「先輩さぁ、呪いのビデオって知ってる?」
家に来た後輩が、突然そんなことを言い出した。昔見たテレビのホラー特集で、そういう話を見たことがあるような気がするし、金曜ロードショーでそれを題材にした映画を見たことがあるような気がする。
「これなんだけどさ」
と言って、後輩が鞄の中から取り出した物を机に並べる。ビデオテープ、僕は久しぶりに見た。昔住んでた村で、まだビデオが見れるテレビを置いているおばあちゃんがいて、そこで何かの映画を見せてもらった記憶がある。
そのビデオテープが、真っ二つに割れて中から黒い磁気テープをぐちゃぐちゃに露出させている。
「これは……?」
僕は戸惑った。
呪いのビデオというくらいだ、きっと何かしら呪われた何かがあるんだろう。後輩のことだ、出てきた何かにムカついて、壊したに違いない。
しかし珍しく後輩はしおらしくしょぼんとしていた。
「踏んで壊しちゃった……」
そっか。
とはいえ、なんでこんなに落ち込んでいるのだろう? と僕は訝しむ。
「高値で、売れるはずだったのに……っ!」
なるほど。僕は納得した。
しかし、もうこうなってはゴミ箱行きにしかならないだろう。というか、後輩は僕の家にこれを捨てていくつもりなのでは? そう疑い、僕は無言で首を振る。
「あ、先輩疑ってるなぁ? ちゃんと持って帰るよぉ」
もちろん、持って帰らなかった。
次の日、後輩に返そうとカバンに呪いのビデオを入れて、学校へ向かう。今日に限って後輩は先に行ってしまっていた。いや、わざとかもしれない。
流石に怒ろう。そう決意して、とりあえず学校に行く。
そのまますっかりビデオのことは忘れて、学校に着いてしまった。なんだったら後輩の中学校に寄ろうとすら考えていたのに、教室に来てようやくそれを思い出した。
しまったなぁ。なんて、考えながらカバンを開けると、ぐちゃぐちゃだったビデオテープが綺麗な形に収まっている。おや? と思い、取り出して机に置いてみた。
後輩に踏まれて割れたはずの部分が、綺麗に繋がっているし磁気テープも綺麗に巻かれている。
どうしたものかと、思った。
これはまた……厄介な代物だろう。後輩の顔が頭に浮かぶ。彼女はこれを売却したがっていた。今の見た目なら、きちんと売れそうだし……返した方がいいのかもしれない。
そう思って鞄の中にしまった。
はずだったのだ。
放課後、鞄の中を探す。
無い。
「あれ?」と僕。
「どしたん?」
友人が首を傾げるが、僕は鞄の中を探し続ける。無い。あのビデオテープがない。
「あれぇ?」
「何探してんの?」
「これくらいの、ビデオテープなんだけど」
手でサイズ感を見せて友人に聞いてみるが、彼女も知らないと言った。盗まれた……?
むむむ、と唸るが、ないものは仕方ないのでとりあえず今日は諦めることにした。そして忘れた。
「呪いのビデオって、知ってる?」
数日後、友人からそんな話を振られた。
僕はその時に、後輩から押し付けられたあのビデオのことを思い出す。
「なんかな、最近そんなんが出回ってるらしいねん。内容はよくわからんねんけど、まぁでも大体予想つくやん? 映画とかにもあった気がするし」
僕の元から消えたあと、どうやら人の手を渡り歩いているらしい。困ったな。僕はどうしたものかと考えるが、どうしようもないのである。
これを知った後輩は何て言うだろうなぁ。
その日の夕方、後輩が家を訪ねてきた。
「先輩さぁ、呪いのビデオって知ってる?」
家に来た後輩が、突然そんなことを言い出した。僕が「この前のやつでしょ?」と返すと、後輩はニコリと笑って首を傾げた。
「これなんだけどさ」
と言って、後輩が鞄の中から取り出した物を机に並べる。見覚えのあるビデオテープだ。そのビデオテープが、真っ二つに割れて中から黒い磁気テープをぐちゃぐちゃに露出させている。
「えと、これは?」
戸惑いがちに聞くと後輩はしょんぼりとしてこう答えた。
「踏んで壊しちゃった……」
「売ろうと思ってたのに?」
「そう、高く売れるはずだったのに……」
僕は、とりあえずビデオテープを持ち上げてみる。うーむ、見たことがある……よね?
「ここに、置いていかないでよ?」
後輩に言い聞かせたが、もちろん彼女は置いていった。
次の日
後輩に返そうと思って鞄の中に入れておく、しかし今日に限って後輩は先に学校へ行ってしまっていた。
今度こそ怒ろう。
そう思いながらすっかり登校中には忘れてしまっていて、後輩の中学校に寄ろうと思っていたのに高校まで持ってきてしまった。
カバンを開けて、そのことを思い出す。しかし、中に入っていたのはあのぐちゃぐちゃになったビデオテープではなく、真っ二つに割れた部分が綺麗にくっついて、磁気テープも綺麗に巻かれた状態のものだった。
「……?」
一体何が?
そう思いながら、とりあえずカバンの中に入れたままにしておいた。オカルト部で相談するのもいいかもしれない。
放課後、カバンを開けるとビデオテープが無くなっていた。僕は盗まれちゃったのかなぁ、なんて考えながら帰路につく。
後輩に返してあげたら、喜んだかもしれないのに。少し残念に思いながら、そのままビデオテープのことは忘れた。
「呪いのビデオって、知ってる?」
数日後、友人からそんな話を振られた。
僕はその時に、後輩から押し付けられたあのビデオテープのことを思い出す。
「なんかな、最近そんなんが出回ってるらしいねん。内容はよくわからんねんけど、まぁでも大体予想つくやん? 映画とかにもあった気がするし」
僕の元から消えたあと、どうやら人の手を渡り歩いているらしい。困ったな。僕はどうしたものかと考えるが、どうしようもないのである。
これを知った後輩は何て言うだろうなぁ。
その日の夕方、後輩が家を訪ねてきた。
「先輩さぁ、呪いのビデオって知ってる?」
終
・先輩
ビデオテープの再生の仕方はよくわかっていない。とりあえず昔の分厚いテレビに差し込み口があるのは知ってる。
・後輩
ビデオテープは普通に忘れていった。
次の日、待ち合わせ場所にいつまで経っても先輩が来ないので、置いていく。
・寺田くん
寺生まれで非常に強い霊力を持つ。
いつまで経っても登校してこない想い人を心配する彼女の友人から話を聞いて、学校を抜け出し捜索する。河川敷に転がる黒い塊を発見し、その中に想い人が囚われていることに気付く。
想い人の身体中にまとわりつく磁気テープを全て剥がし救出したあと、磁気テープの山はいつの間にか消えてなくなってしまった。
・呪いのビデオ
時代が移り変わり、利用者が減ったことで影響力を失いつつある。どうしたものかと適当な人間を捕まえて学習。時代はサブスクだよね。