アストレア・ファミリアの盾使い   作:ナカタカナ

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 誤字・脱字報告、感想ありがとうございます!

 


【昇格】と【円卓】Ⅳ

 

 フィンの一撃を受け止めることが出来たギャラハッドは体力を酷く消耗していた。

 

 自力で帰ることが出来ないほど消耗しており、黄昏の館で休ませてもっていたのだが、そこへアリーゼたちが現れた。

 

 「さっきの光は何!! 闇派閥(イヴィルス)に襲撃されたの!? ガルは無事なの!!」

 

 オラリオの北側を巡回していたアリーゼたちの目にもギャラハッドとフィンのぶつかり合いによって発生した光と衝撃が見えていた。

 

 リヴェリアの危惧していた通り、闇派閥(イヴィルス)の襲撃と勘違いしたアリーゼたちがやって来たのだった。

 

 「ガル、リヴェリア様もご無事ですか!!」

 

 「慌てるなってフィンがいるんだから心配することなんか、なんもねぇって。」

 

 「それはそうだが、やっぱり心配だよ。」

 

 本日のオラリオ北側巡回メンバーは、アリーゼ、セルティ、ライラ、ネーゼだった。全員、弟分の無事を確認しに飛んできたのだった。

 

 「やぁ、ライラ。」

 

 「ようフィン。さっきの光とすげえ音はなんだったんだ?」

 

 当事者であるフィンが彼女たちの前に現れた。

 

 かくかくしかじかと、先ほど黄昏の館の中庭で起きたことを詳細に報告した。

 

 「うんうん、なるほどね。【勇者(ブレイバー)】とあの子が手合わせね・・・なにやってるの!?」

 

 普段なら「素敵だわ!!」とでもいっていたかもしれない。しかし、相手が自身の大事な弟分であったため、アリーゼは激怒した。

 

 アリーゼだけではない、ライラたちも怒っていた。

 

 「なぁ、フィン。一族の勇者様よぉ、アタシの耳がぶっ壊れちまったかもしれないんだが、もう一度確認するぞ。うちの弟分と手合わせして、お前の魔法を防ぐようにいっただって?」

 

 「あ、あぁ、ライラその通りだ。君の耳は決してぶっ壊れちゃいないよ。」

 

 口角がピクピクと動いている。

 

 「アイツはまだ冒険者になって二か月も経ってないLv.1だぞ!! 何考えてんだ!!」

 

 ライラがフィンにブチぎれている。

 

 大好きな姉貴分たちの声が聞こえたことでギャラハッドはアイズに肩を貸してもらいながらアリーゼたちのもとへ向かった。

 

 「ライラお姉さん、フィンさんは悪くないよ。僕が闇派閥(イヴィルス)との戦闘に備えたくて手合わせしてもらったんだ・・・」

 

 万能薬(エリクサー)を使ったことで傷は完治しているが、ボロボロとなった衣服はそのままのため、アリーゼたちは無言でフィンを睨んだ。

 

 「すまなかった。彼に興味が沸いてね、どこまで出来るのか試したくなったんだ。」

 

 「私からも謝罪しよう。」

 

 そこへ更にリヴェリアがやってきてアリーゼたちに謝罪した。

 

 セルティは壊れた機械のように振動している。

 

 「ガル格好良かった。」

 

 アイズがアリーゼたちにそういった。

 

 「フィンの魔法の槍を盾で受け止めて…私を守るっ…」

 

 「「「「あれ? アイズちゃんの様子が!?」」」」

 

 恋する乙女のように顔を赤らめたアイズを見てアリーゼたちは目を点にした。

 

 「こんなにも早くこの子が変わるとは・・・嬉しいようで複雑だな。」

 

 アイズが少女らしさを手に入れたことをリヴェリアは喜んだ。しかし、それを会ってわずかしか経っていない少年によって成し遂げられたということに複雑さを感じていた。

 

 「リヴェリア様、私も複雑です!! 私たちの弟が!! ガルがああああ!!」

 

アリーゼの魂の叫びが黄昏の館に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネーゼに背負われて星屑の庭に戻ったギャラハッドはアストレアにステイタスの更新をしてもらっていた。

 

  Lv.1

 

