アストレア・ファミリアの盾使い   作:ナカタカナ

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 今回は最初から最後まで戦闘です。


【昇格】と【円卓】Ⅲ

 

 「ガハハ、にしてもどうなっておるんだ? このワシですら持てない盾を軽々と持つなんて。」

 

 ガレスが見つめる先は、1.5メドルほどの大盾を構えるギャラハッドの姿があった。

 

 「噂を聞くより、直接目にする方が信じられないことがあるなんて…僕もまだまだだな。」

 

 フィンもガレスに賛同する。

 

 ギャラハッドとラウルが手合わせをするという話は、瞬く間に館中に広がった。非番で待機していた冒険者は、ほぼ全員が二人の手合わせを見に来ていた。

 

 「ほう、あの子供が最近、噂になっとる【アストレア・ファミリア】の新人か。」

 

 「ドワーフでもないのに、よくもまぁ、あの盾を持てるのぉ。」

 

 「なかなかいい顔してるじゃないか。あれは冒険者の顔だ。」

 

 二人から少し離れた場所に三人の老兵がいた。

 

 極東の侍のような出で立ちの【弓弦の剣葉(ユズルハ)】L.4ノアール・ザクセン。

 

 鍛冶師のように焼けた肌のドワーフ【赤銅の玄人(ブロンズ)】Lv.4ダイン

 

 首に赤い布を巻いたアマゾネス【剛毅の凶拳(ハイドナ)】Lv.4バーラ

 

 彼らもまたフィンたちと同じ【ロキ・ファミリア】の幹部である。冒険者歴はフィンたちよりも長い偉大なる先達だ。

 

 そして、先ほどコロ丸くんを完食したアイズも、自身を守るといってくれた少年の戦いを見ていた。

 

 「いいかい? 死につながるような攻撃は無しだ。それ以外はなんでも有りだ。スキルも魔法も、自分の持つ全てを使うんだ。」

 

 「了解っす。」

 

 「わかりました。ラウルさん胸を借ります。」

 

 「こちらこそお願いするっす。全力で行きます。」

 

 ラウルが手に持つのは片手剣。真剣である。回復薬(ポーション)も治癒師(ヒーラー)もいるため、よほどのことがない限り終わった後に治療できるからだ。

 

 ギャラハッド自身も真剣での手合わせを望んだことでラウルは遠慮せずに戦うことを決めた。

 

 対するギャラハッドは、もちろん円卓の盾である。黄昏の館に入る前に預けたものを持ってきた。

 

 周囲の視線はギャラハッドに集中している。

 

 「それじゃあ両者…はじめ!!」

 

 フィンの掛け声とともに、ラウルが飛び出してきた。

 

 剣を突き立て突進してくる。

 

 ガンッ!

 

 鈍い音と火花が散る。

 

 弾かれた反動を活かしてラウルは再び斬りつけた。

 

 剣の刃がかけるのは承知。それでもなお巨大な盾を崩すために攻撃を続ける。

 

 「どうしたっすか!!防いでばかりじゃ勝てないっすよ。」

 

 挑発だ。このまま盾を構えていればギャラハッドが傷付くことはない。だがそれでは手合わせの意味はない。

 

 ギャラハッドが、この手合わせに乗り気だったのは、対人戦の経験を積むためであった。闇派閥(イヴィルス)との戦闘に備えてのことだった。

 

 「いいぞ~ラウル!!」

 

 周りにいる【ロキ・ファミリア】の冒険者がラウルを応援する。

 

 「坊主、攻めなきゃ勝てないぞ。」

 

 依然と盾を構え動こうとしないギャラハッドにガレスが声をかけた。

 

 「いきます!!」

 

 ラウルの剣が盾に何度目かの衝突を迎える前に、盾の角度をわずかに動かす。

 

 「なっ!!」

 

 剣を流されたラウルは体勢が崩れる。

 

 その瞬間を見逃さずギャラハッドは盾でラウルを押し飛ばす。

 

 踏ん張ることが出来ないラウルは簡単に後ろへ押し出されてしまった。

 

 「うまい…」

 

 「坊主、ラウルの攻撃を見極めていたのか。」

 

 「それだけじゃないだろうね。あの目は何かを狙ってる気がする。」

 

