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黄昏の館に招待されたギャラハッドは、アイズのためにじゃが丸くんを作っていた。
「私、じゃが丸くんは甘い方が、小豆クリーム味とか好きだった・・・でも、ガルの作ってくれたじゃが丸くんは甘くないのにおいしかった。」
「そこまで褒めてもらえたら作り甲斐もあるね。逆にアイズは嫌いな食べ物とかある?」
「特にないかな。」
「わかった! じゃあ、今日は甘い味のじゃが丸くんとお昼も近いし、がっつり系のじゃが丸くんを作るね。」
「!! わかった、楽しみにしてる。横で見てていい?」
「いいよ! なんなら、一緒に作る?」
こうしてアイズとギャラハッドは二人でじゃが丸くんを作り始めた。
「アイズはこの茹でたジャガイモを、その調理器具を使って潰して。ジャガイモの欠片が無いくらいしっかり潰してね。」
ポテトを潰す作業をアイズに任せたギャラハッドは他の工程へ取り掛かる・・・
「出来た!」
「出来立てのじゃが丸くん・・・ジュルリ。」
二人が作ったじゃが丸くんは屋台で売っているじゃが丸くんと形状が大きく異なっていた。
「こんなに小さいじゃが丸くん初めて見た・・・可愛い。」
「一口サイズで食べられるでしょ!これだったらソースを使って色々な味を楽しめるかなって。」
「はっ! ガル、やっぱり君は、じゃが丸くんの天才。」
「大げさだよ。さぁ、いっぱい作ったし【ロキ・ファミリア】の皆さんに配ろう。」
「早く食べたい・・・」
器に盛りつけながらアイズは涎をすすった。
「アイズは手伝ってくれたし、味見してもらおうかな。」
「する!!」
「じゃあ、こっちが小豆クリームと抹茶クリーム用のじゃが丸くん。」
そういってギャラハッドがアイズに渡した小さなじゃが丸くんは、もう一方のじゃが丸くんと比べ焦げ目が濃い。何か違いがあるらしい。
「小豆クリームをつけて・・・いただきます。」
パクっとアイズの小さな口に、一口で入った。
「おいしい!! このじゃが丸くん、とっても甘い。どうして?」
「アイズがマッシュしてくれたジャガイモにバター、ハチミツ、卵、砂糖を入れてあるからだよ。デメテル様に教わったスイートポテト? っていう料理を参考にしたんだ。小豆クリームとの相性もバッチリでしょ。」
「最高!!」
年相応に笑顔を浮かべるアイズの姿を見てギャラハッドは嬉しくなる。
「抹茶クリームはあとでのお楽しみにして、次はこっち。」
「これは何をつけて食べたらいい?」
「軽く塩を振ってあるから、そのままで食べてもおいしいよ。」
「わかった。いただきます。」
サクッと衣の弾けた音がした。
「こ、これは。」
アイズの反応が今までと違う。
「軽い・・・口当たりもそうだけど、中身も軽い。ふわっとしてる・・・初めての感覚。」
「今日のはキノコとかハーブを入れてないからね。手軽に食べられるように作ったんだ。」
「何個でもいける!!」
「みんなで食べるまで待っとこうね。」
「うっ、早くみんなに配ろう。」
そして二人はじゃが丸くん後にコロ丸くんという名でオラリオで流行る料理を【ロキ・ファミリア】の人たちに配るのだった。
アイズが真っ先にコロ丸くんを渡したのはリヴェリアだった。
「どうしたアイズ・・・それはじゃが丸くんか?」
「うん、ガルと一緒に作った。リヴェリアの分持ってきた。」
「あぁ、ありがとう。アイズが料理か・・・ふふ、よく出来ているじゃないか。」
リヴェリアは
「ギャラハッドはどうした?」
「部屋の前にいる。なんか、リヴェリアの部屋に入るのは恐れ多いからって。」
「呼んでくれ。」
「わかった。ガル、リヴェリアが入ってきてって。」
部屋の主であるリヴェリアに入ってこいといわれたギャラハッドは渋々、入室する。
「楽にしてくれ。」
「わかりました。」
リヴェリアの柔らかい表情を見てギャラハッドも緊張を解いた。
「すまないな、アイズだけではなく私までいただいて。」
