自殺をしようとしていた少年の、報われない物語 作:asbgao
この話だけ読んだらただのハッピーエンドで終了。
次の話まで読んだら…… ご想像にお任せします。
5月13日
今日は俺の誕生日だ
産まれたのが午前7時35分、あと30分だ
普通日記は一日の終わりに書く物なのだろうが、今日は普通の日じゃ無いからご愛敬を
今日、俺は自殺します
午後7時35分、俺の産まれた病院から飛び降ります
思い残した事、言い残した事はありません
書いて思ったけど、まるで遺書だな
最後に、もしこれを読んだ人がいて、愚かな俺を助けてくれる人がいたら言ってください
「お前は人生を全うしたのか?」と
では、いってきます
_____
自宅
パタンッ
「よし、行ってくるか」
日記を書き終えた俺は部屋を出て、母さんの部屋に入った。
「母さん、行ってくるよ。夜になったら会おうね」
俺もそっちに行くからね……
学校
最期に一回、校内を意味も無く徘徊しようと学校に来た。
今日は日曜日で休みだが部活の生徒がチラチラと見える。
いつもはなんとも思わない、と言うか見る事が無いが、今の俺には眩しく見える。
「最期に街でも一望するかぁ……」
気が付いたらそう呟いき、階段へと向かっていた。
屋上
「……これって開くのか?」
そこには"生徒立ち入り禁止"と書かれた紙が貼られていた。
「漫画とかでよくあった屋上での青春は無かったのかぁ~」なんて思いながらドアノブに手を掛けたら、普通に開いた。
「書いてる意味……」
扉を開くと、殺風景な屋上があった。思いの外綺麗にされていた。
「柵…… 高いなぁ……」
でも返しがあるし、そこに乗って観ればいいかな。
カシャンッ
柵に手を掛ける。
見たところ錆とかは無かったから壊れる事は無いだろう。
ガチャ
「……っえ?」
扉の開く音と間の抜けた声が聞こえたので振り向いたら、そこには金髪の少女がいた。
「……どうも」
俺は気にせず柵を登る。
「ええぇぇ!!? ちょ、ちょっと待って!!」
「……なに?」
少女が呼び止めてきたので、柵を降りて少女の方へと歩いた。
その少女は小柄で髪と同じ色の瞳が目立つあどけない顔立ちの美少女だった。
170の俺が見下ろすので140程だろう。
「なにじゃないですよ! なんで柵を登ってたんですか!」
その少女は顔を赤くして怒ってきた。
「……俺はここの2年の赤城榛斗(アカギハルト)。そっちは?」
「え? ……1年の三島美和(ミシマミワ)…… って私が聞いたのは登ってた理由! 名前じゃない!」
そう答えた三島美和は百面相。表情筋キツそう、
「あぁ、街を見渡そうと思ってな」
「街を見渡す…… 落ちちゃったらどうするんですか!!」
「その時は死期が早まっただけだし。別に大丈夫だよ」
俺がそう答えると、三島は一瞬怒ったような顔をして、すぐに眉を寄せた。
「死期が早まった?」
「実は今日、自殺するんだ……」
「……ッ!」
バシンッ!
俺がそう言うと、三島は俺の頬にビンタをしてきた。
前を向くと、三島は俯きながら肩を震わせていた。
「……軽々しくそんな事言わないでよ…… 私はまだ! あなたの事を全然知らないけど! そんな事言ったら…… 悲しむ人がいるんだよ!?」
「……例えば誰?」
「お母さんだったり! お父さんだったり! 友達だったり! 身近な人が皆悲しむよ!」
「……残念だけど、それに該当する人、俺にはいないよ」
「…………っぇ?」
三島は顔を上げた。
目には涙が溜まっており、今にも溢れ出しそうだった。
「……つまらないけど、聞いてくれるかな?」
俺は話した。
父は離婚し、母さんはこの春に事故で死んだ。その後は気力が湧かず、友達も一人もできなかった。ネットニュースで見た、自殺者が増えているという記事を見て自殺をしようとした事。
「……そう、だったんですか……」
「ああいや、そんなに暗くならなくてもいいよ。どうせ過ぎた話だし」
「……過去の事だって割り切った人の顔じゃないですって……」
「……」
たしかにそうかもしれない。
事実、母さんが生きていたらあんなニュース、気にもしなかっただろう。
「それに…… 天国にいるお母さんも…… 榛斗先輩が自殺なんてしたら、悔やみ切れませんよ……」
「……そうかもな。…………"榛斗"先輩?」
「え? あっ、駄目でしたか?」
「いや、気にするな。じゃあ俺も美和って呼ぶから」
「あっ、呼び捨てはちょっと……」
「注文の多い奴だな…… じゃあ美和ちゃん」
「……は、はい///」
なぜ照れた?