 攻撃を流されたのは想定していたが、あまりにも滑らかに流されたことで、ようやく自身の前に立つ少年がただの少年ではないことを認識できた。

 

 「ガル…」

 

 視線の先にいるギャラハッドを見つめる。アイズは何を思っているのだろうか。その答えはアイズ自身しか知らない。

 

 『間違いないっす。確実にアイズさんと同じ・・・団長たちと同じ英雄になる存在っす。』

 

 いつか見たアイズがダンジョンで大量の怪物(モンスター)を灰に変えた光景を思い出す。

 

 あのときからラウルはアイズに対して敬語で話すようになった。本能で分かったからだ、自分じゃ決してアイズに勝てないと・・・

 

 「ラウルさん、僕はアストレア様とアリーゼお姉さんたちに誓いました。」

 

 「どうしたんすか急に。」

 

 「アリーゼお姉さんたちは、オラリオの平和を守る尊敬するお姉さんたちです。」

 

 「それには自分も同意っす。派閥は違えど、彼女たちは尊敬する冒険者っす。」

 

 「でも、オラリオの平和をお姉さんたちが守ったら、そのお姉さんたちを一体誰が守ると思いますか?」

 

 「それは…わからないっす。」

 

 「そうです。アリーゼお姉さんたちを守る人がいない。だから僕は、オラリオの平和を守るお姉さんたちを守りたいって誓いました。それが僕の正義です。僕はその全てを盾に懸けている。あなたはどうですか?」

 

 「盾に全てを…」

 

 ラウルは考える。器用なのか不器用なのかわからない自身について。苦手武器はない。得意武器もない。武器に思いを乗せる…考えたことなかった。

 

 自分は何故【ロキ・ファミリア】に入団した? 【勇者(ブレイバー)】フィン・ディムナに憧れたからだ。

 

 その憧れは今もずっと色あせない。むしろファミリアに入団したことで昔よりもフィンたちに憧れる気持ちは強くなっている。

 

 「自分は…団長…【勇者(ブレイバー)】に憧れたからっす!!」

 

 「いきますラウルさん!!」

 

 「こいっす!!」

 

 そして今度はギャラハッドが飛び出す。

 

 盾を投げた。飛来する金属の塊をラウルは避ける。

 

 「いない!?」

 

 避けた先にいるはずのギャラハッドがいない。

 

 「こっちです!」

 

 小さな拳がラウルの腹に突き刺さる。

 

 「ガハッ!」

 

 盾を投げると同時に盾に隠れながら近づいたのだ。ラウルが避けるのをわかっていたからだ。これがガレスなど力に秀でた相手だった場合は武器で受け止めていたかもしれない。

 

 だがLv.1のラウルには無理だ。

 

 「な、なめるなっす!!」

 

 盾を持っていない今を逃さないようにギャラハッドへ剣を振りぬく。

 

 「ッ!!」

 

 ギャラハッドは跳躍し剣を回避した。

 

 「なかなかやるではないか、あの子供…」

 

 「あぁ、己がファミリアに懸ける気持ちも、ワシらが好きなタイプじゃ。」

 

 「乙女の花園に入り込んだ男ってだけあって、なかなかの雄じゃないか。」

 

 ロートルたちから見ても、ギャラハッドの好感度は高いようだ。個の力を追求する【フレイヤ・ファミリア】とは違い、集団戦闘に長けた【ロキ・ファミリア】からすると、仲間のことを大切にする冒険者は信用できる。

 

 「ふぅ…まだまだっす!!」

 

 再び盾を手にしたギャラハッドを見て、一度呼吸を整える。

 

 そしてまた突き進む。

 

 「やあああああッ!」

 

 己の全身に宿る力を込めて振るった。

 

 ラウルの姿を見て一瞬でギャラハッドは理解した。この攻撃はラウルの全てだと。たとえ剣が壊れたとしても、この盾を切り付けて、己に敗北を突き付けようとしているのだと…

 

 「ふんッ!!」

 

 両足に力を貯める。体の全体重を盾に乗せる。白い竜の攻撃を受け止めた時と同じだ。しかし、今の自分の背後には、支えてくれた姉たちはいない。正真正銘の自分だけの力で受け止める。

 

 ガンッ!!今日一番の鈍い音と共に光る何かが宙に舞った。

 

 「…参ったっす。」

 

