ふわふわが出ているウルトラたちを許容量が少ないという意図はありません
魔法の言葉……個体差
ふわふわおすわりぬいぐるみたちはこうやって数を増やして地球にやってくるのです、というお話。
大変だな、ウルトラマンたち……wwww
宇宙の平和を守る戦士たちの多くが輩出される光の国。
平和を守る者たちの故郷なのだから、基本的には平和である。基本的には。
今はその基本的、からは残念ながら外れてしまっていた。
「ヒカリ!ほんとにこれどうなってるの!?」
「今解析中だ。なにか分かったら知らせてやるから……あぁ、こら!それに触ってはだめだ!」
視界の端をもぞもぞする小さいものをつまんで機械から引き離す。
「ヒカリ、次が出てきてる!ひっかかってる!」
「またか、出てくるところくらい間違えずに真ん中から出てこい、真ん中から!」
呆れた声を張り上げながらヒカリは自分のカラータイマーに触れて指をモゾモゾさせたあと、何かをつまんでカラータイマーから手を離す。
「かわいいー!ちょっと抱っこさせて!」
「さっきもしただろう、自分のを抱っこでも何でもしていろ。まったく」
つまみ上げた何かをその辺において呆れながら改めて仕事に戻ろうとするヒカリにゾフィーからの通信が届く。
『ヒカリ、解析結果はまだかい?』
「ゾフィー……なにか分かったら連絡すると言っているだろう」
『そうは言ってもね……急いでほしいんだよね』
『申し訳ない、ヒカリ博士。ゾフィーのやつが俺達のを集めたがっていてそれを止めている。さっさと仕事に戻らせたいので解析を急いで欲しい。セブンに至っては額のビームランプから出てきているのを確認した』
「ウルトラマンまで……ゾフィー、貴様弟に手をかけさせて………額から……?カラータイマー限定じゃないのか……?」
『だってこんなに可愛いんだよ!あ、あとでメビウスとヒカリのもちょうだい。あとこの子達の量産が終わるまでに解析して、もし後々消えるようなら消えないようにして』
「完全に私情じゃないか。職権濫用だぞ」
「いいんだよ、かわいいんだから!」
「…………ゾフィー兄さん……」
現在、宇宙警備隊は大混乱していた。
原因は、彼らの目の前をちょこちょこする小さなふわふわである。
たかがぬいぐるみで天下の宇宙警備隊が機能停止しないで欲しいが、そうも言っていられない。
大量の生きたふわふわぬいぐるみが、各人のカラータイマーからうにうにふわふわうんしょうんしょと一生懸命体を動かしながら生まれてくるのだから。
大変かわいい。可愛いのだが、ウルトラ戦士の大事な器官であるカラータイマーから次々と生まれてくることが問題なのだ。体に不調は一切見られないし、異変もそれ以外には何も無い。ただただ、次々と柔らかくて小さなふわふわしたぬいぐるみが産出されているだけ。だけではない、割と大事だ。
ふわふわまんまるなぬいぐるみたちがすでに一人当たり数十体は軽く生まれている。
この科学技術局でもすでにヒカリやメビウスのぬいぐるみが列をなして我が物顔で闊歩し、一生懸命ヒカリの書類や機械に触ろうとしている。
1人ずつ出てくるあたり、ある意味お行儀はいいのかもしれないが、たまにカラータイマーの端っこの方に寄りすぎて縁に引っかかったり、頭からではなくお尻から出てきたりと生まれ方にも個性がある。手がかかると言ったらない。困ったものだ。
「おそらく俺達の光エネルギーの産物なんだろうが……今までこんなこと前例がないぞ……」
光の国屈指の科学者は盟友に励まされながら頭を捻るのだった。
同じ頃、所変わって。
「……………なんだこれ」
ふっと見下ろしたカラータイマーに小さな綿埃のようなものがついているのを見て、ゼロはそれを手で払った。
ペシッと手に当たる感触が綿埃ほど軽くなくて、ん?と首を傾げ、落ちたそれを見る。
「……………なんだこれ。………うぉっ、動いた!?」
赤と青のぬいぐるみ。目がちょっとつり上がって頭にふわふわしたものが2つ。
「…………え、俺……?」
ゼロの呆然とした呟きに、ゼロの姿を模したふわふわぬいぐるみは、そのお手々を、はいっと高らかに上げる。
「………うごいっ…………えっっっ????」
「ししょおおおおおっ!なんか!!なんかちっこいのが!!」
ゼットが飛んできて着地と同時に叫ぶ。
その手には、両手のひらいっぱいのふわふわしたゼットがうごうごしている。
「………………多くね?」
「師匠もそう思います?じゃなくて!なんかカラータイマーから出てくるんでございますよ!こいつら!!」
「ゼットさん、こいつら呼ばわりはちょっとかわいそうすよー。可愛いじゃないっすか」
今日もこのコンビは元気だ。それより。
「カラータイマーから……?」
ふと視線を下げれば、さっそく次のふわふわがカラータイマーから頭を突き出して今まさに出てこようとしている。
「えっっっ!?」
「おぉ、2人目でございますな」
「単位、2人で合ってんですかね……」
「え、いや、何受け入れちゃってんの??異常事態だぞ!?」
呑気な2人に突っ込むが
「いや、だって師匠。俺なんてこれですよ?」
と両手を突き出されれば確かに何も言えない。
