見えている。

 

つまり、パーティーメンバーのふたりがHP全損によって味方の蘇生行動を待つダウン状態なわけだ。

 

「わかりました。じゃあ、私がヘイトを受け持つのでその間に仲間を蘇生してください。」

 

私は腰からスモールソードを引き抜き、目の前で先程のヴァンプボアとは比べ物にならない、髪の毛が後方へ靡くほどの鼻息を飛ばしてくるボスのボアと対峙する。

 

本来なら、ヘイト管理を可能とするスキルを使って簡単にヘイトを貰いたいのだが、現状の私はレベルが1。

まともなスキルや、ましてやエクストラスキルの解放さえできていない。

 

ここは正規のやり方でヘイトを受け持つしかないな。

このゲームのヘイトは単に与えたダメージ量、もしくはヒット数で変わる。

 

幸いと言っていいのか、不運と言っていいのか、ボスモンスターの削れ具合から見て、まだ彼らは大したダメージを与えていない。

 

ならば、ここは自分が通常攻撃でヒット数を稼ぎまくれば、容易にヘイトが向くだろう。

 

ふんすふんすと片足で地面を抉り、突進の構えをとるボアに対して私は通常攻撃をひたすらに繰り出す。

 

まだヘイトの先は彼らにあり、このままでは彼らに向かって突進を繰り出すことになる。

そうなれば、今の彼らのパーティーは一気に壊滅し、もれなくDEADだ。

まぁこのゲームはプレイヤーが死んでも問題ないのだが………。

 

通常攻撃を振り続け、最終段を終えるとゲーム本来ならばソードスキルに繋がるのだが、自身が剣を振るう分にはその発生が起きない。

これは便利だ、通常攻撃はどのみちいずれ使わなくなるが、それでも序盤はSPが少ないのもあって利用価値がある。

その通常攻撃の連撃を止めてしまうきっかけとなるソードスキルの発生が起きないのは、実質的なソードスキルという硬直、隙を晒すきっかけ作りを無くせる。

 

通常攻撃をひたすらに与え続け、やがてボアのヘイトは私に向き、その途端に私はパーティーメンバーから真反対の方角へサイドステップ。

 

ボスは私を強く睨み、ふんすふんすと鼻息をたて、一瞬の閃光の後、凄まじい猛攻が繰り出される。

 

猪突猛進、その権化たる突進技を前に私は素早くサイドステップを繰り出し、ジャスト回避を成功させ、その流れのまま剣を上から下へ振り下ろしてソードスキル・スラントを発動。

SSCができない、できても数が少ない現状では大したダメージリソースにならないが、それでも確かに少しずつダメージは入る。

自身の右側にはコンボ数が表示されており、それと同時に下側に倍率が表示されている。

ゲームなら、モンスターの身体の部分に表示されている機能だ。

 

このゲームは同じ相手に一定の時間内連続で攻撃を当て続けると、その間は段階的に倍率が上昇し続け、その補正が乗ったダメージを与えることができる。

最大値は二倍、ダウン時などには四倍まで跳ね上がったはずだ。

 

これは今のバフスキルを持たない自分にとっては最大にして唯一のバフともいえる。

しかし、このシステム……コンボレシオと呼ばれるこの倍率上昇のシステムは常にコンボを稼ぎ続けなければならない。

 

疲れて中断しても、自身が相手の攻撃で回避しても、何かしらの要因でコンボが途切れた場合、その時点からやり直しになる。

 

現在、倍率は二倍。是非ともこのコンボは止めたくない。

崩壊しかけていたパーティーが立て直し、ヘイトを買っていた私の後ろにぞろぞろと並び始める。

 

「立て直せたっ!俺達も加わるよっ!!」

 

よし、これなら勝利は確実と言っていいだろう。

 

「それじゃあ、タンクはボスモンスターの正面からパリィやジャストガード、ヘイトがアタッカーに向いたら挑発を!アタッカーはボアの側面から攻撃してください。

こいつの攻撃パターンは前と後ろ、そして稀に円状の範囲技です。

範囲技の時だけ、回避してそれ以外はひたすらに横から攻める!以上!!」

 

