「悪いな。昼時に、それも昨日の今日で集まってもらって」
「いいよ。曽我と訓練できるなら」
「強くなれるなら、なんでもいい。……で、曽我だっけ。アンタ、そんなに強いのか?」
「……自分で言うのもなんだが、強いよ。条件が揃えば、オールマイトも殺せる」
「……はは、やっぱりヒーロー科に入る奴は、扱いやすい個性ばっかなのか?」
……?
「あのね、言っとくけど曽我の個性は──」
「いい。……お前個性は?」
「"洗脳"。話しかけた相手が返答すると、相手を洗脳できる」
「……ああ、それは実技で落ちるわ」
「ロボットだし効かないか」
心操の個性は洗脳。人間以外には効かないし、ボイスチェンジャーを使おうものなら、電子機器を通した時点で効果が乗らなくなる。確かに、入試では通用しなさそうな個性だ。
「でもさ、敵の無力化に関してはめちゃ有用じゃない?」
「ああ。少なくとも俺の個性よりかはよっぽど扱いやすい。トリガーが対話なんだ、攻撃を受ける必要もない」
「……お前ら、何も思わないのか?」
「え、何が?」
「ほら、敵っぽいとか、犯罪でも何でもできるとか」
……個性に対する偏見に苛まれてきたか。子供は時に大人以上に鋭いナイフを突き刺してくるものだからな……。
「んなもん欠片も無いって!ウチだけじゃなくて、ヒーロー科のみんなもそう言うよ。きっと」
「その程度の個性でとやかく言うほど、雄英高校ヒーロー科は落ちぶれてもないからな。……
ぽかんと口をだらしなく開ける心操の肩に、耳郎のジャックがぽんぽんと置かれる。
「とにかく、ウチらはアンタの個性になんの偏見も持ってないよ。強いて言えば敵の無力化にめちゃくちゃ強いってことくらい」
「そういうことだ。ヒーローになるなら死ぬ気で鍛えるぞ」
「……ああ」
一度瞬きをすれば、そこには憑き物が落ちたように覚悟を決めた心操が居た。
「さて、まずは準備運動からだな」
「……筋トレとか組手じゃないんだ?」
「体はほぐしてからの方がいい。肉離れとか捻挫したくないならやっとけ」
「わかった」
「ん、やろっか心操」
「……人使でいいよ、耳郎さん」
「じゃ、ウチも響香でいいよ人使。よろしく」
「うん、よろしく響香」
……やけに打ち解けるのが早いな。俺も名前呼びとか提案してみるか?
「はぁっ、はぁっ……!!」
「げほ、キッツイ……!」
「そこまでにしとくか。水買ってきたから飲め。一回口に含んで吐き出してからの方が、口の中気持ち悪くないぞ」
「ありがと……」
「っ、ふー……はぁ、はぁ」
心操はやっぱ基礎がまだまだ足りてないな。というか、2人が俺に「遠慮しないで本気できてほしい」なんて言うから本気で行ったが……やっぱ手加減した方が良かったか?
「これくらいの負荷でいいよ」
「心読むな耳郎。お前そんなに耳良かったか?」
「ヒーローは全員本気だ……それなら、死に物狂いでやらなきゃ意味がない……っ!」
「……少し休憩するか。10分経ったら個性の訓練やるぞー」
「「おー……」」
やる気とは別に、体力の回復に費やす気だるい声と共に、休憩時間をしめすタイマーは7分を切った。