そうこうしている間にゼットのカラータイマーからもにゅっと……明らかにふわふわのお尻が突き出されている。
「なぁ、引っかかってるぞ」
「あ、またー。もー……仕方ないでございますなぁ」
ちょいちょいと慣れた手つきで器用にふわふわの引っ掛かりを外して、出てくる手助けをしてやる。
「また増えたっすねぇ……」
「困りましたなぁ……」
なんなんだ、これは……。と途方に暮れていると、賑やかにテレパシーが飛んでくる。
内容はどれも同じ。
『『『『『『『『『『なんか出てきた!!!!!!!』』』』』』』』』』
いったんテレパシーをシャットアウトする。シンプルに煩かった。音量を考えろ。
ちなみに、二人目が出てきてからはゼロのカラータイマーからポコポコと出てきている。ペースが早い。
「ゼット、あいつらの話聞いてやれ。俺は光の国に連絡するから」
「えっ!?いや、師匠に来てますし、俺が光の国に連絡しますよ」
「いいから」
そそくさと光の国と連絡を取る。
『あー………皆さんどうされました?』
『あ、ゼット!』
『ゼロのやつ、連絡ぶった切って……』
『これはいったい……!』
ワイワイガヤガヤ。オープンチャットでもまだ静かかもしれない。
『師匠は今光の国との連絡を取ってるんでございますよ。俺達も皆さんと同じ状況でさっぱり……』
「えっ!?」
突然のゼロの声に慌てて振り向く。
「いや……えっ……まじ???」
「し、師匠……?」
動揺するゼロに恐る恐る声をかけるゼット。
「…………いって……」
「はい?」
「俺等だけじゃないって……」
「へ?」
「ウルトラ兄弟とか……ティガとかダイナとかガイアとかマックスにコスモスにネクサスに……とにかくかなりの数が同じことになってるって……光の国に集まってるって」
「うわっちゃー………」
「今、ヒカリが解析してるから、そう伝えろ」
まぁこんなことを伝えれば、まじかよ……と絶句する空気になるのは仕方ない。
『というわけですので、光の国に集合ということで』
『これ抱えて?』
『宇宙に落っことしそう……』
手の中のふわふわを見る。確かに落っことしそう、というか逃げ出しそうだ。
こうしている間にも、それぞれのカラータイマーから、うんしょうんしょとふわふわが生まれてきている。
抱えきれなくなる前にさっさと光の国に向かったほうが良さそうだ。
『んじゃ、光の国に集合な』
その一言だけ送りつけてゼロが再びテレパシーを着拒する。後輩からの連絡を着拒してやるな。
着拒へのブーイングが、ゼロのそばにいることが発覚しているゼットに向いたため、ゼットも慌てて通信を切った。
「じゃあ行くぞ」
「了解です!」
2人が飛び立つあとにポロリと落ちた子は帰巣本能(?)に従って彼らの軌跡を追いかけるのだった。ちゃんとみんな到着できたのは余談である。偉いね。
さてさて。
ニュージェネレーションたちの集合場所、光の国はといえば。
そこかしこがモッフモフになっていた。
あっちを見ればウルトラマンのふわふわが、こっちを見ればセブンのふわふわが、その少し向こうを見ればジャックが、エースが、タロウが。もはやどれが誰なのか判別がつかないくらいにはふわふわがごった返していた。
「うわあ……」
「おぉ、エース兄さんの!ちょっと抱っこさせていただいても……?」
眼の前の光景にドン引きするゼロとは対象的にマイペースを貫いて、エースのふわふわに手を伸ばすゼット。手を伸ばされたふわふわエースはおとなしくゼットに掴まってふわふわされている。あっという間にゼットの周りはふわふわエースでいっぱい。
ゼロはそっと距離を取った。そうすると、ゼロに気づいたふわふわセブンがわらわらと寄ってくる。
「え、あ、お、親父……?の、ぬいぐるみ……??」
ふわふわセブンが寄ってたかってゼロの頭を交互になでて、結局ゼロもふわふわセブンの山に埋もれた。
南無三。
人型の毛玉の塊と化しながらふわふわの海を渡って集合場所へ。
続々とニュージェネの仲間たちも到着し、光の国の惨状に絶句しつつ集合場所に下りてくる。
どっかで見たような顔ぶればかりがズラッと並び、皆が皆ふわふわにまみれながらカラータイマーから出てこれない子が出てくるのを手伝っている。
つまんでは引っ張り出し、そのままぽいっ。
そうしたら次が出てくる。
面白がる声と困惑した声が大半を占める中、ヒカリが一段高いところに立った。
「わざわざ来てもらってすまない。解析が終了したので、その報告をさせてもらう」
カラータイマーをつつきながら話を聞く。
メビウスとヒカリのふわふわに集られるヒカリ曰く。
このふわふわのぬいぐるみは間違いなく光の戦士、ウルトラマンたちの光エネルギーが具現化したものである。
その具現化の理由は、光エネルギーのキャパオーバー。
「キャパオーバー?今更?」
数千から数万の時を生きるウルトラマンたちでさえ、この現象は完全に初めましてな現象だ。原因がキャパオーバーと言われてもピンとこない。
「で、さらにそのキャパオーバーについて解析したところ、だな……」
ごくり、と生唾を飲み込みたくなるような緊張感。
「過剰供給によるものだ」
過剰供給???
