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やっと【女神】と【女神】は終わります。
つまり、待ちに待った【フレイヤ・ファミリア】との戦いに決着が着きます。
「こ、これは、誰が予想できただろうかっ!! 都市最強Lv.6【猛者】に、Lv.3になったばかりの【正義の盾《シールダー》】が渡り合っているううううううううう!!」
実況席は興奮が収まらなかった。
血に塗れても、どんな傷を負っても、決して盾を離さず、誰しもが勝てないと
不屈の精神…英雄とは、こういう生き物のことを指すのではないかと。
マイクを握る手が震える。腕の血管はこれ以上ないくらい浮き上がっている。
今すぐ駆け出したい。冒険したい、あの背中に並びたい。それらの感情を全て声に乗せる。
「赤雷が迸り、盾が猛打をしかける!! 【猛者】によって大きくダメージを受けたと思うと、【
【神の鏡】にはギャラハッドの身体が輝き傷が癒えていく様をハッキリと認識することができた。
それを見ていた【フレイヤ・ファミリア】の冒険者は…
「ふざけないでッ!! 傷を負っても回復し立ち上がるなど、私たちの目指す|強靭な勇士(エインヘリヤル)そのままじゃないですかッ!!」
ピンクの髪を二つに分けた
その目は嫉妬に狂っている。
「Lv.3だというのに、叶わないとわかっているのに立ち向かうなんて…あの方の寵愛を独り占めするなんて!!」
自身の頭を激しく掴み目を大きく広げる。普段なら美しい彼女の瞳はドス黒く深淵を孕んでいた。
「面白くないけど、俺は好きかな…」
ボソッと言葉を漏らしたのはLv.5【|黒妖の魔剣(ダインスレイヴ)】ことヘグニ・ラグナール。黒妖精であり、ヘディンと並んで白黒の騎士と称されることもある、【フレイヤ・ファミリア】の幹部だ。
「へグニ様!!」
気に入らない相手を称賛したへグニに思わず怒声を浴びせる。
「ひっ、ご、ごめん!!」
第一級冒険者でありながら、へグニは実に臆病な性格をしていた。
「気に入らんな。」
「あぁ、全くだ。」
「あぁ、その通りだな。」
「あの猪も何を手こずっている。」
全く同じ顔をした四人の小人たちがイラつきを見せる。
Lv.4の【
「神の恩恵もない時代の亡霊なんぞさっさと倒しちまえ。」
アレンが呟く。
「…」
そしてヘディンは無言で勝負の生末を見ていた。
ゴンッ! ガンッ! キィンッ!!
すっかり荒地となってしまった【
火花が散る度にオラリオ中に響き渡る、まるで楽器の演奏のように…
「
またギャラハッドの手から赤い稲妻が発射される。
「ぬん!!」
まだ腕は痺れているようで、片手だけで大剣を振り魔法を両断。
やはり都市最強の名は伊達じゃない。
オッタルはボロボロではあるが、まだ余裕があった。
逆に傷が癒えたギャラハッドの方が
「先ほどの魔法はなかなか効いたぞ。」
痺れていた腕が治ったようだ。
口から蒸気のような煙を吐き出す。
「ここまで戦い抜いたお前に敬意を表して、俺も使おう…|銀月(ぎん)の慈悲、|黄金(こがね)の原野…」
「おい、それ止めなくていいのかよ!!」
ずっと座っているだけだったモードレッドが忠告する。
「はぁ、はぁ、止められません…多分、止めようとしても止まりません。」
ギャラハッドの考えはあっていた。詠唱を妨害しようともオッタルはその場でじっと攻撃を耐えながら詠唱を続けるだろう。並行詠唱が出来なくても、彼の強靭な肉体があれば、問題ない。
「この身は戦の|猛猪(おう)を拝命せし。」
オッタルの身体を中心に魔力の渦が現れる。
「駆け抜けよ、女神の神意を乗せて、【ヒルディス・ヴィーニ】!!」
魔力は黄金の光となりて、オッタルの全身から湧き上がる。
オッタルの持つ強化魔法【ヒルディス・ヴィー二】。魔力で攻撃を強化するというシンプルで強い魔法。一撃一撃が必殺のオッタルが強化されるなど、考えたくなかった。
「いくぞッ!」
直後、オッタルの姿が消え正面に突然現れる。
ドーン!!
