感想ありがとうございます。
今回はライラの魔法が登場します。
ライラの魔法は名前しかわかっていないため、作者の想像で書いたものです。
ギャラハッドが初めてダンジョンを探索した。
6階層にてウォーシャドウたちに囲まれる事態が発生したが、ギャラハッドは独りで全てを対処しきった。
そして今日の目標である7階層へ進んだ。
「怪我は大丈夫か?」
ネーゼが包帯を巻いたギャラハッドの腕を見る。
「大丈夫です。かすり傷ですし、包帯まで巻いてもらっちゃってありがとうございます。」
かすり傷といえど、しっかり処置する。ギャラハッドは七歳である。病気にでもなったら大ごとだ。
「んじゃ、この階の説明をするぞ。さっき戦ったウォーシャドウはもちろん、キラーアントっつう硬いモンスターが出る。瀕死にすると仲間を呼びつけるから、とどめは一気に刺さないと、クソめんどくせぇことになる。」
ライラがギャラハッドに聞かせる。
「あとはニードルラビットと、パープル・モスだな。前者はともかく、パープル・モスは毒の鱗粉をまき散らす。長時間触れてると毒になるから気をつけろ。スキルで【対異常】があるから大丈夫だと思うが。」
4階層を越えると
突如現れ鋭い爪を振るうウォーシャドウ。
ただでさえ硬くて攻撃しにくいのに群れでやってくるキラーアント。
状態異常:毒 を引き起こすパープル・モス
駆け出しがソロで潜ろうとするにはリスクが高すぎる。
「キィィィィィ。」
そしてギャラハッドは対峙した。
赤銅を連想させる硬い表皮を纏った昆虫型モンスター、キラーアント。
カチカチと顎を動かして威嚇してくる。
「きつくなったらすぐにいってよ。」
「はい!」
ネーゼがギャラハッドの背を押した。
ギャラハッドが飛び出す。
キラーアントが盾にぶつかる。それまでの
「キィィィィィィ!!」
何度もキラーアントが円卓の盾に体当たりをくらわす。顎で嚙みいてくるが、盾に流され効かない。しびれを切らしたかのように何度もぶつかる。
「普通は魔法使ったり、関節部分を切断したりするけど、いけそう?」
「うぅ~ん、ちょっと試してみるね。えいっ!」
少年のかわいい声とは裏腹に、盾がギロチンのようにキラーアントの首を切断した。
「まだ生きてるからな。」
首が切断されても生きているとは驚異の生命力である。
動けないキラーアントの頭に盾を押し付けてグチャリと潰した。
「うっ、なかなかグロテスクな戦い方ね。」
「仕方ないだろ。剣なんて持ってねぇし、せめてナイフでも持たせるか?」
パープル・モスとの戦闘もキラーアントほど苦戦することなく勝利した。
毒の鱗粉も【対異常】が働き対して効果を受けていない。初のダンジョン探索にしては順調だった。
ダンジョンの中では時間を把握できないためギャラハッドは知らないが、ダンジョンに潜って五時間が経過していた。
「そろそろ地上に戻るぞ。」
「もうですか? わかりました!」
「随分素直だな。アタシはてっきりまだまだイケるっていうかと思ったが。」
「輝夜お姉さんと約束しました。ダンジョン内ではライラお姉さんと、ネーゼお姉さんの指示に絶対従えって。」
「素直な弟ってのはなかなかいいもんだな。」
ネーゼがギャラハッドの頭を撫でた。
「がああああああああああ!」
「だ、だれかああああああ!」
「くるな、くるなああああ!」
ダンジョンで他の冒険者たちの悲鳴が響いた。
「この声は・・・こっちだな。ライラついてこい。ガルもだ。」
ダンジョンでは他の冒険者との接触はタブーだ。獲物の取り合いに発展して殺し合いになることも多々ある。
「
「わかりました!」
ライラとネーゼが先行して向かったルームには大量のキラーアントとパープル・モスが発生していた。
その中央で男女二名ずつ計四名の冒険者がいた。一人は額から血を垂れ流しており、意識もないようだ。
「誰か助けてくれえええええええええ!」
盾とメイスを持った男が叫ぶ。
「はあッ!!」
ライラが自身の獲物二対のブーメラン
一瞬で今にも中央の四人に襲い掛かりそうだったキラーアント二体を灰へ変えた。
「す、すごいっ!!」
ライラの活躍を前にギャラハッドの目が輝いた。
「ネーゼ、キラーアント頼めるか。私は先にパープル・モスをやっちまう。」
「任せて。ガルは中央の人たちを守って。」
