感想と誤字脱字報告、大変ありがとうございます。
今回はまるまるほのぼの日常回となっております。
ギャラハッドがアイズと友達になった翌日。ギルドからの招集があった。
ローズがウラノスに廃都で起こったことを伝えたからだ。
「久しいなアストレア。そしてよく来てくれた円卓の子よ。」
神ウラノス。【神時代】が始まった千年前に下界に降りてきた最初の神々の一柱。現在では眷属を持たず、祈祷の間にてダンジョンから
「えぇ、久しぶりウラノス。何千年ぶりかしら。」
「は、初めまして。ギャラハッド・デカトゥリアといいます。」
椅子に座っているためよくわからないが、身長は2メドルほどありそうだ。髪は白く老人のような見た目をしている。しかしあふれ出る神気はすさまじい。
「職員のものから報告を聞いた。まずは謝罪を。すまなかった円卓の子ギャラハッドよ。」
「いえ!! ウラノス様がアストレア様たちに
「もっと早くに向わせるべきだったと後悔している。本当にすまなかった。」
表情は変わらないが贖罪の声は重く、祈祷の間に響いた。
「それですまないが、例の盾を見せてはもらえないだろうか。」
そしてウラノスはギャラハッドの持つ円卓の盾に目を向ける。
「承知しました。どうぞ、こちらです。」
ギャラハッドはウラノスの近くまで向かい、盾が良く見えるように捧げた。
「ふむ・・・なるほど。これはただの盾ではないな。円卓そのものなのか。これを造った神・・・いや、神ではないな。神霊か・・・」
円卓の盾をじっくり見つめたウラノスの口から言葉が漏れる。一目で円卓の盾を円卓そのものと見抜いた慧眼、流石ウラノスである。
「・・・その盾は円卓の子とともにあるべきだ。ギャラハッドよ、これからも正義の使者としてオラリオのことを頼むぞ。」
「はい!!」
「ねぇ、ウラノス。あなたはその盾を造った神に心当たりがあるの?」
「大方な。しかしそやつはもう下界にいないであろう。あの都と共に朽ちたようだ。」
「そう・・・さようならウラノス。さあ、行きましょうガル。」
アストレアとギャラハッドはそういって祈祷の間から出て行った。
「出てこいフェルズ。」
「なんだ。」
「ヘルメスに使いを頼む。あの島についてもう少し調査がしたい。」
「わかった。まさかかの円卓の子孫がオラリオに来るとは・・・こうして生き永らえるというのも悪くはないな。」
フェルズと呼ばれた黒いローブの人物、顔は見えないが声は女声のようにも聞こえる。ウラノスからの指示を受けているあたりギルドの人材なのだろうか。黒いローブは闇に溶け込むかのように姿を消した。
「
既にいない英雄たちの姿を思い浮かべ、ウラノスは祈りを捧げた。
「アリーゼたちがね、ガルは今日お休みでいいよっていってたわ。」
ギルドからの帰りにアストレアがギャラハッドに告げた。
「オラリオに来てから、まともに休日がなかったでしょ。今日は好きなことして過ごしていいわよ。」
ギャラハッドがオラリオに来て半月ほどが経過していた。幼いギャラハッドに休日がなかったことに気づいた姉たちは休日を強制的に取らせたのだった。
「好きなことですか・・・」
「えぇそうよ。アリーゼたちから前にダンジョンへ潜った際のお金を預かっているの」
アストレアが取り出した袋にはそこそこのお金が入っている。
9000ヴァリス・・・七歳の子供が使うには十分すぎる金額である。じゃが丸くん一個あたり30ヴァリスということを考えると、かなりの金額だ。
「こんなにいいんですか?」
「えぇもちろんよ。あなたがダンジョンで稼いだお金ですもの。」
こうしてギャラハッドは、アストレアと共に休日を過ごすことを決めたのだった。
オラリオの南西にあるマーケットエリアへ二人は向かう。
「巡回はいつも北側だけだったので、こちらに初めて来ました。」
「えぇ、あの子たちもガルには南の方に行ってほしくないっていってたわ。もっと大きくなってからにしてね。」
ギャラハッドはオラリオの南に何があるのかよくわかっていない。
マーケットエリアにはたくさんの屋台、露店商人の店たちが並ぶ。装飾品、雑貨、様々なものが並んでいる。
