英雄を問う。   作:ただねこ

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第一回戦③

 第二試合……瀬呂対轟は、開始早々に轟の氷で行動不能、轟が勝利。第三試合、拳藤対上鳴は、上鳴の油断で拳藤が勝利。第四試合、発目対飯田は……

 

(ネットショッピングはおかしいと思う)

 

 いや、サポート科という観点から見れば、間違ってはいないだろう。だとしても、飯田は実質シードで勝ち上がっているようなものだ。真面目な飯田としては複雑だろう。

 

「……対策は立ててきたか、芦戸」

「溶かしまくる!」

「それ言っちゃダメなやつだろ」

 

 そして、第五試合。芦戸対俺だ。

 

「負けないからね!」

「ああ……受けて立とう」

 

 試合開始のゴングが鳴らされたと同時に、芦戸が勢よく突っ込んでくる。

 

「やああああっ!」

「『(クモ)』」

「!」

 

 ……なるほど、『(クモ)』は動きを止めるが、動くことによって生まれるエネルギー……慣性の法則までは止めることができない。

花がじゅわじゅわと枯れ溶け、黒い染みは酸で中和されていく。……この染み塩基性だったのか。

 

「ふんっ!」

「おっと」

「え゛、素手!?」

「今の俺は、お前の酸は無意味なんだよ」

「……あ、還元!!」

「正解」

 

 この妖刀が持つ力である「生命力の還元」。それは治癒能力として表に現れる。たとえ手のひらに刺し傷が出来ても、足の骨折があろうとも、はらわたが何度刺されようとも、たちまち治る。……痛みはあるが。

 

「実際、手のひら溶けてはいるんだよ。後でリカバリーガールのところ行く」

「そんなに悠長な会話してると……負けちゃうよ!」

 

 これは……ブレイキンか!

 

「近寄り辛いが……その体制から避けられるか?」

「げ」

 

 立ち上がる途中からの芦戸に、『(トンボ)』を放つ。が、ギリギリで避けられる。

 

「……わざとでしょ」

「そりゃあ本気で狙ったら頭に風穴開くからな」

「……わざとでよかった」

「ほんとにな」

「ぅぐ……!?」

 

 ここで寸頸。芦戸の前で見せてはなかったから、選択肢から外れてたろ。それとも解説聞いてなかったか?

 

「……マジかー」

「俺の勝ちだ」

「くっそー!今度は勝ぁつ!」

 

 ミッドナイトの判決で、俺は二回戦に進出した。

 

 


 

 

「……え、なんでここにいるの?」

「来たら悪いか、耳郎」

 

 現在、第六回戦が終わった直後。耳郎に試合の結果を伝えに来た。

 

「試合は常闇の勝利だ」

「あー……やっぱ常闇強いよねぇ」

 

 ……妙に視線が外れる。

 

「緊張してるか」

「そりゃそうでしょ。全国放送で個性見られるとか」

 

 そう言ってジャックを突き合わせる。恥ずかしがりな耳郎にとっては、少々キャパがキツいかもしれない。

 

「何を言ってる。お前は今まで通りでいい」

「……え?」

「ヒーローってのは、笑顔が大事だ。たとえオールマイトが来てくれたとしても、憤怒の表情を浮かべていたら……俺は少し怖くなる」

 

 でも。

 

「もしも耳郎が笑顔で居たなら、俺は安心できる」

「!」

「なって来いよ、ヒーローに」

 

 拳を突き出す。

 

「……うん」

 

 耳郎はジャックを腕に巻きつけて、そのままグータッチ。

 一瞬、鼓動が拳に伝わってきた。そしてその音は、限りなく穏やかだった。

 

(勝てるだろ、お前なら)

 

 くぐもって聞こえるプレゼントマイクの声と歓声を聞きながら、俺は観客席へと戻った。

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