「了解!!」
姉たちの指示に少年は迅速に動く。
「大丈夫ですか?」
「一人重症だが、他はなんとか、助かった。」
「まだ安心できません。
「使い切っちまった。帰ろうとしてたときに急に壁から大量の
「僕の
ギャラハッドが男性に
「う、うぅ、アイク・・・」
「イーナ!よかった。」
「他の方は大丈夫ですか?」
「あぁ、ありがとう。」
「君は【アストレア・ファミリア】なのかい?」
明らかにダンジョンに相応しくない少年の姿に最初は四人も戸惑った。
しかし、少年と共に来た二人は有名だ。【アストレア・ファミリア】正義の眷属たち。
「やばい!ガル!!そっちに二匹いった。」
ライラから声が飛ぶ。
「君は逃げて!!」
「俺たちも傷が治ったから戦う。」
「あなたたちが背中にいる限り、僕は負けません。」
スキル【誇り高き正義の盾】が発動する。
力と耐久・・・それだけじゃない全
体が軽くなる。
キラーアントが盾にぶつかるより先に盾を振るった。
ドンッと爆発したかのような音が響く。吹っ飛ばされたキラーアントは壁にぶつかり灰となった。
もう一匹も盾で弾く。
「こんな小さな体で、体より大きな盾を振り回してる!?」
同じく盾使いの男性冒険者アイクが驚きを隠せない。
「はああああああッ!!」
顎に膝蹴りを食らわし盾を押し付ける。そのままネーゼの前まで吹っ飛ばした。
「お願いします!!」
「よっしゃ!ふんッ。」
ネーゼの踵落としが炸裂し、キラーアントは弾け飛んだ。
「ガル盾を構えろ!!あれやるぞ。」
「ライラお姉さん・・・はっ!了解!!」
ガルが盾を上に構える。上空から降ってくる矢を防ぐかのようだ。
「しっかり持っとけよ。」
ライラがギャラハッドに向かって走り出す。
「ふっ!」
なんと円卓の盾を踏み台にした。ギャラハッドもライラの跳躍にタイミングを合わせて押し出す。
ライラの脚力とギャラハッドの腕力が作用し一気に小さな体が飛び上がる。
「【ウィング・スマイト】!!」
ライラが魔法を放つ。風の礫がルームに溢れる。パープル・モスたちを蹂躙しつくした。
「残りはキラーアントだけだ。一気に決めるぞ。」
そして残っていたキラーアントたちもほどなくして灰になった。
「ほんとうにありがとうございました!!」
「あなたたちが来てくれなかったら、今頃・・・」
「盾使いの君もありがと。強いのね。」
「あぁ、同じ盾使いの俺も勉強になったよ。真似は出来そうにないが・・・」
救出した冒険者たちがギャラハッドたちに頭を下げる。
「無事でよかった。」
「今後は
ネーゼとライラがそういった。
「地上に戻ったら、必ず
「気にしないでください。僕は【アストレア・ファミリア】ですから。」
ニコッとイケショタスマイルをかますと、女性は頬を紅くした。
「かわいい。」
「こらこら。」
「こいつはアタシらのかわいい弟なんだ。あげないぞ。」
そのまま持ち帰りそうな勢いの女性からギャラハッドを奪い取る二人の姉。
「アタシらも地上へ帰るところだったから、送ってくぜ。」
「助かります。何から何まですみません。」
こうしてギャラハッドの初めてのダンジョン探索は無事に終わった。
地上に着いた。空はすっかり茜色に染まっている。
四人を見送ったギャラハッドたちは帰路についた。寄り道せずにアストレアの待つ星屑の庭へ・・・
「おかえりなさい。」
拠点の入り口にはアストレアが待っていてくれた。
「ただいま戻りましたアストレア様。」
「ふふふ、今日もみんな欠けることなく帰ってきてくれたわね。嬉しいわ。」
「やっべぇ、アストレア様が新妻みたいなことしてくれてるぞ。」
「にいずま?」
「新妻っていうのはな、結婚したばかりの奥さんのことだ。」
「アストレア様が奥様?」
「もう、ライラ。ネーゼ。ガルに変なことを教えないの。」
同性すらも魅了するアストレアの魅力にたじたじの二人。ギャラハッドはついていけないようだ。
「さぁ、ダンジョンに行ったんでしょ。汚れがすごいわ。先に汗を流してらっしゃい。」
「ガル、今日はお前が先に入っていいぞ。」
「いいの?」
「あぁ、もうそろそろみんな帰ってくるだろうしな。先に入っちまった方がいいだろう。」
「わかった。じゃあ入ってくる。」
しばらくして
「たっだいま~」