「いえ、たくさん作りましたので、アイズが一番最初にリヴェリアに持っていくって。」
「そうか、ありがとう。いただくとしよう。」
「色が濃い方は甘いから、小豆クリームか抹茶クリームで食べて、色が薄い方は、そのままでもおいしかった。」
「ほう、では先にそのままでいただこう。」
リヴェリアがフォークで塩を振った方のコロ丸くんを刺す。サクッという音と持ち上げた時の軽さに驚く。
そして口に入れた。
「・・・これは食べやすいな。揚げ物だというのに重さを全く感じさせない。塩加減も完璧だな。」
「私もびっくりした。次々食べたくなる。」
「あぁ、私もその気持ちが分かる。」
「次はトマトソースでどうぞ。」
器の端に用意してあるトマトソースにリヴェリアはコロ丸くんをディップさせた。
「これは以前のトマトソースとまた違う。酸味が強い。このじゃが丸くんとよく合っている。」
「最後はチーズソースでどうぞ。」
「わかった。」
トマトソースの横にある黄色みの強いチーズソースへディップ。
口の中にかなり味の濃いチーズが拡がった。
「どれもおいしかった。驚いた、これほど軽やかなじゃが丸くんがあるとは。」
いつもより優しい表情を浮かべるリヴェリアにアイズは首をかしげる。
「コロ丸くんと名付けようかなと思っています。」
「ほう、コロ丸くんか・・・確かに、これはもうじゃが丸くんではないな。新たな料理だ。」
「では、僕たちは他の方々へも配ってきます。」
そして二人はリヴェリアの自室から出た。
「あの子が料理をな・・・ふふふ、まだ友人になって半月だというのに彼はアイズを普通の女の子のようにしてくれたか。」
リヴェリアはアイズの成長が嬉しくて仕方がないようだ。
「甘い方もいただこう。ほう、こっちはハチミツとバターが入っているのか・・・確かにこれならば小豆クリームや抹茶クリームとも相性がいいだろう。」
二人が部屋を出た後、残っているコロ丸くんを味わった。
ギャラハッドとアイズが次に配ったのはロキだった。
「ロキ、コロ丸くん持ってきた、あげる。」
「コロ丸くん? じゃが丸くんを作ってたんやなかった・・・なるほどなぁ、確かにコロコロしてるなぁ。」
アイズが持つコロ丸くんを見て『納得や』という表情を浮かべる。
「私もちょっと手伝った。」
「アイズたんの料理!! 食べる食べる。」
そういってロキは普通のコロ丸くんをパクリと口に放り込んだ。
「うま!! なんやこれ、めっちゃ酒欲しなるやん。」
「ロキ様のお口にもあったようで、よかったです。」
「こっちの濃い方は甘いんか・・・これも上品な甘さやな! どっちも気に入ったで!!」
そういってロキは次々にコロ丸くんを食べた。
「フィンたちにも渡してくる。」
「フィンならガレスと一緒に中庭で新人しごいてるとこやで。」
「わかった、行ってくる。」
「って、もう食べ終わってもうた!! おかわりは・・・ってもう行ってもうたか。」
殻になった器を見たあと、ロキは部屋の窓から中庭を眺める。
そこには新人冒険者を鍛える筋骨隆々のドワーフと、槍を持った小柄な金髪の少年がいた。
「ギャラハッドか・・・ファミリーネームはリヴェリアから聞いたっけ。確かデカトゥリア・・・13番目のギャラハッド・・・なんや不穏な気配を感じるけど、アストレアんとこの子やし、心配ないやろ。」
そして再び視線を中庭へ向けた。
到着したギャラハッドとアイズがフィンたちにコロ丸くんを配っているのが良く見えた。
「アイズたん、友達が出来てよかったな・・・嫁にはやらんけど!!」
【ロキ・ファミリア】の主神ロキは、どこまでも眷属たちを愛していた。
「おや、アイズ手に持っているのはどうしたんだい?」
二人が中庭に着いた頃、丁度、休憩に入ったところだったようだ。
「これコロ丸くん。ガルと一緒に作ったから、みんなで食べて。」
「初めて聞く料理だ。」
「じゃが丸くんの小さいやつみたいな。熱いうちに食べて。」
「あぁ、いただこう。ガレス、ラウルたちもおいで。アイズからの差し入れだ。」
フィンは休憩していた他の面々を呼ぶと、木陰で座り込みコロ丸くんを食べ始めた。
