道楽鎮守府   作:アサルトゲーマー

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※ウォッカ
ロシアの酒。ロシア語で水をもじった言葉。

※たこわさ
たことわさびの茎を混ぜたおつまみ。当然辛い。


お酒は改になってから

 

 響は酒を嗜む。ビールもワインも梅酒も好きだが、やっぱり最後はウォッカに帰る。

 お酒は気持ちいい。お酒は最高だ。それが響の世界観であった。となると当然つまみにも力が入るもの当然で。

 

「今日はたこわさというものに挑戦してみたよ」

「たこわさかぁ…」

 

 響は美味いつまみを作ることに熱意を燃やしていた。それに付き合わされた提督はお茶碗片手にどうれと一口頬張る。

 

「どうだい?」

「辛い!けどうまい」

「そう?良かった」

 

 もしゃもしゃと白米を頬張る提督。それを見ていた響はマジンガー(冷蔵庫)からウォッカを取り出し、グラスに注いでから提督の前に置く。

 

「お酒のつまみに作ったんだ。どうせならお酒と一緒に楽しんでほしいな」

「むむっ。やけど仕事中にお酒はなぁ…」

「今更だよ。どこの鎮守府に行ってもうどんを打つような提督は居ない」

「そういわれるとなあ…しゃあない、一杯だけやで」

「ニェ スチェシニャーエシシャ(遠慮しないで) 一杯と言わず私と乾杯しよう」

 

 そういって響は自分のグラスにウォッカを注ぐ。

 

「それ響が呑みたいだけちゃうん?」

「なんの事かな?」

 

 にやりと意地悪く笑う響。提督はグラスを響の額にこつんとぶつけて掲げた。

 

「しゃあないな。じゃあお酒好きの響に乾杯や」

「ふふっ、乾杯」

 

 

 

 

 

 

「で?この酔いつぶれた大間抜けはなんや?」

「提督だよ。身体的特徴からダークエルフの通り名もあるよ」

「誰がボケぇいうたか!」

 

 すっぱーん!と龍驤のハリセンが炸裂した。一方倒れた提督は黒潮と大鳳に抱えられて退室しつつある。

 

「…で、何をどんくらい飲ませたんや?」

「ウォッカをグラス三杯かな」

「そら潰れるわ…」

 

 響の言うウォッカとは度数40の強烈な酒である。そして呑むときは必ずストレートなので直ぐ回る。さらに言えばロシア式の乾杯なのでグラスを一息で空にするからこれまた回る。グルングルン。

 しかし一緒に飲んでいたはずの響は顔色一つ変えずにケロッとしていた。

 

「響もちょいと酒控えた方がええんとちゃう?見掛ける度に呑んどるような気がするんやけど」

「そんなに呑んでないよ。たった週に7回さ」

「毎日やん」

 

 そうだよ。と悪びれも無く答える響。龍驤は諦めたのか額に手を付けてため息を吐いた。

 

「ま…ええわ。とにかく他人を巻き込むような呑み方は控えてや」

「チョールトバジミー…(汚いロシア語)」

「何やって?」

「善処するよって言ったのさ」

 

 

 

 

 次の日。響は一人でボルシチを作っていた。料理として美味しいのもあるが、目的としてはやはり酒のつまみだ。

 響のレシピは脂身の多い肉とじゃがいもとスビョークラとトマトと豆その他もろもろをぶち込む響式だ。当然月桂樹の葉も入れる。

 

「そろそろお昼時だね」

 

 時計をチラと見て、ちょうど昼飯時であることを確認すると鍋を抱えて執務室まで歩いて行った。今日は黒潮も龍驤も遠征のはずだ。だから提督はうどんを食べようとしていなければお腹を空かせているはずだ。

 扉を開ければそこには机に向かって真面目に仕事をしている提督が居る。当たり前のことではあるがこの鎮守府に置いてはちょっとした珍事であった。

 

「提督、お昼を持ってきたよ」

「おっ、もうそんな時間かいな」

「そうさ」

 

 執務室に入った響が鍋の蓋を開けるとふわりと優しい匂いが漂った。それを嗅いだ提督の咽がごくりと鳴る。

 

「どうだい?」

「うまそうな匂いやん…ボルシチかな?」

「正解だよ。食事の準備をするから机を片付けてくれるかな」

「アラホラサッサ」

 

 普段の勤務態度からは考えれれない程の手際で机を片付ける提督。くすりと笑みをこぼした響はコンロの上に鍋を置いてお椀に取り分け、マジンガー(冷蔵庫)から当たり前のようにウォッカを取り出した。

 

「なんやそれ」

「お酒だよ」

「見たらわかるわ」

「お酒のつまみに作ったんだ。どうせならお酒と一緒に楽しんでほしいな」

「昨日もそんなこと言うて自分酔い潰さんかった?」

 

 さぁてね。そう言いながら響は二つのグラスにウォッカを注いだ。

 

「ああそうだ、ロシアでは酔い防止には黒パンが良いと言い伝えがあるよ。はいパン」

「…まあ気休めぐらいに貰っておこか」

 

 響から黒パンをもらい、一口齧る提督。

 

「それじゃあ提督の健康を願って、乾杯」

「はいはい乾杯」

 

 提督と響はグラスに入った酒を一息でぐいと呷った。

 

 

 十数分後。そこにはお酒に負けて机に突っ伏す提督の姿が。

 

「まあ黒パン云々は迷信なんだけどね」

 

 響は机に座りながら提督の手に握られたままのグラスを取り、中身をぐいと煽る。その顔はほんの少しだけ上気していた。

 

「提督は知らないだろうけど、ロシアにも『同じ釜の飯を食べた仲』と同じ様な慣用句があるんだよ。それはね、『多くのウォッカを共に飲んだ仲』さ」

 

 グラスを置き、響は再びウォッカを足して提督の前に置く。そして元々自分が使っていたウォッカを手に持ち大きく掲げた。

 

「提督と私の仲に、乾杯」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?この酔いつぶれた大間抜けはなんや?」

「提督だよ。うどん中毒なことからうどん魔王の異名もあるよ」

「誰がボケぇいうたか!」

 

 すっぱーん。




チョールトバジミー(汚いロシア語)

Чёрт возьмиと書く。
意味はおよそ糞喰らえに該当する。



艦娘ナンバー4 響

ロシア語をよく使う艦娘。ビールはソフトドリンクと言って聞かない。
悪態をつくときは大体ロシア語。他人が解らない事をいいことに過激な事を言うのが最近の楽しみになりつつある。
ビーフストロガノフが好き。理由は名前が強そうだから。
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