宇宙戦艦ヤマト、推して参ります!   作:るーしー

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ちょっと短めの最終話です。


第1次W島攻略作戦(F)

三水戦・四水戦の臨時連合艦隊は、W島海域を後にしてから、昼夜兼行での強行軍を断行。友軍勢力圏の島で、半日の休憩を取り、5日目の昼過ぎに鎮守府沿岸まで帰って来た。

復路・損傷艦を優先する原則に従い、ここからは如月達3人が先頭になる。

 

睦月と弥生――妹たちに支えられる如月は、不意に微睡みから目覚め、ゆっくりと項垂れていた顔を上げた。

如月の瞳に映った光景は、見慣れているもの――しかし如月の胸に、心臓が張り裂けそうな切なさが湧き起こり、紫水晶の瞳から流れ落ちた雫が、煤で汚れた頬を洗う。

 

「鎮守府の海……何もかも、みんな懐かしいわ……」

 

そして如月は、眠っていた自分が目覚めた理由を、直感的に理解した。

 

「睦月ちゃん、弥生ちゃん……ありがとう、好きよ」

 

云い終えると、如月は静かに息を吐きながら、眠る様に目を閉じた。そして如月の全身から力が抜ける。

 

「如月ちゃん? ッ如月ちゃん、しっかりして!」

「増速、黒20! 急いで如月ちゃんを陸に!」

 

異常を察した夕張の叫びに、我に返った睦月と弥生は、工作艦・明石の待つ上陸所に急いだ。

 

 

海から上がった睦月達は、ずっと曳航して来た如月を、待機していた明石に預けた。

明石はボロボロの艤装を手早く外し、如月を横たえて診察する。

 

そして、明石は沈痛な顔で目を伏せ、首を横に振った。既に手遅れ、それが明石の診断だった。

 

また、出迎えに来ていたヤマトも、数世紀先(自分)の技術水準なら或いは――と、如月の身体をスキャンし、蘇生限界点を越えている事を認めて項垂れた。

 

「そんな……如月ちゃん! うぁあああ――!」

 

冷たくなっていく如月の亡骸に、縋り付く睦月の悲痛な慟哭は、途切れる事無く、鎮守府に響き続けた。

 

 

 

 

 

 

数日後、寮の部屋で寛いでいた夕立は、いつもの自主訓練から帰って来た吹雪に、労いの声を掛けた。

 

「吹雪ちゃん、お疲れっぽい」

「ただいま、夕立ちゃん――」

 

そこで言葉を切った吹雪は、部屋の中を見回し、もう1人のルームメイトが居ない事を確認して続けた。

 

「――睦月ちゃんは、まだ帰ってないの?」

「まだっぽい~」

「そう……」

 

心情を汲んだ神通により、W島から鎮守府に帰還した夜は、親友の傍に居る事を睦月は許された。しかし、翌日になっても睦月は部屋に戻らなかった。

そして昼頃になって夕張から、暫らくの間は睦月が、工廠に詰める事になったとだけ、告げられた。

 

工廠に来るなとは云われてないが、睦月の泣き顔が脳裏にチラつき、腫れ物に触る愚を避けるつもりで、彼女の帰りを吹雪達は待っていた。

しかし、中々部屋に戻らない睦月に、そろそろ吹雪は痺れを切らしつつあった。

 

「よしっ! 今から睦月ちゃんに会いに行こう」

「ぽい。夕立も付き合うっぽい!」

 

胸の前で握り拳を作った吹雪に、夕立も同調する。かくして、2人は一向に戻って来ない睦月に会いに、工廠へと向かった。

 

 

 

 

工廠に着いた睦月と夕立は、薄暗い廊下を睦月を探し歩いた。しかし中々、睦月の姿は見えず、どんどん工廠の奥へと進んで行く。

そして大規模改装ドックと記された扉の前まで来ると、何やら聞き慣れた声が漏れている。

 

「……装……ック、完了……わ――月ちゃん」

「この声、夕張さん?」

「…………ぽい!」

 

聞き耳を立てようとした吹雪とは対照的に、夕立は扉に歩み寄ると、躊躇無く開いて中に入った。

 

「あっ、待ってよ夕立ちゃん!」

 

ぽいぽいと入室した夕立を、吹雪は駆け足で追う。

部屋の中には夕張と工廠長の明石、そして見慣れない艦娘の姿があった。その艦娘は吹雪達に気付くと、柔らかく微笑んだ。

 

