名探偵プリキュア×仮面ライダーマイス 〜2つの仮面を持つ少年〜 作:アキ1113
それでは、どうぞご覧ください。
とある日のキュアット探偵事務所で……
「い、いらっしゃいませ……」
「うーん……」
「ポーチー……」
「ジェット先輩、もう1回!」
「あ、ありがとうございました……」
「違う違ーう!」
「ポチポチ!」
「もっと可愛く!」
「もう1回!それだと引きつってるから、もっと自然に――――」
「いい加減にしろーー!!何で僕がこんなことを!?」
ジェットが接客の練習をさせられていた。というのも……
「だって……」
「プリホリでの接客見てると……」
ジェットの接客はお世辞にもいいものとは言えず、小さい子供からも少し怖がられている節もあった。そのため、こうしてあんなたちが練習させている、というわけだ。そこに……
「もっと愛想よくしないと!」
「うんうん!」
「ただいま――――って、何してるの?」
澪がいつもの調査から戻ってきたのだ。
「あっ!」
「澪さんちょうどいいところに!」
「ちょうどいい……?」
あんなとみくるは、澪にジェットの笑顔の練習をしていることを話した。
「なるほどね……」
「というわけで……澪さん!お手本をお願いします!」
「え?て、手本?」
急にそう言われた澪だったが……
「じゃあ――――
いらっしゃいませ、お客様」
澪は微笑むような笑顔で、あんなたちに向かってそう言ったのだ。
『……』
その笑顔の破壊力は抜群だったようで……
「「澪さん……」」
「え、な、何……?」
「それ、あまりお客さんにしないでくださいね?」
「多分、お客さんが買い物どころじゃなくなると思うので……」
「ポチポチ」
「えぇ……」
澪自身は普通に笑顔を作っただけだったが、2人だけでなくポチタンにもそう反応されてしまった……。
「さぁ、ジェット先輩!」
「いやいやいやいや!澪みたいには無理だろ!?」
「ほら!笑顔笑顔!」
そう言ってあんなは、ジェットの脇をくすぐって笑顔にしようとした……が、
「これで自然な笑顔に――――あっ」
ジェットは限界だったのか、妖精の姿へと戻って床に倒れてしまった。すると……
「あ、あの〜……」
『!』
そこに依頼人であろう女性がやってきていたのだ。それを見たあんなとみくるは……
「「よ、ようこそ!キュアット探偵事務所へ!」」
◇
「この絵の謎を解いてほしいんです」
「絵、ですか?」
「はい、私の母が生前描いた自画像で――――」
今回の依頼人は斉木萌絵という女性で、最近海外で見つかったものが自身のもとに届けられた……というわけらしい。その絵に描かれていたのは、金髪の長い髪をした女性のものだった。
「!この絵は……クリスティーナ・ヒポポヴィッチ文江だ!」
「クリスティーナ……何?」
「クリスティーナ・ヒポポヴィッチ文江!30年くらい前に、海外で人気のあった画家だ……でも彼女、風景画しか描かなかったような……?」
この絵の人物を知っているジェットの言う通り、文江は風景画しか描いておらず、後にも先にも自画像を描いたのはこの1枚のみのようだ。
「どうして母は、自画像なんか描いたのか……」
「その謎を解けばいいんですね?」
「ちなみに、その絵のタイトルは?」
「……『最高の幸せ』といいます」
「最高の幸せ……」
澪がそう呟きながら、自画像の写真を見ていると……
「「よしっ!」」
「名探偵の私たちに任せてください!」
「早速、調査にしゅっぱーつ!」
「ポチ!」
2人と1匹が元気よくそう声を上げた。
「?ポチ……?」
それから、依頼人の萌絵と共に調査へと出た澪たちが最初に訪れたのは……
「く、クリスティーナ・ヒポポヴィッチ文江じゃと!?もちろん、彼女の本は全て揃っておる!よもやよもや、お嬢さんの口からその名前が聞けるとは!」
古書の買い取りなどもしている版来堂書店で、店主の男性が彼女のことが載った本などを見せてくれることになった。
「よーし!画集を見れば、絵の描き方とかで自画像の謎が分かるかも!」
「でも、ファッションにグルメ、旅行雑誌ばっかりで、肝心の画集がないね……」
「彼女はよくテレビにも出ておった人気者じゃったからのぉ」
澪たちは早速、店主に持ってきてもらった本を見ていくも……
