ミ~ムミムミム! ミムは全身ネットミーム人間ミムよぉ!! 作:ヤチヨ 幸せ なれる 質問
ヒントは第七話!
感想評価お気に入りありがとうございます。なんかお気に入り3000件超えててビビりました。
ツクヨミの端っこ、巨大な滝の近くで宙を泳ぐ魚達を眺めながら、俺もまた小さな船に横になっていた。
遠くに中心部の明かりを望むことが出来る、暗く静かで俺だけしか居ない空間。中心部の喧騒も発展を感じられて良いけど、こういう端も端の俺以外は誰もいないような静かな雰囲気も俺は好きだ。
どうして貴様が安寧を享受する?
「はぁ~落ち着く~~」
仲間を見捨て、同胞を撃ち、醜く生き残ったお前がどうして平和を享受できる?
欲を言えば滝からマイナスイオンやら水飛沫を感じられたら嬉しいんだが……まぁ、今は無理なので諦める。スマコン自体が視神経に近い位置に着けるものだし、そっからゴチャゴチャすればワンチャン触覚とかは行けそうなモンなんだけどなぁ……ゴールは遠い。
貴様より生きるべき者達が居た。
触覚の実装以外にも受験勉強の追い込みだったりツクヨミ関連の仕事だったり……配信に新作ゲームも外せないよな。そういや福岡の植物園にも行きたいんだったな。嬉しい事にやりたい事もやらなきゃいけない事も沢山ある。まったく、退屈しない人生だネ!
……退屈出来ない、とも言えるけどな。
改造人間な俺には人より沢山使える時間があるって言うのに、時間が常に足りてない。我ながらフィジカル以外のスペックが弱すぎて嫌になる。特に頭が悪すぎて時間が効率的に使えないのが痛いね。
永き時を生きた無能たる貴様は、何を為した? 何も為せなかった。
死ね。
非効率という言葉は俺のためにある。
貴様が居なければ生きたはずの者達が居た。
ここは大人しく1日12時間以上ゲームするのを辞めて時間を確保するしかないのか……いや、そこを妥協するのは俺らしくないな。生涯現役、死ぬまでゲーム三昧こそ俺の人生。
せや! 睡眠時間を今以上に削ってしまおう。転生者でチート持ちなんだ、多少の無茶をしたって問題は無い。それに今の俺はまだまだピチピチの男子学生、夜更かししてゲームして好きな事をするのは普通の事だ。ワイトもそう思います。
貴様は只の死に損ない。
まぁそれに、睡眠時間削ろうがゲームの時間を削ろうが、どうせ時間は足りないからな。心の安寧の為にも娯楽を減らすのはナンセンス。
我等は人類の為に生きた。貴様は何のために生きた?
既にヤチヨはイロハと再会した。それはつまり、
どうして貴様は生きた?
原作の開始時期ってのは、原作ありきの世界に転生した転生者なら誰もが心配する事項だと思う。俺みたいな厳密にいつから原作が始まるかを知らないようなクソエアプなら猶更。
「ったく、どうして具体的に教えてくれないのかねぇ……」
いくら聞いてもヤチヨもスレ民共も核心的な事は教えてくれない。アイツら情報を意図的に絞って俺を原作に関わらせようとして来るのマジでカスだと思う。俺は関わりたくないって言ってんの!
混沌の事を貴様が言えるものか。無能な死に損ない。
それでもまぁ、俺ってば一応頭が悪いだけで回転は速い方だから、原作期間がどこら辺かの推測くらいは出来る。現時点に俺が持ってる情報で推測出来るのは、多分高校生の期間の間のどこか2ヶ月間が原作の期間であること。
一応遊ぶ時間は取れてたらしいから大学受験で死ぬほど忙しいワケじゃないはず。そうなれば多分高1か高2のどちらか。
なぜ生きる? なぜ生きている? 誰よりも報われるべきでない貴様がなぜ生きる?