  力: 803 A → 982 S

 

 耐久: 931 S → 1352 SSS

 

 器用: 689 C → 933 S

 

 敏捷: 722 B → 968 S

 

 魔力: 702 B → 984 S

 

 スキル

 

 【正義誓盾(アストライアー・オルコス)】

 

 ・誓いによる行動での経験値上昇

 ・誓いの丈により効果向上

 

 【誇り高き正義の盾】

 

 ・戦闘時、力と耐久のステイタス上昇。発展アビリティ【対魔力】、【耐異常】が発現。

 ・守護対象の側にいる際、全ステイタス上昇。守護対象の数に乗じて上昇。最大12名

 ・周囲にいる守護対象の耐久ステイタス上昇。

 

 魔法

 

 【いまは願う正義の盾(ロード・アストレア)】

 

 詠唱

 

 「神名、拝借──この身は正義の席に立つ……

 

  其は全ての罪、全ての罪禍を正す我らが天秤──顕現せよ!」

 

 ・魔力障壁展開、あらゆる攻撃を隔絶する。

 ・発動後一定時間、発動範囲内にいる全てに力、耐久、器用のステイタス大幅上昇。

 

 「昇格(ランクアップ)するわね。発展アビリティは…【騎士】と【耐異…【耐異常】はスキルで持ってるから取らなくてもいいと思うわ…ただ、【騎士】ね・・・初めて見るわね。ガルはどっちにする?」

 

 「【騎士】を獲れといわれている気がするので、【騎士】でお願いします。」

 

 「えぇ、分かったわ。それにしてもこんなに早く昇格(ランクアップ)するだなんて…」

 

 アストレアはギャラハッドの背中に浮かぶ一つのスキルを見つめた。そう、【正義誓盾(アストライアー・オルコス)】だ。

 

 Lv.5と戦ったとはいえ、一気にここまで伸びるとは…

 

 『耐久に至っては限界値Sを超えてSSSなんて』

 

 アストレアは下界の未…子供たちの可能性について驚かされた。

 

 アストレアから恩恵を授かっておよそ二カ月・・・ギャラハッドはLv.2へと至った。

 

 

 

 

 

 

 Lv.2

 

力:0 I

 

 耐久:0 I

 

 器用:0 I

 

 敏捷:0 I

 

 魔力:0 I

 

【騎士】:I

 

 

 スキル

 

 【正義誓盾(アストライアー・オルコス)】

 

 ・誓いによる行動での経験値上昇

 ・誓いの丈により効果向上

 

 【誇り高き正義の盾】

 

 ・戦闘時、力と耐久のステイタス上昇。発展アビリティ【対魔力】、【耐異常】が発現。

 ・守護対象の側にいる際、全ステイタス上昇。守護対象の数に乗じて上昇。最大12名

 ・周囲にいる守護対象の耐久ステイタス上昇。

 

【騎士の名乗り】

 

 ・恐怖耐性を獲得。

 ・怪物(モンスター)からのヘイト獲得

 

 魔法

 

 【いまは願う正義の盾(ロード・アストレア)】

 

 詠唱

 

 「神名、拝借──この身は正義の席に立つ……

 

  其は全ての罪、全ての罪禍を正す我らが天秤──顕現せよ!」

 

 ・魔力障壁展開、あらゆる攻撃を隔絶する。

 ・発動後一定時間、発動範囲内にいる全てに力、耐久、器用のステイタス大幅上昇。

 

 

 

 

 

 「終わったわ。今日からあなたはLv.2よ。」

 

 「ふふん!! 流石は私たちの弟ね! たった二カ月で昇格(ランクアップ)だなんて。」

 

 「もう追いつかれちゃった、早すぎるよ!!」

 

 「白い竜のこともあるけど、【勇者(ブレイバー)】の魔法を受け止めるなんて、そりゃ昇格(ランクアップ)するわ。 ほんと、よく受け止めたね。」

 

 アリーゼ、アスタ、イスカがギャラハッドの背中を優しく撫でた。

 

 「スキルも発現してるわね。【騎士の名乗り】ね。怪物(モンスター)から狙われやすくなるなんて、盾を持つあなた向けのスキルね。」

 