「……榛斗先輩、絶対に、心の底から生きたいって思わせてやりますから、覚悟しておいてください!」
「……じゃあまず第一の難題」
「ッ! なんですか!」
美和ちゃんは覚悟を決めたようだ。
「……来週から俺、帰るとこが無い」
「…………ふぇ?」
これからの生活…… 大変そうだなぁ……
自宅
「明日、ちゃんと学校行くんだよ?」
「……へいへい」
なぜか美和に家まで送られた俺は、適当に返事を返した。
今は19時25分。
学校帰り、なぜか美和にファミレスに連れて行かれ、愚痴を聞かされていたらこんな時間になってしまった。
「また明日ねー、バイバーイ!」
「また明日なー」
俺は美和の背中を見送ってから家の扉を開いた。
「ただいまー……」
俺が言っても返事が返ってこない。
これ自体は慣れていたが、最近は温かさも無い。
今日は人と話していた事もあってそのギャップでいつも以上に一人を痛感した。
「……風呂入って寝るか」
「うーん、……はっ!?」
……家、自室、自分のベッド。
俺は息を荒くして肩を上下させながら起きた。
「……っふぅー」
なんだか悪夢を見たような気がした。
内容は思い出せない。
「はぁ、……準備するか」
教室
なんだか廊下側が騒がしい気がする。
だけど興味は無い。どうせ自分とは無関係な事なのだから。
そう考えていたけど……
「榛斗せーんぱーい!」
昨日も聞いた声と呼び方が聞こえ、全てを理解した。
「……おいちょっと来い」
俺は教室を出て美和の腕を掴んでその場から逃げるように歩いた。
屋上前
「お前なぁ…… なんでクラス知ってんだよ……」
俺が教えたのは学年と名前だけだ。
「えっと…… 葉奈ちゃんに教えてもらって……」
「……誰だよ葉奈って」
「友達」
「……はぁ」
いや、ソースなんてどうでもいい
「なんの要件だ?」
そう聞くと、美和は「え?」という顔になった。
「お前…… まさか意味も無く……?」
「いや! 先輩がちゃんと来てるかを確認しに来たんじゃん!」
「じゃんって言われてもねぇ……」
まあ理由があったならいいか。
「それよりどうしてくれるんだよ…… 教室帰ったら俺、絶対袋叩きじゃねえか……」
「? なんで?」
こいつまじか……
「いや、お前って一応美人じゃん、それが俺みたいな死んだような目の奴の事を名前呼びしてるんだぞ? しかも突然に」
途中「一応って失礼な!」って聞こえたが、否定はしないんだな。
その時、ホームルーム前の予鈴が鳴った。
「って時間やばいな」
「そうだね。そろそろ戻った方がいいかもね」
階段を降りていると、美和が言ってきた。
「ごめんね。私があそこでこなかったらこうはならなかったのに……」
あそこで、多分さっきの事だろう。
「まあどうせ興味ない奴らだし、嫌われてもどうでもいいよ」
「先輩って、本当にドライだね」
自宅
今日は一日中視線が刺さっていた。
授業中はチラチラと見られる程度だったが、休憩時間が殺意が混ざった視線だった。
今は明後日に備えて荷造りをしている。
「この家ともあと二日かぁ〜……」
そう呟いていると、ポケットに入れているスマホが振動した。
画面に表示されいてる名前を見ると、そこには三島美和と書かれていた。
「はい?」
『あ、榛斗先輩であってる?』
「そうだけど。……要件は?」
『要件がなかったら掛けちゃ駄目みたいに…… こんなに可愛い後輩からの電話だよ? もっと喜んだりしてもいいと思うよ?』
可愛い後輩って…… まあ事実だけどさ? 普通自分で言うか?