「我々は特に今までと変わった生活はしてないが……」
「どっかでそんなに強い光に近づいたっけ?」
「これだけの人数が?」
「心当たりないが」
ざわざわとした空気の中で、またカラータイマーから出て来たふわふわをつまみながらヒカリが話を続ける。
「まだこのぬいぐるみが出てきていないのにここに呼ばれたものもいるだろうが、今後同じ症状が現れる可能性があるものを呼んでいる」
「ということは、なにか法則でも見つかったのかい?」
クソ真面目な顔と口調で両手にふわふわを抱えられるだけ抱えて、さらに集られているゾフィーが口を開く。
できれば存在感を消すか手を離すかしてほしかった。
「……………………あぁ。ここにいるのは、どの地球かに関わらず、地球人に関わりがあるメンバーだ」
思わず周りを見回す。確かに地球防衛の任についたものや、それに手を貸したもの、何らかの形で地球人に名前が知られた者たちばかりが集まっている。
「近年、まぁ地球人感覚では近年と言うほどでもないだろうが……我々からした近年、我々は地球人とともに戦い、それと同時に絆を深めてきた」
うんうん、と頷く。特に初期に地球に行っていた者たちは感慨深げだ。
「そして更に近年。我々に応援の光を届けようと手や声、ライトなどの光を使ったエネルギー供給システムまで地球人は作ってくれた」
うんうん。あれはとても力になる。……………ん?
「まぁつまり、このふわふわしたぬいぐるみたちは、地球人たちからもらった応援の光の具現化、というわけだ。戦時だけでなく平時まで我々を想ってくれる彼らあってこそのこれなわけだ」
………………………………地球人すげぇ。
え、俺等そんな事できたっけ?いや知らんが??と地球人組は顔を見合わせた。
「ちなみに、まだ発症していないものは地球に行った回数が少なかったり本人の潜在的容量が大きいなどの要因が考えられる。現にそこのゾフィーなんか、あのバカみたいに強力な光線を撃つだけのエネルギー容量があるわけだ」
「ヒカリ……!!」
「バカは余計だよ」
メビウスの悲鳴のような声とゾフィーの苦笑が同時に聞こえる。
「しかもだ。このぬいぐるみたちは、おそらくしばらくしたら動かなくはなるが、消えはしない。つまり、増える一方だ」
「え、おさまらねーの?」
「地球人から俺達が忘れられたら治まるだろうな」
それはそれで嫌だ。
「じゃあどうするの、これ……」
ふわふわもふもふとエメラルドグリーンに輝く星を闊歩し、面識ある友人のふわふわとそのへんでお昼寝したりお手々を繋いでいる。平和で可愛らしい光景ではあるのだが、いかんせん数が多い。しかも増える。
「動けなくなるのは残念だけど消えないんだね、良かったぁ」
完全に兄バカモードに入っている隊長は置いておいて。
「ところで、君とゾフィー兄さんだけやったら集られてるけど……」
「おそらくなんだが……思考波形にパターンが見られるものがある。明確な意思疎通ができないからはっきりとは分からないが………………睡眠や休息を促しているようだな」
さすがに開き直れないのか、ものすごくバツが悪そうにヒカリが口を割ると、ゾフィーもそっと目をそらした。
「……………つまり、2人とも地球人から休んでないって思われてるんだね……」
「実際休んでないな」
「地球人よく分かってるな……」
この会話に光の国非常駐組はドン引きだ。
「光の国って労基とか……」
「なさそう……」
「ブラックぅ……」
「でも自主的っぽくない?」
「セルフブラックか……」
「やばぁ……」
ボソボソゴニョゴニョ。普通に聞こえている。
「言われてるぞ、長男と末弟」
「そんなことよりどうするんだ、これ」
そんなこと呼ばわりとともにはたと現実に返る。
ぼちぼち、エネルギー切れで動かなくなっている子もいる。こう見れば本当にただのぬいぐるみだ。
「てか、なんでこんなまるっとしたふわふわのぬいぐるみ……」
「地球人が好きなんだろ、こういうの」
「デフォルメ好きだよね」
