もうそろそろ本格的に物語を動かしたいなぁと思いつつ、キャラ達を出し切れていないという気持ちがいっぱいです。
椿と知り合ってから一週間・・・
今日は休みだったため、ギャラハッドは一人で早速、椿に鎧の修繕を頼んでいた。
「ふむふむ、こんな感じか・・・よし、出来たぞ。」
激しい損傷があったわけではないが、長年放置されていたこともありギャラハッドは椿に修繕を頼んだ。
ものの一時間もかからずに作業は終了。椿の額には汗が浮いていた。
「ありがとうございます椿さん!」
「なぁに、手前の方から言い出したことだ! 気にするな。」
椿はそういって手ぬぐいで汗を拭った。
「ガル、お主は【
ギャラハッドは椿に自身が【アストレア・ファミリア】の冒険者になった経緯を話していた。円卓の騎士の子孫ということは話していない。
「はい! まだまだその背中は遠いですけど・・・」
「たった二カ月で
「椿さんは、ヘファイストス様に憧れているんですよね。」
「その通り。既にこの身は【|最上級鍛冶師(マスタースミス)】と呼ばれておるが、主神様には到底叶わない。故に、手前の目標は主神様を越える作品を作ることだ!」
ニコッと明るい笑顔が飛び出す。彼女の魅力が伝わってくる。
「素敵な目標です。お互い、頑張りましょう!!」
「おう、それでなのだが、ちぃっとばかりお主に頼みがあってのぉ。」
先ほどまでの凛として力強い姿から一変!! もじもじとした椿の姿にギャラハッドは動揺した。
「た、頼みですか? 僕に出来ることなら、可能な限りしますが・・・」
「そうか!! 実はのぉ、お主を抱かせてほしいのだ!!」
「・・・はっ!?・・・えっ!?・・・ええええええええ!!」
椿の「抱かせて」という言葉は、ハグという意味だった。
どうやら、小さなギャラハッドに愛らしさを感じて抱きしめたくなったらしい。椿自身、可愛いものが好きな至って、普通の女性だった。
「なんだ、そういうことですか・・・少し恥ずかしいですけど、いいですよ。」
「では、遠慮なく!」
椿の腕に抱きしめられた。正面から抱きしめられ、椿の豊満な胸がギャラハッドの顔を包んだ。少し汗の匂いがするが、嫌な匂いはしなかった。
髪の毛から香料の香りがふんわりと漂う。
「ふふふ、これはいいなぁ。なかなかの抱き心地・・・癖になるぞ。」
そして抱きしめている本人はというと、かなり満足しているようで大変いい笑顔を浮かべている。
悲しいかな、その表情は本当にぬいぐるみやペットを抱きしめているかのような穏やかな表情で、バリバリ異性として意識している肉食の姉たちより安心する。
「【
結局、椿のハグは10分ほど続いた・・・
「いやぁ、堪能した堪能した。」
椿の顔は艶々になっている。
一方でギャラハッドの方だが・・・顔が真っ赤になっていた。
椿の工房から出たあと、ギャラハッドは巡回中のアーディに遭遇した。
「あっ! ギャラハッド君!!」
「アーディさん! こんにちは!!」
相変わらず人懐っこそうな笑顔である。見ているこちらが元気をもらえる、そんな笑顔だ。
「
アーディはギャラハッドへそういった。アストレアと出かけた日以来、アーディと出会うことはなかった。巡回日が被らなかったり、アーディはオラリオの南側を巡回していたりと、すれ違っていたからだ。
「ありがとうございます。」
「その鎧がリオンから聞いた【
「そうです! ちょうど先ほど、鎧の手入れをしてもらいに行ってきました。」
「そうなんだ。うんうん、とってもよく似合ってるね! 本当に円卓の騎士みたい。」
「英雄譚が大好きなアーディさんに褒めてもらえると自信になります。」
「おっ、流石リオンたちのお婿さん。お口が上手だねぇ。」
「いやいや、本心ですよ。」
ギャラハッドとアーディが笑う。
「誰か!! ひったくりよおおおお捕まえてええええええ!!」
一つ隣の路地から女性の甲高い悲鳴が聞こえた。
アーディとギャラハッドが同時に飛び出した。
「待ちなさあああああい!!」
ひったくり犯と思わしき人物を見つけた。
茶色いボロボロのローブを羽織り、身長は低い子供だろうか・・・手には被害にあった女性の鞄がある。
「ギャラハッド君、挟み撃ちにするわ。」
それだけいってアーディの身体は飛び上がり、建物の屋根に飛び移った。そのまま加速して犯人の正面に降り立つ。