「生憎と、今は荷造り中なのでね。邪魔されたとしか思えないんだよ」
『え!? もしかして先輩……』
「ああいや、ただ立ち退きを命じられただけだから。この前お前に自殺決行を邪魔されたからな」
すると美和は電話越しに『ほっ』と安堵の息を漏らした。
「でもなぁ…… 当てが無いから野宿確定なんだよな……」
俺がそう溢すと美和はこう提案してきた。
『じゃあ! うちに住めばいいと思うよ!』
「……親御さんになんて言う気だよ。絶対めんどくさくなるじゃん」
『大丈夫だよ。私一人暮らしだし』
「それはそれで問題だろ」
『えぇ〜? 先輩ったら何考えてるのぉ〜? やらしぃ〜』
「まだ何も言ってないだろ」
でも、事実それくらいしか当てが無いし……
「……頼んでも、いいか?」
『いいに決まってるじゃん! 私から言い出したんだし!』
スマホの奥から小さく『よっしゃっ!』と聞こえた。なぜに?
『じゃあ明日案内するから放課後空けて…… って先輩、用事ある訳無いか』
「……最後のがなかったらよかったのにな。あと俺じゃないかったら結構傷付くぞ?」
『細かいことはいいの♪ じゃあねぇー』
切られてしまった……
まあ、どうであれ、
「まだ生きれるのか……」
その事実に喜んでいる俺がいる。
通学路
「それでさぁ? 葉奈ちゃんが美和も彼氏作りなよとか自慢してきたんだよ?」
「……」
校門を出てすぐ、俺は美和にそんな愚痴を聞かされていた。
「……さっきから黙ってるけど、何か返事返してくれる?」
「いや、俺からしたら教室凸されてそのまま私青春謳歌してますアピにしか聞こえないことを聞かされているんだぞ? 恋人以前に友達すらいない青春弱者の俺が何か返せる訳無いだろ」
「それもそっか」
「お前なぁ……」
「あっ、ここ右ね」
そう言って急に右へ曲がった。
「だいたいどれくらいなんだ? 20分くらい?」
「うーん、50分くらい?」
「遠いわっ!」
「冗談だよ。流石にバス乗るから」
「……はぁ」
こいつと話してると気力ごとごっそり持ってかれるわ、
「……ちょっとあそこで飲み物買って来ていいか?」
俺は路地に設置されている自動販売機を指で差して聞いた。
「ん? いいよー」
俺は自動販売機にお金を入れながら溢した。
「はぁ…… めんどうな事になりそうだな……」
三島美和宅
「ここだよー」
美和が止まったので、指している方を向くとそこには小綺麗なアパートがあった。
「……思ったより普通だな」
「逆に何を想像してたのさ!」
「一戸建て」
「アニメか富豪じゃないんだし」
富豪て、
まあ確かにごく普通の家に生まれたのなら娘の一人暮らしに千万とか出せる訳ないか。
「お邪魔します……」
「邪魔するなら帰ってー」
「往復で千円かかるのに何もせずに帰れるかぁや」
「それもそっか」
美和の家に入ると、まず目に入ったのはゴミの数々だった。
「……お前……」
「あ、あはは、……これでも片付いてる方だよ?」
「……まじか」
まさかこれを片付けさせようとこさせた訳じゃないだろうな?
「だから…… 片付け手伝って?」
「まじかお前」
予感的中
「いいけど、タダ働きはなぁ」
俺がわざとらしく言うと、美和は顔を赤らめながら言った。
「……か、体で払います……」
「女の子がそんな事言うもんじゃありません! ……バス代出してくれたらいいから」
俺がそう言うと美和は少し残念がったようにした。
「なんで残念がるんだよ。あれか? 彼氏マウント取られたからマウント返ししてやろうってのか?」
「そんなんじゃないよ…… ばか……」
なぜ?
「……終わらんな」
「……うん」
20時36分。俺たちはまだまだあ綺麗にならない部屋に疲れを表した。
「……そろそろ帰ってもいいか?」
「やだ……」
「子どもかっ」
「子どもだもん」
子どもだったか。
「明日は荷物こっちに持ってくるしその時また掃除すればいいだろ?」
「……やだぁ」
うわ、こいつ、ついに泣き落としを……!
