神が下界に降り立ち始まった神時代も千年が経った。
その歴史の中で二つのファミリアが確固たる地位を確立していた。それが、最強【ゼウス・ファミリア】と最凶【ヘラ・ファミリア】である。
下界の悲願たる三大
ところが、そんな二大派閥でさえも無残にも破れてしまった。
そう、黒龍である・・・
長い間、台頭していた二大派閥が歴史の隅に追いやられたことで訪れた暗黒期・・・
「はぁ~それで、なんでまたあたし達は、オラリオから遠く離れた孤島の古代都市まで向かってんだ?」
「ふふん!それは前回の遠征で大赤字を出しちゃったせいね!」
「まぁ、遠征失敗の罰金がなくなることを考えればいいのではないでしょうか。」
「それにしても、今日は良い風が吹いている。ここ最近は
オラリオより西に進んだロログ湖を越えた大海に一隻の船が浮かんでいる。船に乗っているのは全員見目麗しい少女たち。
船頭には燃えるような赤い髪を後ろで束ねた少女と、星の光を束ねたかのような金髪を潮風にたなびかせる妖精、ひと際小柄で、甘い桃色のショートカットの少女、夜の帳を下ろしたかのような黒い艶髪を持つ少女たちが立っている。
少女たちは、正義の女神アストレアの眷属である【アストレア・ファミリア】
団長は半年前にLv.3へと
正義の翼と剣に従う彼女たちだが、普段は迷宮都市オラリオにて治安維持の活動に重きを置いている。
そんな彼女たちが、オラリオから離れて活動しているのは、ひとえに
【アストレア・ファミリア】は団員数が11人という少数ではあるが、一人一人が精鋭のファミリアである。ファミリア等級はCランクであるため、定期的にダンジョンへ遠征に向かわなくてはならない。
遠征を断ることもできるが、その際は多額の罰金が発生するため、基本的に遠征は参加しなくてはならないのだ。
そして、前回の遠征にて、彼女たち【アストレア・ファミリア】はダンジョンにて発生してたイレギュラーによりやむを得ず帰還。遠征の失敗があった。
もちろんギルドからの罰金が発生した。遠征への準備で
しかし、普段からオラリオの治安を守っている彼女たちということもあり、ギルドは救済措置を施した。
それが今回の
オラリオから遠く離れた孤島でのミッションなど、どのファミリアも受けたがらないため、放置されていた。そこで、遠征の失敗で発生した罰金を免除する代わりに、
「それで団長。今回の
「えぇ、わかったわ。」
団長アリーゼ・ローヴェルに問いかけたのは、黒髪の極東より来た和服美人。名をゴジョウノ・輝夜。神々から授かった二つ名は【大和竜胆】アリーゼと同じくLv.3の第二級冒険者だ。
「
「アーディから聞いたことがあります。騎士王・・・星の聖剣を携えた常勝の王。」
「あんなもんおとぎ話だろ。まぁ、都があるのは本当だから全部が全部おとぎ話ってわけじゃねぇと思うが。」
長い金髪の妖精は【疾風】リュー・リオン。【アストレア・ファミリア】の眷属で一番最後に加入した末っ子である。Lv.2ではあるが、敏捷に優れ魔法を扱う魔法剣士。
そして、桃色のショートカットの少女。この神時代において最も非力とされている
「その廃都にて眠る宝を調査、可能なら回収するのが、今回のミッションね。」
「宝探しっていうのは惹かれるな。」
「その宝が、ほんとうにあるか怪しいがな。ましてや
「回収したら天に帰るとか洒落になんねぇぞ。」
「厄介な
快晴の空の下で四人がため息を吐く。
「みんな、そろそろ船内に入って体を休めて。」
四人の傍に来たのは、胡桃色の美しい髪を持つ女性。人間とは思えない美を持つのは当然だ。なにせ彼女が、【アストレア・ファミリア】の主神。正義の女神アストレアなのだから。
「もうすぐ島も見えてくることだろうし、船内でゆっくり体を休めましょ。」
「ふふん、厄介な
そういってアリーゼはアストレアに抱き着く。
「「「不敬だ!!」」」