「これは!! じゃが丸くんのようで、全く違う。サクサクで軽い。おいしいよ! アイズ!!」
「ちとサイズが小さいようにも感じるが、それがかえってええんじゃろうが。うまいのぉ!!」
筋骨隆々のドワーフ、ガレスもまた豪快にコロ丸くんを食べている。
「ガル、どうしてそんなに遠くにいるの?」
そこでアイズは、ギャラハッドが離れたところに立っているのに気づき呼びかけた。
「その、皆さんが休憩していたようだったので。挨拶するタイミングを逃してしまいました。」
そういってギャラハッドは休憩するフィンたちの前に立った。
「君がリヴェリアのいっていたギャラハッド君だね。挨拶が遅れた。僕は【ロキ・ファミリア】の団長を務めるフィン・ディムナだ。アイズの友人になってくれたんだってね。ありがとう。」
そういってフィンはギャラハッドの手を握る。
【
「は、初めまして!! ギャラハッドと申します。呼び捨てで大丈夫です!! フィンさんのことは、ライラお姉さんからよく聞いています。」
「そうか、君は【アストレア・ファミリア】に所属しているんだったね。彼女には虐められていないかい?」
「はい! ライラお姉さんは、いつも僕をからかってきますが、とっても優しくて尊敬しています。」
「ふふ、そうか。この料理は君とアイズが作ったんだってね。とてもおいしかったよ。」
「こ、光栄です!!」
今を生きる英雄からの言葉にギャラハッドの背が伸びる。
「フィン、そろそろワシにも、その坊主を紹介してくれないか。」
既に殻になった器を持ったガレスがフィンの横に立つ。
「ワシはガレス・ランドロックじゃ。このフィンと同じく【ロキ・ファミリア】の幹部をやっとる。」
ガレスもギャラハッドへ手を差し出す。
「アリーゼお姉さんから、ガレスおじ様は尊敬している冒険者だって聞いてます。お会いできて光栄です。」
「ガハハ、そうか相変わらずのようじゃの、あの娘は・・・」
【
「アイズ、このコロ丸とやらおいしかったぞ。」
そしてガレスはアイズの頭を撫でた。祖父と孫のようである。
「うん、ジャガイモ潰すの頑張った。」
「そうかそうか、ギャラハッドとかいったな坊主。」
「はい!」
「ワシらの家族が世話になった。改めて礼をいう。」
そういってギャラハッドの顔を見つめたガレスが礼を告げた。
「そ、そんな礼をいわれるようなことでは・・・」
「ガハハ! さて、小腹も満たされたし、鍛錬を再開するとしようか。」
「そうだね。ごちそうさま二人とも。」
空になった器を二人へ渡して二人は新人冒険者を連れて再び鍛錬を再開した。
「ねぇ、ガル、もう食べていい?」
「うん、そうだね。食べよっか。」
フィンたちが腰掛けていたところに座って、二人は少し冷めてしまったコロ丸くんを食べた。
「おいしかった。冷めてもサクサクでおいしい。」
「よかった。でも、食べすぎはダメだよ。体に悪いから。」
「そんな! だ、大丈夫、私の体はじゃが丸くんと、コロ丸くんで出来ているから。」
「どれだけ好きなの!!」
ギャラハッドは笑った。無表情で感情を読み取れなかった少女が、これほどまで感情を表に出してくれるようになったからだ。
「・・・ねぇ、ガルはどうして冒険者になったの?」
アイズがギャラハッドへ尋ねた。彼女からの問いかけは珍しかった。
「僕ね、オラリオからずっと遠く離れた島にいたんだ。」
「島?」
「うん、その島で生まれて、周りには50人くらいの人しかいないところで育ったんだ。」
アイズは想像する。50人、【ロキ・ファミリア】を構成する人物より少ない。
「一年くらい前に、昔から、その島に封印されていた
「みんな・・・」
アイズも自分のことを思い出す。
黒い悪夢が襲ってきたあの日のことを、自身の愛した家族たちが黒い悪夢に蹂躙されるところを・・・
「僕だけ生き残った。幸いにも、その
「ずっと独りで?」
「うん・・・そんなときに、アストレア様が、アリーゼお姉さんたちが島に来たんだ。」
「リヴェリアから聞いた。【アストレア・ファミリア】がオラリオ外の