「風景画も載ってるけど、思ったよりも多くないな……」
「これじゃよく分かんないよ……」
中身が思ったよりも文江のインタビューや写真などが多くを占めており、肝心の風景画が載っているものが少なかったのだ。すると……
「!だったら、あそこに行ってみようよ!」
「あそこ……?」
そう言うあんなの提案で次に向かったのは、アトリエプレンティで行われている絵画教室だった。
「この前はありがとうございました」
「また何かあれば言ってください!」
「それで、これなんですけど……どうして風景画しか描かなかった文枝さんが、自画像を描いたのか分かりますか?」
みくるは自画像の写真をアトリエにいる女性に見せると……
「そうですね……」
「うわぁ!上手ー!」
絵を描く子供たちの元気な声が聞こえてきたのだ。
「!騒がしくてすみません」
「いえ、私も昔は楽しく絵を描いていましたから――――」
萌絵は子供の頃は絵を描き、それを母である文江へと見せに行っていたが――――
「っ……」
「萌絵さん、どうかしました?」
「!い、いえ……」
急に黙り込んだ萌絵を心配し、澪がそう声を掛けていると……
「?何だろう……?」
何やら子供たちが一箇所に集まり始めたのだ。その場に行ってみるとそこには……
「!これは……」
「「ぽ、ポチタン!?」」
なんとポチタンが、デッサン用の積み木の上でポーズを決めていたのだ。流石にまずいと思ったのか……
「ご、ごめんね!」
「お邪魔しました!」
「!は、はい……」
あんなとみくるがすぐさまポチタンを回収し、澪たちはアトリエを後にした。
「絵の色使いや構図におかしな点はないって言ってたけど……」
「はっきりとした手がかりは中々見つからないね……」
「「はぁ……」」
そんな風に2人が溜息をつきながら歩いていると……
「浮かない顔してどうしたんですか?」
「!パティスリーの……!」
「帆羽くれあです」
パティスリーチュチュでパティシエとしてバイトをしている帆羽くれあと出会ったのだ。
「あら?そちらの方々は……?」
くれあは初めて見る澪と依頼人の萌絵を見てそう尋ねる。
「こちらは依頼人の萌絵さんと……」
「新しくキュアット探偵事務所の探偵になってくれた澪さん!私たちよりも2つ年上なんですよ」
「初めまして、白峰澪です」
「!2つ上……ってことは同い年!こちらこそ初めまして、帆羽くれあです」
「よろしく、帆羽さん」
「くれあでいいわ――――!そうだ……良かったら、パティスリーで休んでいかない?」
そうして、くれあの厚意に甘え……
「うわぁ……!」
「はなまる可愛い!」
「お菓子を食べて、元気出してね」
パティスリーチュチュでスイーツを食べながら、ひと休みすることになったのだ。
「すっごく美味しい!」
「ミルフィーユも最高!昔、海外にいた時におばあちゃんがよく食べてて、それで好きになったんだよねー!」
「そうなんだ……!」
澪も注文したスイーツを口へと運び……
「!美味しい……!」
そう呟いていたのだ。それから澪は、あんなたちよりも早めのペースでスイーツを口に運んでおり……
「澪さんってもしかして……」
「甘い物が好きだったり?」
その様子を見たあんなとみくるから、澪はそんなことを訊かれていた。
「まぁ、それなりにはかな?それに色々調査していると、
「なるほど……」
すると……
「素敵なところね……今度、娘と来てみようかしら」
パティスリーを見ていた萌絵がそんなことを口にしていた。さらに……
「実は、プリホリにも一緒に行ったんですよ?その時に探偵事務所のことも知って」
「そうだったんですね……!」
プリティーホリックにも訪れたことがあるらしく、そこでキュアット探偵事務所のことも知り、今回依頼するに至ったという。そんな話をしている中、近くの道には……
「やっぱりどら焼きは最高だぜ!」
銀髪で歌舞伎風のメイクや服装をした怪盗団ファントムの1人であるゴウエモンが、どら焼きを食べながら歩いてきていた。そして、パティスリーのテラス席にいるあんなとみくるを見つけると……
「!あれは……!?」
すぐさま近くの草むらに身を隠したのだ。
(そういえば、この辺りにマコトジュエルが現れるとウソノワール様が――――ん?あいつは……?)
