道楽鎮守府   作:アサルトゲーマー

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※オンデマンド(On-Demand)
要求に応じた~という意味。タイトルを例にすると「要求に応じた漣」

※エロゲ風タイトル
ひらがなにして☆を付けて最後に「っ!」を付けるとエロゲやギャルゲっぽくなる。特に意味はない。


さざなみ☆おんでまんどっ!

 潮は緊張していた。それもそのはず、この鎮守府における最高責任者である提督と対面しているのだから。

 彼女が以前勤めていた泊地での提督は金髪縦ロールの高飛車なお嬢様みたいな人で、それでいて面倒見のいい変な人だった。お金持ちに見えるのにそれでいて庶民的な、ギャップが激しくて暖かい人。

 そんな優しい提督は「異動しても潮は大丈夫ですわ!わたくしは少し…寂しいですけれども」と提督も言ってくれていたし、潮もそう思っていた。

 しかし今感じているのは冷たい視線。底冷えするような眼差しを向けてくる異動先の提督に委縮しながらも潮は懸命に声を振り絞る。

 

「本日付で着任いたしました潮です!あの…宜しくお願いします!」

 

 思ったよりも大きな声が出た、重苦しい空気に涙が出そうになる。少し間を置いて、徐(おもむろ)に提督が立ち上がった。

 

 大きい。

 

 それが潮の感じた印象。均整の取れた体、射抜くような眼光、腰まで伸びた艶のある髪、今まで出会ったことの無いような長身。その全てが潮を圧倒した。

 もはや言葉を失って見上げるばかりの潮。提督が一歩踏み出し口を開こうとする。もうそれだけで、潮にとっては世界が終ってしまいそうなほど恐ろしい事に感じた。

 しかしてその瞬間、大きな音と共に扉の開く音がする。

 

「サーセーン!漣遅れちゃいましたぁ!」

 

 部屋の空気が変わった気がした。

 現れたのは漣。なんだかおちゃらけた態度で、あまり悪びれていない。潮は突然現れた彼女が提督に何を言われるか心配になり、恐怖で自然と猫背になる。

 しかしそれはやっぱり杞憂なのであった。

 

「アホウ!こんな大事な時に遅刻するやつがあるかい!晩飯の命が惜しくないんかぁ!」

「へへぇー!ご主人様ぁそれだけはお許しをー!」

 

 そのやり取りで、部屋の重苦しい空気は完全に霧散した。なによりも潮は驚いていた。見た目の印象から怖い、怖いと決めつけていた提督から棘を感じさせない優しい声が聞こえたのだから。内容はともかく。

 なんだか優しそうな声の人である。前の提督のように、見た目と性格が釣り合わない人なんだろうと思った瞬間、潮の肩から力が抜けた。

 それを見た提督は呆れられたと思ったのか、たどたどしく「ちゃうねん」とか「いつもはこないなことないんや」などと弁解する。それがまたおかしくて、潮はほにゃりと笑った。

 

「プギャーwwww着任したばっかりの潮ちゃんに笑われてご主人様今どんな気持ち?wwww」

「もしもし?漣ちゃんの晩飯いらんから」

「んあー!?突然の実力行使はNGィ!」

 

 提督の机に取り付けられた受話器を奪い合って低レベルの喧嘩を始める二人。潮は以前勤めていた泊地を思い出しながら微笑んでいた。

 

 

 

 

 すったもんだの争いの末、辛うじて晩飯を守り切った漣はそれから潮を鎮守府を案内した。潮も彼女ならと安心して後ろを付いて行く。

 工廠、訓練場、食堂…。いろいろと回っていきながら出会った人と話していく過程で潮はあることを発見した。

 

「漣ちゃんって、すごいんですね」

「ほふん?どしたの、藪からスティックに」

「だって、みんな笑顔です」

 