音が響き渡るより先に、ギャラハッドは吹き飛ばされる。
荒れ果てた荒野をバウンドし、転がり続けた。
300メドルは吹き飛ばされただろう。
「はぁ、はぁ、な、なに今の…」
明らかに今までの攻撃の比ではなかった。
「でも、今のを耐えきったら…」
「なら次だ。」
既にギャラハッドの横に巨体があった。
影が盾を切り付ける。
また吹き飛ばされる。斬られる、吹き飛ばされる、斬られる、吹き飛ばされる。
ギャラハッドがボールのように弄ばれた。
「ガル!!」
その姿を見ていたアリーゼの甲高い悲鳴がバベルの塔30階に響いた。
「あんの猪…」
ライラも拳に力が入る。
「…」
師匠の輝夜はじっと見ている。
「ガル…」
リューは目に涙を浮かべている。
「はぁ、円卓の騎士が現れたときはどうなるかと思ったけど、これなら勝負は見えたわね。」
モードレッドが現れたときはヒステリックを引き起こしていたというのに、すっかりいつもの美の女神へと戻ったフレイヤは毛先をくるくるとしながらアストレアへいった。
「あの子を舐めないで、まだ盾を持っている。」
アストレアは力強い視線を持ってフレイヤを睨みつけた。
「あら、強がりかしら。眷属を想う心があるなら、あの子がボロボロになる前に止めてあげたらいいのに。」
「っ!!…いえ、私は信じているわ。あの子が勝つって…」
「アストレア様…」
自らの主神が笑みを浮かべて【神の鏡】を見つめた。その姿を見てリューの涙が止まる。
「ガルッ!! 頑張れえええええええ!!」
リューの大声。
ファミリアの末っ子妖精が他の乙女たちの炎を大きくした。
「そうよ!! ガルは負けないわ!!」
「はん、当たり前だ。やっちまえ!!」
「盾を握る手があるなら、まだ勝てる!! お前は負けない!!」
「ガルいっけええええええ!!」
「私たちの弟は恰好良いんだからな!!」
「【猛者】なんか打倒しちゃえ!!」
「帰ってきたら全力で抱きしめてあげるからね!!」
「いつもみたいに、私たちが想像できない戦い方を見せて!!」
「私らの未来の夫は負けないんだから!!」
「【猛者】に一発ぶちかましちゃえ!!」
「俺は次の一撃でお前に勝利する。受け止められるか?」
すっかりぼろ雑巾へと化したギャラハッドにオッタルが尋ねた。
もうすぐ魔法の強化が切れる。その前に、自身の放てる最大の斬撃をギャラハッドへぶつけるのだ。
「はぁ、はぁ、受け止められます。僕は、まだ、盾を持っている!!」
震える足になんとか喝を入れて立ち上がる。
「いい目だ。」
ギャラハッドの
「神名、拝借──この身は正義の席に立つ……
其は全ての罪、全ての罪禍を正す我らが天秤──顕現せよ!」
円卓の盾からまばゆい光があふれ出る。
「【
「受け止めて見せろ!!」
ギャラハッドの生み出した正義の天秤がオッタルの全力の一撃を受け止める。
金色の衝撃を生み、斬撃は天秤へ突き進む。
天秤を砕こうとただひたすらオッタルの斬撃はギャラハッドへ向かう。
しかし、黄金の斬撃はギャラハッドへ触れられない。
光が収まった。両者は立っている。
ギャラハッドは、オッタルの一撃を受け止めたのだ。
「面白い。今のを受け止めるとは…」
「これが都市最強…」
フィンの魔法もすごかったが、オッタルの一撃はそれをはるかに上回っていた。
「だが、勝負は着いたな。」
その言葉を聞き終える前に、ギャラハッドの身体が崩れ落ち…なかった。
「えっ、なに、これ…」
すっからかんだった
流した血も、まるで時が巻き戻ったかのように全身に活力が湧いてくる。
「何をした?」
オッタルの眉間にシワが寄る。
「わ、わかりません。ですが、まだまだ戦えそうです!!」
ギャラハッドの足元が爆ぜた。
ズドンッ!!