怪盗団ファントムのボスであるウソノワールの言葉を思い出していたゴウエモンだったが、初めて見る澪の姿を見ると……
(初めて見るやつだな……まぁ、ただの依頼人のうちの1人だろう。プリキュアじゃなけりゃ、恐るるに足らん!)
「それよりもマコトジュエルだな……!」
そう判断し、マコトジュエルが出るのを待つことにした。その一方で……
「私が作った新作、良かったら食べて?」
澪たちにはくれあが、自身で作った新作のマカロンを持ってきていた。
「マカロンだ!」
「可愛い!」
澪たちがマカロンを口に入れ、その味に舌鼓を打っていると……
「海外にいた時に、よく母が買ってきてくれました……あの頃を思い出します」
萌絵がマカロンを見ながら、文江のことについて話し始めた。
「へぇ……そうなんですね」
「でも正直、あまり美味しいとは思えなくて……なんだか形も歪でしたし」
「歪……?」
(買ったマカロンが……?)
澪は何か引っ掛かることがあったのか、小さな声で思わずそう口にしていた……。
「そう、ですか……」
「萌絵さん……?」
「あの!文江さんのことについて、教えてくれませんか?」
「え……?」
「お母さんが実際にどんな人だったのか、萌絵さんはどう思っていたのかなって」
その話を聞き、あんなは文江の人物像などを詳しく訊くことにした。
「……母は、美とオシャレを愛した人でした。ファッションや食べ物、住む場所――――何もかもにこだわる人で……」
「芸術家らしいですね」
「私もそう言ったのものに触れて、良さを知ることができました……でも私は、そんなものよりも……母は我が道を進み、好きなように生きた――――一緒に調べていて、それが分かりました……だから思うんです。母にとって最高の幸せとは、自分自身のことなんだろうって」
「自分自身……」
「それが『最高の幸せ』……」
萌絵はそう結論づけていたが……
「あの……マカロン、少しでいいので召し上がってみてくれませんか?」
「?えぇ、少しだけなら……」
そう言ってマカロンを口に運ぶと……
「美味しい!どうして?」
萌絵が予想していたものよりも美味しいものだったのだ。それは、くれあが作ったというのもあるかもしれないが……
「さっきのマカロンの話を聞いて思ったんですけど……萌絵さんが食べていたマカロンは、本当に買ったものでしたか?」
「え?」
澪の言葉に、萌絵は思わず首を傾げた。
「そうだ!澪さんとくれあさんのおかげでピンときた!きっとマカロンは、お母さんの手作りだったんだよ!だからお店のものに比べると、味や形がイマイチだったのかも」
「!で、でも、母が作ってるところなんて一度も……」
「この絵と同じですよ。風景画ばかり描いていた文江さんの自画像だって、誰も見たことがなかった」
「うん、もしかしたら隠された本当の姿があるのかも……!」
「萌絵さん、実際の絵を見せて貰えませんか?」
「写真だと分からないことが――――謎を解く手がかりが見つかるかもしれません!」
そうしてパティスリーチュチュを後にした澪たちは、萌絵の住むマンションの部屋にお邪魔していた。そこには、実際の文江の自画像があり……
「どうぞ」
「うーん……」
「写真と違う部分は特にないね……」
それを手に取ってみるあんなとみくるだったが、写真と特に異なる点はなく分かることもなかった……と思われたが――――
「!これって――――」
「やっぱり私、母があんな歪なマカロンを作ったとは思えなくて……母はいつだって、完璧を目指す人でした。自画像を描いたのも、きっと輝く自分を――――」