「なっ・・・くっ!!」
方向転換し、犯人はギャラハッドの方へ走り出す。
「こっちも・・・くっ、あっ!」
「・・・えっと、流石にそれは引っかからないです。」
そしてそのままギャラハッドはひったくり犯を捕まえた。
「本当にありがとうございます!!」
被害を受けた女性がアーディにお礼をいっている。
「あなたもありがとうね。あなたのおかげで鞄が戻ってきました。」
ギャラハッドにもお礼を告げて女性はそのまま立ち去った。
そして捕まったひったくり犯はというと・・・
「・・・」
無言を貫いている。
手足は細く、頬も痩せこけている。年齢は12歳くらいだろうか、服装を見る限り大方の理由は予想が出来るが。
「ねぇ、どうしてこんなことしたの?」
「冒険者様にはわかんねぇよ。」
「お金がないとか、食べるものがないっていう理由でしょ。」
「ふん・・・なら、あんたは俺に飢え死にしろっていうのか?」
「ううん、そういうことはいってない。だって、このご時世だもの・・・」
アーディの顔に暗い影が差す。
「だったらどうすればいいんだよ!!」
「ごめんね、私には、君の現状を助けることはできない。」
「はっ! そうだろうな。さっさと連れて行けよ!!」
「君が悪さをしないって約束してくれるなら、連行しないけど、どうする?」
「はっ?」
アーディの提案にひったくり犯の少年はおろか、ギャラハッドまで目を点にした。
「それで、どうするの? もうひったくりなんかしない?」
「・・・しない・・・」
「そ、ならもういっていいよ。」
ひったくり犯の少年がスタスタと走り去っていったあと、アーディとギャラハッドは巡回しながら話をしていた。
「さっきどうして見逃したんですか?」
「だって情状酌量の余地があるし。被害を受けた人も、私たちが取り返したから、ひったくり犯の子以外、誰も不幸になってないもの。」
「それはそうですけど・・・」
「飴と鞭って言葉知ってる? この暗黒期みたいな、どこもかしこも鞭で溢れている世界でさ、私くらいは飴になってあげないとね。」
飴になってあげる・・・それが彼女の正義なのだろうか。アストレアはかつてギャラハッドへいった。
『あなただけの正義を見つけなさい』と・・・
「そうですか、ならアーディさんのことも僕が守ります!!」
「えぇ!? 急にどうしたの。」
「だって、アーディさんはこれからたくさんの人を助けると思います。だから、僕がアーディさんを助けます!」
突然そんなことをいいだすギャラハッドの方へ視線を向けて目をパチクリさせる。
「アハハハハハ! ギャラハッド君、面白いね。うん、そうだね・・・私のことも助けて、騎士様!」
この日、ギャラハッドはアーディの正義を見たのだった。
星屑の庭へ帰ったギャラハッドは、拠点内が静かなことに気づいた。
「みんなどこにいったんだろう・・・」
広間へ近づくにつれて騒がしくなる。
「・・・も・・・て、・・・」
「しっ・・・って・・・」
ギャラハッドが広間へ着いた。そこには大好きな姉たちが顔色を変えているのが目に入った。
「ガル!!」
「アリーゼおねえさ・・・えっ・・・」
「くっ、ガルに情けないところ見せちゃったな・・・」
「アハハ、だ、大丈夫だよ。
「イスカお姉さん!! ノインお姉さん!!」
イスカとノインが体中に包帯を巻いて寝かされていた。
イスカとノインはネーゼと共に、オラリオの東を巡回していたはずだ。ネーゼがいない。
「ネーゼお姉さんは!!」
輝夜がしゃがみこみ、ギャラハッドの肩を掴んだ。
「安心しろ、怪我は酷かったが、【ディアンケヒト・ファミリア】の診療所に送った。命に別状はない。」
「よ、よかった・・・」
ギャラハッドが崩れ落ちる。
「ご、めんね。情けないところみせちゃって。」
イスカが絞り出すように声をだした。
「情けないなんて絶対ない!!」
「大声を出すな!!」
イスカの言葉を全力で否定したギャラハッドを輝夜が拳骨を落とした。
「うっ、ごめんなさい。」
「わかればいい。二人ともしばらく体を癒せ。」
三人があのようになったのは
【ダイダロス通り】へ逃げて行った
幸いにも撃退に成功したが、構成員たちには逃げられてしまい、ネーゼが重症を負った。
「お姉さんたちを守るっていっときながら、僕は何をしていたんだ!!」