 光る何かはラウルの剣先だった。

 

 「ありがとうございました。」

 

 盾を持っていたギャラハッドの手は痺れている。

 

 芯の乗った紛れもない今のラウル自身が放てる最高の一撃だった。しかし、それでも盾を砕くことは出来なかった。武器の差もあるだろう。しかし、ギャラハッドを一歩も後ろへ下がらせることが出来なかった。

 

 「そこまで!!」

 

 フィンの声と共に、ギャラハッドとラウルの手合わせは幕を閉じた。

 

 「すみません団長…負けたっす。」

 

 自身の憧れであるフィンに情けない姿を見せたラウルは悔しそうな顔で謝った。

 

 「最後の攻撃、いい攻撃だった。見違えたよ。ラウル・・・君は間違いなく僕らの誇りだよ。」

 

 「団長…う…」

 

 フィンの言葉にラウルは膝から崩れた。

 

 「ガル!!」

 

 アイズが駆け寄ってきた。

 

 「アイズのファミリアの人、強いね。手が痺れてる。」

 

 「ほんとに、ガルは私のこと守ってくれる?」

 

 「うん!頑張るよ。」

 

 「じゃあ、次は僕とやってみないかい?」

 

 声の主はフィン・ディムナだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【勇者(ブレイバー)】との手合わせという貴重な体験を前にしてギャラハッドは断る理由がなかった。

 

 「おいフィン! これは一体どうなっている!!」

 

 騒ぎを聞きつけたリヴェリアが飛んできた。

 

 「ちょっと彼に興味が沸いてね。」

 

 「馬鹿者が!! 彼は客だぞ。怪我でもしたらどうする!!」

 

 「大丈夫、何かあったら僕が自腹で万能薬(エリクサー)を出す。」

 

 こうなったら何をどうしても意見を曲げないことを知っているリヴェリアはため息を吐いた。

 

 「ギャラハッドは何て言ったんだ?」

 

 「ぜひお願いしますだってさ。闇派閥(イヴィルス)との対人戦の経験を積みたいらしい。」

 

 「頭が痛くなる。アイズはどうした?」

 

 「そこで彼を見てる。」

 

 冒険者たちに囲まれてギャラハッドを見つめるアイズを見つけた。

 

 ギャラハッドを見つめる目が、自分たちの知っているアイズではない気がした。

 

 「アイズ。」

 

 リヴェリアが声をかけた。

 

 「リ、リヴェリア様!!」

 

 彼女の声を聞いた冒険者たちは、すぐにアイズから離れて、リヴェリアが立つ場所を作る。

 

 「すまないな。どうしてこうなった。彼と作ったコロ丸くんを配っていたのではないか?」

 

 「コロ丸くんを配ったあと、ガルがラウルと戦った。ガルがラウルに勝って、そしてらフィンが・・・」

 

 「はぁ、あの小人(パルゥム)…」

 

 ついフィンたちと出会ったときのような愚痴を漏らす。

 

 「ガルがね、私に言ったの。」

 

 「なんていったのだ?」

 

 「守るって、怪物(モンスター)から、私を傷つける全てから守るって…」

 

 「なるほどな、それを聞いていたフィンは彼を見極めるために、このようなことを…」

 

 アイズ・ヴァレンシュタインを傷つける黒い悪夢…黒龍、フィンはギャラハッドが黒龍からアイズを守れるのかを確かめるために、手合わせを申し出たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「それじゃ始めようか。」

 

 一本の槍を手にしたフィン・ディムナがそう言った。

 

 槍は訓練用のものだ。頑丈に作られているのだけが取り柄の槍だが、この場においては最適な武器だった。

 

 「いきます!!」

 

 先に動いたのはギャラハッド、ラウルのときのように盾を投げつける。

 

 「その技はもう見たって、何!? ふんッ!!」

 

 ラウルのようにギャラハッドを見失わないためにフィンは跳躍した。

 

 そのままギャラハッドの背後を獲ろうとしたが、なんとギャラハッドは飛んでいる盾を蹴り上げて、空中にいるフィンへ蹴飛ばしたのだ。思いもよらない攻撃に驚きはすれど、流石は【勇者(ブレイバー)】槍の柄で、飛んできた盾を押し返した。

 

 押し返された盾はギャラハッドが掴む。それと同時にフィンも地面に着地した。

 

 「まさか盾を蹴り上げるとはね。」

 

 「やっぱりフィンさんには通じませんか。」

 

 「あぁ、面白い戦い方だとは思うけどね。次は僕から行くよ!!」

 

 そういって槍を構えて突っ込む。

 

 受けて立つギャラハッド。

 

 「ぬっ!!」

 

 119セルチの身長から繰り出されたとは信じられない鋭い突きが盾を襲った。

 

 ガンッ!