「萌絵さん」
「はい?」
「1つ訊きますけど……この絵って、もとからこの向きだったんですか?」
「え?」
澪が何かに気付いたのか、急にそんなことを言い出したのだ。その言葉を聞き……
「オープン!プリキットミラールーペ!」
あんなは早速ミラールーペを取り出し、自画像を隅々まで見た。すると……
「はなまる発見!」
端の部分に絵を持った時の手の跡がついているのを見つけたのだ……が、
「?何でこんなところに跡が……?」
手の跡は絵の横の部分だけでなく、上下の部分にもついていたのだ。
「!そっか……この手の跡は、文江さんのものだよ!絵の文江さん、左手の手の小指に指輪してるでしょ?」
「だからここで途切れてるんだ!」
「でも何で、上と下を持ったの?絵を持つなら、普通は横側を持つはず――――」
そして……
「「あっ――――見えた!これが、答えだ!」」
2人はある結論に辿り着いた。それが……
「萌絵さん」
「澪さんの言う通り、これが絵の正しい向きです」
「横向き……?」
「みんな勘違いをしていたんです。この絵は縦にして見るものだって」
「でも、本当はそうじゃなかった……作者である文江さんが持っていた方が正しい持ち方だった。それがこの向きなんです」
「横になって、寝ている……?」
絵を横向きにすると、文江の自画像は立ってポーズをとっているものではなく、ソファーで寝ながらどこかを見つめているものになっていた。
「始めは靴を履いているし、何かおかしいと思ったんですけど……」
「萌絵さん、海外に住んでいたんですよね?海外は家の中でも靴は脱がないですし、寝ていても不自然ではありません」
すると……
「!そういえば、よく母はこのソファーで――――あっ!」
2人の推理を聞き、萌絵は昔のことを思い出していた。
「そうだ……母は……母はあの時――――忘れてた……一緒にマカロンを食べて、美味しくないねって笑い合って……!」
そう口にする萌絵の目からは、自然に涙が流れていた。
「あの頃を思い出しました……そっか……最高の幸せって、あの瞬間のことだったのね……お母さん……!」
「良かった……」
無事に絵の謎が解け、依頼を達成できたことに澪が安堵していると……
「ぽ、ポチ!」
「ポチタン?」
上に1つの虹色の光が突然現れ、その光は形を成しながら自画像へと吸い込まれていった。
「今のってもしかして……マコトジュエル……!?」
「萌絵さんとお母さんの想いが重なって、マコトジュエルが宿ったんだ!」
その直後……
『?』
突然呼び鈴が鳴り、誰かが訪ねてきたのだ。そして、玄関を開けに行こうとした萌絵だったが……
「僕がいきます……2人とも萌絵さんを」
「え?」
「は、はい!」
嫌な予感がしたのと、万が一にも不可思議が人間に擬態している可能性も考慮して、澪が対応することにしたのだ。
「あ、あの……?」
「念のためですよ」
戸惑う萌絵を余所に、澪は玄関の扉を警戒しながら開け――――
「ファントム宅配便でーす!」
「っ!」
そこにはマコトジュエルを回収しに来たゴウエモンが立っており、澪は初めて怪盗団ファントムの一員と邂逅を果たすのだった……。
読んでくださり、ありがとうございます!
次回で原作第10話の後編となります。中々澪を推理などに絡ませるのが難しいですが、何とか形になるように書いていきますので、読んでいただけると幸いです。
それでは、次回の話もどうぞよろしくお願いします。