麺類の中ではトップクラスの血糖値上昇率を誇る糖尿病の使徒。
※そば
炭水化物。血糖値が上がらないというのはデマ。
※プランB
ありません。
とある日の鎮守府。夕張は廊下を歩きながら今日のお昼をどうするか考えていた。
いつものようにそばでもいいし、たまには提督に付き合ってうどんでもいいかな。そう考えつつ執務室の前を通りかかったその時である。
「やめてぇ!それだけは勘弁してぇ!」
「いくら提督でもそれだけは出来へんで!黒潮ちゃんプランBや!」
「はいなー」
ドスンバタンと暴れる音。それと時を同じくして麺をすするような音。野次馬根性バリバリの夕張は「プランBはありましたか…?」などど意味不明な言葉を呟きながら執務室の扉を開けた。
そこにはうどんを啜る黒潮と提督を押さえつける龍驤の姿が。提督は腕を極められて地に伏せっておりその普段はキリッとした顔は情けなく涙が浮かんでいた。
「なぁにこれぇ…」
カードゲームを題材にしたアニメ主人公のような感想を漏らす夕張。それに気が付いた黒潮は彼女に向かって手招きをした。
「あ、夕張はん。うどん一緒に食べん?」
「いただきます」
お腹の空いていた夕張は黒潮の問いに即答。提督の顔はますます情けない泣き顔になっていた。
「へえ…血糖値が高くなってるからお医者さんに警告されてたのね」
「それやのにこのアホは隠れてうどんを食べようとしよってな」
「ああーなるほど。だから没収して食べてたのね」
「せやで」
先ほどのスマブラ(暗喩)に合点のいった夕張は正座している提督に視線を向けた。当の彼女は悪い事をしていてばれた子供のように俯いている。
「まあ、炭水化物はダメよね」
「肉食え言うてんのにこのアホは聞かんでな」
「やって肉食うと肌が黒くなるやん」
「もう十分黒ない?」
「おごっ」
黒潮のツッコミに提督は床に突っ伏した。武蔵程とは言わないが彼女の肌は黒い。昔龍驤が「日サロでも通ってん?」と聞いたときにも随分と落ち込んでいた辺り当人にとってはコンプレックスのようだ。
「で、血糖値を上げず、なおかつ麺が食べたいと…」
「そういえば夕張ちゃんは血糖値大丈夫なん?いつもそばばっかりのイメージあるけど」
「うん。健康診断だったらいつも優もらってるから」
「ええ?なんで?」
「んふふ、それはね……」
ごにょごにょと龍驤と黒潮に耳打ちする夕張。話の内容を理解した黒潮は「そんな簡単なん?」と困惑気味。しかし龍驤は「聞いたことあるなあ」と肯定気味だった。
「なら明日のメニューは決まりやな」
ぞろぞろと執務室を後にする三人。そこには提督が只一人残されていた。
「自分のお昼…」
その一言を聞き入れるものはいない。提督は秘蔵のうどんせんべいを泣く泣く取り出して食べた。
次の日の昼。提督の目の前にはうどんとサラダが置かれていた。
「えっ、今日はうどん食うてもええん?」
「ええ、しっかり食べてください!」
信じられない、といった感じの顔の提督とにっこりほほ笑む夕張。隣に待機する龍驤は「おかわりは無いで」と釘を刺していた。
「ただーし!ちゃんとサラダから食べてや?」
わかった!という勢いのある返事と共にサラダを掻き込む提督。その姿を見て三人は苦笑いをした。
よっしゃ食ったで!と言いながらうどんに手を付ける提督。そしてそのうどんの色に違和感を持った。
「このうどん茶色ない?」
「全粒粉で打ちましたからね!」
私が打ちました!と得意げに胸を張る夕張。おそるおそる口に含んだ提督は眉をピクリと動かしたあと、これまた勢いよく食べ始めた。
「うまっ!全粒粉のイメージひっくり返るわこんなん!」
「麺類なら夕張さんにお任せってね」
「嫁にこうへん?」
「提督が男だったら考えてたかも」
ズビズバーと麺をすすり、あっというまに鉢を空にした提督。で、血糖値は大丈夫なん?と聞いてくる提督に龍驤は半笑いになった。
「血糖値の事考えとったんか」
「うどんか血糖値ならうどんなだけやで」
「さよか」
「血糖値なら大丈夫ですよ。最初のサラダが血糖値の上昇を抑えますし全粒粉の麺は炭水化物が普通より少ないですから」
「へぇー。これなら毎日うどんでもOKちゃうん?」
「提督はんはうどんから離れよや」
意地でもうどんから離れない提督に黒潮と龍驤は深ーいため息を吐いた。夕張は少しだけその気持ちが解るので苦笑いをしていた。
その日から提督のお昼は全粒粉のうどんとなった。しかし健康面でもう一つの問題点が上がった。それは尿酸値の上昇である。
提督のお仕事はただでさえストレスが溜まる。おまけにうどんのようなカロリーの塊を食べていればどうなるかは火を見るより明らかで。
結局うどん禁止令が出されて提督は真っ白に燃え尽きていた。真っ白になれて良かったやんとは龍驤の言である。
提督
四国出身の趣味人な提督。
女だてらに背が高く若干色黒な事を気にしているが武蔵を一度見てからは若干安堵している。学生時代のあだ名はダークエルフ。
粉物でいえばうどんが大好き。糖尿病にならないか日々恐々としている。
艦娘ナンバー3 夕張
オタクっぽい言動を隠しきれていない隠れオタク艦娘。
十割そばを美味しく作れるのがひそかな自慢。でも夕張自身は二八そばのほうが好き。
そばを食べるときは辛いつゆをちょっとだけつけるように心掛けている。でもたまに誘惑に負けてたっぷりつけることもしばしば。