宇宙戦艦ヤマト、推して参ります!   作:るーしー

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文字数7000字超……各段落・パート毎における文章量の管理が出来て無いですね。

(4)での戦闘シーンを、もっとしっかり作れば良かったかも?

さて、如月の運命は如何に、って『如』の字が被ってますね(笑)。


第1次W島攻略作戦(5)

爆発の余波で大破し崩れ落ちた如月の無残な姿に、コスモゼロを引き起こし、亜音速まで減速させた緋眼のエースは、臍を噛んだ。

 

「こちらヤマト航空隊――四水戦旗艦・夕張へ。貴艦隊の駆逐艦が被弾。繰り返す、駆逐艦が被弾、大破した」

 

自分への怒りを押し殺し、努めて冷静に如月の危急を伝えながら、緋眼のエースは敵影を探る。

どうか無事でいて……これ以上は、髪の毛ひと筋たりとも傷つけさせないから――と決意しながら目を皿にし、レーダー感度を上げた。

 

 

敵の航空機動戦力が壊滅し、W島から追ってきた敵水雷戦隊は、同海域からの撤退を始めた。

第四水雷戦隊の旗艦・夕張は、これで一安心と手汗をスカートで拭い、艤装のグリップを握り直す。そして爆発音と直後に飛び込んで来た通信に、慌てて振り返ると、大破した如月に血相を変えた。

 

「如月ちゃん! ッ、全艦追撃中止! 如月の救助を行う!」

 

見れば見るほど如月のダメージは深刻だった。左半身は血に染まり、全身が煤や鉄火で穢されている。

甚大な被害を被った艤装は、所々で種火が燻ぶり、戦闘能力はおろか航行能力をも喪失している可能性があった。

何より、各所の消火が行われる気配が無く、少しずつ喫水線が上昇中=浸水が放置されている状態――応急処置機能の麻痺。即ち、如月が意識を失っている事が見て取れた。

 

つまり状況は最悪だ。

もしも、炎が広がり弾薬に引火・誘爆させたら……不吉な想像を振り払うように、夕張は声を張り上げた。

 

「如月ちゃん、しっかりして! 早く魚雷を棄てるのよ!」

「ぁ……ぅ」

 

対する如月は聞こえているのか、いないのか……色を失った唇で呻くだけだった。目の焦点が泳いでいる如月に近付きながら、夕張は再度声を掛ける。

 

「誘爆するわよ! 魚雷を海に棄てなさい!」

 

既に充分に近付いており、夕張の声が聞こえない距離ではない。もしや、鼓膜が破れているのか。

かなりの危険を伴うが、接舷して応急処置機能の復旧――処置要員(ダメコン)を送り込む事を考えながら夕張は、繰り返し如月に呼び掛ける。

 

 

意識が泥濘に囚われた中で、如月は記憶の手繰り糸が絡まり、時間(じだい)空間(ばしょ)も狂った支離滅裂な幻影が、彼女の脳裏に浮かんでは消えて行った。

下品に爆装したF4F戦闘機(ワイルドキャット)の急降下、離島基地への砲撃、魚雷発射管への直撃弾。

 

「ぎょらい……きじゃ……」

 

何処からか聞えて来た声。その音韻と、耳に馴染むその声音が、それぞれ別の過去(まぼろし)を呼び起こす。

魚雷の誘爆でかつての駆逐艦が轟沈したと思ったら、いつの間にか、妙に平たいメロンの様なナニかの説法を如月は聴いていた。

平たい……と云うより、四角いメロン?は、誰かより預かったらしい言伝を話している。

 

必ず帰る事。決して諦めないで生き抜く事。その誓約を誇りとする事。

 

その記憶が蘇るにつれ、如月の意識も鮮明さを増し、謎のメロンは四水戦旗艦と云う正体を取り戻し、ヤマトからの愛祝を、出撃前の如月達に語り聴かせ始めた。

 

「生きて、帰る……如月、まだ生きてる!」

 

その5日前の記憶に励まされ、如月は現実へと帰還した。

 

 

衝撃による意識障害が小康状態まで回復した如月は、全身の痛みと痺れに、再び意識が遠退きかけた。しかし、必死の形相で呼び掛ける夕張の声に、如月は我に返る。

 