「ただいま帰りました。」
全員が帰ってきた。怪我もないようでアストレアもにっこりだ。
「ガルは?」
「風呂入ってんぞ。」
「風呂・・・ふふん!いいこと考えたわ。」
「ふぅ~気持ちいい。」
綺麗に全身を洗ったあとギャラハッドは湯舟に浸かる。極東出身の輝夜が厳しいためギャラハッドはこの一週間で湯舟に浸かる前に全身を洗う習慣がついた。
「ネーゼお姉さんとも、ライラお姉さんとの連携上手くいったな。」
思い出すのは先の戦闘。
襲い来るキラーアントを弾き飛ばしネーゼの前まで運んだ。あれならば他のメンバーと組んだ際も状況に応じて使えるだろう。
そしてライラと行った連携。4層から5層へ降りる際にライラが提案した作戦だった。
『もし敵に囲まれるような状況になったらお前の盾を踏み台にする。そんで上からアタシが敵を一掃。出来るかはわかんねぇが、余裕があったら試すぞ。』
まさかあの場面でやってのけるとは、試すじゃなくてぶっつけ本番でしたが。
「でも、あの人たちを助けられてよかった・・・」
『僕は【アストレア・ファミリア】ですから。』
「ちょっと生意気だったかな・・・でも、誇らしいな。これが円卓の騎士たちの気持ちだったのかな。」
ギャラハッドは己の胸に手を当てる。
自身に流れる英雄たちの血。正直にいうとギャラハッドは主君のために命を落とすなどバカげているとさえ思っていた。しかし、正義のために命を懸ける姉たちの姿を見て、その考えは変わりつつあった。
そのときだった。
ガラガラガラ。浴室の扉が開いた。
ゾロゾロと乙女たちが入ってくる。
「やっほーガル!しっかり温まってる?」
入ってきたのはもちろん、アリーゼたちだ。
「せっかくだから一緒に入ろうよ。」
「そうよ、オラリオに来てから、いっつも私たちのあとに独りで入ってるし。」
「家族なんだから一緒に入るくらい普通だよね。」
ノイン、リャーナ、マリューが微笑む。
「リオンも、セルティもおいでよ。」
アスタが二人を呼ぶ。
「う、うぅ、家族とはいえ、ガルは・・・」
「ちょっと恥ずかしいけど、いっか。」
セルティはそのまま入ってくる。対してリューはやはり羞恥心が勝つようで、タオルを巻いて入ってきた。
「ダンジョンどうだった?」
全員が体を清め、ガルを囲むように湯舟に浸かる。
見慣れぬ異性の裸にギャラハッドは動揺を隠せない。
「あらあら、ガルったら恥ずかしがっちゃって。かわいい!」
堪えきれなくなったアリーゼがガルを後ろから抱きしめる。
自身の前に座らせて、ぬいぐるみを抱きしめるかのようにがっつりホールドされた。
「ダンジョン初日にしては、上出来っていえるな。」
「そうね。怪我もかすり傷だけだし。」
一緒に潜っていたライラとネーゼが評価を口にする。
「私との約束はしっかり守っているようだな。」
輝夜がアリーゼの隣に座る。
「うん。」
「ならいい。お前はまだ子供なのだから、無理だけはするなよ。」
優しい笑みを浮かべる輝夜に他のメンバーが驚く。
「嘘だ、か、輝夜が・・・」
一番の驚きをあらわにしたのはリューだ。
「なんだポンコツエルフ。」
「そ、そのような優しい笑みを浮かべるだなんて。はっ!さては他派閥の冒険者が成りすましているのでは!!」
刹那白い一閃がリューを襲う。輝夜の手刀だ。
リューの意識を一撃で奪い去る。
「このポンコツエルフが、私だってかわいい弟分の心配くらいする。なんだ、他のみんなも何かいいたいことがあるか?」
「「「「「「「「い、いえ、何もないっす!いや、まじで。」」」」」」」」
あのおっとりとしたお姉さんキャラのマリューですら言葉使いがリヴィラのチンピラのようになっている。
「まったく、ガル、体はしっかり洗ったのか。」
「はい!」
「せっかくだ、私が背中を流してやろう。」
「えっ、いや・・・」
「なんだ、嫌なのか? 金を払ってでもしてもらいたいという神や人ばかりなのに。」
「嫌じゃないです。」
「よろしい、ほら早く来い。」
輝夜に手を引かれ、アリーゼはギャラハッドを奪われた。
頭の天辺から爪先までもれなく綺麗に現れたギャラハッドは精も魂も尽きたように真っ白だった。
輝夜に意識を奪われた哀れな妖精はというと・・・
「・・・」チーン
すっぽんぽんのまま湯舟を浮いて彷徨っていた。
哀れ。