 

 ラウルが最後に放った攻撃を防いだときより重たい音が響く。

 

 「まだまだ!!」

 

 ガンッ!ガンッ!ガガガガガガガガガガガガ!

 

 目にも止まらぬ速さの槍の雨がギャラハッドの盾を襲った。ジリジリとギャラハッドの足が後ろへ下がる。

 

 「せいや!!」

 

 突如、刺突をやめてギャラハッドの盾の右横、地面に突き立てる。そのまま突き刺さった槍を利用して回転。盾の横からフィンの回し蹴りが飛んできた。

 

 ギャラハッドから見て左側から飛んできたフィンの蹴りを盾で防ぐことは出来ない。とっさに左腕に力を集中して受け止める。それでも威力は受け止めきれずギャラハッドの体は大きく蹴飛ばされた。

 

 「くっ!!」

 

 激痛が左腕に奔った。幸い折れてはいないが酷く腫れている。

 

 「どうしたんだい? その程度じゃあ闇派閥(イヴィルス)からアリーゼたちを守ることなんてできないよ。もちろん、アイズも守れない。君の正義は暗黒期に押しつぶされる。」

 

 フィンの煽りLv.10が炸裂する。

 

 「まだまだ!!」

 

 痛む腕など知ったことかとギャラハッドが突き進む。

 

 盾を正面に構えたチャージタックル。これを食らえば非力な小人(パルゥム)など吹き飛ぶだろう。

 

 「甘いな。突っ込むだけじゃ怖くないよ。」

 

 フィンは片手で持った槍の切っ先でギャラハッドの突進を受け止めた。

 

 「すす、めない…」

 

 まるで山を押しているかのようだ。一体あの小さな体のどこにそんな力があるのだろうか。

 

 「いいかい。戦いというものには駆け引きが必要だ。」

 

 その場から動かずフィンはギャラハッドを弾き飛ばした。

 

 「これがLv.5…俺たちの団長。」

 

 「あの坊主大丈夫か?」

 

 「黙って見てりゃいんだよ。団長は、あの子供を死なせないために鍛錬してるんだ。」

 

 圧倒的な力を見せるフィンに改めて畏敬の念を持つ団員たち。

 

 少年、ギャラハッドの思いはラウルとの戦いで聞いた。アリーゼたちのために盾を持つ少年。そのような少年が、この辛く絶望に溢れた暗黒期で命を散らさないための戦いであると、感じている。

 

 「ガル…」

 

 アイズの手に力が入る。

 

 横で見ていたリヴェリアもアイズの肩を抱き、二人の戦いを見守っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はぁ、はぁ、つ、強い。」

 

 「わかったかい。君はまだ弱い。まだ守れるような人間じゃないんだ。」

 

 きつく突き放すような言葉を告げる。

 

 フィンは少年の目を見た。何が宿っているのだろうかと、諦めない覚悟? 圧倒的実力を前にした絶望?

 

 「…へぇ、いい目だ。傷を負ってなお、弱いとわかってなお、君はその目をするのかい。」

 

 フィンがギャラハッドの瞳から感じ取った気持ちは【悲壮】深い悲しみや痛みに襲われてもなお、力強く立ち向かおうとする勇気。

 

 「君に勇気を問おう。僕の魔法による一撃を防いでみてくれ。大丈夫、全力は出さない。流石に拠点が壊れてしまう。そうだな、5割で放つ。君に受け止められるか? 見事受け止めたら、君の勝ちだ!」

 

 「魔法…やります!! 僕は必ず、あなたを攻撃を受け止めます!!」

 

 ギャラハッドはゆっくり息を吐き出す。

 

 悲壮から勇気へ、少年の目に光が灯った。

 

 「あの馬鹿者!!」

 

 流石に魔法を放つことは看過できなかったリヴェリアがフィンを止めにかかる。

 