「直ぐに魚雷を棄てて! 誘爆したら助からない!」

「魚、雷……?」

 

先程の白昼夢――真っ二つに裂けて轟沈した駆逐艦――それは今の彼女=艦娘・如月とは、何の関係も無い幻影だ。しかし、大破し炎上しかけている今現在、数十秒から数分後には起こり得る悪夢でもある。

 

睦月と出撃の直前に交わした、小さいけれど大切な約束を、魂の糧として如月は、敵機の妄執が見せた幻を正夢にしない為、炎が迫った魚雷発射装置に命令を下す。

立射が通常の発射姿勢だが、今の如月は膝とお尻が海面に落ちた割座状態(女の子座り)で、しかも立ち上がる事が出来ない。

しかし意外とそんな状態でも、何とか成るのが艦娘なのだ。

 

「魚雷って、太いわよね……いやん、こんなの、如月壊れちゃう」

 

発射角は背後――誰もいない筈――如月はいつもの様な軽口を呟きながら、太腿に装着された三連装魚雷を放出する。6本の魚雷は明後日の方向へと消えて行き、如月はひと先ずの危機を脱した。

 

 

 

 

ヤマト航空隊による制空権奪取と援護により、敵増援の小規模な機動部隊を退けた後、神通は兵装の簡易点検を命じつつ、W島方面へ第三水雷戦隊の舵を切った。

正面の敵を排除した今こそ、反攻に転じ、W島守備隊と雌雄を決すべき天の時である。そんな折、決戦に奮い立つ三水戦に冷や水を浴びせる、四水戦からの緊急電文が入った。

 

その暗号通信の内容を踏まえ、少しだけ思案してから三水戦旗艦・神通は、作戦行動を終息させる事を決断した。

 

「……状況を伝えます。敵艦隊は撤退を始めました。我が三水戦はこれを追撃せず、四水戦と合流します。それと――」

 

そこで神通は振り返り、この件で最も衝撃を受けるであろう駆逐艦・睦月を見つめ、努めて穏やかに語りだした。

 

「特に睦月ちゃんは、落ち着いて聴いて下さい。四水戦の駆逐艦・如月が大破しました。正直、かなり危険な状態らしいです」

「え? 如月、ちゃんが……」

 

神通が落ち着いた口調で淡々と告げたからか、睦月は初め、その意味を理解できなかった。だが、神通の言葉が浸透し、如月の現状を把握すると、その愛らしい顔は見る間に色を失った。

 

親友の状況に青褪める睦月を、気の毒に思いながらも神通は、心を鬼にして叱り付ける。

 

「狼狽えるな! だから四水戦と合流するんです。如月ちゃんの命は、私達全員の肩に掛かっているんですよ!」

「は……はい!!」

 

睦月の顔に気力が戻った事を確認すると、神通は前に向き直り、合流まで振り返る事は無かった。

 

 

複縦陣で第四水雷戦隊の元へ急ぐ中、軽巡川内と共に、先頭を務める神通は正面を見たまま、姉にだけ聞こえる声量で話しかけた。

 

「そのままで聴いて下さい、姉さん。睦月ちゃんの事です……」

「……判った」

 

神通の様子に内密な話であると、即座に理解した川内型の長姉は、正面を見据えたまま、声を低くして返した。

 

「もう落ち着きましたが……実際に如月ちゃんの姿を見たら、取り乱して飛び出すかもしれません。抑え役をお願いします」

「分かった……大丈夫だと思うけど、一応見ておく」

「すみません……」

 

前を見たまま目を伏せる妹に「それが旗艦の仕事だ」と川内は励まし、凛々しさを取り戻した神通は姉に礼を云った。

 

 

 

 

大破した如月の応急処置を手伝う為、彼女に接舷した第四水雷戦隊旗艦・夕張は、艦隊の指揮を軽巡洋艦・球磨に任せていた。

球磨は妹の軽巡・多摩と共に、零式水上偵察機を出撃させ、合わせて目視による周辺警戒に当たっている。

友軍(ヤマト)の戦闘機も高空から哨戒を行ってくれているが、球磨型1番艦(ネームシップ)――長姉としての矜持が、球磨に怠惰を許さなかったのだ。

 