「わぁ、見たことないものばかりです。」
「ふふふ、何か欲しいものは見つかった?」
「・・・特に欲しいものはないですね。」
しかしギャラハッドは無欲な少年であった。装飾品、雑貨、特に欲しい物はない。
「僕が欲しかったものは、もう手に入りましたから。」
「あら、そうなの?」
「えぇ、アストレア様たちのおかげで、たくさんの家族が出来ました。それだけでも十分すぎます。」
「・・・あなたは本当にいい子ね。」
アストレアはギャラハッドの髪を撫でる。
「あっ。」
すると少年は通りがかった露店の店で一冊の本を目にした。
~キャメロット~約束された勝利の王~
円卓の騎士の物語だ。
「その本は・・・買うの?」
「いえ、彼らの騎士道は
「そうね。ふふふ、日に日にあなたは騎士らしく育つわ。冒険者なのに。」
「騎士であり冒険者であり、正義の使者です。」
胸を張る少年の姿にアストレアは微笑んだ。いつかきっとこの子が黒龍を、世界を救うのだろうという確信をもって・・・
マーケットエリアから出た二人は巡回中の輝夜たちに出会った。
「ガルったらアストレア様とデート? 羨ましい!!」
「私もアストレア様とデートしたい! ガルともデートしたい!!」
「休日は、しっかり楽しめてる?」
「ガルも男ということでしょうか。その牙がわたくしたちに向けられるのでしょうか。」
ノイン、ネーゼは二人を羨み、アスタはギャラハッドのことを気にしている。猫を被った輝夜はギャラハッドへ滲みより己の肉体を押し当てた。
「みんなも巡回頑張ってね。輝夜、ガルに変なこと教えちゃだめよ。」
そのような中でもアストレアは平常運転である。流石
「じゃあ私たちは巡回に戻るね!」
「ガル、もしアストレア様に不敬を働く輩がいたら、お前が守るんだぞ。」
「うん!輝夜お姉さんたちも気を付けてね。」
かなりの距離を歩き回ったため、二人はマーケットエリアを抜けた先にあるアモーレ広場で休憩していた。
するとそこで二人は鉛色の髪を持つ少女アーディと出会った。
「あれ! アストレア様とギャラハッド君だっけ。こんなところで会うなんて・・・もしかしてデート!?」
活発な少女はキャッキャと少年とアストレアの姿を見てはしゃぐ。
「ふふふ、こんにちはアーディ。そうね、今日はこの子がお休みだからデートしているのよ。」
「アストレア様とデートなんて、全男が歓喜するやつですね!!」
「そういってくれると照れるわね。」
照れる姿も神々しい。アストレアは美の女神だった?と思うほど美しい彼女を見てアーディは魅了される。
「英雄譚の英雄だって女神さまとデートなんてしたことないよ!! 君よかったね!!」
「相変わらず、英雄譚が好きなのね。」
「はい! ギャラハッド君は英雄譚読んだことある?」
「ちょっとだけなら。アルゴノゥトとかフィアナ騎士団とか・・・」
「君もアルゴノゥト読んだことあるの!! 私ね、アルゴノゥトが一番好きなんだ!!」
【ガネーシャ・ファミリア】に所属する彼女は、大の英雄譚好きであった。
「あとはね、円卓の騎士たちも好きだよ!!」
「あら・・・」
アーディの口から出た名前にアストレアは口元を抑える。
「星の聖剣を携えた王様に従う12人の騎士たち。でも円卓の前では彼らは常に平等だったって。」
「詳しいですねアーディさん。」
「うん! 最後は色々なことが重なってキャメロットは滅びちゃったけど・・・私は円卓の騎士たちが大好きなんだ。」
ニッコニコで話すアーディを見ているとギャラハッドも笑顔になった。
「すべては聖杯の騎士が聖杯探索に出かけちゃったのが、原因なのかな・・・」
聖杯の騎士、ガラハッドが聖杯を探す旅に出たことで円卓は崩壊した。
湖の騎士ランスロットと王妃の不貞、それを見つけた騎士たちを仲間たちを切り捨てたランスロット。ランスロットを罰するために王が出陣した先で、反逆の騎士モードレッドによる叛逆・・・あれほどまで円卓を囲んでいた騎士たちは、最後はお互いに剣を突き付けあう結果で崩壊したのだった。