 「あれじゃない。いつも『我が名はギャラハッド・デカトゥリア! 最後の円卓の騎士にして、誇り高き正義の眷属【アストレア・ファミリア】の第13席に座るもの!!』っていってるから。」

 

 「「「「「あぁ~確かに…」」」」」

 

 「ということは、毎回ダンジョンで名乗り上げないといけないってこと?」

 

 「ふふふ、騎士らしくて格好いいじゃない。」

 

 スキルが発現した原因をノインが考察した。たしかに、大事な場面においてギャラハッドは名乗り上げている。それが、このスキルを発現させた原因なのであろう。

 

 アストレアにとっては、自身のファミリアを『誇り高い』と思ってくれているギャラハッドに対して愛しい気持ちが沸いていた。

 

 「それより、アイズちゃんと随分仲良くなったみたね。」

 

 急に思い出したように話題を変えるアリーゼ。

 

 「そういえば、あの子の顔、完全にホの字だったわよね。」

 

 「うん、ガルに向ける視線が他の人に向ける視線と違っていた。」

 

 「そりゃ手加減していたとはいえ、あのフィンの魔法も受け止めたんだ。あの人形姫だって、うちの弟分のことが気になっても仕方ねぇよ。」

 

 黄昏の館に来ていた四人は、ギャラハッドの近くから離れようとしなかったアイズのことを思い出す。

 

 「ガルは私たちのなのに…」

 

 地味に重たい独占欲を見せたのはセルティだった。ファミリア内では一番ガルと歳が近かったため、ガルのことを弟以上に見ていたのだ。

 

 「ふふふ、ガルったらモテモテね。」

 

 アストレアが微笑ましそうに眷属(こども)たちの様子を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ギルドへギャラハッドが昇格(ランクアップ)を遂げたと報告したあと、【アストレア・ファミリア】は全員で、ギャラハッドの歓迎会+お祝いのための宴を酒場で開いていた。

 

 酒場の名は【豊穣の女主人】といい、オラリオの中でも特に人気の酒場であった。

 

 幸いにも席が空いていたため、全員で食事することが出来た。

 

 「「「「「「「「「「「「「かんぱーい!!」」」」」」」」」」」」」」

 

 全員がジョッキを片手に持ち打ち付けた。

 

 「ぷはぁ~生き返るぅ。」

 

 「ネーゼったらおっさんみたいよ。」

 

 「おっさんて、失礼なうら若き乙女に対して。そういうリャーナだって口にエールの泡が髭みたいについてるぞ。」

 

 「噓でしょ!!」

 

 そういってリャーナは急いで口元を拭った。

 

 ギャラハッドが飲んでいるのは果実水である。正義の派閥である【アストレア・ファミリア】が子供であるギャラハッドの飲酒を認めるわけがなく、果実水となった。

 

 店内は清潔感で溢れている。あちらこちらから料理のおいしそうな匂いが流れてくる。店員は全て女性で、全員が美女、美少女である。

 

 そして、この酒場の主人の女性・・・ドワーフでありながら身長は180セルチ。更に【フレイヤ・ファミリア】の元団長だったというLv.6【小巨人(デミ・ユミル)】の名を持つミア・グランドだ。

 

 何故【フレイヤ・ファミリア】の元団長が酒場を開いているかは気になるが、料理も酒も絶品の名店だった。

 

 「ガル、口にソースがついているぞ。」

 

 そういってギャラハッドの口元を優しく拭ったのは黒髪和装美人の輝夜である。

 

 「あ、ありがとう輝夜お姉さん。」

 

 「全く、昇格(ランクアップ)したというのにだらしないぞ。」

 

 「ガル、こちらのサラダは絶品です! 私の分を分けますので、食べてください。」

 

 更にそこへリューが自身の注文したサラダを器に分けてギャラハッドへ渡した。

 

 「リューお姉さんもありがとう…ほんとだ! このサラダおいしいね!!」

 

 「あっ、ガルくん。私のステーキも一切れあげるね。はい、あーん。」

 

 次はマリューがステーキををギャラハッドの口元へ差し出す。

 

 「自分で食べられるよ。」

 

 「お姉ちゃんにあーんされるの嫌?」

 

