道楽鎮守府   作:アサルトゲーマー

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6話に矛盾のある台詞があったため一部削除しました(小声)
それとお気づきの方が大半でしょうけどこの小説において艦娘は全員「提督」呼びです。


キャン・Dの罠

 

 

 呉鎮守府。ここではとても不思議な事が起きる。それはどこにでもあるような七不思議、言うなれば鎮守府の怪談。

 その中に一つ、こんな話がある。

 

『消灯時間が過ぎてから寮を出ると女の叫び声が聞こえる』

 

 誰が名付けたかは知らないがそれはキャン・Dの叫びと呼ばれ、夏場の肝試しの風物詩となっていた。

 しかしそれを只の噂話と侮っていると痛い目を見るであろう。そして天龍もその一人だった。

 

「おーっしお前ら、準備はいいか?」

 

 草木も眠る丑三つ時。天龍率いる肝試し隊は艦娘寮の前で点呼を行っていた。

 

「漣」

「ほいさ!」

「声でけえぞ。響」

「いるよ」

「最後に黒潮」

「おるでー」

「よし、揃ってるな」

 

 天龍は懐中電灯をいじくりながら漣と響と黒潮を見回し、うんうんと頷く。

 

「よし聞け。オレ達は今から夜間哨戒を行う」

「無許可だけどね」

「うっせ。今回の目的は例のキャン・Dとかいうふざけたヤローを見つけて、ぶちのめして拿捕することだ」

「ヤロー?女の人やって聞いとったけど」

「細けーことはいいんだよ。おい漣、縄は持ってるな?」

「へへへ、ここにこの通り」

 

 漣は揉み手をしながらSM用の荒縄を散り出した。それを見た黒潮は苦い顔をしたが、しかし天龍にそんな知識は無いので。

 

「よーし!天龍艦隊出撃だ!」

 

 そのまま出発となった。

 意気揚々と出発する面々。しかしそう簡単に幽霊が見つかるはずも無く。

 

「ぬわあああん!つかれたぁもおおおん!」

「カクトゥルーシルィヴィメニア…(罵倒するロシア語)」

「なー天龍はん、もう帰らん?」

「そうだなあ…」

 

 天龍艦隊は完全にだれていた。天龍も疲れてきていてもう帰ろうかなと思い始めている。

 

「ん?何食ってんだ?」

 

 ふと天龍は響の頬が膨らんでいる事に気が付いた。よく観察するとそれは飴のようで、時折コロコロと音を立てている。

 

「これは飴だよ。甘い物は心を落ち着かせる効果があるんだ」

「ふぅん…」

 

 そういえば最近になって廊下に飴の置いたバスケットが置いてあった事を天龍は思い出した。それは塩飴の類で、スポーツ飲料のような味だったと覚えている。

 チラと廊下を見ると小さな机の上にバスケットがポンと置いてある。

 

「オレも一個貰うか」

 

 そういって飴に手を伸ばした瞬間、廊下にあった用具入れの扉が勢いよく開き大きな音を立てた。

 天龍は慌てて音のした方を懐中電灯で照らし、そしてそこには一人の仮装した人物が立っていた。

 

 顔はニワトリを模しているのだろうか、変わった被り物で顔をすっぽり覆い隠し、手には赤く染まった木製バット。それが天龍達をじっと見つめていた。

 

「うひゃーっ!出たーーーっ!」

「チェボー!セリヨーズナボージェモーイ!(支離滅裂なロシア語)」

「この肝試しは早くも終了ですね!じゃあ漣はフトン系の仕事があるのでこれでっ!」

「あ、おい!待てって!」

 

 その人物に仰天した三人は散り散りに走り去ってゆく。逃げ遅れた天龍は捨て置かれた荒縄を拾ってから懐中電灯を構えてニワトリ頭に注視した。

 

「テメー、何者だ」

「……」

 

 パチン、パチン。

 ニワトリ頭はバットを手で打ち鳴らしながら天龍へと歩み寄っていく。

 

「随分小柄だな、女か?」

「……」

 

 パチン、パチン。

 ニワトリ頭は意に介した様子もなく、ただ一定の間隔で歩み寄る。

 

「おい、それ以上近づくと容赦しねーぞ!」

 

 パチン。

 ニワトリ頭は歩みを止めた。

 

「じっとしてろ、テメーを提督に突き出して…なっ!」

 