聖杯を探索したガラハッドも聖杯を見つけると天に連れていかれたとされている。
「円卓の騎士では誰が一番好きなの?」
アストレアがアーディに尋ねた。
「私は聖杯の騎士ガラハッドが好きです! その高潔な在り方と盾を持って仲間たちを守るところが大好きです。『私には剣など必要ありません。この身は国を、民を、仲間を、なにより王を守るための盾なのですから』って。」
アーディが読み上げたのは円卓の騎士物語に登場する聖杯の騎士の言葉だった。
「ギャラハッド君の名前もそっくりだし、武器も盾って、もしかして聖杯の騎士が好きなの?」
「好きってわけじゃないです。むしろ僕はずっと円卓の騎士たちのことが嫌いでした。」
国のために、王のために、その身をすり潰す在り方が嫌いだった。
「・・・」
アーディは静かに聞いている。
「国のために命を散らすなんてバカバカしいって何度も思いました。アルゴノゥトなら周りの人すべてを巻き込んで笑顔にしてくれる。」
「うん、でも『嫌いでした』ってことは、今は違うの?」
「・・・はい、少しずつですけど、彼らの気持ちが分かるような気がしてきました。アストレア様の、アリーゼお姉さんたちのためなら、僕は盾を持ってどんなに激しい攻撃の嵐でも突き進むことが出来ると思うようになりました。」
「そっか、アストレア様たちのことが大好きなんだね。」
「はい! オラリオを守るお姉さんたちを守ることが、僕の正義です。僕の騎士道です!」
「ますます聖杯の騎士みたいだね!! オラリオを守るリオンたちを守るか・・・君だけの正義、君だけの騎士道・・・君ぃ将来絶対モテモテだね。」
「アーディもそう思う?」
アストレアが乗る。
「はい。絶対将来オラリオ中の女の子にモテる冒険者になってると思います。」
「アリーゼたちがね、絶対にこの子は私たちで婿にするんだって。」
「えぇ!! リ、リオン達が・・・」
そして乙女二人が少年の未来について語りだす。一人置いてけぼりにされてしまったギャラハッドはベンチに座り、盾を眺めた。
『キャメロットが遠い過去の遺物となっても、あなたたちのことが好きな人は現在もいるみたいですよ。』
心の中で語り掛ける。
盾が輝いたように見えた。
きっと、彼らも嬉しいのだろう。自分たちの歩んだ足跡が、こうして残っていることが・・・
ギャラハッドがアストレアと休日を過ごした日から半月。ギャラハッドがオラリオへ来て一か月が過ぎようとしていた。
休んだ分以上に働いたため、これからは団員たちは週に二日の休日を得るようにしていた。
当番制で週五日の巡回に回る。そして週に一日は全員が休みを取る日を作った。
ギャラハッドも習慣となってきた休日では、自身の好きなことに時間を費やすようになった。
といってもデメテルのところへ行って農作業を手伝ったり、ダンジョンへ潜ったりすることが大半である。
その成果もあってか、ギャラハッドのステイタスはかなり伸びていた。
Lv.1
力: 533 D → 803 A
耐久: 622 C → 931 S
器用: 399 F → 689 C
敏捷: 406 E → 722 B
魔力: 368 F → 702 B
スキル
【
・誓いによる行動での経験値上昇
・誓いの丈により効果向上
【誇り高き正義の盾】
・戦闘時、力と耐久のステイタス上昇。発展アビリティ【対魔力】、【耐異常】が発現。
・守護対象の側にいる際、全ステイタス上昇。守護対象の数に乗じて上昇。最大12名
・周囲にいる守護対象の耐久ステイタス上昇。
魔法
【
詠唱
「神名、拝借──この身は正義の席に立つ……
其は全ての罪、全ての罪禍を正す我らが天秤──顕現せよ!」
・魔力障壁展開、あらゆる攻撃を隔絶する。
・発動後一定時間、発動範囲内にいる全てに力、耐久、器用のステイタス大幅上昇。
ステイタスの最低評価が【器用】でCである。高すぎる。
それらを鑑みれば、ギャラハッドのステイタスの高さがおかしいことがよくわかる。
【耐久】に至っては900越えである。Sになっている人物など、このオラリオ中を探してもなかなか見つからないだろう。
「どうする?