自室に籠りやるせない怒りを吐き出せずイライラする。
ギャラハッドは自責の念に駆られる。
「強くなりたい・・・」
ダンジョンへ向う用意をした。
『絶対に一人でダンジョンへ向うな!!』
輝夜に言われた言葉だ。
「・・・」
ギャラハッドは思いとどまった。シーンと静まり返る星屑の庭。ギャラハッドは輝夜の部屋へ行った。
コンコン
「誰だ。」
輝夜は起きていたようだ。部屋には明かりがついていない。
「僕です。」
「なんだ、ガルか・・・夜這いにでも来たか?」
「夜這い?」
「なんでもない。入ってこい。」
初めて輝夜の部屋に入る。
室内は草を編み込んで作られた床板が敷き詰められている。タタミというらしい。独特の香りがするが、どこか落ち着く。
部屋の奥にある窓際で、輝夜は一人酒を飲んでいた。
「こんな時間にどうした? 眠れないのか。」
「・・・ダンジョンに行きたい。」
「ダメだ。おおかた、ネーゼたちのことだろう。」
「うん、僕、誓ったのに・・・守れなかった。」
「お前は今日非番だっただろ・・・仕方ない。」
窓際から部屋の中央に置かれている机の前に座った。手で床を叩き、ガルに横に座れといっている。
「勝手に一人でダンジョンへ行かなかったことは誉めてやろう。」
「行こうと思った。準備もした・・・だけど、輝夜お姉さんを、アリーゼお姉さんたちを心配させることはできないもん。」
「あぁ、ネーゼたちが寝込んでいるうえに、明日の朝、お前まで姿を消したなんてことになってみろ。全員でオラリオを探し回るぞ。ネーゼに至っては【ディアンケヒト・ファミリア】の診療所から抜け出してでも探すだろう。」
「それでもダンジョンへ行きたい。強くなりたい・・・」
「はぁ、その意思はくみ取ろう。だが、ダンジョンはダメだ。」
「そんな!!」
隣に座るギャラハッドの肩を抱き酒を口に含む。
「私がお前を鍛えてやる。」
「えっ・・・」
「だから、私がお前を鍛えてやる。だから一人でダンジョンへは行くな。みんながいるときだけにしろ。」
肩を抱く腕の力が強くなる。絶対に離さないぞといわんばかりにだ。
「わかった。」
「明日の朝、太陽が昇る前にオラリオの城壁へ来い。そこで鍛錬してやる。だから今日はもう休め。なんなら、私の部屋で寝ていくか?」
「そ、それは辞めとく。」
「そうか、だが気が変わった。私がお前を抱き枕にしたくなった。寝るぞ・・・」
そういって輝夜は部屋の奥に敷いていた布団へギャラハッドを連れ込み抱き枕にして眠った。
翌朝、輝夜の部屋で目が覚めたギャラハッドは悲鳴を上げそうになった。
隣で眠る輝夜がすっぽんぽんだったからだ。
美しい肉体がすぐ横にあった。肌は密着し、寝汗をかいたことで少し湿っている。
「・・・ん、なんだ、起きていたのか。」
がバッと起き上がり背伸びする。たわわに実った胸がギャラハッドの目のまえで揺れた。
「ふっ、お前が立派な男になったら、私の全てをお前にやろう。」
とだけいって、輝夜は水浴びにいった。
「よし、それでは始めるぞ。」
「お願いします!!」
オラリオの街を囲む城壁の上でギャラハッドは輝夜と対峙していた。太陽はまだ姿を見せていない。当たりは暗く、わずかな月明かりが輝夜の彼岸花の刀身を輝かせている。
「っ!!」
突如輝夜がギャラハッドを切り付けた。
「
鋭い斬撃が盾を襲う。
正面から、横から、背後から・・・縦横無尽に切り付けられる。
なんとか防ぎきるので精一杯だ。
スキル【誇り高き正義の盾】を発動する。全
「はあッ!!」
防戦一方だったギャラハッドが輝夜の刀をはじき返す。体勢は崩せず、すぐに追撃が来る。
盾をおとりに、刀を蹴り飛ばす。刀の腹を狙った蹴りだ。
「甘い!!」
刀を持っていない方の拳がギャラハッドの下顎を狙い飛んでくる。
間一髪のところで回避し、再び盾を手に持つ。
キンッキンッキンッ
高速の斬撃が三度、盾を切り付ける。
「相手の思考を読め!一手先、そのまた一手先まで読めるようにしろ!!」
「そうだ、
太陽が完全に姿を現した。
心地よい風が汗だくで火照った体を撫でる。
「よし、次の一撃で今日の鍛錬は終わるとしよう。」
「はぁ、はぁ、はぁ、はい!!」
そういって輝夜は彼岸花を鞘に戻す。
腰を低く構え、柄に手をかける。いつでも刀を抜ける体制・・・これが居合。
「一閃!!」
ガギン!!