 荒縄を持って一歩を踏み出した瞬間、ニワトリ頭の姿が消えた。目にも止まらぬ速さでしゃがんだニワトリ頭は水面蹴りを繰り出し、浮いた足を引っかけ天龍を派手に転ばせたのだ。

 転んだ拍子に懐中電灯を手放してしまい、廊下にカラコロと光が躍る。そして壁にぶつかる音と共に、バットを大きく振り上げていたニワトリ頭を照らしだした。

 

「ひっ!」

 

 殺られる!そう思った天龍はとっさに腕で顔を覆った。そしてガツンという音が廊下に響く。

 振り上げられたバットは天龍の頭ではなく、廊下を打ち付けていた。

 

「……仕置きはこの程度で良いでしょう」

「へっ?」

 

 ニワトリ頭から聞こえてきたのは酷く慣れ親しんだ声だった。バットを放り投げて被り物を脱いだ人物は、なんと不知火だったのだ。

 

「ダッテメ…不知火!」

「なんでしょうか、無断で探検中の涙目天龍さん」

 

 天龍は不知火に詰め寄ろうとしたが不知火の発言に言葉を詰まらせた。

 

「おおかたキャン・Dを口実に肝試しにでもやってきたのでしょう。残念でしたね、キャン・Dなんて存在しません」

「は?どーいうこったよ…」

 

 天龍は涙をこっそり拭いながら立ち上がり体に着いた埃を払った。

 

「キャン・Dとは提督がでっち上げた、不良ホイホイです。そしてお仕置き実行部隊がこの不知火。この件は後で報告させて頂きますからね」

「げ…マジか」

「朝になったら提督のお説教が待っていますよ。良かったですね」

 

 はーやれやれとバットを拾いながら用具入れの中に戻る不知火。「戻るのか…」と天龍は困惑気味にその背中を見送った後、懐中電灯を拾い上げた。

 ふと横を見てみると飴の置いたバスケット。天龍は響の食べていた飴を思い出した。

 

「…飴食って帰るか」

 

 肩を落とした天龍は目の前にあった飴を一つ拾い上げた。

 

 

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 同時刻、執務室。

 

「へぇー。キャン・Dって名前ってとても甘そうですね」

「ま、この話には裏が合ってな」

 

 赤城と提督は夜食のうどんを啜りながらちゃぶ台を挟んで話していた。

 

「キャン・Dの名前はキャンディー、つまり飴から来とる訳やな」

「はい」

「つまりキャン・Dの叫びってのは飴の叫びってことや」

「飴が叫ぶんですか?」

「ちゃうちゃう、飴を食った奴が叫ぶんや」

「どういう事でしょう…」

 

 赤城は考え事をしながらもズルズルとうどんを啜っている。そんな時に提督のスマホが「ユーガッタメール!」と流暢な英語でコール音を立てた。

 

「お…きたきた」

「どなたからですか?」

「響ちゃんや。お仕置き実行部隊の一人な」 

 

 メールには「仕込み完了」という文字があった。それを見た提督はニヤリと笑う。

 

「どうしたんですか?そんな邪悪な笑みを浮かべて」

「そろそろキャン・Dの叫びとやらが聞こえるかもしれんで」

「え?それは一体…」

 

 その瞬間である、廊下の方から天龍の「まっずうううううううううううう!!」という叫び声が轟いた。その声を聴いた赤城はポンと手を打ち鳴らし、納得の言った顔で頷く。

 

「なるほど、廊下の飴に不味い飴を忍ばせておいたんですね」

「夜中限定のスペシャルメニューや。これがキャン・Dの叫びの全様やな。夜食欲しくなったらこっち来いって意味分かったやろ?」

「ええ、それはもう。ところでおかわりはありますか?」

 

 赤城は空になったうどん鉢を掲げて言った。

 




ニワトリマスク

大鳳のコレクションの一つ。ホットラインマイアミのアレを手作りした。
虎だったり象だったりのマスクももちろんある。被ったら強くなった気がする、らしい。


罵倒するロシア語

出てこいくそったれぇ…的な意味。


艦娘ナンバー9 不知火

抜けてる系艦娘。大真面目に変な事をする事に定評があり、よく鎮守府内で珍妙な事件を起こす。
鎮守府格闘部門での成績優秀者であり、MPの腕章をつけて警邏している姿が良く見られる。鎮守府で事件を起こすと大体不知火がやってきてコテンパンにやられると知れ渡っているので治安維持(爆発とか)に一役買っているとか。
実は黒潮の作るハンバーグが大の好物。
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