宇宙戦艦ヤマト、推して参ります!   作:るーしー

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今回の文字数は約4400字、コア部分は4000字弱です。
要するに、設定の説明などに使っている部分は、純粋な物語部分では無いという基準ですね。

さて今回は、いわゆる独自設定に属するものが出てきます。
原作においては、言及すらされていない内容も含みますが、面白がって頂けるなら幸いです。


第1次W島攻略作戦(3)

W島攻略艦隊出撃から5日後。今日も今日とてヤマトは艤装の修理に勤しんでいた。

 

「そろそろ艦隊がウェーク島海域につく頃か……」

「やはり心配ですか?」

「はい」

 

頷いたヤマトに「私もです」と明石は手を休め、どうにも集中出来ないので休憩を提案。ヤマトも同意した事で、甘味処・間宮で買って来た団子を取り出す。

ヤマトの方も艦内設備の1つ、OMCS(オムシス)=天然素材循環装置によるアイスクリームを提供した。

 

「しかし、ヤマトさんの艤装は中々修理が進みませんね。私が手を付けられれば良かったのですが……」

 

ヤマトの艤装は、明石達を基準にして数百年後の技術水準によって建造された、オーヴァーテクノロジーの塊だ。

装甲1つ取っても、無重力合金や硬化テクタイトの複合素材で作られており、内部に波動防壁発生装置まで組み込まれている。

内装のアヴィオニクスに至っては、想像すら困難な、複雑怪奇な代物だ。

 

「とんでもない! 明石さんには感謝しています。クレーンなどの機材が使えて、どれ程助かっている事か!」

 

そう云って明石を慰めるが、ヤマトの艤装は未だボロボロだ。上部の主兵装は殆ど使えないし、補助エンジンも装甲こそ元通りだが、艦内部ではオーバーホール作業が続行されている。

 

そんなアンニュイな午後。W島の岩礁地帯で夜を待つ三水戦から、敵偵察機に発見されたと云う緊急電文が入った。

 

 

 

 

司令官代理の戦艦・長門は、第三水雷戦隊にW島からの離脱を指示したが、程なく軽空母ヌ級が発艦させた攻撃機が襲来。

三水戦は完全に頭上を抑えられ、後方にはW島の敵水雷戦隊が迫る。せめて挟撃をさける為、長門は四水戦にW島艦隊の足止めを命じた。

 

傍受した断片的な情報だけで、ヤマトには充分だった。唯でさえ苦戦している状況、この上で正規空母ヲ級や重巡洋艦級などが現れたら、攻略隊全滅すらあり得る。

 

「明石さん、ドック注水、急いで!!」

「え? え!?」

 

云うや否や、既にヤマトは艤装の下へと走り出していた。工廠内を走りながら、航空隊(パイロット)妖精を呼び出す。

 

「航空隊長、緊急事態(スクランブル)だ! 航空隊出撃準備にかかれ!」

 

ヤマトの命令に艤装の内部で、次々と妖精達が愛機に乗り込み始めた。

 

乾ドックに辿り着いたヤマトは直ちに艤装を装着。

本来なら限り無く頼もしい半身が、枷と思える程に重い。当然である、今のヤマトは補助エンジンすら動かせず、正に置物同然なのだ。

 

「明石さん! 注水を!!」

「え、でも……」

「ッボヤボヤするな! 水門を吹き飛ばすぞ!! 艦首魚雷(ミサイル)発射用意!!」

 

ヤマトの凄まじい気迫に、明石は慌てて注水を開始する。何せ本当に魚雷発射管を開いているのだ。少しでもモタついたら、ヤマトは間違いなくミサイル攻撃を断行する。

 

「一体何をする気ですか!? 今の貴方はまともに航行する事も出来ないんですよ!」

「知れた事! W島攻略隊を救援します」

 

確かに明石の云う通り、ヤマトは水上航行すら出来る状態ではない。しかし、スラスターを使用しての離岸ぐらいなら出来るのだ。

 

「後部スラスター噴射、微速前進」

 

心配そうな明石を残し、ヤマトはゆっくりと水路を進みながら、司令部に通信を入れる。

 

