ランタン頭と墓石頭のドタバタ事件簿 作:リゼロ・#コンパス好き
「で、お前はなんでゲーム機なんて盗んだんだ、金が無かったにしても娯楽用品を子供から盗むのは違うだろ。」
リステは治安維持組織「#コンパス」の捜査第三課事務所にある取り調べ室にて、今回の窃盗・器物破損事件の犯人に事情聴取をしていた。
「・・・」
犯人はリステの問いかけを無視して、黙ったまま下を向いていた。
説明が恥ずかしいとかの理由ならそんな事思わずに黙らないで話して欲しい、こいつはそんな事より遥かに恥ずかしい犯罪と、子供を泣かすという行動をすでにしてしまっているのだから。
「あのなぁ、ゲームがしたいからって子供のものを盗んで、ましてや破壊するなんて・・・」
そこまで言って自身の発言のおかしさに気づいた。
もし本当にゲームがしたかったのなら逃げる時に手放すのは仕方ないとしても破壊してあったのはおかしいのだ。
リステに向かって投げられた時すでにそれは割れていたし、意図的に壁に叩きつけたような壊れ方をしていた。
意図的に壊したというのが正しかったとしたら、自分がプレイするために盗んだというのはあり得ないことになる。
「・・・お前、子供を泣かせるために奪ったのか?それとも・・・壊すために盗んだ?」
だが壊すためにわざわざ犯罪をしてまだ盗むものだろうか、少しもメリットが無いようにリステには思える。
「持ってるのが子供ってのが重要なのか?それともゲーム機だからって点か?あるいは完全無差別・・・」
正直子供を狙いやすいから狙ったというのは分かるのだが、壊してあったというのが不快にさせるため以外の目的を理解できない。
「動機くらいは教えてくれないか?オレたちの事務所割と怪盗対策専門みたいな感じだから動機を考えるのは苦手なんだよ。少なくともオレは」
「・・・」
取り調べを受けている男はうんともすんとも言わなかった。こんな迫力の出していない尋問で吐くとも思っていなかったがどうしても理解不能だ。
どう考えても
・たかだかゲーム機を盗んだ
・それを遊ぶまでもなく壊している(と思われる)
が筋道を通らなくさせる。
答えない犯人を前にうーんとカチカチの頭を捻っていると、コンコンとノック音が響いた。
時間的にイグニスだろう。
「どうぞ〜」
ドアが開いてそこからイグニスが現れる。もし違ったら部外者だから非常にまずかったので良かった。
「戻ったぞ、何か進展はあったか?」
「いやー何も。なんか理解できないことがあるんすよね、一言も喋らないし。」
「理解出来ないこと?」
イグニスは暫し黙り込み
「分かった、一旦中断しよう、コイツにも飯の時間だ。おいお前ベーグルサンドでいいか?長期保存用のパサパサのやつ。」
「規約にないもの与えるのはルール違反っすよ」
「分かった分かった、本当はこんなん監視してくる上もいないし適当に済ませたいんだがバレた時が怖いからな。」
「出るぞリステ、昼食と話し合いの時間だ。」
「はーい。あ、気が向いたら・・・っていうか向かなくてもなんでやったか戻ってきたら教えてね〜」
「・・・」
そして、2人は部屋を後にした。
「で、理解出来ない事とは何だ?」
ベーグルサンドを頭付近で燃やしているイグニスがリステに向かって問いかけてくる。
昔聞いたところ味覚はないけどベーグルサンドが好みらしい。ただ仮に思い出だとして燃やして捨ててるようにしか見えないが一応摂取はできているのだろうか。
「いや、犯人がゲームをするために盗んだんなら壊してるってのがおかしいなって思って。あいつオレに投げた時はすでに壊してたんで。あれ割れ方見る感じ意図的に壊してたように見えないすか?」
「あー・・・」
イグニスは心当たりがあるかのように黙った。
そしてしばらくして口を開き
「実は最近どうでもいいって思って共有してなかったんだが、とあるゲーム機の大量購入が多く発生している。」
「?個人での大量購入なら転売目的っすか?そんな人気タイトルでも出たんです?」
「むしろ割と昔からある古いゲームだ。見た目でわかっていたが一応あの子にも聞いてこれもそうだった。」
イグニスは今回子供が奪われたゲーム機をその場に出して
「これ、子供に新品を渡してその時にもしよければ資料としてもらえないかと聞いたところ」
「それ子供が断れるわけないじゃないっすか可哀想っすよ」
「欲しいんなら断るだろ?それに一応新品も渡してるし言い方も優しかったぞ?」
「いや、見知らぬデカい大人が壊れたゲーム機の新品を何故かくれているっていう恩がある状態で元のゲーム機を渡せなんて言われたら仮に思い出やデータがあっても怖くて渡すでしょ」
「いや断ると思うがなぁ」
「それはオレや先輩がそういう時に遠慮しないからっすよ。で、続きはどうなったんすか?」
「あぁ。その子は快諾してくれて『おじさんありがとう』と言っていて」
快諾はさせたんだろ、と思いつつこういう時にいちいち止めていたら話が進まないので一度ない口を閉じ続ける。
リステは水を浴びて摂取する事で栄養補給をする体質なので、食事は必要ないのだ。
水を摂取する時はそうしようとしている時なので風呂とかで誤飲する問題はないのだが、清潔な水が大量に必要なので綺麗なバケツが自宅や職場にはある。
「これは『かけだし勇者と2段ジャンプ』で間違い無いかと聞いたところあっていると返された。それでその子には新品を渡して帰ってもらった。」
リステは知らないゲーム名が出てきたため眉を顰めて
「何すか?そのゲーム」
「おじさんの時代では流行ってたぞ。オートスクロールで常に走ってる駆け出し勇者が壁に潰されないよう2段ジャンプを駆使して生き残るゲームだ」
「ジャンプ以外の機能は?」
「そのシンプルさが良いんだよ」
「酷いゲームっすね。現代っ子が公園で1人でやるゲームか・・・?というかそれならデータ消えても問題ないのか。ストーリーとかガチャとかないなら」
「いや、友達とのスコア対決に勝つためにやってたんだと思うぞ、データが消えたのは大問題だ。」
「また出せば良いじゃないっすか」
「いや、毎回変わるステージの中安定して高スコアを出すのは至難の——」
「何でそのゲーム機が買われまくってるかに心当たりは?」
話を遮られたイグニスが少し拗ねたようにして
「さぁ?あの思い出のゲームをもう一度とかじゃないか?金払ってるんだから良いだろ。」
「だったら一つでいいでしょうこういう昔のゲームは頑丈だし。転売目的にしろ売れるとは思わないし、一応サイト見ますけど、おれメルサリ見るんで楽空頼みました。」
「はいよー」
そして、個人の販売サイトを調べたが
「ほぼ、ない・・・?大量購入した奴らは、転売目的じゃないのか?」
その数少ない売りに出された物すら既に買われている。
リステは取り調べ中に出てきた案がただしいのじゃないかと思って、ため息を吐いてから、イグニスに向かって意見を言った
「こうなるとこのゲームに何か目的があって、自分たちが独占しようとしている、他の人が持っているものは破壊か入手が目的って事なんすかね。」