「ってことで、頼むよ……!」
「それはまぁ、構わないんだが……せめてもう少し言葉を選んでくれ」
「それはごめん」
まあ、本当のところは「訓練に付き合ってほしい」というものだった。語弊を招いた結果、芦戸と葉隠の誤解を解くのに2時間かかったが……。
「で、目標は?」
「……え?そりゃあ、強くなりたいから訓練を……」
「違う。それは前提条件だ。何のために強くなりたい?」
耳郎は悩み始めた。俺や轟、爆豪を見てどんな を抱いたのか知らないが、大方才能の差と夢の遠さに焦ったのだろう。
「……その、さ」
「?」
「ウチの両親音楽家で、影響でウチも音楽好きで」
「よく鼻歌歌ってるもんな」
「それはいいの。……それで、音楽とヒーロー、どっちにするか悩んだんだ」
耳郎は人の行動や言動によく気づく。個性もあるだろうが、耳郎自身が他人をよく見ていることもあるだろう。だが当の本人は何故か恥ずかしがり屋。音楽を披露するようなことはなく、実際進路も「どちらか片方」で悩んでいた。
「なぜどちらか一方を選ぶ必要がある?シンガーヒーローとかやればいいだろ」
「……それは、そうなんだけど」
本人からすると「それはなんか違う」らしい。まぁその感覚は大事にしておいた方がいいとは思う。
「好きなこともやりたいことも、どっちも取りたい。どっちも守りたい。でも、ウチが誇れるのはヒーローなんだ」
「……守りたくば強くあれってか」
「うん」
吹っ切れたような、清々しい顔。
「……そういや、明日の午後から演習場を借りられるらしい」
「え、明日土曜だよ?」
「教師が居ないわけじゃない。……で、休みの訓練は平日中に申請がほしいそうだ。……しておくか?」
「勿論」
というわけで、放課後に書類を提出しに行こうとした。のだが……
「何事だぁ!?」
放課後、何やらA組挟殺の前にゴロゴロと人だかりが出来ていた。……普通科の面々がかなり多いな。
「敵情視察だろ。敵の襲撃を耐え抜いた連中だもんなァ。
「……ヒーロー科って血気盛んな奴ばっかなんだね」
「あ?」
「体育祭でいい成績残せたら、ヒーロー科への編入も視野に入れてくれるらしいよ。逆もまた然りなんだってさ」
……紫髪の奴だけ、明らかに意思の強さが違う。
「少なくとも俺は……へらへらしてると足元掬っちゃうぞって、宣戦布告しにきたつもり」
「「!!」」
「ハッ!上にあがりゃぁ関係ねェよ。死ぬ気で来いやモブ共」
「モブはダメだよかっちゃん!?」
……少し、爆豪は砕けたか?
「すまない、退いてくれ。これから書類を提出しに行くんだ」
「わかった、退くよ」
「……お前名前は」
コイツは、伸びる。
「心操人使」
「お前も来い。今なら1人限定で演習場の申請が一緒にできるぞ」
「……!」
演習場の申請。それが出来ることを知らなかったクラスメイトや普通科の面々が驚くが、心操は意に介さなかった。
「俺も行く」
「OK。行くぞ耳郎、心操」
「うん」
「ああ」