そんな中、球磨は近付いて来る複数の人影を見つけ、それが神通ら第三水雷戦隊だと確認すると、彼女達に向って手を振った。

 

「おーい! こっちだクマー!」

 

球磨の変わらない様子に、三水戦の面々の頬が緩む。近付いた彼女達は適度な距離で停止・敬礼し、球磨も返礼する。

 

「お疲れ様です。早速ですが、状況が知りたいです。夕張さんはどちらに?」

「ああ、向こうだクマ」

 

少し離れた場所を球磨が示すと、そこには大破し重傷を負った如月と、接舷して応急手当てを行う夕張が居た。

 

本来なら全く水面から沈まない艦娘だが、お尻を海面に付けて力無く座っている如月の脚は、半分近く海水に浸かっている。

艤装は明らかに重大な損傷を受け、セーラー服は左肩を中心に千切れ飛び、腕や足にも無数の裂傷が見て取れた。他の処置を優先しているのか、米噛の上から頬を伝った血は拭われる様子も無く、急激な失血で青褪めた肌は煤に塗れている。

 

「っ……! 如月ちゃん――」

 

見るも無残な親友の姿に、思わず口元を覆った睦月は、踏み出しかけた一歩を無理矢理に抑え込んだ。

逸った自分を睦月が抑えた様子に、川内はその心配が無駄に終わった事を、神通にだけ見える様に目配せで伝える。

その、神通と川内が目線で会話している間に、睦月は固い声で夕張に話しかけていた。

 

「夕張さん、如月ちゃんは……?」

「その声、睦月ちゃん? 神通さんの代理? 悪いけど後にして。今、手が離せないの」

 

杞憂で済んだ懸念への密かな報酬として、旗艦を差し置いた睦月を黙認し、神通は改めて夕張に尋ねた。

 

「夕張さん、お疲れ様です」

「え、神通さん!? 済みま――」

「そのままで結構です。如月ちゃんの状態はどうですか?」

 

跪いて作業をしていた夕張が立ち上がろうとするのを、神通は押し留めた。その厚意を受け、夕張は作業を続けながら答える。

 

「見ての通りダメージは大破――むしろ轟沈寸前と云っても良いですね。火は消し止めましたし、浮力も維持していますが、主機に水が入ったせいで航行能力を喪失しています」

「となると曳航艦が必要ですね」

「ええ、それも万全を期す為にも、2隻での曳航が理想です」

 

如月の被害は深刻だ。1隻での曳航では、如月の身体への負荷が大きくなる可能性があるし、曳航艦の負担も大きくなる。

神通は瞠目して麾下の艦娘から1人を思い浮かべ、そして彼女はチラリと睦月を横目で見た。睦月は肩を震わせているが、しっかりと理性を働かせている。

 

「麾下の艦隊から、1隻づつ曳航任務に就かせしょう。三水戦からは睦月ちゃんを出します」

「えっ……?」

 

思わず自分を指名した相手を見る睦月を尻目に、作業に区切りが付いたらしい夕張が顔を上げた。

 

「分かりました。四水戦は弥生ちゃんに曳航させます。それと道中も応急修理の続行と、不測の事態に備える為に、私は自由で居たいんです。神通さん……四水戦をお願いできますか?」

 

旗艦として、無責任の誹りを受けかねない弁だが、神通は一理あると判断した。

 

艤装の妖精(クルー)の能力は、装着する艦娘の影響を受けて、個性的な成長を遂げる場合がある。

如月の被害状況を鑑みれば、応急修理妖精や技術妖精の練度が高くなっている夕張が、旗艦任務から解放される意味は大きい。

だが、四水戦には夕張以外にも水雷戦隊の旗艦候補――軽巡洋艦は居る。その事について訊くと、球磨と多摩は既に了承済みらしい。

 

「分かりました。これより四水戦は、この神通が預かります」

「ありがとうございます。神通さん、皆をお願いします」

「はい。必ず全員で鎮守府に帰りましょう」

 

丁寧に頭を下げる夕張に、微笑んだ神通は正しく華の様だった。

 

 

三水戦と四水戦の合併に伴う、指揮系統の再編や確認をする為、神通は2隊全員へ召集を掛けた。

全艦の集結をしばし待つ神通に、刎頚の友の曳航を任じられた睦月は頭を下げる。

 