 うるうると上目遣いで懇願するマリューの姿にギャラハッドは勝てるわけもなく、大人しくあーんを受け入れた。

 

 彼女たちが、いつも以上にギャラハッドを甘やかしているのには、訳があった。

 

 アイズに対抗するためである。あの後、ギャラハッドからアイズと、どのような会話をしたか、じんも…とりし…聞き出した。

 

 アイズの過去についての詳細は伏せたが、察しの良い彼女たちにはお見通しだ。ギャラハッドと似た境遇を持つ彼女に同情しつつも、それとこれとは別として、自分たちの将来の婿であるギャラハッドを渡さないように、こうして甘やかしていたのだ。

 

 そんな甘ったるい空間に一人の店員が料理を運んでくる。

 

 「お待たせしました。ご注文していただいた品です。」

 

 その店員の髪は銀髪でとても可憐な娘であった。緑色の制服が良く似合う美少女だった。

 

 「あら、ありがとう。」

 

 アストレアがお礼をいう。

 

 「いえいえ、お気になさらないでください。いつもオラリオの平和を守ってくださっている【アストレア・ファミリア】の方々が来てくださるなんて、光栄です。」

 

 店員はそういってニッコリ微笑んだ。

 

 そしてそのままギャラハッドの方へ向き話しかける。

 

 「あなたが最近、街で噂になっていた男の子ですね。私はシル・フローヴァといいます。」

 

 「は、はい。僕はギャラハッドと申します。」

 

 「ふふふ、冒険者になって二カ月足らずで昇格(ランクアップ)されるなんて。ギャラハッドさんはとてもお強いんですね。」

 

 営業トークというやつであろうか、店員はギャラハッドのことを褒めちぎる。その様子を見てアリーゼたちは少しイラっとした。

 

 「い、いえ、そんな。僕は、もっともっと強くならないといけません。」

 

 「そうなんですか? 噂では、ご自身の身長よりも大きな盾を持って戦うとか。私には、敵の攻撃を受け止めるなんて怖いことできません。ギャラハッドさんは、とても勇敢なんですね。」

 

 「もしも僕が勇敢といわれるのでしたら、それはきっと、アストレア様やアリーゼお姉さんたちから貰ったものです。僕一人だったら、何も出来ていなかったと思います。」

 

 そういってギャラハッドはアリーゼたちの顔を見た。全員が照れたようにギャラハッドと視線を合わせようとしない。

 

 「ギャラハッドさんは、ファミリアの皆様のことが大好きなんですね! 素敵です!! では、私は仕事があるので失礼します。ごゆっくりお楽しみください。」

 

 シルはそういってお辞儀をし、ミア・グランドが立つ厨房の方へ戻っていった。

 

 「ったく、お前はよくそんな歯の浮くようなセリフを、恥ずかしげもなく言えるな! うりうり。」

 

 先ほどのギャラハッドの言葉がよっぽど恥ずかしかったのだろう。しびれを切らしたライラはギャラハッドの隣に行き、肘で脇腹を軽く小突いた。

 

 「ライラお姉さんどうしたの?」

 

 「うっせ!」

 

 気が済んだら、再び自分の席に戻りジョッキに入っていたエールを一気飲みした。

 

 「ガル、お前さっきあのシルとかいう娘に見惚れてなかったか?」

 

 ジョッキを既に三杯空にしたネーゼがギャラハッドへ詰め寄る。

 

 「ネ、ネーゼお姉さん?」

 

 「確かに美人だったけど、お前の近くにもいるだろ、銀髪の女が・・・」

 

 酒のせいかネーゼの褐色の肌が赤い。肩まで赤くなっておりだいぶ、火照っているようだ。露出の多い恰好でありながら、ギャラハッドへ強く密着する。

 

 「ネーゼお姉さん!?」

 

 ギャラハッドも刺激が強かったようで一気に心拍数が上がる。

 

 「やっぱり、あんな風に髪が長くてお淑やかな女がいいのかぁ?」

 

 猫人(キャットピープル)のような甘え声でギャラハッドへ再三尋ねる。

 

 「た、確かにシルさんは美人でしたけど、ネーゼお姉さんの短い銀髪も綺麗です。尻尾だってもふもふで、いつも温かい大好きなお姉さんです。」

 

