「もしもし? あ!? メリー……誰だよ!」
ブチっと、後輩は電話を切った。僕は勝手に家に来て寛いでる後輩を見て、首を傾げる。
「どうしたの?」
「え? なんか知らんやつから電話きた!」
自分で持ち込んだ漫画を読みながら、後輩はどうでも良さそうに言った。メリー……なんか都市伝説で有名なあれかと思ったけど。まぁイタズラ電話なのかな?
ブーブー。
また後輩の電話が鳴る。イラッとした顔で彼女は通話ボタンを押した。
「もしもーし」
『もしもし? 私、メリーさん。今、郵便局まで来たの』
「あっそ」
何故かスピーカーにしていたので通話相手の声が聞こえてくる。それはまるで機会音声の様で、人間味のない声だった。
「あれ、切れてる」
「ほんとだ」
僕がスマホの画面を覗き込むと、すでに通話は切られていた。後輩は自分のスマホなのに全然興味なさそうだ。
しばらくして、再びブーブーとスマホが電話を知らせる、画面をみると『メリーさん』という文字が。登録してるの?
「なんなんだよこいつマジでー」
嫌そうに顔を歪めて、後輩は仕方なくといった様子で通話ボタンを押した。スマホから、またメリーさんの声が聞こえてくる。
『私、メリーさん。今あなたの家の前にいるの……』
「マジ? じゃあエアコンつけっぱになってないか見といて」
漫画から目を離さず後輩は言う。いや、メリーさんって話通じるタイプだったかな? と、ぼんやり考えた。
『分かった』
分かったんだ。
『ガチャリ』
扉を開く音。後輩に「鍵締めてないの?」と聞くと「盗られるようなもんないし」と返ってきた。
『ゴソゴソゴソゴソ……ピッ』
「エアコンやっぱ付けっぱだったかぁ」
ちゃんと消してくれるらしい。メリーさんって優しいんだなぁ。都市伝説とかだと"後ろにいるの"で大体話が終わっていて、その後どうなるかまで言及されることは少ない。でも案外、話せば穏便に済むタイプなのかも……そんなことを考えながら、ちょっと興味が出てスマホから聞こえる音に耳をすましていると
『ガタッ! ガタガタッ! ドゴっ!』
「え? え?」
突然、激しい物音が聞こえ始めた。慌てて後輩の肩を叩く。
「なに?」
「なんか暴れてるけど」
「ハァ!?」
一瞬で沸騰する後輩。
『バキッ! ゴトゴトッ!』
その間も、物音は激しくなっていく。
「アァ?! 舐めてんじゃねぇぞ! 私の部屋で何してやがる!」
バァン! と、僕の家の扉を刎ね飛ばす勢いで後輩は何も持たず飛び出していった。スマホからはまだ物音が聞こえている。しかし、しばらくすると一際大きい音が聞こえ始めた。
『テメーっ! 何暴れ……な、なんだとっ!? オァァァァァァァア!!』
スマホ越しに後輩の叫び声が耳をつんざく。
一体、何が……。
ブーブー。
と、僕のスマホが通話を知らせる。画面を見ると『メリーさん』の文字が。戸惑いながらも、何故か指は勝手に通話ボタンを押していた。スマホの向こうから、あの機械のような声が聞こえてくる。
『ハァ……ハァ……わた、私、メリーさん……今
あなたの後ろにいるの」
何故かその声の主は荒く呼吸をしていて、いつの間にか、その音はスマホからではなく『後ろ』から聞こえてきた。
終
・先輩
振り返らず電話を切った。その後、連絡帳の『寺田くん』の番号を見せて、なんとか帰ってもらった。
西洋人形のような見た目をしたメリーさんが棚の上を見て、嫌そうに顔を一瞬歪めた理由はわからない。
・後輩
帰宅した時に、部屋で増えてる5体くらいのアニメフィギュアと、知らない西洋人形が苛烈な戦いを繰り広げていた時には流石に驚いた。
その戦いに巻き込まれて、西洋人形の右腕とアニメフィギュア三体を破壊する。
・寺田くん
寺生まれで非常に強い霊力を持つ。
メリーさんと名乗る謎の存在から電話が来たが、声を聞いただけで悲鳴をあげて切られてしまった。
後日、コンビニのプリンと共に謝罪してきた想い人に対して首を傾げる。
・メリーさん
失われた右腕はアニメフィギュアの右腕を奪い補完した。