「はぁ、わかったよ。その代わり今日こっちに泊まるからな」
「……うん」
なんかさっきからちょっと弱々しいな? 目も閉じかけてるし……
「なあ、眠かったら寝てもいいんだぞ?」
「……やだぁー」
こいつ…… 絶対睡魔でこうなってるな?
「はぁ、いいからこっちこい」
俺は美和を横抱きし、この部屋の中で唯一最初から綺麗だった所、ベッドへ降ろし、離れ……
「うーん…… 榛斗もぉ〜」
「うわっ!?」
離れようとしたら、急に首に抱き付かれ引き寄せられた。
そこまでは別にいい。問題は場所だ。
首を抱き寄せてきたから顔がちょうど胸の辺りに行った。
幸い、美和がひんにゅ…… 慎まし…… シンデレラバスt…… 貧乳だったおかげで、当たる事はなかったものの、体勢が悪い。
俺は美和の腕と近くに落ちていた枕を掴み、抜けると同時に枕を抱かせた。
最初は「むぅ〜」と唸っていたが、しばらくしたら寝息を立て出した。
「……やっぱこいつ可愛いな」
口先だけは立派だけど……
時計を見ると20時45分だった。
「まだ寝る時間でもないからなぁ……」
もう少しだけ片付けるか。
なんやかんやで一睡もせずに片付けをしていたら4時53分頃、床にあったゴミは無くなり、綺麗なフローリングが見えていた。
掃除機をかけたら美和を起こすかもしれないし、なんならこの家に掃除機は無かったから雑巾で床は綺麗にした。
「いやほんと、見違えたな……」
この部屋に入った時の何倍か広く見える。
「うーん……」
達成感に浸っていたら、美和が起きた。
「おはよう」
「うーん? うん……」
俺は昨日のうちに買っておいたペットボトルのお茶を美和に渡した。
お茶を少し飲んだ美和は目が覚めたのか、目が開き、それに遅れて顔を赤くした。
「え…… なんで榛斗先輩が……」
「お前が昨日駄々をこねたからだろ」
「え、知らない……」
しばらくすると、美和は枕に顔を埋めて悶え出した。
「……やだ、もう死にたい……」
「この前そういう事軽々言うなって言ったの誰や」
「……私です……」
そう言ってしばらく黙り込んだ。
5分くらい経って、美和が急に飛び起きた。
「手出したりして……」
「ねえよ」
「……そっか……」
「だからなんで下がるんだよ」
抑えた。
昼間だったら叫んでいただろう。
「……外出とくから着替えとけ」
「あっ、……うん」
俺は部屋から出た。
5月とはいえ、まだ冷える。
空を見るとうっすらとオレンジがかっていた。
たまに聞こえる鳥の囀り。遠くから聞こえる車の排気音。風に揺られて鳴る木の音。
「この風景もあの日に死んでたら見れなかったのか……」
少しだけ、目頭が熱くなった。
「着替え終わったよ。……ってなんで泣いてるの!?」
美和が出てきた。
「え? あ、いや、まあ、うん。生を実感してた」
「? よくわかんないや」
「まあ部屋戻るか」
自宅
「じゃあ行くか」
「そうだね♪」
俺は自宅に戻り風呂と着替えを済ました。
現在7時24分、いつもならもう少し遅く出るが、美和と一緒に登校している所をクラスメイトに見られたくないので早く出ることにした。
「なぜ美和がいるんだ?」とは思うが、美和が「せっかくだし一緒に行こうよ」と申し出てきたのでなぜかついてきている。
「はぁ……」
「ん? どうしたの?」
「いやさ、これ学校の奴に見つかったら面倒だろうな〜って。言い訳探してた」
