道楽鎮守府   作:アサルトゲーマー

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二話連続投稿です。前の話からお読みください。


武蔵(遺伝子組み換えでない)

 ある日の夜。提督と武蔵は執務室の中でテーブルを挟んで対峙していた。そしてお互いの目の前にはうどんと稲荷寿司が一皿ずつ。

 

「前から思っていたんだが、うどんに寿司を付けるのはおかしくないか?」

「言うても自分ちやとオニギリかイナリ付いてきたし……」

 

 いきなり駄目出しをくらう提督。炭水化物に炭水化物を重ねるのは実際変ではあるが、無い訳では無い。身近なもので言えばラーメンとチャーハンなど結構ある。

 

「炭水化物を重ねるなとは言わんが、少しは糖尿について考えたらどうだ」

「うっ!」

 

 が、やっぱり炭水化物は炭水化物。糖尿の使徒であり生活習慣病の盟友。さらに甘いだしと甘い稲荷が加わることで美味しい食生活を滅ぼすインドラの矢の登場だ。ちなみにうどん用小麦粉消費量でぶっちぎり一位のとある県では糖尿率もぶっちぎりの一位である。

 ぐうの音もでない提督に呆れてため息を吐く武蔵。そして徐に立ち上がると提督の分の寿司二貫を掴みあげそのまま自分の口に放り込んでしまった。

 

「ぬあっ!?何すんねん!」

「むぐむぐ…貴様は我慢というものを覚えた方がいい。寿司は没収だ。うどんも没収されたいか?」

「あかん!これは自分のソウルフードなんや!」

 

 武蔵に脅されてうどんを抱え込む提督。その姿はおおよそ大人の女性には似つかわしくない姿だった。その姿を見て再び武蔵はため息を吐く。

 

「…まあ貴様がそう簡単にうどんを捨てるとは思わんがな。長く付き合っていれば嫌でもわかる」

 

 再びため息。ため息を吐くと幸せが逃げるという言い伝えが本当なら彼女からは幸せが閃光のごとく発射されているだろう。

 

 その後もしばらく問答が続き、それからずるずるといううどんを啜る音が執務室に響く。

 

「懐かしい味だ」

「お、わかる?」

「ああ。この安っぽい味、薄く切られたかまぼこと相まって毎年の祭りを思い出すよ」

「やんなぁ」

 

 安っぽい味のうどん。普通の人物にとってはただそれだけの存在ではあるが、提督と武蔵にとっては特別なじみ深いものだった。それは故郷の祭りのたびに無料で提供されているうどんその物の味だったのだ。

 味わいながら武蔵はうどんを噛みしめる。そして一気にうどんのだしを飲み干し、提督と顔を合わせた。

 

「明日、私たちは帰る」

「……そっかぁ。寂しいなるなぁ」

 

 彼女の言葉に顔を曇らせる提督。彼女は立ち上がると執務室の端に置いてあるうどんの生地を拾い上げ、武蔵に差し出した。

 

「お土産、いるか?」

「そうだな。向こうで赤城が欲しがるかもしれん。貰っておこう」

 

 素直ちゃうなぁ。うるさい、誰も彼もが貴様みたいに単純だと思うなよ。

 再び始まる問答。二人の表情は長年の相棒と思い出話をするように穏やかな物だった。

 

 

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。提督は鎮守府の門の前で武蔵と赤城と向き合っていた。提督は手ぶらで、武蔵と赤城は荷物を抱えて。

 

「今日でお別れかぁ」

 

 提督が悲しそうに肩を落とす。束ねた長い髪が垂れ下がるその姿はまるでしょんぼりした犬のようであった。

 

「あっという間でしたね。何かと濃い日々でした」

「ああ、そうだな。まさか夕張が壁に埋まるとは思わなかった」

 

 その彼女の姿をみて呉鎮守府にいた間に起った事を想いかえす二人。天龍の肝試しや不知火のスペシャルお仕置きショー、きれぼしする大鳳とヌケボー物理学を実証した夕張。舞風とのダンスやカレーうどんパーティーなどいろんな思い出が頭を巡る。

 

「今思い返してみると酷いな」

「まあ、それが呉の良い所では?」

 

 武蔵の呟きに律儀に返す赤城。二人は顔を合わせると苦笑いした。なんか釈然とせんなあ、と提督はその顔を見て思う。

 

「ま、向こう帰っても元気でな?」

「言われなくとも」

「いつでも来(き)いや?好きな時にうどん食わしたるきんな」

「そうだな、疲れたらまた来させてもらおう」

 

 提督と武蔵の掛け合い。その姿を見ながら赤城は微笑む。そして時計を見て、二人に声を掛けた。

 

「名残惜しいですが、そろそろお迎えが来ますので」

「む、もうそんな時間か」

 

 武蔵も時計を見た。鎮守府に取り付けられた時計の針は迎えの来る5分前を指している。

 彼女は腕を組み、そしてまた解き、少し悩む素振りを見せてから提督の肩をつかんで額と額を軽くぶつける。提督も驚いた様子はなく、その行為を甘んじて受け入れた。

 

「行ってくる。また来るからな、かあさん」

 

 囁くような声。提督は大きくうなずいてから武蔵を抱きしめ、そして「何時の間にこんなにデカなったんかなあ」と呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 帰りの車の中、やけにニコニコした赤城が武蔵に語りかけた。

 

「いやあ、呉のダークエルフの名は伊達ではありませんでしたね。武蔵さんと親子ほどの歳の差がありながらあの美貌、憧れます」

 

 その言葉に武蔵は固まった。聞こえていたのか?と武蔵が聞くも、赤城から答えは返ってこない。

 少し間が開く。赤城は窓の外を見ていて、思い出したように話を続けた。

 

「さて、どうでしょう。そういえばミョウガを使った料理を食べると物忘れしやすくなるって言い伝えがあるそうですよ?」

 

 その言葉に武蔵は泊地に帰ったら赤城にミョウガの料理でも振る舞ってやろうと決めた。

 一航戦は耳も良いし交渉事にも強い。他人に遠慮もしないし傍目からは傍若無人に見えるかもしれないが、誰にも知られたくない誰かの秘密について口を紡ぐくらいの人情は持ち合わせていた。

 




艦娘ナンバー12 武蔵

白髪、ツインテール、眼鏡、長身、褐色肌、おっぱい、イケメン、半裸等色んな要素詰め過ぎ系艦娘。しかも面倒見がいいという兄貴属性も持つ。
実際は乙女属性も持ち合わせており部屋に大きなぬいぐるみが置いてあったりする。通称『長崎の属性盛り合わせ』
ちなみに好物はもずく。
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