「ふふふ、みんなよく温まったみたいね。あら、リューは?」
「まだ温まりたいといって浮いてます。」
「浮いて? まぁ、いいわ。今日はねデメテルが野菜を持ってきてくれたわ。」
どうやらギャラハッドのドリアを気に入ったようで、お礼にと野菜を少し持ってきてくれようだ。
『昨日のドリアとってもおいしかったわ! 気持ち程度で申し訳なけどお野菜持ってきたから食べてね。暗黒期でさえなければもっともっと持ってきたのに・・・』
暗黒期だというのに無償で持ってきてくれたのだ。これはデメテルなりの最上級の感謝だろう。
「僕、今度【デメテル・ファミリア】の手伝いにいってきます。」
「そうね、みんなで行きましょう。」
デメテルが持ってきてくれた野菜は、ジャガイモ、ニンジン、タマネギだ。
どれも栄養価が高い貴重な野菜。
今日の当番は輝夜だ。
「せっかくいただいたことですし、あれでも作りましょうか。」
輝夜はそういってデメテルにいただいた野菜に肉と、瓶に入った調味料を取り出した。
輝夜が作った料理は肉じゃがと呼ばれる極東の料理だ。ショウユという調味料を使っているらしい。
「ほらしっかり味わって食べるんだぞ。」
他のメンバーよりも多めに盛られた肉じゃがをギャラハッドへ渡す。
「こんなにいいの?」
「当たり前だ。そもそもお前がデメテル様にドリアを渡したから、この野菜たちをもらえたのだ。」
「輝夜ちゃん、このライスはそのまま食べるの?」
ライスをリゾットやドリアといった食べ方しか知らないマリューが尋ねた。
「そうだ。この肉じゃがと一緒に食べるんだ。」
「へぇ、ライスってこんなにモチモチするんだな。」
ネーゼが興味深そうに器に盛られたライスを見る。
「「「「「「「「「「「「「いただきます。」」」」」」」」」」」」
いつの間にか回復したリューを入れて全員そろった状態で食事をとる。
「ん! おいしい!! このタマネギ甘い。ジャガイモもホクホクで噛めば噛むほど味が染みてて。」
ニッコニコのギャラハッドに輝夜が微笑んだ。
「ほんと、おいしいわ輝夜。しっかり煮込まれてるのかしら硬い野菜たちもホロホロね。」
アストレアがニンジンを噛みしめてそういった。根菜類であり繊維質なニンジンもしっかり煮込まれ柔らかい。そしてなにより甘い!これがショウユとよく合うのだ。
「輝夜!! これめっちゃライスと合うわね!!」
アリーゼも目を飛び出させている。
「ほんとほんと、いや、ライスって甘いのか。」
純粋なライスだけ炊いたものを食べたライラは、その甘味に衝撃を受ける。
「うっ、悔しいですが、とてもおいしいです。」
料理が苦手なリューは悔しそうに肉じゃがを頬張っている。
「お肉も優しい味・・・妖精の私も食べやすい。」
菜食主義な妖精のセルティも肉じゃがの肉は気に入ったようだ。野菜のうまみとショウユの甘味が肉を優しい味わいへと変えている。
「輝夜ちゃん!! 私にもこれの作り方を教えて!」
マリューも自分で作りたくなるくらい気に入ったらしい。
「もぐもぐもぐ・・・」
アスタは何もいわず一心不乱に食べている。
「ライスが止まらないわ。やだ、おいしいすぎる。」
リャーナも勝手に動いて止まらない自分の手を凝視している。
「初めて食べたはずなのに懐かしい気がする。」
イスカの感想だ。
「それそれ、なんで?」
ノインもイスカと同じことを思ったようだ。
「極東では、肉じゃがは母親の味といわれる。男を捕まえるときも肉じゃががおいしく作れるというのは立派なステータスだった。」
「「「「「「「「「「なんですって!?」」」」」」」」」」
「くっ、やはり極東美人は強いのか。」
「いつもの腹黒はどこにいったんだよ。」
「ガルに猫を被る必要がないからだ。それより散々な評価だな。肉じゃがはいらないのか。」
「「いえ、いります!おいしいです!!」」
「よろしい。」
ガルだけじゃなくて、輝夜にも胃袋を掴まれだす乙女たち。
「糸こんにゃくはオラリオにないから入れられなかったが、まぁ上出来だろう。」
「「「「「「「「「「「「ごちそうさまでした。」」」」」」」」」」」
もうタグに料理と書いた方がいいのですかね。それほどまでに料理の描写を挟んでしまっている気がします。
輝夜さんが輝夜さんしすぎて、輝夜さんになっています。