「了解ッ!」「任せろッ!!」「皆さん、ヒールは私がします!任せてください!!」

 

一気に士気が高まったパーティメンバーはすぐに指示通り、動いてくれた。

そのままボスとの戦闘が本格的に始まり、タンクがひたすらにジャストガードやパリィでボアの正面攻撃を弾き、ヒーラーが傷ついたタンクを癒し、アタッカーが側面からコンボレシオの性質を利用してどんどん火力を叩き込む。

 

そうこうやっている内にボスモンスターのHPゲージは残り1ゲージの半分まで削れていた。

 

「残り半分!ラスト、一気に畳み掛けるぞッ!!」

 

アタッカーの指示でタンクは更に挑発をかけ、ヘイトを受け持ち、ヒーラーは後ろからパーティーで共有可能なサークルタイプのバフスキルを展開する。

 

「よっしゃあ!いっけぇえええ!!」

 

渾身の一撃、倍率二倍の単発ソードスキル・スラントを残り僅かなHPのボスに向けて私は繰り出した。

 

その一撃は決して大きなダメージにはならなかった。

 

しかし、その一撃をもってボスモンスターの動きは停止し、やがてその巨体は多くの粒子の破片となって散り砕かれた。

 

レベルアップの壮大なBGMと共に上昇の通知が目の前に流れてくる。

 

【Lv1▶︎Lv6】

 

ボスモンスター倒したら、こんなに上がるっけ?

結構このゲームのレベル上げって苦労した記憶あるんだけど………とすこし違和感を覚えながらも、パーティーの三人は喜びを分かち合うようにハイタッチを交わしていた。

 

さて、ここからが問題だ。

赤宝箱の報酬は一人しか貰えない、助けたはいいが、この報酬は誰が貰うのか……正直、めちゃくちゃ欲しい。

 

玉の使用を自ら禁じている今、この武器の価値は自分の中ではかなり高い。

なんなら、このゲームの本編クリアまで使える程にこの武器は優秀だ。

 

「さて……宝箱報酬、どうしましょうか?」

「あぁ、それはあんたが持って行ってくれよ。俺達はあんたに助けられたんだ、報酬を貰うほどがめつくはない。」

「本当ですかッ!!やったー!!」

 

パーティーリーダーのアタッカーから許しを得た途端、私は喜びのあまり跳ね上がり、そのまま宝箱へと駆け出す。

 

「あぁ、でも中身教えてくれないか?気になるんだ。」

「ええ、もちろん。」

 

私は宝箱の中を開き、自身の視界の上に入手した武器の通知が流れてくる。

 

ウィンドウを開き、武器スロットに新たな片手直剣。

ヴォルカンブレードを装備する、見た目は大して派手なものでもないが、その性能は破格だ。

 

先程はゲーム本編クリアまで使えると言ったが、勿論これより強い剣は

無数にある。しかし、これで妥協しても全然問題ないという意味だ。

それ程にこの剣の性能はスタート時点では破格、同じフィールドの後半に出てくるエリアの赤宝箱報酬のソードオブホライズンと比べても、アタッカーとして扱うならこっちの方が部がある。

 

この片手剣の攻撃力は59、スモールソードが22。

そしてこの片手剣はSTRを最大16、DEXも同じく最大16まで上げてくれる。

加えて特殊効果で攻撃力+5%上昇。

 

もちろん、これらはこの剣入手時の初期値における最大値だ。

運良く、16-16の特殊効果付きだなんてそんな豪運あるわけが………。

 

性能詳細を開く、攻撃力59、STR/DEX共に+16、攻撃力+5%上昇。

どうやら、一発でこの剣の初期値の完成系を引いてしまったようだ。

 

これは本気で最後まで相棒になれるかもしれない。




皆さん、ヴォルカンブレードにはお世話になりましたよね?
俺、マジでコイツがないとSAOHRは始まんねぇと思ってます。

何度もデータ消えて、何度もやり直したけど、その度に最初にこいつを取りに行ってました。
途中のアプデで一気に80Lvまであげる仕様きましたけど、あれの後からもう…とにかくヴォルカンブレードは俺たちの救世主。

神様なんです、そういう存在でした。キリトくんでいうアニールブレードだと思います、こいつは。
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