なんかえっぐい角度のバニーにTS転生したけどこれ主人公の性癖大丈夫? 作:フォイオ
「ぐすっ。お家に帰りたいよお」
俺は目の前で泣いてる子供の頭を撫でてあやす。少年の瞳には涙が溜まり、今にでも泣きそうにうるうるとしていた。
『ほら、泣かないで遊作くん。お姉ちゃんがぎゅーってしてあげるから』
「うぅー。お姉ちゃんー!」
俺は自身の胸に飛び込む少年を抱きしめる。幸い今の俺の姿は少年以外誰にも見えていないし聞こえていない。この真っ白な空間には俺と少年の2人だけだった。
「あの子供とうとう精神がやられて幻覚が見え始めたな。計画は失敗かもしれん」
「データだけは取っておけ。鴻上博士の指示だ」
チッ、相変わらずここの研究所の奴らはクソみたいな奴ばかりだな。
「お姉ちゃんの力でここから出れないの?」
『ごめんね。私が干渉できるのは私のことが見える君だけなんだ。今すぐにでも助けを呼びたいんだけど無理みたい……』
「うぅ。お父さん、お母さん……」
少年が再び悲しげな表情を見せる。俺はそれを見て胸がキュッとなる感覚に陥る。俺は少年を抱き寄せ自身の胸の鼓動を聞かせる。
『大丈夫。私がそばにいるから。ずっとあなたのそばに』
「お姉ちゃん……」
少年は安堵したのか寝てしまった。俺は少年をゆっくり硬い地面に寝かせる。白い壁に囲まれたこの部屋は食事を運んでくる時以外は決して開かない。
俺は改めて状況を再確認する。まず、俺は元々人間の男だったが現在は胸が膨らみ、腰がキュッと閉まり出るとこは出た美少女へとTS転生していた。
『しかも、これどう見ても遊戯王のM∀LICE<P>White Rabbitだよな俺……』
俺の姿は遊戯王デュエルモンスターズのM∀LICE<P>White Rabbitへと変わっていた。いや、なんで!?そして俺が転生したのは時期は遊戯王VRAINSのロスト事件が起きた直後だった。気づいたら藤木遊作少年が監禁されている部屋におり、目の前で遊作がデュエルに敗北し電気ショックを浴びせられていた。ショタの叫び声は心に響くんじゃあ〜。
俺は目覚めた際にパニックになり、気絶している遊作に何度も呼びかけた。遊作少年は痛む体を押して立ち上がり俺の声に反応し、遂にコミュニケーションを取ることができた。
そこからはもう大変だった。遊作も苦しかったのだろう。ひとりぼっちで負ければ罰を与えられるデュエルを延々に繰り返し行い、食事も質素なものしか与えられない。
遊作は涙を流し嗚咽を堪えながら俺に状況を話してくれた。ぐずる彼を俺は宥めて背中をさすった。
「ぐすっ。お姉さんはどこから来たの?」
『おれ……私にもわからないかな。私が触れるのは君だけみたいだし。君から一定以上の距離離れると強制的に君の元に戻されるみたい。だから、これからは君のそばにいるよ』
「お姉ちゃん。ぼくお家に帰りたいよ」
『よしよし。いつかきっと誰かが気づいて助けに来てくれるよ。それまで私と一緒にがんばろう?』
「うん。わかった。お姉ちゃんと一緒なら僕大丈夫」
俺は涙を堪え懸命にデュエルに挑む遊作少年に心を打たれた。まだ年端もいかない少年がなんと健気なことか。俺は彼を絶対に救ってみせると誓った。そのためにはまず、リボルバーが警察にこの施設のことを通報するまで彼の心を守らなければならない。俺は前世、しがないデュエリストだった経験を生かし、彼にデュエルの最適解を教え続けた。
『遊作君、ここで攻撃の無力化を発動して!』
「うん!攻撃の無力化を発動!」
『続いて私たちのターン!ドロー!』
「ドロー!」
俺たちは2人で1人のデュエリストとなりあらゆるデュエルを勝ち続けた。どんなに苦しい状況でも決して諦めずどんどん難易度が上がるデュエルを攻略した。
「やった!勝った!」
『遊作君、すごい!よくがんばったね!』
「ありがとう!お姉ちゃんのおかげだよ!」
『うっ!?かわいい!』
遊作が絶望の状況の中で見せる笑顔はとても微笑ましいものだった。一瞬、キュンとしかけたが俺は決してショタコンではない。大体、俺は元男だ。体が女に変わったからと言って性的嗜好までは変わってない……はずだ。しかし、お姉ちゃんと呼ばれるとどうも胸がこそばゆくなる。なんなんだ、この感情は?