地球人が好む形……。
「地球に送ったら喜ばれるんじゃないかなぁ」
ジードがポロッと。
え?と視線が集まって、ジードはまずいことを言ったかとゼロに助けを求める視線を投げたが、残念ながらゼロから向けられる視線は周りと同じ。
「あー、確かに。いいっすね、それ。みんな喜ぶと思うっすよ」
ハルキからの援護に続いて
「まぁ確かに……」
「俺達のグッズ的な扱いになるのかな……」
「サインとか入れる?」
「どこに入れるんだ、入れるにしても数やばいから無理だって」
「動くぬいぐるみはさすがに駄目だろうし、動かなくなってから送るのがいいかなぁ」
地球人の感覚ってわからない……なんで俺達のデフォルメぬいぐるみが喜ばれる前提なんだろうか……まぁでも喜んでくれるのなら嬉しいし、それでいいかなぁ……。山のようなぬいぐるみもさばけるし。
たとえ動いても噛みつくわけでなし……あれ?
「そういえば、ブレーザーは?」
あいつのぬいぐるみこそ、出てくるたびに元気いっぱい走り回りそうだけど。
「………………ブレーザー、テレパシーで連絡取れないから……」
「光の国の場所知ってるの?そもそも」
「「「「「「「「…………………やっべ……」」」」」」」」
慌てて様子を見に駆けつけてみれば。
「ろぉい!」「るろろろい!」「うろい!」と賑やかな大合唱。
案の定というかなんというか、ゲントを呼び込んだインナースペースのような空間には元気に跳ね回る大量のふわふわのブレーザーの姿が。それを押さえようと頑張るゲントの体も半分ほど白いふわふわで覆われている。
大人気そうで何よりだ。そのうちふわふわに押しつぶされないかだけが気がかりだが、まぁ大丈夫だろう。たぶん。外に放流してなかったところは流石だと思う。
よくよく見ればゲントの割と近くで一生懸命カラータイマーをつっつくブレーザーがいる。まだまだ出てくる勢いは止まらないようだ。見なかったことにして帰りたい。割とマジで。
「あ、ちょっ!これどういうこと!?」
救援()の出現にゲントが声を上げて聞いてくるので、とりあえずヒカリの説明をそのまままるっと伝え、その後にそれぞれの地球に送る事になったということを伝えると、ものすごく微妙な顔。
「いいのか、そういう扱いで」
「増え続けるぬいぐるみなんて俺等じゃどうにもできないし……」
こう喋ってる間にも救援()のカラータイマーからもふわふわが生まれている。
そうすると、ふわふわのブレーザーの威嚇の大合唱が始まるが、彼らが喧嘩しても微笑ましいだけなので放っておくことにした。
「そういうことだから」
「いやそういうことって、この状況をどうにかするのが先だろう!」
「…………いや、正直俺らのぬいぐるみ、ここまで……えと……元気じゃないから……」
言葉を選ばせる始末である。なんてことだ。
流石にこれを光の国に持っていくのはまずい。運ぶのも大変そうだし。
「割と地球人のイメージ反映してるっぽいし……」
「ブレーザーこんなふうに思われてるの!?」
「ロォイ!?」
不本意!と言いたげなブレーザーは相変わらずカラータイマーをつついている。出てくる勢いが尋常ではない。イメージはどうあれ、よっぽどブレーザーは地球人に好かれているようだ。
「………てことで、良かったじゃねぇか。さ、俺等は帰るか」
「いや、ちょ!この状況で!?」
「俺等にできることないし……」
うんうん、と同じようにふわふわをカラータイマーから生み出しながら踵を返す救援()。何しに来たんだ。
「とりあえず動かなくなった奴らは光の国に送ってくれたらこっちから地球に送るから。そのほうが正体隠しやすくていいだろ?」
ってわけだから、頑張れよ〜!
というわけで、地球にふわふわのウルトラマンたちのぬいぐるみがまとまった数送られてくるのだが。
皆さんご存知の通り、あっという間に在庫がなくなり、ウルトラマンたちはその勢いに驚愕するのだった。
未だまとまった数が生まれないウルトラマンたちのふわふわは、きっと今後のお楽しみ。