アストレアがギャラハッドへ尋ねた。
「輝夜お姉さんが、上げられるうちに基礎アビリティは上げとけっていってたので、まだ辞めときます。」
もし全ての基礎アビリティがD評価で
このとき上乗せされる恩恵はとてつもなく、これがあるため、Lv.1は絶対にLv.2勝てないといわれている。故にLv.1を下級冒険者、Lv.2以降を上級冒険者と定めているのだ。
逆にいえば、基礎アビリティを極限まで上げてから
いわば経験値の貯金なのだ。
といっても、
「そういえば、今日は【ロキ・ファミリア】へ行くっていってたわね。」
「はい、アイズにじゃが丸くんを作る約束をしていたので。」
「そうなのね、ふふふ、ロキによろしくお願いね。」
「はい!」
【ロキ・ファミリア】の拠点、黄昏の館はオラリオの北側にある。
オラリオでも屈指の大きさを持つ館には、今日も門番が立っていた。
「すみません。」
「どうかしたか?」
「【アストレア・ファミリア】のギャラハッドと申します。アイズさんに会いに来ました。」
「あぁ、そういえば昨日リヴェリア様から聞いたな。ほんとうに身の丈以上の盾を持ってる・・・この先に入り口がある。くれぐれも問題は起こすなよ。」
「はい!」
そういって門番はギャラハッドを館へ迎え入れてくれた。
武器は持ち込めないようなので入り口の前に置いておく。
ギャラハッドを持ち主と認めてからは他の人が触っても雷が落ちてくるようなことは起きていない。だが、ギャラハッド以外が持てないのは相変わらずだ。
「いらっしゃいガル。」
普段のダンジョンへ潜る装備ではなく、白いシャツに淡いブラウンのベスト、水色のチェックスカートという装いで迎えてくれたのはアイズだ。
「こんにちはアイズ。水色がよく似合ってるね!」
「ありがとう・・・リヴェリアが選んでくれた。」
『いい? 女性が普段と違う服を着ていたら必ず褒めるのよ!バチコン』と日ごろから教えられているギャラハッドは流れるようにアイズの姿を褒めた。
アイズの表情は変わっていないが、少しだけ顔が赤い。
「ロキ様はいらっしゃる? 挨拶に伺いたいんだけど。」
「ロキなら自室にいると思う。呼んでくる。」
「よう来てくれた。うちのアイズたんが世話になってるみたいやな。」
アイズが呼んできたのは朱色の髪を持つ女神。
この女神こそ、今のオラリオで【フレイヤ・ファミリア】に並ぶ二大派閥に君臨する女神ロキ。
「初めましてロキ様。私は【アストレア・ファミリア】に所属するギャラハッドと申します。お会いできて光栄です。」
そういってギャラハッドは頭を垂れた。
「流石、アストレアんとこの子や。礼儀正しいやん。」
七歳の子供が大人顔負けの敬語を使って挨拶したため、ロキの細い目が少し大きくなった。
「でも、うちのアイズたんはやらんからな!!」
隠していた本音をぶちまける。
「え、えっと?」
ロキの言葉が分からず頭を垂れたまま?マークを飛ばす。
「とぼけても無駄やで! いくらアイズたんが可愛くても、嫁にはやらんからな!!」
「お前は何をいってるんだ。」
初対面の子供相手にまくり上げるロキ。そして、背後からいつの間にか来ていたリヴェリアがロキの頭を小突いた。
「いたっ、なにするんリヴェリア。」
「お前が初対面の子供にアホなことを言っているからだ。よく来てくれたギャラハッド。顔をあげろ。」
「承知しました。リヴェリア様、本日はお招きくださり、ありがとうございます。またお会いできて光栄です。」
「なんやこの子、騎士みたいやな。背筋もピンと張ってえらい様になっとるやん。」
「楽にしてくれ。お前はアイズの友達なのだから。」
「ガル、じゃが丸くん早く。」
待ちきれなくなったのかアイズはギャラハッドの腕をつかみ厨房へ案内する。
「あっ、こらアイズ・・・まったく、それでロキ、お前から見てあの子はどう映った。」
二人の姿が見えなくなると、リヴェリアは主神ロキに尋ねる。
「せやな、今のところただただいい子や。敬語もしっかり使えるし種族は違ってもリヴェリアのことも敬ってる。うちの眷属にしたいくらいや。アイズたんはやらんけどな。」
「そうか、私にはあの子が騎士にしか見えない。」
「そういわれてみればせやな、あの膝をついて頭を垂れる姿なんか、あの好々爺が好きやった円卓の騎士みたいやったわ。」
「あぁ、私も初めて会ったときに驚いたよ。アイズより年下の少年が膝をついて頭を垂れるのだから。」
「リヴェリアも気に入ってるんか?」
「そうだな。かなり好ましく思っている。彼が作ったじゃが丸くんも絶品だった。私は、彼がアイズを
「そっか・・・アイズたんはやらんけどな。」
「しつこいぞロキ。」
ついにアーディちゃんとお話しさせることができました。
アストレア・ファミリアの面々と、ローズ、ウラノスしか今のところ、ギャラハッドが円卓の騎士の子孫であるといことを知りません。
アーディちゃんがそのことを知った日には・・・楽しみですね。
次回、【昇格】と【円卓】Ⅱお楽しみに。