【アストレア・ファミリア】がオラリオ外に出たという報告は【ロキ・ファミリア】にも届いていた。【ガネーシャ・ファミリア】だけでは
「お姉さんたちが、その
ギャラハッドは思い出す。まだ二か月も経っていないのに、ずっと昔のことのように思えるあの日のことを・・・
「僕もお姉さんたちを守りたいって思ったんだ。」
「そっか・・・ガルも私と同じだったんだね。」
遠いところを見つめるガルの横顔を見て、アイズが呟いた。
「私も
ギャラハッドは想像していたことが合っていたことで、悲しくなる。
「憎い。
アイズの口から
「大好きだったお父さんとお母さんを奪ったアイツらがね憎いの。」
涙は流れていない。もう全て流し切ったあとなのだと告げられているようだった。淡々と話すアイズがギャラハッドには見ていられなかった。
「だから私は剣を執った。お母さんにとっての英雄だったお父さんみたいな・・・私の英雄は現れなかったから。」
アイズは膝を抱えて顔を隠した。
「なら、僕がアイズを守るよ。アイズのお父さんみたいな英雄にはなれないかもしれない。僕には盾しかないから・・・でも、僕がアイズを傷つけるモノから守るよ。」
「・・・ほんと?」
アイズの顔半分がこちらに向けられる。瞳には期待と希望が宿っていた。
「うん、それに僕だけじゃないよ。リヴェリア様やフィンさん、ガレスさん、アリーゼお姉さんたちだってきっと、アイズのことを守ってくれる。」
「リヴェリアにもいわれた。『私はお前の母親にはなれないけど、お前のことを愛してるって』・・・」
「ほらね!」
「うん・・・」
遠くの木陰で座っている二人の様子はフィンにも見えていた。鍛錬中ではあるが、耳は二人の方へ向けていた。
それも当然だ。アイズは自分たちの娘のような存在なのだ。そんなアイズが男を連れてきたという、気にならない方がおかしい。
「彼はアイズを救ってくれるのか・・・なら、試したいな。」
「どうしたんじゃフィン、さっきからやけに小僧たちの方を見ているが。」
「ちょっとね、彼の力が見たくなっただけさ。」
「昔のような悪い顔をしているぞ、おぬし。」
「ふふ、今の僕は生意気な
「はぁ、ワシは知らんぞ。」
「ギャラハッドこっちへ来てくれないか。」
フィンに呼ばれたガルは、アイズに「ちょっと行ってくる」とだけいってフィンのもとへ向かった。
「どうかしましたか?」
「君は身の丈以上の盾を持って戦うんだってね。興味が沸いた。どうだい? 少し手合わせでもいかがかな。」
「手合わせって、どなたとでしょうか?」
「そうだね、ラウル。どうだい?」
ラウルと呼ばれたヒューマンが汗を流しながらフィンたちの前に立つ。
「じ、自分っすか!? 」
「お互いLv.1だ。いい鍛錬になるんじゃないか。」
「で、ですが、アイズさんより年下の少年じゃないっすか。」
ラウルはギャラハッドがアイズより年下と聞いていた。実はギャラハッドがアリーゼたちと巡回しているのを何度か見かけたことがあったのだ。身の丈以上の盾を持った少年、フィンと同じく
「ギャラハッドはどうだい?」
「ラウルさんがよろしいのでしたら、胸を借りたいです。」
「ガハハ、大した坊主だ。」
ガレスは堂の入った返事に気分が良くなる。
「わかりました団長。自分が相手になります。」
「よくいったラウル。」
彼の名はラウル・ノールド。【ロキ・ファミリア】に入団し半年が経つ駆け出しの冒険者。器用なのか不器用なのか、苦手武器はなく、得意武器もない。いづれ【
すまない、戦闘は次回にします。
コロ丸くんのイメージは丸いポテトです。甘い方はスイートポテトです。
いや、じゃが丸くんちゃうやん!!ていうのは勘弁を!!
デカトゥリア、ギリシャ語で13を示す言葉ですが、ギャラハッド君いわく、その名前は嫌いらしいです。ロキも何か呟いていましたが、どういうことなのでしょうか・・・
アイズさんがアイズさんしてて、アイズさんなんだ・・・
ノアールさん、ダインさん、バーラさんたちも出したいな・・・