盾の下部がオッタルを襲う。なんとか反応し、大剣で攻撃を防いだ。
しかし、大剣は根元からがっつり折れてしまう。
勢いを殺せずオッタルの体内に衝撃が伝わった。
盾で殴る、掌底で内臓を破壊する、蹴りで顎を砕く…
先ほどまでとは大違いの戦闘を見せる。
その様子を見ていたモードレッドは…
「アイツにも目をつけられていたのかよ…気に食わねぇが、まぁ、今回は感謝だな。」
ギャラハッドが急に強くなった理由に心当たりがあるようだった。
「はああああああああああ!!」
盾が爆ぜる。
腰の入った一撃がオッタルの屈強な身体をへし折った。
「ぐっ。」
うめき声を漏らすオッタル。
「とどめです!!」
跳躍し、盾ごとオッタルの頭上へと降下した。
押しつぶされることはなんとか回避したオッタルだったが、既にギャラハッドは懐へ忍びこんでいる。
「
掌底を食らわすと同時に魔法を放つ。
オッタルの身体を赤い稲妻が貫通。
「
更にもう一発
「
「
「
「
「
「
「
「
「
「
「
「
放つこと計13発。
赤い稲妻がオッタルを串刺しにしたのだった。
白目を向き、全身から黒い煙を出しながらオッタルは地に伏せた。
「お、【猛者】撃沈ッ!! まさかのまさかが起きてしまった!! 見ているか神々よ、これが下界の奇跡だあああああああああああああああああ!!」
イブリの声がオラリオを越えて響き渡った。
「嘘…」
フレイヤもオッタルが敗れたことが信じられない様子。
目を何度も瞬きさせている。
「やったわ!やった!!」
「ガルが勝ったぞおおおおおおおおおおおおおお!!」
「すごい!!すごすぎるだろ!!」
「もうどれだけ格好良くなるのよ…」
「よかったぁぁぁぁぁ、ほんとによかったぁぁぁぁぁ!!」
正義の乙女たちは歓喜に震える者もいれば、安心し膝から崩れ落ちる者もいる。
主神アストレアは…
「ガル!!」
目から涙を流して喜んでいる。
「ギャラハッド君が勝ったああああああ!! お姉ちゃんお姉ちゃん見てた!見てたよね!!」
「あ、あぁ、見ていた…まさか本当に勝ってしまうとは…」
大喜びするアーディと対照的でシャクティは開いた口が塞がらないようだ。
「はぁ、ギャラハッド君、格好良かった…」
鉛色の髪を持つ少女は頬を紅潮させ、両手を優しく抱えた。
金髪の髪を持つ少女はというと…
「ガルが勝った!!」
これ以上ないくらいの笑顔を見せていた。
「ガハハハハ、あの小僧やりおったわい!!」
「信じられない…」
「あぁ、僕の親指の疼きが止まらない。だが、この疼きは嫌じゃない。」
ガレスは豪快な笑い声をあげて、リヴェリアは美しい瞳が大きくなる。そして、腹黒い小人は獰猛な笑みを浮かべた。
「ガル、私の英雄…」
完全に乙女の顔をしている。
胸がポカポカしている。暖かくて優しい気持ちになるのに、どこか苦しい。はやく、ギャラハッドに会いたい。そんな気持ちが少女を支配していた。
「さて、フレイヤ、わかっているわね…」
「…えぇ、あなたの言うとおりにするわ。」
「じゃあ…」
アストレアがフレイヤに下したのは二つ。
・今後、ギャラハッドを自身のファミリアへ勧誘しない。
・【フレイヤ・ファミリア】は【アストレア・ファミリア】の属神となる。
「それだけでいいの?」
「えぇ、あなたのところの子はみんな強いわ。暗黒期を乗り越えるためには必要な戦力よ。」
「わかったわ。今後、私はあなたたちに協力する。あの子を無理やり眷属にすることもしない。」
アストレアが下した内容は、甘いように思える。
これが暗黒期ではないときならば、もっと厳しい判断を下していたのかもしれない。
【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】なき今の下界で、【フレイヤ・ファミリア】を解散させることは、
戦闘後、意識を失ったギャラハッドを抱えたモードレッドが【
オッタルは放置されているが、【フレイヤ・ファミリア】の団員たちが回収に来ているため大丈夫だ。
「円卓の騎士の威光を見せた辺りは褒めてやるか。」
兜の下ではモードレッドが笑みを浮かべている。
叛逆を起こしたとはいえ、モードレッド自身、円卓の騎士ということに誇りを抱いている。そして、その円卓の騎士を継ぐギャラハッドが、現代でも誉ある円卓の騎士の威光を見せたことが嬉しかった。
「け、怪我人を治療します!!」
大慌てでモードレッドを迎えたのは、小さな少女。
彼女の名はアミッド・テアサナーレ。【ディアンケヒト・ファミリア】に所属するLv.1ながら、注目されている
「おら、あとは頼んだぞ。」
「怪我人を乱暴に扱わないでください!! って、消えてる!?」
「もう魔力が切れるからな。じゃ、俺たちの子を頼むぞ。じゃあな。」
それだけいって、モードレッドの姿は消えた。
廃都の地下に眠る泉にて…
「なんとか勝ったか。少し手を貸したが、今後の成長が楽しみだ。」
泉の水柱に映るギャラハッドの姿を見て人影は怪しく嗤う。
「今はまだ力も満足に発揮できないようだな…力を完全に開放した暁には、私の方から迎えに行こうか…」
「ふふふ、なかなかどうして面白い。」
神聖なはずの泉は、不気味でしかない。
「私の夫になるために、もっと強くなれ。」
美の女神から逃れたギャラハッドに、新たな魔の手が迫っているのは、誰もしらなかった。
ギャラハッド君が急に強くなったのは、泉に住む何者かの手助けがあったようですね。味方だと思いたいですが、ギャラハッド君を狙っている様子…
フレイヤから逃れたと思ったら更に狙われるギャラハッド君、強く生きて!!