信じられないほど重たい斬撃が円卓の盾を襲った。衝撃は両手を通じて、腕、肩まで貫通する。
「ぐっ、まだ、だあああああ」
盾を掴む手に力を入れて振りぬく。
輝夜の攻撃の対極に位置するほど、遅く弱い攻撃となった。もちろん、輝夜には当たっていない。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
指先に力が入らない。
「これからしばらくは、毎日この場所で鍛錬をする。」
「わか、った。」
ダンジョンに潜ったときよりも消耗しているのではないだろうか。ギャラハッドは大の字に倒れたまま動かない。
「ほら、少しだけ膝を貸してやる・・・」
「輝夜お姉さん・・・」
ギャラハッドの体力が回復したのはそこから30分後のことだった。
「輝夜とガルったら、いったいどこいってたの!!」
星屑の庭に帰るとアリーゼが出迎えてくれた。
「ガルが強くなりたいといったから、鍛えていた。今日からしばらくは、毎日行う予定だ。」
「鍛えるって・・・なるほどね。わかったわ。朝食は出来てるから早く食べちゃいなさい。」
アリーゼはボロボロになったギャラハッドを見て察した。
ギャラハッドが強くなりたいという理由なんて、私たちのためなのだから。ネーゼたちの姿を見て、輝夜にお願いしたのだろう。
朝食を用意したのはアリーゼだ。
トーストに焼いたソーセージと目玉焼き、レタスのサラダ。シンプルだが、それがいい!!
鍛錬で使い果たしたエネルギーが回復していく。
「おかわりもあるからいってね。」
「おかわり!!」
よほどお腹が減っていたのだろう。あっという間に皿が空になってしまった。
作ったアリーゼもニッコリしている。
「アリーゼお姉さん、このサラダのドレッシングは?」
「ガルがお料理上手だから、負けられないと思って私も少し頑張ってみたわ!」
レタスのサラダにかかっていたドレッシングはアリーゼの作ったものらしい。オリーブオイル、酢、塩、ブラックペッパー、フレッシュハーブを使ったもの、シンプルで簡単なものだが、それがこの朝食とマッチしている。
大量の汗をかいた体に塩分が吸収される。酸味があることでさっぱりと食べられた。まだまだいけそうだ。
結局三回目のサラダのおかわりをして、ギャラハッドの腹は膨れた。
「ただいま戻りました~!!」
入口の方から聞こえてきた声はネーゼだ。
「ネーゼお姉さん!!」
どうやらもう退院できるらし。ヒューマンに比べ自然治癒力の高い獣人だからこそだろう。帰ってきたネーゼには傷跡一つなかった。
「おおガル! ただいま!! 心配かけたな。」
出迎えに来てくれた可愛い可愛い弟分を熱烈にハグをかます。
「くんくん、あれ、汗の匂いがするな。」
「あっ、輝夜お姉さんと鍛錬してまだ水浴びしてなかった。」
「うぅ~ん、これはよくない。大変よくないなぁ!!」
ギャラハッドの汗の匂いを嗅いだとたん、ネーゼは鼻息が荒くなり、尻尾をブンブン振り回しだした。
「これは即お持ち帰りしなければ!!」
本当に退院したばかりかと思うほどの力を発揮するネーゼ。そのままギャラハッドを自室へ連れて行こうとしたところ・・・
「お前は何をやっているんだ。」
救世主輝夜が現れた。
ひょいっとネーゼに抱っこされているギャラハッドを奪い取った。
「なっ! 輝夜!! 邪魔するなよ。」
「何が邪魔するなよだ。はぁ、元気そうでよかった。コイツ、お前が
「はぁ!? だ、駄目だぞ!! ガル、私が傷つけられて怒ってくれるのは嬉しいが、一人でダンジョンへ行くなんて、お姉ちゃん許さないからな。」
「・・・うん、わかってる。それより、おかえりネーゼお姉さん。」
「ただいまガル。」
なんとか無事でしたねネーゼさんは・・・
ネーゼさんを治療してくれたのは、まだLv.1の彼女です。まだ入院していなさいっていわれたのではないのかって?
ちゃんと彼女の許可を得て帰宅していますご安心ください。