「おい、食事だ」
「あっ、待って!」
扉が開きパンが一欠片入ったトレーが投げられる。パンは地面を転がり部屋の隅で止まった。
「……いただきます」
遊作少年はパンを拾い上げもそもそと食べ始める。俺が転生してあれから何日が経ったのだろう。最初はスープが付いていた食事も今はだいぶ少なくなった。成長期の子供にとっては辛いだろう。
「お姉ちゃん、寒いよ」
『遊作君……』
彼に触れるだけで何もできない。無力感を痛感する日々に俺は苛立ちを覚えていた。何をしているリボルバー。早くこの施設のことを通報しろよ。遊作はもうこんなにボロボロで痩せ細っててなんとも思わねえのかよ!
『私に力があったら!くそ!』
「お姉ちゃん、僕死ぬのかな?」
『君は死なないよ!絶対に!私が死なせない!』
遊作が栄養失調で高熱に浮かされたまま強制デュエルが始まった。当然、そんな状態でデュエルなど出来やしない。遊作は高熱のまま電気ショックを受けて気絶する。
『やめろぉおおおおおおお!遊作にこれ以上非道なことをするなぁあああああ!!』
俺の声は誰にも届かない。俺の思いは何も動かせない。死んだように眠る遊作を泣きながら膝枕し、少しでもあったかくなるようにこの施設の研究員から渡されたボロ切れで包み込む。
『死なないで。お願いお願い。生きて遊作』
やがてその日がやってきた。
「開けろ!警察だ!」
「くそ!誰がバラしやがった?!」
「すごい熱だ!至急救急車の手配を!」
突然、真っ白な部屋の扉が開き中に警察が入ってきた。遊作は大人に保護され連れて行かれる。俺もふわふわと浮かびながら救急車へと乗っていった。恐らくリボルバーが通報したのだろう。長かったがようやく地獄が終わった。いや、遊作の地獄はここからだ。
『遊作はロスト事件の影響でPTSDを引き起こす。私が彼の精神的支柱になって支えよう』
俺はそう強く決心し遊作のメンタルケアに努めた。どんな時も遊作のそばを離れず、決して目を離さない。365日24時間1秒たりとも遊作を監視した。
「うわぁああ!」
『遊作!』
「お姉ちゃん!お姉ちゃん!」
遊作は悪夢に脅かされて夜は叫んでよく起きる。俺は彼をぎゅーっと抱きしめて胸に引き寄せる。こういう時女に生まれ変わってよかったと心の底から感謝した。
「遊作くーん、ほら笑ってー?」
「あはは……」
『遊作……』
やがて遊作は小学校に復帰し学生生活を始めた。しかし、彼はロスト事件のトラウマから心の底から笑うことができず人と溝ができてしまった。許せない。彼の人生をめちゃくちゃにした奴らが。奴らを全員地獄に叩き落としたい。
「僕を、僕をこんなふうにした奴らがゆるせない!」
『ゆーくん……なら、いい方法があるよ』
「お姉ちゃん?」
『ロスト事件に関わった奴らを見つけ出して復讐するんだ』
「ふくしゅう……復讐。わかったよ、僕は……俺は奴らに復讐する!」
俺は遊作に、ゆーくんに復讐の道を教えてしまった。後戻りは出来ない。俺はゆーくんにM∀LICEのデッキを渡した。ゆーくんはその後独学でハッキングスキルを学び、LINK VRAINSに蔓延るハノイたちを狩った。
「おまえ!何者だ!?」
「俺の名はPlaymaker!貴様らを地獄に落とす復讐者だ!」
『ゆーくん、行くよ!』
ゆーくんを復讐の道に導いてしまった俺はきっとまともな人間には戻れないだろう。だが、俺はゆーくんの失われてしまった人生を取り戻すために彼と戦う。その先に何が待ち受けていたとしても。