道楽鎮守府   作:アサルトゲーマー

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※朧村正
ゲーム。ごはんがめっちゃうまそう。
これで酒があればのう。


フィクションにおける食べても太らない率は異常

 

 深夜。それはアニメの時間帯。夕張は悩んでいた。

 

「どうしてアニメとかゲームの料理って美味しそうに見えるのかしら」

 

 聞く人に取ってはどうでもいいような疑問を、夕張はテレビに映し出されているいなりを見ながらつぶやいた。しかしちゃぶ台を挟んでそれを聞いて居た大鳳はうんうんと頷く。

 

「わかります。朧村正の料理なんか見た時はもう…」

「わかるわ…初めておにぎりを作った時なんか驚いて変な声でちゃったし」

「なんだかお腹すいてきましたね…」

「ジブリ飯食べたい…」

 

 二人の視線が交差する。すると大鳳はおもむろに立ち上がり、棚の中から4つのおにぎりを取り出した。

 

「実はここに川内さん特製のおにぎりがあります」

「わぁ、おいしそう…一個もらっていい?」

「一個と言わず二個差し上げますよ」

「やったあ!さすが大鳳話がわかるっ!」

 

 聞く人によってはトラウマを刺激されそうな台詞を吐きながら夕張は諸手を上げて喜んだ。そしておにぎりをそれぞれ持ち、はむりとかぶりつく。

 冷えているはずなのにしっとりしていて、硬さとは無縁なお米が甘さと塩辛さのハーモニーを奏で口の中を泳ぎ始める。たまらず二口目をかぶりついた夕張は中に入っていた梅干しの絶妙な酸っぱさに舌を巻いた。

 三口、四口──と食べ進めるうちにおにぎりはいつのまにか空気と置き換わっていた。梅干しに種は無く、川内の優しさが垣間見えた気がする。

 夕張は幸せそうにおにぎりを食べている大鳳を見ながら二個目のおにぎりに手を伸ばす。そしてあっという間に無くなった。

 

「──ああ、無くなっちゃった」

「ぐうう…川内さんのおにぎりは美味しすぎます。こんなの卑怯です」

「私もこんなに美味しく料理を作れたら……あ」

 

 夕張が頭上に電球を浮かべたポーズで人差し指を上に向けた。

 

「私いいこと思いついたんだけど」

「なんでしょう?」

 

 

 

 

 

「え?私の料理を学びたい?」

 

 そんな訳で二人は川内に料理を学びに来ていた。深夜ではあるが川内は朝昼寝ているのでこの時間がベストだったのだ。

 

「そう!ぜひコツを教えてほしいの!」

「美味しい料理を作りたいんです!」

「う~ん…」

 

 二人の言葉にしかし川内は渋り気味。手を顎に当てて悩んでいる。

 

「コツって言われてもねぇ…イメージが大切なんじゃないのかな。私はどんな時に誰に食べてほしいか考えて作ってるけど」

「どんな時に誰に食べてほしいか…?」

「そうそう。たとえばおにぎりだったら熱々がおいしいのは解ってるけど、冷えたおにぎりはおいしくないじゃん。だったら冷えてもおいしいお米を使えば冷えてもおいしいおにぎりが食べられるし」

「!!」

 

 二人にとって川内の言葉は衝撃だった。どんなものを作りたいかで料理をしていた二人は発想の時点で川内に負けていたのだ。

 

「そっか。私たちはそこから始めなきゃね」

「ありがとうございます、川内さん。私たちは食の道に光を見出しました!」

「そう?ならよかったかな」

 

 大きな収穫を得た二人は上機嫌に来た道を戻って行った。

 

 

 

 

 

 そして二人は次の日から料理の研究を始めた。おいしい調理を作りたい、ではなく。冷えてもおいしい夜食をイメージしながら作ることにし、穀物をメインに据えた料理に取り掛かる。

 聞くも涙、語るも涙な物語の末できた料理がこちらである。

 

「うん、うまくできた!」

「おいしそうです」

 

 それはスタンダードなオムライス。出来立てを食べるふわとろオムライスでは冷えたら美味しくないので卵の薄焼きを巻いた奴である。中のチキンライスは塩味を薄く、スパイスを強めに使っているしお米も川内印の「冷えてもおいしいヒカリ」を使っている。

 これで美味しくないはずがない!二人は確信した。そして実際美味しかった。やがてふたりは夜食づくりが趣味となり、川内と共に料理をしているところを良く見られるようになったとか。

 乾燥してもそれなりに食べれるそば、冷えても硬くならないステーキ、魚の三杯酢漬けなどなど。作っては食べ、川内と夜更かしして、アニメのように美味しく作れたことを祝い。そして大変な事になっていた。

 

「ねえ大鳳…その、体重なんだけど」

「夕張さんもですか…」

 

 そう、夜食を食べるあまりに体重がスゴい事になっていたのだ。一方川内は体型に変化はなく地味に妬んでいる。

 

「食べても太らない体質なんだーとか言ってみたい…」

「そんなものはフィクションの世界だけですよ…」

「アニメェ…」

「ゲームェ…」

 

 夕張と大鳳の洗練されたボディは犠牲になった。美味しい夜食の犠牲に…。

 ちなみに。夜食を作っても自分で食べなきゃいいじゃんと思いついたのは、龍驤が食べても太らないタイプだと発覚した二日後のことであった。

 

 嫌がらせのごとく毎日のように夜食が龍驤に届けられ、それでも彼女の体型に全く変化が認められなかった二人はやっぱり愕然とした。

 ちなみに御相伴していた提督は血糖値が高くなり通院を始めたとかなんとか。黒潮いわく。うどんの食べ過ぎに夜食がトドメになったらしい。

 




龍驤「(胸が)太ってる人が羨ましい」



艦娘ナンバー2 黒潮

やわらかい関西弁を話すほわほわ艦娘。
関東で買ったホットプレートにたこ焼き用鉄板が付いてこなくて愕然としたことがある。
たこ焼きには青のりをどっさり使うタイプ。ソースはおたふく派。
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