特に男。
「その時は付き合ってます〜って言えばいいじゃん」
美和は蠱惑的な笑顔を浮かべながら言ってきた。
俺は「その方が面倒だって……」と呟いてから歩き出した。
教室
「おい赤城。お前、一体どう言うことだよあれ!」
ほらみろ絡まれた。
「あれ、とはなんのことでしょう?」
「惚けるな! 三島さんのことだよ!」
「なんで一緒に登校してたんだよ!」
「いつも誰とも話さないから放っておいたけど、いきなりどうしたんだよ!」
「イケメンでスタイルがいいからって調子に乗るな!」
その後もブーイングが止まらない。俺はフツメンだろ。イケメンってなんだよ、
「……逆にさ、そんなに言うんだったら自分からアピールすれば?」
彼女も美少女でスタイルがいい。モテるのは頷ける。
「いや、拒絶されたら立ち直れないし……」
「三島さんに話しかけるのはちょっと……」
「周りの男どもに目の仇にされそう……」
「……俺はもう振られたし……」
「じゃあ俺に文句言うなや」
最後の奴どんまい。
「ほらほら、行った行った」
俺がそう言うと男は離れていった。
「ねえ赤城くん、二人ってどういう関係なの?」
それと入れ替わりに、俺の前にこのクラスのカースト上位に位置する橘がきた。
周りにいる女子も興味深そうにこちらを見てくる。ついでに男の殺気も強まった。
「どう言う…… とは?」
「そのまんまだよ。友達ーとか付き合ってるーとか」
「……あれ? 俺たちってどう言う関係なんだろう……」
「え?」
そうだよ。俺たちの関係ってなんて言い表せばいいんだよ。
付き合ってはないし、多分友達とも違う。
「……えっと、馴れ初めとかは?」
多分馬鹿正直に言ったら問題になりそうだな。
「……この前景色眺めてたらたまたま会った」
「それだけ?」
「多分」
「多分?」と聞き返されたが、実際そうだろう。嘘は言っていない。
「じゃあ付き合っては無いんだね?」
「まあ。俺からもあいつからもラブは無いと思うぞ」
そう言うと、橘は満足したかのように離れていった。周りの女子も安堵したような様子を見せた。
美和宅
「……なんで拗ねてるんだ?」
「……拗ねてないし」
食事と風呂を済ませた俺は拗ねている美和に困惑していた。
「……いや、拗ねてるだろ」
「拗ねてないし」
「……そうか」
これ以上問い詰めたら追い出されそうだしやめておこう。
「ていうか! なんで部屋片付いてるの!? 昨日まではあんなに汚かったのに!」
汚かった自覚はあるんだな
「お前が寝てから一人で片付けてたんだよ」
「え、そうだったの!? ……あ、ありがと……」
ツンデレみたいな言い方だな。
「て言うか俺ってどこで寝ればいい?」
「あ、ベッド使っていいよ。私床で寝るから」
「いやいや、女子を床で寝かすって鬼か俺は。俺は丈夫だから床で寝るから」
「お客さんを床で寝かせれないって。……あ! 一緒にベッド使う?」
美和はニヤニヤしながあら提案してきた。完全にペース掴まれたか?
だが、そこで引く俺じゃない。
「……確かにそれで解決だな」
「え!? い、いや、それはちょっと……」
美和が恥ずかしそうにした。よし、ペース奪えそう。
「あれぇ? 自分から提案してきたんでしょぉ? ヘタレなのかなぁ? 美和は」
「呼び捨てするなし! もういいよ! 一緒に寝るよ!」
折れた。勝った! 第三部、完!