ようやくついた孤島には、数多くの建造物が残されていた。
といっても木造と石造で建造されていたのだろう。木造部分はすっかり朽ちてしまい、残った石造だけが、蔦や植物に覆われ姿を隠してしまっている。
「この規模の建造物を見る限り、かつて栄えていたというのは間違いではないんでしょうねぇ。」
「そうね。ゼウスあたりなら実際に見ていたかもしれないわ。」
輝夜が愛刀に手をかけ周囲を見渡す。
アストレアは同郷の大神を思い浮かべる。どの神よりも下界に興味を持っていた雷の神。
神々が下界に降り立つ前は、天界より
「みんな、
「団長様が魔法を使ったら、一面燃え尽きてしまいますでしょうに。」
「たしかに・・・」
「そんなことしないわよ!!」
「ふふふ、オラリオのことは心配だけど、こうしてみんなで冒険できるのは楽しいわね。」
そうつぶやいたのは、優し気な表情を浮かべる青みがかった黒髪の美女。【アストレア・ファミリア】の
「【ガネーシャ・ファミリア】には申し訳ないけど、確かに古代都市の探索とかワクワクしないわけがない。」
賛同するのはアマゾネス顔負けの露出を見せる、アッシュグレーの毛並みに褐色の肌を持つ狼人のネーゼ・ランケット。
「これだけの都市を統治していたっていう騎士王は、どんな人だったんだろう。」
「きっと私たちみたいに正義感にあふれた人物だったんじゃない。」
「多くの人が王様のことを信頼していたんだろうねぇ。」
黒髪で人懐っこそうな顔つきのヒューマン。ノイン・ユニック。
茶髪をサイドで三つ編みにした手足の長いモデルのようなヒューマン、リャーナ・リーツ。
小柄で体格がいい種族ドワーフでありながら、どこかぬいぐるみのような愛らしさを感じるアスタ・ノックス。
「私が里で読んだ本には、騎士王には信頼する12人の騎士たちがいたそうです。」
「たしか、全員が一騎当千の騎士たちだったんでしょ。アマゾネスの血がたぎるわね。」
ファミリア最年少ながら知識に長ける緑葉色の髪を持つ妖精セルティ・スロア。
アマゾネスらしい露出が多い衣装に唸るような黒髪と褐色の肌を持つイスカ・ブラ
彼女たちが正義の使者【アストレア・ファミリア】である。
古代の足跡をなぞるように、彼女たちはキャメロットを探索する。
崩れ去った街並みからは、当時の人々の暮らしを想像させる。
「これだけ入り組んでいると、肝心の宝を探すのは無理じゃねぇか。」
「えぇ、まるでダイダロス通りのようです。」
【ダイダロス通り】、奇人ダイダロスの手がけた迷宮都市オラリオに存在するもう一つのダンジョン。貧民たちが住む広域住宅街のことだ。迷ったら最後、二度と出られないといわれている。
「やっぱり、恩恵がなくても
【恩恵】とは神々の
【古代】において、神々がいなかった時代は冒険者の持つ恩恵など存在しなかった。すべての人類が己の肉体のみで|怪物【モンスター】と戦っていた。
英雄譚に描かれる英雄たちは、精霊とともに戦うこともあったが、それでも自身の力のみで戦っていたのだ。
そして、そんな英雄たちを奮い立たせたのが
多くの人にバカにされ、だまされてもなお、精霊の力や、英雄たちの力を借りて、恐ろしいミノタウロスから王女を救った道化だ。
「今でこそ【恩恵】によって私たちは戦えていますが、【古代】の人類はよく滅ぼなかったものです。」
「そんな彼らも、今では御伽噺ですがねぇ。」
改めて、彼女たちは【古代】に生きた人類に思いをはせる。
「おい、あれ煙じゃないか。火事か?いや、焚火か?」
「私たちと同じ冒険者かしら。」
「生き残りとか?」
「
マリュー、イスカ、ネーゼがつぶやく。
「いずれにせよ、
「みんな陣形を整えて、アストレア様とマリューを中心にね。ノインが二人をお願い。」
「アストレア様は安全な場所にいてもらいたいですが。」
「あぁ、辺り一面遺跡だらけ、何が出るかわからないなら、アタシたちで囲んでいる方が安心だ。」