「ヤマトより司令部へ! W島攻略隊への支援を許可されたし」

 

ヤマトからの、余りにも莫迦莫迦しい(・・・・・)要請に、長門はマイクに怒声を叩き付けた。

 

「何を云っている! ここからW島まで3000キロもあるんだぞ! 航空機の速度でも数時間――」

「ヤマトの艦載機は極超音速巡航機(ハイパークルーザー)だ! 30分で着く!」

 

聞き慣れない単語に長門が戸惑っている間に、ヤマトはドックの水路を抜け海に出ていた。

 

「後部甲板下格納庫ハッチ開け! カタパルト展開、格納庫直結の予備カタパルトも使え!」

 

艦尾2基の常用カタパルトの他、格納庫のデッキから直接伸びる予備カタパルト。計4基のカタパルトをフル稼働させ、50余機を可能な限り迅速に出撃させるのだ。

 

 

 

飛び発つ1機目はコスモゼロ。パイロットは緋眼のエース。

 

「アルファ2、clear fore テイクオフ!」

 

円筒形のメインノズルから青白い噴炎を迸らせ、第2小隊長が発艦する。

 

大格納庫から上がって来た、2機目のコスモゼロを駆るは、生粋の戦闘機乗り。通称サムライ。

 

「ブラボー100(ヒトマルマル)、出撃する!」

 

内なる闘志は誰よりも烈しい、男の中の漢。航空隊の総隊長が、蒼穹へと飛翔する。

 

第3小隊を率いる黒きコスモゼロ。機体の被弾、身体1つでの宇宙漂流。幾度も死線を彷徨いながらも生還した美丈夫が乗り込む。

 

「スペード4、発進するぜ!」

 

華麗にして苛烈な貴公子が操るブラックゼロは、天へ逆昇る流星となる。

 

シャークマウスにドクロの個人標(パーソナル)を施された第4のゼロ。

 

「キティ1、発艦()る!」

 

凶暴なメイキャップに反して精妙な機動(マニューバ)を披露するは、魔術師の如し。

 

 

次々と空へと飛び発つ騎兵隊の中で一際目立つ4騎。名機・コスモゼロを駆る竜騎兵(エース)達だ。

 

コスモゼロ――零式宇宙(空間)艦上戦闘機は、初めて波動技術応用エンジン搭載を前提として設計された、宇宙用戦闘機である。

その原設計は極めて優秀であり、マイナーチェンジを繰り返しながらも、数十年も第一線で飛び続けた名機だ。

唯一の欠点は、自らを駆るパイロットを極端に選り好みする高性能。

 

そしてエースが率いる隊員も精鋭揃い。彼らの乗騎はコスモファルコンⅡ、コスモゼロにも劣らぬ駿馬だ。

通称ハヤブサ改(ファルコン2)。正式名、一式宇宙艦上戦闘攻撃機は、コスモゼロで得られたノウハウに基づき、操縦性に優れる99式宇宙艦戦(コスモファルコン)を基礎設計から見直してリファインした機体である。

99式艦戦の操作性をそのままに、基本性能を向上させる事に成功した。主武装は12.7mm機銃2挺から、20mm機関砲8門と大幅に強化された。

残念ながら零式ほどのポテンシャルは無く、いずれは新型機への更新は避けられないだろうが、運動性・操作性・攻撃力全てに優れ、本機を愛好するベテラン・エースも多い紛れも無い名機なのだ。

 

 

6編隊54機を放ったヤマトは、彼らが飛び発った遠い空を見据えていた。

 

「頼みますよ、皆さん」

 

そして、W島へ向かった彼らを迎える為に、そのままヤマトは波止場の先で投錨した。

 

 

緊急発進したヤマト航空隊54機は、円錐形を重ねた様な巡航隊形をとると、一息で音の壁を切り裂き、雲を衝撃波で蹴散らして天高く駆け上がる。

 

「全機に告ぐ。俺達の任務はW島攻略に向かった水雷戦隊の救援だ。だが、W島までは3000キロ。よって高度12万まで上昇し熱圏の下層を飛行、W島空域の手前で降下する。以上!」

 