 「…そ、そっか、ならいいや。」

 

 そういってネーゼはもっと強くギャラハッドと密着する。

 

 「ネーゼったら完全に酔っちゃってるわね。三杯とはいえ、かなりのスピードで飲んでたものね。」

 

 イスカがギャラハッドからネーゼを引きはがした。

 

 「もうレベルが追いつかれるなんて想像していなかったわ。」

 

 ネーゼと変わるようにギャラハッドの隣に座ったイスカがそういった。

 

 「ねぇ、知ってる? 私たちアマゾネスはね。自分より強い雄に惹かれるの…逃がさないからね。」

 

 ギロリと肉食獣のような眼光をギャラハッドへ突き刺す。

 

 「あはは、冗談よ。今はね…」

 

 そしてイスカは自分の席に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ギャラハッドのお祝いを【豊穣の女主人】にて行って数日が経過した。

 

 今日は三カ月に一度の神会(デナトゥス)が行われる日だった。

 

 神会(デナトゥス)…それは三カ月に一度開催されるオラリオの神々が集まる会議である。この会議ではオラリオで起きた事件などの情報交換が行われる。

 

 会場はバベルの塔の上層。入口の前でアストレアは一柱の女神に声をかけられた。

 

 「あら、アストレア久しぶりね。」

 

 「フレイ…えぇ、久しぶりね。先日、あなたのファミリアの団長をしていたっていう子供の酒場に行ったの。どの料理も、とてもおいしかったわ。」

 

 「それはよかったわ。ミアにはきちんと伝えておくわね。」

 

 見るもの全てを魅了する輝きを放つ銀髪の女神。彼女こそが【ロキ・ファミリア】と並び、今のオラリオの二大派閥とされる【フレイヤ・ファミリア】の主神フレイヤだ。

 

 「聞いたわ、あなたのところに入った男の子、もう昇格(ランクアップ)したんですってね。」

 

 「えぇ、まぁ色々とイレギュラーなことが積み重なったから・・・」

 

 「良い名前をもらえるといいわね。」

 

 そういってフレイヤはアストレアから離れた。

 

 「ア、アストレア。」

 

 フレイヤが離れて、一柱になったアストレアへ一柱の女神が声をかけた。

 

 色素の薄い紫の髪を持ったナイスバディな女神。両目を眼帯で隠した異様な容姿の女神はメドゥーサ。【メドゥーサ・ファミリア】の主神だ。

 

 「メドゥーサ。あなたも下界へ来ていたのね。」

 

 「えぇ、そのね、あなたのところの子供に、私のところの子たちが世話になったみたいなの。」

 

 「そうなの。わざわざお礼を言いに来てくれたのね。」

 

 「どうやら巨大な盾を持った少年に救われたらしい。アイクとイーナたちを助けてくれてありがとう。」

 

 どうやら彼女の眷属というのは、ギャラハッドが初めてダンジョンへ潜った際に、大量のキラーアントと、パープル・モスに囲まれていた冒険者たちのことだという。

 

 「あの子たちに伝えておくわ。じゃあ、私は行くわね。」

 

 「あぁ、必ず伝えてくれ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「では、これより第ン千回神会(デナトゥス)を開催する。進行は俺がガネーシャだ!!」

 

 ついに始まった神会(デナトゥス)…

 

 「えぇ、相変わらず闇派閥(イヴィルス)の連中は街でもダンジョンでも暗躍しているらしいから気を付けるように。」

 

 「にしてもあいつらは、どこに潜伏してるんだ?」

 

 「ガネーシャんとこの子が、オラリオの街をいくら巡回しても見つからないってことは、やっぱりダンジョンなんじゃないのか。」

 

 「やはりそうだよな。オラリオ外に潜伏していたとしても、襲撃のたびに、オラリオに入るなんてガネーシャのとこが気づくだろうし。」

 

 会議の議題はやはり闇派閥(イヴィルス)についてだ。

 

 どこからともなく現れ、街でもダンジョンでも大人子供問わず、襲撃する。本当に厄介な連中である。

 

 「じゃあ、今後も闇派閥(イヴィルス)について何かわかったら報告することとして、この議題は終わる。続いては、みんなお待ちかねの命名式だあああああああああ!!」

 