 「止めるなリヴェリア。この一撃だけは絶対に水を差さすな。」

 

 「くっ…わかった。」

 

 団長たるフィンの意思を尊重したリヴェリアはアイズの肩を更に強く抱きしめる。

 

 「ガ…頑張って。」

 

 小さな声が漏れた。

 

 「負けない。僕は負けない!!」

 

 アイズの声が届いたのか、ギャラハッドの全身に力が入る。

 

 「我が名はギャラハッド・デカトゥリア!! 最後の円卓の騎士にして、誇り高き正義の眷属【アストレア・ファミリア】の第13席に座るもの!!あなたの槍を受け止めて、僕の正義を証明する!!」

 

 「いくぞ!」

 

 そしてフィンが詠唱を始めた。

 

 「真(あらた)なる契りを此処に 捨てられし真名、刻まれし光。」

 

 それに対抗するようにギャラハッドも詠唱を始めた。

 

 「神名、拝借──」

 

 「ほう、あの小僧も魔法が使えるのか。」

 

 ガレスが両手を組んでこの戦いの結末を見守る。

 

 「右腕(うで)は裂け、傷口(きず)は哭き、五の一が開く。」

 

 フィンの持つ槍に魔力が集まる。

 

 「語れ賢者(フィネガス)よ、神工輝斧の担手(にないで)よ。騙れ偽者(フィアナ)よ、汝は赤を名乗る者。報いし猟犬は既に数多の槍とともに。」

 

 

 

 3000年前、大穴からあふれ出した怪物(モンスター)たちに特攻をかけた騎士団がいた。其れは一筋の光となって、峡谷ごと、怪物(モンスター)を、バロールを貫いた…

 

 今もなおオラリオの近くに広がる平原には、峡谷の抉れた跡が、かの騎士たちが駆け抜けた蹄鉄の痕が刻まれている。

 

 

 

 「轟く馬蹄、終わらぬ蹄跡、騎士達の歌は今もなお高らかに響く。すなわち誓約、小人(われら)が誇り。すなわち狼煙、小人(われら)は守護者。」

 

 

 

 かの騎士団の名をフィアナ騎士団。勇気ある小人(パルゥム)たちが槍を持って絶望へ立ち向かった。

 

 

 

 「一族よ、集え。この御旗のもとに。同胞よ、続け。聖烈の光は今も先前に。我が名は一走(いっそう)、蹄鉄とともに駆ける者。大いなる勇気(いし)のもと、今一度。もう一度。聖約(ゲッシュ)をこの手に。」

 

 

 

 栄光あるフィアナ騎士団!!その一突きを、フィン・ディムナは宿していた。

 

 

 「この身は正義の席に立つ……」

 

 

 

 そして、それに対抗するのが、かの円卓の騎士。数々の伝説を持ち、円卓の騎士たち、一人一人が一騎当千の英雄である。

 

 

 

 

 「もし許されるならば──」

 

 

 

 

 魔力の渦が黄昏の館、中庭にて吹き荒れる。

 

 もうすぐ詩は完成する。もうすぐ戦いに決着がつく。

 

 

 

 

 フィアナ騎士団が勝つのか!

 

 円卓の騎士が勝つのか!!

 

 

 

 

 

 

 

 「今ここに、女神の一槍(いっそう)を。【ティル・ナ・ノーグ】!!」

 

 

  

 「其は全ての罪、全ての罪禍を正す我らが天秤──顕現せよ!【いまは願う正義の盾(ロード・アストレア)】!!」

 

 

 その日、黄昏の館にある中庭には、神々の言う、宇宙の誕生に等しきぶつかり合いがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ハハハッ!! まさか本当に受け止めるとは!!」

 

 フィンの無邪気な笑い声が、まだ白く何も見えない中庭に響いた。

 

 槍は完全に塵と化した。屑鉄の一欠けらだって見当たらない。

 

 「ぼく、は、まけ…ない。」

 

 着ていた服は大部分が破けてしまっている。上半身が丸見えとなり、傷も多い。傷を負っていない場所を探す方が難しい。

 

 しかし、それでもなお少年の手は盾から離れていなかった。実は引っ付いているのではないかと思わせるほど、少年、ギャラハッドの手から盾が離れることはなかった。

 

