後輩ちゃん、怪異を連れてくるのはもうやめて   作:笑石

7 / 7
雨の日に彷徨くナニカ

 

「雨の日に、出るんだって」

 

 今日は朝から雨が降っていた。僕が少し憂鬱な気持ちでバスに乗って登校途中、一緒に乗り合わせた乗客の話が耳に入ってくる。

 

「火事で亡くなった子供が、無くなった家を探してるんだよ」

「なにそれ、ダジャレ?」

 

 話題の重さの割に、話している子達の声は明るい。周囲の乗客達も、BGMのように聞き流している。僕はなんとなく、続きを聞いていた。

 

「てかなんで雨の日なの?」

「雨じゃないと、体についた火が消えないじゃん」

「そういうものかなぁ?」

 

 そういうものなのだろうか。僕もそう思った。

 

「てかどこで出るの」

「さぁ……」

 

 一番大事なところはわからなかった。

 

 

 

「今日さぁ、マジやばいの見かけたんだよね」

 

 後輩がわざわざ雨の中家に来て、とても楽しそうにそう言った。僕が「やばい?」と聞き返すと「そそ、やばいやばい、本当にやばい」と彼女は続ける。

 

「なんか、燃えながら歩いてるガキがいたの」

 

 雨に濡れたツインテールを一度ほどき、僕の家のタオルで勝手に拭きながら後輩はケラケラと笑った。笑う要素はどこだろう。

 

「いや絶対熱いじゃん、と思って話しかけたんだよね」

 

 よく話しかけられるな。僕は後輩の無鉄砲さに心底驚いた。

 

「そしたらさ、『家どこ?』って聞いてくんのね。私がなんで燃えてんの? って聞いてんのに、質問に質問を返してきたわけ。むっちゃムカつくよねそういうやつ、殴ってやろうかと思った。そういえばクラスにもそんな奴いてさ、一回殴ってまず質問に答えろって言ったんだけど、校内謹慎くらった」

 

 僕は後輩からハラスメントを受けたクラスメイトに同情した。とりあえず話脱線したなって思いながらも「そっか……」とだけ返す。

 

「で、何回かやり取りしてもずっと『家どこ?』って聞いてくるから……適当にあっちの方指差したんだよね」

 

 あっちだったかな? こっちだったかな? 後輩は僕の家の窓から適当な方を指差す。

 

「そしたら、なんかどっか行ったんだよね。なんだったんだろあいつ」

 

 

 次の日

 この日は、雨が上がって晴れていた。消防車のサイレンがけたたましく鳴っている。どうやらどこかの家が火事らしい。昨日くらい雨が降っていたら、すぐ鎮火していただろうに。

 僕自身も火の始末はきちんとしただろうか? と家を出る前までの記憶を思い出す。まず今日は使ってない。昨日はちゃんと消した。よし。

 

 

 

 

 三日後

 朝から今日はまた雨が降っている。

 後輩が「燃えてるガキ探したら見つけた」と言っている。

 なぜ探すのだろう。「バケツで水かけてやったよ」と笑っている。火を消してあげたかったのだろうか。「消えないから、熱いし逃げた」向こうも逃げたかったと思う。

 

 

 次の日

 また雨が降っている。

 学校で、「ツインテールのガキはどこだ」と人探しをしている子供の噂を耳にする。しかもその子供は、雨が降っているのに身体が燃えているらしい。

 なんだか覚えがあったけど、忘れることにした。

 

 

 次の日

 また雨が降っている。ここ最近で一際強い雨だ。今日は用事があったので後輩を中学校まで迎えに行って、一緒に帰った。

 視線を感じて振り返ると、雲が分厚いせいで少し薄暗いのに、やたらと明るいなにかが向こうの角からこちらを見ている。僕は目を逸らした。

 

 

 次の日

 今日はカラッと晴れた。

 しかし消防車のサイレンがけたたましい。

 どうやら近所で火事があったようだ。後輩の家から結構近いので心配になって連絡したが、彼女は無事で元気そうだった。

 

 

 次の日

 後輩が手に火傷をしていた。どうしたの? と聞くと「勝った」と答えてきた。何に? 

 

 

 

 

 終

 

 

 

 

 

・先輩

 後輩が火傷しているのを見た日の夜、何気なく窓の外を見たら夜なのに明るい一角があった。なんだか焦げ臭い気がしたけど、寝た。

 

 

・後輩

 焼肉を食べたくなった。

 牛タンなら何枚でも食べられる。

 

 

・寺田くん

 寺生まれで非常に強い霊力を持つ。

 想い人の近所で不審な火事が続いた為、不穏な気配を感じて深夜にパトロールしていた。

 日が明けるころ、想い人の家を燃やそうとする放火の怪異と遭遇し、熾烈な戦いの果て勝利した。

 その日はとても眠く辛かったが、想い人の何の憂いのない表情を見て達成感に浸ることが出来た。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

エロゲーオブザデッド (仮)(作者:にーと戦士)(オリジナル現代/コメディ)

チート盛り盛り、特典増し増しで転生した主人公。▼しかしそこは期待した異世界ではなく現実世界だった。▼そんな最中、平凡な日常を過ごしていたある日異変が起きた。▼ーーいや、なんであいつフルチンなん?▼


総合評価:6801/評価:8.48/連載:10話/更新日時:2026年08月07日(金) 06:22 小説情報

洗脳系TS魔法少女(作者:悪魔的逆数提示)(オリジナル現代/コメディ)

敵を以て敵を挫く。代償は厭わない。


総合評価:955/評価:8.11/連載:9話/更新日時:2026年08月26日(水) 21:13 小説情報

マスター、このままだとメス堕ちキャンセラーが壊れちゃいますよ~(作者:メスキャン界隈)(オリジナル現代/コメディ)

客がろくに来ないような喫茶店を経営していると、バイトのJKに「このままだとお店潰れちゃいますよ~」って言うノリで、ひたすら変な概念をぶつけられ続ける話▼催眠アプリ会社とかメス堕ちキャンセラーってなんだよ


総合評価:1860/評価:8.59/連載:13話/更新日時:2026年09月10日(木) 07:03 小説情報

TSギャルゲー転生主人公逆攻略実況配信(作者:一般TS好き)(オリジナルファンタジー/コメディ)

ギャルゲーのヒロインにTS転生して主人公を逆攻略する配信を強制された元男が異世界で色んなヤツらをボコりながら暮らしていく話。


総合評価:1447/評価:8.6/連載:11話/更新日時:2026年09月11日(金) 20:05 小説情報

非課税少女ミミカ(作者:税の作文)(オリジナル現代/コメディ)

35歳の元工場勤務、14歳の魔法少女に転生。▼しかも固有能力は――▼【非課税】▼……それ、魔法少女の能力か?


総合評価:1504/評価:8.09/完結:14話/更新日時:2026年08月31日(月) 18:30 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>