「アストレア様、私の盾より前には出ないでくださいね。」
「後ろはセルティとリャーナで固めて、詠唱の準備。」
「左右はアスタとイスカ、ネーゼとライラで警戒。そして正面は・・・」
「私とこのポンコツエルフで。」
「だ、誰がポンコツエルフだ!!」
ダンジョン探索とは違い、今回は全知零能のアストレアもいる。神が天界に送還されると眷属たちは恩恵を失い只人となってしまう。それだけはなんとしても避けなければならない。
そしてアストレアの次にやられるのを回避しなければならない
「アストレア様にわたしの活躍をしっかり見てもらわないとね!!」
そんな彼らの更に先頭には団長たるアリーゼが立つ。
「それじゃあ、行くわよ。」
しっかりと周囲を警戒しながら焚火の位置までやってきた。
「あれって・・・子供?」
そこにいたのは十歳にも満たないであろう銀色の髪を持つ少年だった。
少年は焚火の前で魚を焼いている。ここに来る道中で川は見かけなかったが、どこかで獲ったのだろうか。香ばしい香りが少女たちの鼻腔を刺激する。
焚火の前にいた少年も彼女たちに気が付く。
振り返った少年は無表情であった。瞳は髪と同じく銀色だ。顔立ちは整っており神が好きそうなショタである。
「お姉さんたちは誰ですか? 一体、こんなところに何をしに来たのですか?」
アリーゼと目が合った少年がそういった。
「私たちはオラリオから来た冒険者、アストレア様の眷属である【アストレア・ファミリア】よ!私は団長のアリーゼ・ローヴェル!!超絶美少女の正義の使者よ。」
バチコンと聞こえそうな自己紹介。少年は無表情から少し変化させて目を白黒させる。
「うふふ、アリーゼ、彼が戸惑っているわ。」
「アストレア様、お待ちください。このようなところで、子供一人というのは怪しすぎます。気を付けてください。」
少年に歩みよろうとするアストレアを輝夜が止める。
「ねぇ、あなたの名前は? どうしてここにいるの?」
アストレアに代わり、アリーゼが近づき少年に尋ねる。
「僕はギャラハッド・デカトゥリア。ここで産まれたから、ここにいる。」
「ギャラハッド!素敵な名前ね。お父さんとお母さんは?」
少年はアリーゼと敵対する様子を見せず、素直に答える。
「家族はもう誰もいない。一年前に
「・・・そう、ごめんなさい。」
アリーゼは気まずそうにしているが、少年は気にしていないようで手に持っていた串刺しの魚を地面に刺す。
「オラリオってダンジョンがあるっていうところ?」
「そうよ。そこから来たの。」
「わざわざ、こんなところに来るなんて大変だね。せっかく来てくれたし、僕の家まで来る?」
「いいのかしら?」
「いいよ、といっても豪勢な食事とかは用意できない。ごめんなさい。」
「子供が気を使うなって。どうしますアストレア様。」
「うん、その子から悪意は感じられないわ。嘘もいってない。信じて大丈夫よ。」
そして少年はアリーゼたちを自身の家へと案内した。
「さきほどまでの景色とはうって変わり、ここら一帯の建造物は、どれも新しいですわね。」
少年がいることで猫を被った輝夜が感想を述べる。
「一年前までは、僕のお父さん、お母さん以外に50人ほどが生活していた。」
ギャラハッドが答える。
「ずっと独りで生活していたの?」
「うん。僕の家の傍に川も山もあるから、食べ物は困らないし。井戸もあるから水も飲めるから。ここを離れるより、ここで生活する方が良かった。」
ギャラハッドが淡々と答える。年齢を聞いたところ七歳と答えた。わずか七歳の子供がいや、六歳の頃から一人で生活していたというのだ。
警戒を解いたアストレアがギャラハッドの頭を撫でる。
「
「太陽が昇っている間は来ない。夜になるとやってくる。」
「今も襲ってくるのですか!?」
「うん。だから夜になると僕は隠れて過ごす。家の地下に隠し部屋がある。」
「そう・・・ねぇ、みんな。」
「