って呼び捨てはちゃんとキャッチできるんだな。
「っておい引っ張るなって!」
「いいから!」
俺はベッドに引き摺り込まれた。
近い、柔らかい、温かい、
近いのはベッドが狭いから。
柔らかいのはベッド。のはず……
温かいのは、いつも一人で寝ていたから。
ドキドキしているのは、突然の状況だし仮にも美少女が添い寝しているから。そうに違いない。
「も、もう少し寄ってよ。落ちちゃうでしょ」
「あ、当たるかもしれないだろ」
「ナニが当たるの?」
「なっ! お、おま、わかって言ってるだろ!」
「え、えへへ」
え、なにこわ、
「……寄るから、当たっても文句言うなよ」
「……でて」
「え?」
「…………頭、撫でて」
「……」
俺は美和をそっと抱き寄て頭を撫でた。
撫でていると、美和が時々「っふぅ〜」と息を漏らす。
「……あったかい」
「……」
こいつも、美和も寂しかったのだろう。
高校生とは言え、まだ美和も子どもだ。まだまだ誰かに甘えたい女の子なのだ。
「美和ちゃん……」
「ぅん〜?」
「……これまでよく頑張ったな」
「……ぅ〜ん」
美和はそう言って寝息を立て始めた。
「……おやすみ」
本屋
美和の家に居候してからはや1週間、俺はバイトを再開させた。
「この前はすみませんでした」
「いいのいいの。色々あったしね……」
店長はいい人だ。
ただでさえ従業員が少ないのに、俺がかなりの間バイトを抜けていたことに対して責めてこない。
「……それより、家の方はどうにかなったのか?」
「あー、それなんですけどね?」
「……それまたすごいことになったね」
「ですよね」
「……間違いとかは起こっていないよね?」
「無論。俺がそんなことするとでも?」
「自殺を計画してたくらいだし、ありえないとはねぇ」
「それもそうですね」
「じゃあしっかり働いて恩返ししないとね!」
「今度遊びにでも誘ってやりますかぁ……」
美和宅
「ただいまー」
「おかえりー。……先輩もすっかりうちに馴染んだね」
家に帰ると美和が制服のままベッドでゴロゴロしていた。
「……パンツ見えるぞ」
「え!? ……えっち」
美和はバッと飛び起きてスカートを押さえた。
顔が真っ赤になっている。
「今日は弁当買ってきた。好きな方選べ」
「あ、うんありがとう」
美和は家事全般ができない。料理なんてもってのほかだ。
なのでいつもは俺が作っているが、今日みたいに帰るのが遅れる時は俺が弁当を買って帰っている。
「こっちにする」
「ん。じゃあ温めとけ」
俺がそう言うと美和は選んだ弁当をレンジに持っていった。
「……なあ美和」
「ちゃんね。どうしたの?」
まだ言うかそれ、
「……来週の土曜日に、どこか遊びに行かないか?」
「え? なにデート?」
「……いや、お礼を兼ねた遊び…… だと思う」
「なにそれ」
美和はくすくすと笑いながら返してきた。
「いいよ。来週はまだ予定ないし。どこに行くの?」
「……あ、まだ決めてない」
「本当になにそれ」
美和は呆れた顔をした。
「まあどこでなにするかはこっちで決めるから。一応要望聞いとくよ」
「うーん、水族館がいい」
「確かにいいかもな。じゃあ後で探しとくから」
その時、レンジのチーンと言うおとが部屋に響いた。
水族館
今日は先週誘った水族館デートだ。デートって認めたなこいつ。
今はゲート前で美和を待っているのだが、待ち合わせにする必要はないと思っている。
朝も「一緒に行けばいいだろ」と言ったのだが「こういうのは待ち合わせするからいいものなのだよ」と返された。
「あっ、榛斗センパーイ! お待たせー!」
美和が小走りで来た。ミニスカで、
「……」
俺は無言で羽織っていたパーカーを脱ぎ、美和の腰に巻いた。
「えっ、なにこのパーカー……」
「……見えるぞ」
俺がそう指摘すると、美和は顔を少し赤らめて「あはは……」と苦笑いした。
「……じゃあ、チケット買うか」
「あ、そ、そうだね」
「すみませーん。チケット大人2で」
「うわー、綺麗……」
「……だな」
水族館に入った俺たちは早速トンネルみたいにされている水槽のところへ行った。
トンネルの上をエイが通ると、
「あ! 見て! エイだよ!」
「おぉー、思ったよりでかいんだな」