「神通さん、如月ちゃんの曳航を任せてくれて、ありがとうございます」

「貴方が一番の適任だった、それだけですよ」

 

高い重心(トップベビー)で、安定性と余剰浮力に不安のある吹雪は、そもそも曳航に適さない。今は麾下に入った四水戦も含め、駆逐艦の最大戦力たる夕立を戦列から外す事は得策ではない。

消去法的な理由を、睦月に掻い摘んで説明した後、神通は1つ付け加えた。

 

「それに同型艦(姉妹)で仲の良い貴方なら、何かとフォローもし易いし――何より彼女の励みになるでしょう?」

「はい! 睦月感激です」

 

曳航任務を与えられた理由を噛み締める睦月に、神通は頓着せず、辞令を告げる。

 

「今後は夕張さんの指示に従って下さい。艦隊再編が済み次第、直ちに現海域を離れ、鎮守府に帰投します」

 

如月の曳航準備を整えて、待機するよう命じた神通の背に敬礼すると、睦月は親友の元へと向かった。

 

 

如月と夕張から離れていた僅かな時間に、彼女達の許へと先客が訪れていた。

 

「弥生ちゃん、早いね」

「睦月、頑張ろう……」

「はい。必ず如月ちゃんを、鎮守府まで連れて帰りましょう」

 

言葉が少ないきらいがある睦月型の三番艦(いもうと)=駆逐艦・弥生は、片手で握り拳を作り、長女に薄く笑いかけた。

 

少しでも浮力を稼ぐ為に如月の艤装は、夕張の手で主砲や魚雷発射管などが取り外されていた。撤去された兵装は、躊躇無く海洋投棄されて水底に沈んている。

軍艦として活躍してきた艦が爪牙を抜かれ、戦斗艦から非武装艦へと、艦娘としての衣装(ドレス)を剥ぎ取らて、四肢や背部艤装の固定器具のみにその名残がある姿は、一見には痛々しい。

だが、もっと痛々しい本人の怪我の所為で、逆に戦いと云う重荷から解放され、ただ1人の少女と云う本来の姿に立ち返ったかの様にも見えた。

 

改めて夕張に、指揮下へ入る旨の挨拶をした睦月と弥生は、曳航隊長(ゆうばり)から如月の弾薬を可能な限り彼女達に移し、残りは放棄せよと指示を受けた。

 

「何なら全部捨てちゃっても構わないわ。艦隊再編は数分で済む筈だし、出発が遅れる事は避けて」

「はい、分かりました」

「うん……」

 

ハキハキとした睦月と、小さく頷く弥生――2人の返事を認めた夕張は、神通の許へと向かった。

 

 

満載定数の7割も残っていた12cm砲弾や、使用されなかった予備魚雷などを移管する間、腰が落ちたままの如月は終始無言で、睦月達に身を委ねている。

口達者で気遣いが巧く、艶然さと柔和さを同居させた如月は、年齢以上に落ち着いている。だが、やはり年頃の女子らしくお喋り好きだ。

機微に敏い話し上手の親友が、無口になっている事を、睦月は重く受け止め、殊更に確実かつ迅速な作業を心掛けた。

 

既に艦隊は集結し、全員から一通りの状況報告を受けた神通が、テキパキと情報を処理して、新編成を構築している。

時間的余裕が無かった為、睦月と弥生で合わせても、移せた弾薬は半分弱で、残り半分強は海へ投棄する事となった。

数分後には発つ事を察した睦月は、これまで俯き気味で殆ど喋らなかった如月の正面にしゃがみ、怪我に障らないよう優しい声を作った。

 

「如月ちゃん……これから、曳航態勢をとるよ――立てる?」

 

返事を待たずに睦月は、腋から腕を回して如月を抱く様に支える。立つ用意の確認を耳元で囁き、如月が擦れた声で了承すると、睦月は全身に力を入れた。

 

「睦月に体重を預けて……ゆっくり、立つよ」

「ええ。うぅ……んん!」

 

睦月の助けを借りて何とか立ち上がり、如月は親友の肩に顎を乗せ、長い息を吐いた。対して睦月は、腰砕けの人間を立たせた苦労を、如月に悟らせない様に呼吸を抑えている。

 

「睦月ちゃん、温かい……」

 