熱の壁をさける為のマッハ2.8、目標高度まで2分半。

彼らにとっては化石に等しいプロペラ機やジェット機は、高度を上げると、気圧の低下と共に性能が落ちる。

だが、高圧プラズマと微量のタキオン粒子を利用するコスモタービンエンジンには関係ない。空気抵抗が小さくなり、逆に加速するほどだ。

 

そして高度120km。成層圏、中間圏を超えた熱圏……その気圧は地表100万分の1未満と云うほぼ真空で、一般に宇宙空間として扱われる高度だ。

つまり、空間戦闘機が本来の性能を存分に発揮できる環境である。

 

機体設定は大気圏内モードから、自動的に準宇宙空間モードへ。

スロットルを解放、秒速1000メートルから、秒速3000メートルまで増速。第1宇宙速度(秒速8000m)まで加速したいが、再突入=降下時を考慮し速度を抑えている。

 

目下には蒼く美しい海と大気、そして頭上には漆黒の宇宙空間。

 

生命の光と、無謬の闇の境界を彼らは急ぐ。逸る心を抑えながら、救いを求める手を確実に掴む為に。

 

 

 

 

敵機襲来より20分、第三水雷戦隊は苦境に立たされていた。

 

駆逐艦・夕立を先頭に、右翼を軽巡洋艦川内、左翼は軽巡洋艦・那珂、後尾には吹雪。旧型の睦月を円陣内部に入れ、旗艦の神通が中央で指揮を執る輪形陣=対空戦斗態勢。

神通の巧みな艦隊運動と防空指揮で、第2次攻撃までは凌いだが、2隻の軽空母ヌ級が吐き出した深海艦上戦闘爆撃機は、空を埋め尽くさんばかりの勢いだ。

 

碌に息を吐く暇も無く、第3次攻撃隊が迫る。攻撃分類、艦隊直上より多数。他、正面より1編隊。

 

「取舵一杯、右舷弾幕張って!」

 

旗艦の命令に従い左に変針、正面から来た敵機――今は右側――を対空砲火にて牽制。

2時方向の低空から襲い掛かる敵機を追い払い、急降下爆撃を進路変更で外す。爆弾射出後に機首を起こす隙を突き、水中爆発でバランスを崩しながらも那珂が2機を撃墜。

 

直撃は許していない。しかし艦隊全体が、至近弾に因って浮き足立ち、隊列が乱れている。

いや、神通にはそれも可能性の1つとして織り込み済み――右側の川内が先行気味になった事で、魚雷の射線が空き、神通は軽空母ヌ級を軸線に捉えた。

華の二水戦――最強と謳われた水雷戦隊――の元旗艦は、雷撃のチャンスを決して見逃さない。一瞬の好機に四連装酸素魚雷を撃ち放つ。

神通は足を止めずに意識の端で雷跡を追った。2本が命中コース……だが、ヌ級の直奄機が20mm機関砲で海面を叩き魚雷が誘爆。舌打ちするも、まだ攻撃できる艦はいる。

 

「睦月、撃て!」

 

神通の後ろに付いていた睦月なら……丁度今、彼女は魚雷の射線に敵空母を捉えている。状況を察していた川内の叫びに、睦月は三連装魚雷を斉射した。

 

今度こそ……そんな期待は、もう1隻のヌ級から発艦した第4次攻撃隊に砕かれる。敵機――通称:深海髑髏(ドクロ)爆戦――の12.7mm機銃が61cm魚雷を撃ち抜いた。

神通や川内は、目標との相対速度を一目で見切り、一瞬で射角を調整して発射出来る技量(神業)を持つ。しかし彼女達と違い、平凡の域を出ない睦月は、魚雷発射の前後数秒は無防備になる。

 

魚雷を破壊した髑髏爆戦の1機が、薄まった弾幕をすり抜け、足が止まった睦月に12.7mmの銃弾を浴びせ掛ける。

対空兵装が破壊され小破相当のダメージを負った睦月は、爆撃コースに乗った敵機の抱えている対艦爆弾に、息を止めた。

しかし、直撃せんとする死と睦月の間に、滑り込む艦が在った。

 

