「せんぱーい。ケーキ買ってきたから食べよー」
夜ご飯を作っていると、後輩が訪ねてきた。
彼女はもう勝手に中に入ってくるので、僕はキッチンに立ったまま彼女を出迎えた。
「冷蔵庫入れていい?」
夜ご飯は食べていく前提らしい。色々会話をすっ飛ばしてケーキを冷蔵庫に入れている後輩の方を何気なく見た。
揺れるツインテール。
その影に何かがいる。最初は髪の毛かと思った。でも違う。
カラスだ。
「家に動物連れてこないでよ」
「? なにが?」
ちょっと汚いな、と思って後輩を咎めるが、彼女は首を傾げるばかりだ。ちょうど肩に乗ったカラス頬が当たって後輩の顔がムニっと変形する。
「だから、そのカラスだよ」
僕が後輩の肩に止まるカラスを指さすと、そのカラスがこちらを向く。目は一つしかなかった。そして指を差すなと言わんばかりに嘴を大きく開いて中の牙を見せながら威嚇してくる。
「? 何言ってんの? 先輩またへんなの見えてるんじゃない?」
見なかったことにした。
次の日
カラスはまだ後輩の肩にいる。
後輩のことを一つしかない目で、ジッと見ている。
次の日
朝、後輩と歩いていると、カラスは通りすがりの人の肩に乗り移った。不気味だと思っていたので、少しホッとしていると、カラスはその人の首を啄み始めた。
首の中から管のようなものが出てきて、カラスはそれをは引っ張り、千切り、食べる。
でもその人は何事もなかったように駅に向かって歩いて行った。
学校に着くと、電車の人身事故があったと話題になっている。何人か遅刻した。
次の日
カラスがまた後輩の肩にいる。
また通りすがりの人に飛び移り、首から何か管を取り出して食べる。
近所で建物の高いところから人が落ちたと聞いた。
次の日
カラスは後輩の肩に乗って僕を見ていた。
目はわずかに歪み、どこか笑っているように見える。
ツンツンと、後輩の首を突いた。
次の日
カラスが後輩の首を噛んだ。
後輩はカラスを掴み、地面に叩きつける。そして踏んづけた。その後、キャハハと笑ってコンビニのゴミ箱に叩き込んでいた。
次の日
カラスが後輩の肩に止まっていた。
僕の方を見ている。困惑しているのが伝わった。
意を決して、カラスが後輩の首を突いた。
後輩はアスファルトでカラスをすり潰した。
次の日
カラスが電柱に止まっている。
後輩はそれを見上げていた。最初と違ってもう見えているらしい。
「降りてこい」「たたきにしてやる」「次は燻製だ」と叫んでいて恥ずかしかったので、先に学校へ向かった。
夕方、近所の人がバーベキューで燻製をしていた。
次の日
カラスは僕の肩に止まっていた。ジッと見つめ合う。触ろうとしたけどすり抜けた。カラスはうんうん、と頷いている。
終
・先輩
なんとか餌付け出来ないかとお供え物をあげて懐柔しようとした。
・後輩
次は鍋で煮込んでやろうと考えていたのに、顔を見せなくなってちょっと寂しく感じている。
・寺田くん
寺生まれで非常に強い霊力を持つ。
登校してきた想い人の肩に乗っていた凶運を呼び込む怪異との熾烈な戦いの果て、無事勝利する。
・近所の人
バーベキューのついでにベーコンを作っていた。