 重苦しい空気が一気に解放され、神々たちは狂ったようになる。

 

 神会(デナトゥス)において、神々が意見を交流するというのは確かに大事なことだ。しかし、それよりも神々たちが重要視していることがある。それが命名式。

 

 昇格(ランクアップ)を遂げた子供に二つ名を授けることだった。

 

 この二つ名を授けるというイベントは、昇格(ランクアップ)した当事者の主神にとっては、ラグナロクといってもいいだろう。

 

 大事な大事な子供の二つ名だ。どの神だって絶対に良い二つ名を得ようとする。しかし・・・

 

 「今回は残念ながら昇格(ランクアップ)した子供は少ないな・・・」

 

 「なぁに、量より質だ!! 我々の神的センスの光る名を授けようじゃないか!!」

 

 そう、神々は子供たちに神的に恥ずかしい名前を付けようとするのだ。

 

 「じゃあまずは、【ニケ・ファミリア】のウィンディ・モーンね。冒険者になって1年3カ月でLv.2へ昇格(ランクアップ)と・・・なかなかな逸材じゃないか。白い猫人(キャットピープル)の少女ね、なかなか可愛いじゃないか。」

 

 「頼む、ウィンディにだけは、あの子だけには業を背負わせないでくれ・・・」

 

 「「無理!!」」

 

 「があああああああああああ!!」

 

 「決まった!! ウィンディ・モーンの二つ名は【愛猫(ラブ・キャット)】」

 

 「ウィンディいいいいいいいいいいいいいい!!」

 

 神ニケの悲鳴が響き渡る。

 

 子供は神々のおもちゃじゃないんだぞ!!と叫びたくなる地獄のような会議だ。

 

 この地獄で、恥ずかしい二つ名を防ぐことが出来る方法がある。

 

 それが・・・

 

 「なになに、次は、アストレアんとこの子だな。」

 

 「アストレアのとこか。」

 

 「アストレアのとこの子に変な名前はつけられないな。」

 

 「いつも街の平和を守ってくれてるものね。」

 

 オラリオに貢献することである。【アストレア・ファミリア】を蔑ろにする神は、オラリオのどこにもいなかった。

 

 「って、この子、昇格(ランクアップ)までの期間が二カ月って、おかしいだろ。」

 

 「オラリオの外から来たみたいだし、外で経験値でも稼いでいたんじゃないの?」

 

 「アストレアがわざわざそんな嘘をつくと思うか?」

 

 「それもそうだな。よっぽど、この子がイレギュラーなだけだろう。」

 

 神々からの信頼が厚いアストレアである。これがアストレア以外の神なら、どんなインチキをしたんだと疑われるだろうが、アストレアのことを疑う神はいなかった。

 

 すると早速、先ほどアストレアと話したフレイヤが候補を出した。

 

 「ねぇ、この子の名前は【女神の盾(ヴァナ・ショルド)】なんてどうかしら。」

 

 ピクッとアストレアの額に血管が浮かぶ。

 

 「フレイヤ、この子はあなたの眷属じゃないわよ。」

 

 「そうね、今はね…」

 

 「あの子に何かしようってものなら、私も穏やかじゃいられないわよ。」

 

 天界では、ガチガチの武闘派だったアストレアがフレイヤに向ってファイティングポーズを取った。

 

 「あら怖い。もちろん、何かしようなんて思っていないわ。まぁ、あの子の方から私のもとへ来た場合はわからないけど。」

 

 ゴゴゴと美しい女神たちの背後で魔神が揺れる。

 

 「ほな、うちのはどうや。【悪戯な騎士(トリック・ナイト)】なんて。」

 

 「ロキ・・・あなたもどうやら、私とお話ししたいみたいね。」

 

 「ひっ、すまんかった。冗談や!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「勝ち取った!!」

 

 最終的にアストレア自身が提案した名前がギャラハッドへ授けられることになる。

 

 【正義の大盾(シールダー)】

 

 それがギャラハッドへ授けられた名だった…





 やはりギャラハッドといえばシールダーでしょう。

 パラディンとかになるのか?それはこの先のお楽しみです。

 
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