 あれほど激しい一撃だったにも関わらず、円卓の盾には傷一つ入っていない。

 

 「ガル!!」

 

 ずっと傍観を決めていたアイズが思わず駆けだした。

 

 「アイ、ズ…僕、負けないから。だか…僕が、アイズを、守るね…」

 

 と言ってギャラハッドは立ったまま気絶した…盾を持ったまま…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「立ったまま気絶してる。」

 

 「あ、あぁ、盾も持ったままだ…たいした子供じゃないか。」

 

 「円卓の騎士…この子、円卓の騎士っていってたわね。」

 

 「団長みたいに憧れてるんじゃないか。それにしても、こいつすげえな!!」

 

 「全身が疼いている。ダンジョンへ行ってくる!!」

 

 「おい、狡いぞ!!」

 

 「俺も行く!!」

 

 「私も行くわ!!」

 

 今見せられた光景を前にして体が動かないのは冒険者に非ず。心が震えないのは冒険者に非ず。なにより【ロキ・ファミリア】という名がそれを許さなかった。

 

 「早く万能薬(エリクサー)を持ってこい!!」

 

 「あ、あぁ、そうだな!!」

 

 しかし彼らをダンジョンへ向かわせることは出来ない。変わり果ててしまった中庭の惨状と、傷だらけの少年を放置してダンジョンへ向わせることなんて…

 

 「派手にやったなフィン。」

 

 ノアールがすっきりした表情のフィンに話しかけた。

 

 「あぁ、僕は彼に英雄の姿を見た。かの【ゼウス・ファミリア】の【最強の眷属】や【ヘラ・ファミリア】の【女帝】たちのようなね。」

 

 「こんの馬鹿者がああああああああああ!!」

 

 清々しい笑顔を浮かべていたのも、つかの間。

 

 王族妖精(ハイエルフ)の怒りが【勇者(ブレイバー)】を襲った。

 

 「リ、リヴェリア…」

 

 「何が5割だ!!あれは7割以上出していただろ!! 武器が訓練用だったからまだしも、本当に【ガネーシャ・ファミリア】から闇派閥(イヴィルス)の襲撃を受けたと勘違いされたらどうする!!」

 

 いたずらした子供を叱るようにリヴェリアがフィンを怒鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あ、れ…ここは。」

 

 ギャラハッドの目が覚める。

 

 「起きた。」

 

 目の前に金髪、金の瞳を持つ少女の顔が映り込む、そう膝枕だ。

 

 「アイ…はっ、僕はフィンさんと戦って!!」

 

 「うん、フィンの魔法を受け止めた。すごかった。」

 

 アイズがギャラハッドの頭を、リヴェリアが自身にしてくれたように撫でた。

 

 「私ね、ずっと英雄が現れてくれるのを待ってたの。お父さんみたいな人・・・ガル、あなたは私の英雄になってくれる?」

 

 無表情ではない。人形姫と呼ばれていた少女は確かな笑顔を浮かべている。

 

 「はい、アイズが…あなたが望むのなら僕はあなたの英雄になります。」

 

 「…嬉し…ガル、あなたが、私の英雄…」

 

 二人の甘酸っぱいやり取りを離れたところ見る人物たちがいた。

 

 「アイズ、よかったな。」

 

 「ガハハ、まだまだ未熟じゃが、確かな輝きを宿しておるのぉ。」

 

 「あぁ、彼はアイズを救ってくれると信じている。」

 

 「フィン、格好つけてるけど、正座で言っても格好よくないで。」

 

 ギャラハッドとアイズを見つめていたのはリヴェリア、ガレス、フィン、そしてロキだった。

 

 フィンは罰として硬い石床の上で正座させられている。首には木の板がかけられており「私は拠点を吹き飛ばしかけた大馬鹿者です」と書いてあった。

 

 

 

 

 





 なんとか書き切れた…

 ダインさん、バーラさんの二つ名は不明だったため作者が適当に考えました。全員が【〇〇の□□】で読みが四文字になるようにしました。

 フィアナ騎士団と円卓の騎士…真の勝敗はいづれ…

 【ロキ・ファミリア】の人たちはギャラハッドのことを円卓の騎士の子孫ではなく、憧れている少年と認識しています。

 それはアイズもフィンたちも同じです。

 アイズ良かったね。
 
 次回【昇格】と【円卓】
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