銃撃された友人を見た吹雪は、直ちに主機に最大戦速を命じ、睦月の前に強引に割り込むと、12.7cm連装砲を最大仰角で発射、敵機を撃墜した。

睦月は助かったが、状況は変わっていない。軽空母ヌ級は次々と新しい機体を吐き出し続けている。

 

そんな時だった。

 

「良い腕だ、ルーキー」

 

無線から聞こえてきた軽口と共に、マッハ3で飛来した対空ミサイルの群れが、60機余りの敵機を火球に変えた。

 

噴進(ロケット)弾!? 一体どこから?」

 

彼女たちの知る噴進弾の射程は精々2km弱、どう考えても攻撃者が見えない距離に居る筈がない。

 

「ん、あれは……?」

 

吹雪が遠い空に見つけた数十の黒点は一瞬で巨大化し、同数の戦闘機が現れた。

 

 

ヤマト航空隊、見参!!




いきなり妖精が喋っている、と驚かれた方も居ると思います。
このパイロット達にオリキャラは居ません。ただし『スペード』と『キティ』のコールサインは独自設定になります。
だって、原作に忠実になろうとすると、2人のコールサインが被るんだもん!
結論を云うと、スペード4は山本明(明生)。キティ1は篠原弘樹です。PSゲームと2199が微妙に混ざった世界観ですね。
スペードには剣と云う意味も含まれているので、丁度良いという具合です。ちなみに、この山本明、PSゲームでは某コーラ並みの強運で生還します。


コスモファルコンⅡ:思いっきり独自設定ですね。本当に……(略)。まあコスモタイガーにしても良かったのですが、何となく「浮く」様な気がしたんです。
さて99式艦戦、つまりファルコンⅠは、旧日本軍の一式戦闘機をモチーフにしているのは周知の事です。
よってファルコンⅠの武装に関しては、一式戦闘機と同じ口径の12.7mmとしました。

では、ファルコンⅡの主武装は何か。
零戦や紫電改など多くの戦闘機は20mm機銃を主武装としています。また、現在の戦闘機の機銃も20mm砲が主流ですので、20mmを採用しました。
コスモタイガーは設定上30mm機銃8門と云う、ちょっとスペース足りてるの? って設定が、特に「浮く」感じがしたんです。

そしてファルコンⅠとⅡの関係ですが、F-15イーグルとF-15Eストライク・イーグルの関係に近いものをイメージしています。
F-15Eは同じイーグルの名を冠していますが、機体構造の60%を再設計した原型機とは全く異なる機体です。
それと同様に、波動技術応用エンジン搭載を前提とした構造に、再設計を行った機体と云う設定です。


深海髑髏爆戦:また独自……(略)。どうしても、固有の名称が欲しかったのです。
モチーフは米海軍の戦闘爆撃機、ヴォートF4Uコルセア。コルセアは海賊と云う意味なので、ジョリー・ロジャー=髑髏と云う安易な命名です。
また、何となく骸骨みたいな外観ではないですか?
武装にも一応設定があり、12.7mm機銃と20mm機銃を装備した戦闘機タイプと、12.7mm機銃と対艦爆弾or魚雷を装備した爆撃機タイプがあります。



オムシス:オーガニック・マテリアル・サイクル・システムの頭文字を取った略称。翻訳部は間違っていない筈……。

司令官代理:某所にて、万年艦長代理なるヒドイあだ名が付けられて居る人がいる。要するに『代理』と云う言葉へのコダワリです。

ボヤボヤするな!:完結編の沖田艦長のセリフから。また『PS版さらば』では発進の際に、主砲もしくは副砲で水門を吹き飛ばしている。

予備カタパルト:こんな改修が……(略)。

総勢54機:20×2機分のローリングパレットの内側に、16機分位のパレットを設置できそうだな。よし、こんな……(略)。

那珂が2機を撃墜:彼女は川内型で最も対空が高い。

ルーキー:こんなセリフを言いそうな奴が、航空隊に数人は居るんだよなぁ。

噴進弾:神通達の辞書には、追尾機能付きのロケット弾=ミサイルは載って無いと思う。技術のギャップでしょうか。

ヤマト航空隊、見参!!:普段はあまりやらない表現ですね。エリア88より拝借しました。


妙に後書きが長いし……。
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