 漣と会話した者は大なり小なり、みんな笑顔になっていたのだ。提督も、夕張も、気難しそうな龍驤も最後は笑顔になった。今だってそうだ、と潮は自然に笑う。

 途端に漣はドヤ顔となり、その言葉を大きく肯定。

 

「フゥーハハハハ!バレてしまっては仕方ない!ズバリ笑顔を運ぶスマイリングデストロイヤー漣とはこの漣のことだぁー!」

「はい、とても素敵な事だとおもいますっ」

「……素で返されるとめちゃ恥ずかしいんですけど」

 

 漣は赤くなって俯いてしまった。

 それからしばらくして「にょわー!」と奇声を上げてから元に戻った漣主導のもと潮は色んな場所を回っていく。そこは常に笑顔が溢れていて、潮も自然と笑う。

 漣は時に道化を演じ、時に変な話題を提供し、コロコロとその姿を変える。それは潮にとってはとても尊いものに見えた。

 時は過ぎ、日が頂上に昇ったあたりになって最後の場所に二人は辿り着く。

 

「じゃーん!ここが漣たちの寮なのだー!んでもって重大発表がありまーす!」

 

 ダラダラダラダラー…と口先から出る自前のドラム音を流しながら溜める漣。潮は重大発表とやらに気を引き締めた。

 

「ダラダン!なんと、潮ちゃんのルームメイトはこの漣ちゃんだったのだー!」

「ほ、ほんとうですかっ!」

「ダイジョウブ!サザナミ嘘ツカナイ!」

 

 ぴょんぴょんと飛び跳ねて喜ぶ潮。今日配属されたばかりで知り合いも居ないこの鎮守府において、漣はとても心強かった。

 でけえな、ああホントでけえな。漣のそんな台詞を聞き逃したのは潮にとっては幸運であった。

 

 

 

 

 

 

 夜。潮は布団に包まり、明日の事をじっと考えていた。

 

「潮ちゃん、起きてる?」

「はい、なんだか眠れなくて」

 

 その原因は明日に控えた演習にあった。知らない人との連携はうまくいくか、自分はしっかり戦えるか、失敗して怒られたりしないか…。そんな思いが潮の心を締め付けていたのだ。

 

「大丈夫だよ、潮ちゃん」

 

 布団からもぞりと這いだし、潮と目を合わせる。

 

「艦隊を守るついでに潮ちゃんも守ってあげる」

 

 その言葉はとても頼もしかった。ありがとうとお礼を言って潮は布団に頭まで潜り込む。そして驚くほどあっけなく朝は訪れたのであった。

 

『おっはよーございまーーーーす!!! 那珂ちゃんが!朝食の時間を! おしらせしまーーす!!』

 

 耳鳴りがするほどの爆音がした。それに驚いた潮は飛び起き、何が起きたのかキョロキョロとあたりを見回す。すると同じくして飛び起きた漣と目が合った。

 そして二人とも可笑しかったのか、クスクスと笑いあう。

 

「漣ちゃん、今日はよろしくお願いします」

「任された!漣の誇りに掛けてっ!」

 

 ちなみにこの後の演習では滅茶苦茶大破した。

 




金髪縦ロール高飛車お嬢様

お金持ち生まれのセレブお嬢様。しかし一度家の財政が傾き金欠の苦しさを知っているため金使いには煩い。
艦娘たちには「金熊野」「ロココ熊野」などと親しまれて?いる。
実は提督の同期。



艦娘ナンバー7 漣

ネット脳の艦娘。提督に構ってほしいがために始めたお勉強は彼女を深淵へと叩き落とした。五人そろって四人のハム王。
もはや死語となったネットスラングを始め、流行りのネタやごく一部の人物しか解らないような言葉まで使いこなす一級ぽこじゃか民。ぽこじゃかって何?
しかし本質は寂しがり屋なので他人との距離感には敏感。ただ騒いでいるように見えるときでもそれが誰かの為であることが稀に良くある鎮守府界のナイト。漣の空気読みスキルは圧倒的にさすがって感じ。
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