魚の群れを見つけると、
「わぁー、集団行動みたい」
「ああでもしないと捕食者に狙われるんだろうな」
クラゲを見つけると、
「すごい、水中をふわふわしてる。私もああやって泳いでみたいな〜」
「亀ってクラゲを食べるらしいな。泳ぎたいんだったら夏にでも海行くか?」
「うん!」
と、この通りはしゃいでいる。
俺も人生初の水族館を満喫しているが、どうしても風情のないことを言ってしまう。
「そろそろ別のとこ行くか?」
「うん。あ、そろそろイルカショーが始まるみたいだよ」
「じゃあそこ行くか」
「うへ〜、びしゃびしゃになっちゃったよ……」
「……とりあえずこれで拭いてこれ羽織っとけ……」
俺はタオルと念のために持ってきた薄手の上着を渡した。
「あ、ありがとう。にしても先輩、用意周到だね……」
「そりゃ伊達に濡れたくないキャラで通してないからな」
「にしてもイルカショーで傘出す? 普通」
「出すだろ」
席はいい感じの中間あたりのところを取れたから濡れないだろうとは思ったが、傘を持ってきて正解だった。
「……先輩って、もう少し普通にしてたらモテそうなんだよなぁ」
「モテる? 俺が? ないない。モテることができるのは性格がいい奴(イケメンに限る)、スタイルがいい奴(イケメンに限る)、顔がいい奴(イケメンに限る)だけだろ」
「ずっと副音声みたいなのが聞こえたんだけど……」
なに、事実でしかない。
運動できたらモテる? 顔のいい奴が運動を始めただけだ。
賢いからモテる? これも顔がいい奴が勉強をしているだけだ。
世の中そんなもんだ。
「それに先輩は結構顔整ってると思うよ?」
「整ってるって言ってもフツメンの範疇だろ」
「そう言う事言っているからモテないんですぅー」
「余計なお世話だ。別にモテたい訳でもないしいいんだよ」
美和が小声で「そう言うとこなんだよ」と言ってきた。
「……時間も時間だし、そろそろ飯食うか」
「賛成!!」
昼食を食べ、お土産コーナーで色々見ている時、
「……そろそろ出ようぜ?」
「ちょっと待って」
……本日八度目のちょっと待ってをいただきました。
「はぁ、やっぱ友達多いと色々大変だな」
「そうかなー? でも友達いない方が大変そうだけどなー?」
「……喧嘩売ってんのか?」
俺がマジ顔で返したら「じょ、冗談だって……」と返してきた。
「……よし! これにする」
俺は美和の持っていたカゴを覗く。
「…………だいたい一万三千円と言ったところか?」
「えっ…… 一万二千五百円……」
「ニヤピンだったか」
「気持ち悪いよ……」
「そーですか」と返し、カゴを取った。
「え!? 自分で払うよ!」
「あのなぁあ…… 一応はデート、しかも俺は家を貸してもらってる立場なんだぞ? それでこの額を女子に払わせるのは男としての尊厳なくなるぞ」
そう言うと、美和は渋々カゴを離した。
電車
「はー、今日はいっぱい遊んだね!」
「そうだな。……楽しかったか?」
そう問うと美和は「うん!」と返してきた。
「でも、少し疲れちゃった」
「そっか。……少し眠っとくか?」
美和は「そうしとく」と言って、俺の肩に頭を乗せた。
しばらくすると、横から寝息が聞こえた。
「……起きてるか?」
聞いてみるが、返事が返ってこない。
姿勢も大変そうだし、周りに人がいない。
そう思い、美和の頭を腿に乗せた。
寝ているのかが不安になり、試しに頬を突いてみた。
指で突くと、一瞬反発するような触感がするが、その後すぐに馴染むように反発するのをやめた。
今度は優しく摘もうとするが、そうすれば起きてしまうかもしれない。起きたらせっかくサプライズを用意しているのに台無しになってしまうかもしれない。そう思い、頬を突くのをやめて髪を撫でる。
丘
家の最寄りの駅、の一つ手前の駅で降り、とある丘に来た俺は俺は、腕の中でまだ寝息を立てている美和を眺めている。
ここで来たのは訳がある。
ここは、星空が綺麗に見える穴場の丘なのだ。
今日、ここで今までの感謝をしようと思う。告白見たいな意気込みだな。
すると、美和が起きた。
「うーん? ってえ!? どこここ!? なんで抱っこされてる!?」
「ここはな、俺がよく来る丘だよ」
そう。ここは母が亡くなってからたまにくるようになった丘だ。