「あら? 夕立ちゃんに、吹雪ちゃん――久しぶり、迎えに来てくれたの?」

「ぽ、い?」

「えっ? まさか――」

 

その笑顔に友人の面影を見た吹雪は、彼女の正体を悟ったが、睦月の容姿は余りにも変わり過ぎている。

 

背丈は記憶よりも一回り大きくなり、腕や脚はスラリと長い。ショートだった髪は、如月の様に背中まで伸び、耳の横から胸元に下ろした髪の房で、豊かになった胸を誤魔化しているのが、吹雪の琴線を刺激した。

 

だが、何より目を引くのは、艤装の変化……いや進化である。

豆鉄砲以下と揶揄される、2挺だけの7.7mm機銃は撤去。強力な25mm三連装機銃が集中配備された上に、13号対空電探と高射装置が増設され、対空性能が恐ろしく強化されている。

魚雷発射管や爆雷投射機には防盾が追加され、主砲は12cm単装砲から12cm連装砲へと改修、単純計算で倍の火力を持つに至っていた。

 

ハッキリ云って面立ち以外は別人であるが、夕張も明石もこの艦娘が、間違い無く睦月であると断言している。

 

「でも、その姿は一体……?」

「そうね、云うなれば――如月ちゃんからの、贈り物かな……」

 

吹雪の問いに答えると、睦月は12cm連装砲の砲身を愛しげに撫でた。

 

 

 

 

W島より帰還した夜、工廠のドックに設けられた霊安室には、簡易ベッドの上に清拭された如月が寝かされ、磨かれた彼女の艤装がその横に置かれて居た。

ベッドサイドのパイプ椅子には、涙の跡が残る睦月が、悲哀に満ちた顔で座り、ポツポツと物言わぬ如月に話しかけている。

上品でゆったりとしたドレスを纏う如月の表情は穏やかで、その肌が月夜の新雪を思わせる命無き白さで無ければ、良い夢を見ている様にしか見えない。

 

語り疲れたのか、いつしか睦月は、如月のベッドに突っ伏して眠りに就いていた。泣きながら眠る睦月の身体は、ぼんやりと光り、照明の落とされた部屋を薄く照らしている。

 

 

翌朝、様子を見に来た神通は、己が目を疑った。睦月が光っているのは良い。改装が出来るまで成長したと云うだけの話だ。

しかし、身罷った筈である如月の艤装が、睦月と共鳴するように輝いていると云う異常事態に、神通は茫然自失する。

 

数十秒で己を取り戻した神通は、明石を呼びに走って行った。

そして、何故か光っている如月の艤装と、睦月についての調査が行われた。その結果、如月の遺した艤装を元に、睦月の改修装備を開発する事が決定。

漸く睦月の改装が済んだ処に、吹雪達が入って来たのだ。

 

 

 

 

経緯を語り終えた睦月は、心配そうに言葉を探している吹雪に、如月の様に嫋やかな微笑みを見せた。

 

「大丈夫だよ。睦月が憶えている限り、この胸の奥で、如月ちゃんは生き続ける。それに――」

 

改装された艤装を誇る様に、睦月は腕を広げる。

 

「この艤装には、如月ちゃんの想いが宿ってるから……」

 

慈愛と気高さを内包した美しい笑み……哀しくも無いのに、吹雪は目頭が熱くなった。

 

 

如月の御霊は、死して尚、その気高い意志と共に、睦月の傍に在り続ける。




前書きで云った事は嘘です。これは最終話ではありません。つまり April F ですね。
と云うか、本編(正史)ですら無く、本来の話は別に作ってあります。


このW島を執筆するに当たり、悩んでいた事がありました。物語の結末です。
端的に云えば、如月の生死について。助かるか、命を落とすか。

ただしBAD ENDについては、決めていた事があります。
如月の死に場所は、睦月の腕の中で、睦月に看取られる事。睦月は、如月とキチンとお別れする事です。



ちなみにこの話ですが、睦月型改二の実装と云う時事ネタも取り込み、1日でムリヤリ書き上げたので、クォリティが低いです。


睦月改二:如月が遺した艤装を、睦月の艤装と融合。亡き如月の想いが、対空性能の大幅強化と、弾薬部の防御力向上と云う形で顕現した。
12cm連装砲は主に夕張が張切り、2人の主砲を一度分解してから、改造・合体させたもの。
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