アリーゼが仲間たちに目をやす。アリーゼのいいたいことは全員分かっている。全員がアリーゼを見つめうなずいた。
「だめだよ。お姉さんたちも天に帰る・・・」
「大丈夫よ! 私たちこう見えても強いのよ。ふふん♪」
「団長様の仰っていることは嘘じゃないんですのよ。」
「一応、全員が
ギャラハッドの顔が歪む。
そんなギャラハッドを安心させるようにアリーゼ、輝夜、ライラが賛同する。
「地上の
「例外はいるけどね、そんじゃそこらの
ノイン、ネーゼが続く。
「お姉さんたちに任せて。怪我しても、私が治してあげるからね。」
マリューがそういって、ギャラハッドの銀髪を撫でる。
「ギャラハッドくんは私たちが守るからね、よしよし。」
リャーナもマリューに続き頭を撫でた。
「無理だよ。あいつには勝てない。それこそ騎士王の聖剣でもなければ勝てないよ・・・」
「そんなに強いの?」
セルティが尋ねた。
「あいつは・・・白い竜は毒を吐き全てを滅ぼす。」
「竜!?」
予想外の
「うん。毒を食らうと体は動かなくなる。最後は溶けたように消え去る。死体も残らない。」
「そんな・・・」
アスタが顔を引きつらせる。
そうして話しているうちに、アリーゼたちはギャラハッドの家に着いた。
木造の一軒家。そこそこ大きな家となっている。アリーゼたちが全員入っても、余裕がある。
家具もまた木造でこしらえたものだ。椅子が四脚。少年の家族の分だろう。
「椅子を持ってくるから、ゆっくりしてて。」
ギャラハッドをそういって、家を出た。
数分すると、ギャラハッドがまた戻ってきた。
「近所の人たちから借りた。きっとお客さんが来てくれて、みんなも喜ぶ。気にせず使って。」
そういうと、少年はお茶を入れ始めた。
山で獲れたハーブを使ったハーブティーはアリーゼたちの体に癒しを与えた。
「ごちそうさま。ギャラハッドくん。とってもおいしかったわ。」
アストレアが微笑む。
「僕も誰かにお茶を入れるなんて久しぶりだったからおいしく飲んでもらえてうれしい。」
相変わらず表情は変わらないが、声色は嬉しそうだった。
「んぅ~!!かわいいわねぇ!!」
急にアリーゼがギャラハッドを抱きしめる。
「お姉さん苦しいです。」
「ねぇ、もし私たちが
「それいいわね!」
「一人で暮らすのは寂しいものね。」
「なんなら、私たちのファミリアに入るか?」
苦しそうなギャラハッドを見てアリーゼが提案する。それに、イスカ、マリュー、ネーゼが賛同する。
「あっ、アストレア様はどう思いますか。」
「えぇ、私はいいと思うわ。歓迎するわ。」
「妖精様も末っ子が増えると、少しはポンコツが治るでしょう。」
「輝夜!! おっほん、私はポンコツではありませんが、このような少年を一人にするのは心苦しいです。」
主神たるアストレアもギャラハッドを歓迎している。
そして、最初は警戒していた輝夜もギャラハッドへの警戒を完全に解いたわけではないが、歓迎する。
「どう? 私たちと来ない?」
「・・・嬉しいけどいけない。」
「どうして?」
「僕は、ここから離れられないんだ。島から出ることが出来ない。」
ギャラハッドは断った。アリーゼの顔が『えっ? うそでしょ。私たちみたな美少女に誘われて!?』という顔に変わる。
「あの盾がある限り、僕はあの盾から離れることが出来ない。」
「盾? 盾がどうしたの?」
アストレアが尋ねる。
「あそこ見て。昔は騎士王がいた城の跡地。あそこにある盾から僕は離れられないんだ。」
ギャラハッドが家の窓から指さす。
アリーゼたちがやってきた方向とは逆に石が積み重ねられた城砦が見える。
頑張って続きを描きます・・・
アストレア・レコードの一年前ということもあり、大半のメンバーがLv.2です。アストレア様がついてきているのは、護衛なしでオラリオに残すのは心配なためです。
Fateのキャラはギャラハッドのみです。そのギャラハッドも見た目だけです。