ここにくれば少しだけ気が楽になる。
少しだけ。だが、俺はそれだけが心の支えだった。
「それはいいの! なんでお姫様抱っこされてるの!?」
「女子的にはおんぶよりこっちの方が嬉しいだろ?」
俺は腕の中で暴れている美和を降ろす。
「……ここ、星がよく見えるんだ」
「……うん」
俺は意を決す。
「美和、聞いてくれ」
「ど、どうしたの改まって? それに、ちゃんだよ……」
「じゃあ美和ちゃん。俺、……言いたい事がある」
そうう言うと、美和は狼狽えた。
「え!? あ、え、……え!?」
「美和ちゃん。その……」
「ま、待って! こ、心の準備が……」
「ありがとう」
「……え?」
「初めて会った時、まあ2週間くらい前だけどさ、心の底から生きたいって思わせてやるって言ったよな。」
「……うん」
「それでさ、母さんが死んでから思ったんだよ。やっぱり人間、一人じゃすぐ壊れちゃうんだって。俺も、美和ちゃんも」
「うん。……え?」
「美和ちゃんが屋上に来た理由、なんとなくわかったよ。俺と同じ、心の奥底では、少しだけ、死にたいって思ってたんだと思う」
「…………うん」
「でもさ、最近はどう? 俺は美和ちゃんと出会って、美和ちゃんは俺と出会って、お互い、元気になったよね」
「……うん」
「やっぱりさ、人ってさ、一人じゃ壊れて、それをケアしてくれる人がいたら元気になる。機械と同じだよ」
「う…… ん?」
「だから俺、まだ生きるよ。いや、生きたい。だから、これ、あげる」
「これは?」
「ぬいぐるみ。プレゼントとしての意味、調べてみて」
「…………そばにいてほしい」
「……だからさ、これからも、あの家に、一緒に住んでもいいか?」
「……! うん!」
美和はそう言って俺に抱きついてきた。
「えへへ、ありがとうね!」
「……ふふっ。あー、なんかこういうシチュエーション、俺弱いかもだわ」
俺は目頭が熱くなるのを感じた。
美和を見ると、これまでにないくらいの笑顔で、泣いていた。
「はぁー、でもびっくりしたよ。告白されると思ったもん」
「え? いや、そんなことしないよ。絶対勝ち目ないし」
そう言うと、美和はいたずらな笑顔で言ってきた。
「そんな事ないかもよ? だって私、先輩の事好きだもん」
「………………え?」
そうすると、美和は俺の肩を持ってこちらを見て言ってきた。
「あーもう! 直接言うね! 先輩! 好きです! 付き合ってください!」
そう言って、美和は目を閉じ、唇を少し突き出してきた。
……YESだったらキスをしろって事か、
「……美和」
俺は美和の頭に手を添え、胸に抱き寄せた。
「……ごめん」
「……そっか…………」
心が痛む。
だが、今は断っておかないといけない。
「美和、俺は美和の事が大好きだ」
「……うん」
俺は続ける。
「でも、好ましいの範疇なんだ」
「…………う、ん」
美和を抱いている胸が少し湿る。
「だから、この心情で付き合うのは違うんだ」
「……ぅ、ん」
美和の声に嗚咽が混ざる。
「だから。……いつか俺の事を惚れさせてみてよ。俺が美和の事を、好ましいじゃなくて、愛してるになったら、今度はこっちから告白する」
「……う、ん。うん!」
美和は泣いた。俺の服を強く握りながら泣いた。
「……落ち着いたか?」
「……ぐずっ、うん」
「そうか。じゃあ、行くか」
「どこに?」
「俺たちの家に」
「……ッ! うん!」
閲覧ありがとうございました。
今回の話はうp主がリアルでのストレスやらを吐き出すために考えたストーリーです。(まあ行動に移したきっかけはとあるゆっくり茶番劇ですけどね)
では、ハッピーエンドしか勝たん! の人はこちらで閲覧を終了する事をお勧めします。俺だったらそうする
ネタバレになるから詳しくは言えないけど、ハッピーエンド至上主義者だったら必ずモヤモヤして夜も寝れなくなってしまいます。
曇らせ好き(曇らせ全肯定者)なら閲覧をお勧めします。
最後に
みなさんも極度のストレスを溜めないようにしましょう。
そのためになんでも愚痴れる人やストレスの捌け口を作っておきましょう。
間違っても、何があっても自殺だけはしないように!(殺人もだよ!?)
ではまたお会いしましょう。