如月の様子にどうにか誤魔化せたと、睦月は心の中で息を吐いている。

そんな、傍から見れば恋の逢瀬を思わせる2人に、弥生はジットリとした目を向け、視線に気付いた睦月()は曖昧に笑った。

 

低温高湿の鈍い眼光にかまける程、彼女達に暇は無い。睦月の促しで弥生が隣に寄ると、傍に感じる気配に、如月は状況を再認識した。

つまり、今自分を抱き支えている睦月と、隣にいる弥生が、2人で曳航してくれるのだ。漸く調ってきた呼吸の中で、如月はゆっくりと口を開く。

 

「睦月ちゃん……」

「なぁに……? 如月ちゃん……」

「睦月ちゃんには……左舷から、支えて欲しいわ……」

 

精彩を欠きながらも艶のある如月の声音に、普段以上の甘い響きを睦月は感じた。それだけなら良いのだが、内容は少々妖しい代物である。

 

「如月ちゃん? それ、怪我してる方だよね……」

だからよ(・・・・)……痛いなら――貴方から受ける痛みなら、きっと平気だから……」

 

今度はハッキリと感じる妖艶さ――嫋やかに微笑む如月の、色が薄まった唇から紡がれる睦月への言葉は、正しく睦言だった。

 

「なーん・ちゃっ・て……」

 

女性間でよく使われる会話術の1つ――冗談でなければならない(・・・・・・・・)発言を、冗談に押し込める手法。如月は洒落で済まない失言を口にはしないが、逆を返せば本気と取られる事も、観念の内に入っている。

 

あの聡明な如月が、自らの負傷を冗談のネタにする様な悪趣味――真意は何処に在るのかと、睦月は訝しみ声帯が震える。

 

「っ……んッ」

 

喉から出掛かった意味蒙昧なものを呑み込み、睦月は希望通り左半身を支える為、如月の背中から己が左腕を外す。

そして左腋に通した右腕で如月を支えつつ、彼女の左側に回り込み、睦月は親友の耳元に唇を寄せ――帰還後の予定を繰り上げた。

 

「大好き……」

 

既に如月を、右側から支えている弥生に聞こえない様に、睦月は声を絞って囁く。出撃前の約束、伝えたかった想いを告げる。

如月はピクリと震え、青褪めた肌に、僅かだが赤味が戻った気がした。意趣返しが出来た様で、睦月は少しだけ気分が良い。

 

「帰ったら、じっくり(・・・・)お話しようね」

 

特にさっきのコトについて……と睦月が言外に込めた意図を察し、如月は内心苦笑い――上げて落とすなんてね……と思いながらも、約束(たのしみ)が増えたと帰郷への意志が強まる。

 

右から視線を感じた如月が、目線だけを振ると、何やら弥生が眉を寄せていた。

 

「別に――気にしてなんか、ない……」

 

正面へとそっぽを向いた弥生の心情は、少しとは云え調子が戻った如月には、手に取るが如しだ。

要するに弥生は、睦月達が内緒話をしたと思ったらしい。弥生が仲間外れみたいに感じ、拗ねていると察した如月は、いつもの様に舌先に紅を乗せて洒落込んだ。

 

「ふふっ……王子様2人を独り占めするなんて、贅沢だなぁって思ってね……」

 

嘘は云っていない。足が動かない自分にとって、睦月は白馬の騎士その物だし、同じ任務を帯びた弥生も同格だ。

 

「そんなコト、云われても、別に――弥生、女の子だし……」

 

素っ気ない風を装おうとして、気色が滲んだ弥生の揚げ足を見逃し、その弁を肯定しながら、如月は言葉を紡ぎ足す。

 

「そうよね。2人が王子様だと、如月が悪女みたいだし……両手に華の方が、素敵かしら?」

 

そこで何時もの常套句。弥生は口元を綻ばせ、睦月も笑みを零す。

 

そして睦月と弥生は、この愛すべき姉と共に帰還すると、改めて決意した。




F4F戦闘機:史実における駆逐艦如月の最期。

太いわよね、いやん:ナニの事を云っているのだろうか。謎である。

狼狽えるな!:神通の沖田艦長化が止まらない(笑)。


あんまり、書くネタが無い。しいて云えば、中々キリの良い処まで進まなかった事か。
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