あとはどこかのタイミングで花火大会があったらしいから、時期は夏の中盤から後半に被っているはず。となれば……2029年か2030年の5月から10月のどこかになる。
「……もうすぐだなぁ、ほんと」
貴様は誰も救えない。貴様は何も遺せない。貴様は貴様の為にしか生きられない。
指折り数えて片手で事足りる年月。俺みたいな凡人からしてみれば、あんまりにも時間が足りない。ヤチヨになんにもしてやれない。
そうだ、貴様は何も出来ない。何にもなれない。
貴様が幸せを享受することは我等への侮辱である。彼らへの侮辱である。皇帝への侮辱である。
そりゃあさ、俺が何もしなくてもヤチヨはハッピーエンドには辿り着くだろうよ。そういう世界だし。でもまぁ、言っちまえば理由が欲しいんだ、この世界で俺が生きても良い理由が。
穢れた貴様は終わるべきだ。誰よりも惨く。誰よりも凄惨に。
この世界にとって俺は異物……それもただの異物じゃねぇぞ、ド級の異物でド異物だ。ただでさえ腰抜けの死に損ないなのに、この世界でも何も出来ない様ならダメだろ。
あらゆる世界で異物たる貴様には何も為せない。
だから俺が頑張ってるのはマジでただの自己満足。それと敗者から勝者に贈るちょっとしたクリア報酬でもある。
俺は誰かのために死ぬことが出来なかった腰抜けだからな。こっちの世界で誰かのために何かが出来たら、ちょっとはブラザー達に顔向け出来る。
我等は貴様を認めない。忠義に死ぬも、忠義を裏切るも出来ぬ死に損ないめ。
「……そんな気がするだけ、だけどな」
不安定に浮く船の上で、俺の気分も不安定に揺れる。大小様々なネオンの魚群が、俺を慰めてくれるみたいに群れの形を変えながら泳ぐ。
久々のナーバス万夜くんモード。ここまでガッツリ聞こえるのはかれこれ何百年ぶり……我ながら珍しい事もあるもんだ。
最近ちょっと遊びに勉強に仕事にって忙しかったからなぁ……流石に寝なさすぎか? っぱ
貴様が聖典に従うだと? 笑わせる。
「はぁ、そうと決まればまずは仕事だな」
UIを操作してログアウトボタンを押す。そうすればパッと世界が暗闇になって、あとは瞼を上げれば現実世界。さっきまであんなに幻想的な空間だったのに、一瞬でボロアパートは落差が酷い。
現実を見るのだな、死に損ない。誰よりも死ぬべき貴様は、生きていてはならない。死ね。
……ダメだな、今日の俺。思考からしてテンションが低すぎる。やっぱり仕事もやめておこう。もうヤチヨに今日の分の仕事遅れるとだけ送って寝よう。もう寝る。おやすみ。
「死ね。死に損ない」
「うるせぇ」
超☆熱血ミム太郎:すまん、今日の分の仕事遅れる
珍しくチャットに届いた謝罪の文章。珍しい事もあるなぁなんてその時は軽く考えていた。けれども、待てども待てども返信は来ないし、既読のマークすらつかない。
前に万夜が寝たのは3日前だから……いつも通りの周期なら最低でもあと1週間は寝ずにフル稼働してるはず。
なのに既読も返信も無しでもう3時間……どう考えても異常事態。
「大丈夫かな……」
ツクヨミの中心の天辺で、空を泳ぐネオンの魚群が不安定に形を変えるのが視界の端に映る。天守閣から目一杯に広がるツクヨミの中心部の景色の上で、踊るように泳いでいる姿を見ていると、どこか不安になって来る。
万夜に限って体調不良なんてことは無いはず。カビの生えた食べ物を平然と食べているような人間が、今更体調不良で休むなんてことがあったら……ビックリもビックリしすぎてヤッチョも月までブッ飛ぶくらいの衝撃、だね!
……万夜の真似をしてネットミームで元気になろうとしたけど、ダメだなぁ。むしろ不安が増しちゃった。大丈夫、だよね? 元気だよね……?
だんだんと不安で息苦しくなってくる。嫌な考えが体を全部埋めていって、幸せな気分を全部外に弾き出してしまったような気分。
「うーん……多分寝てるだけなんだろうけど、大丈夫かなぁ……」
「心配し過ぎじゃないか……?」
近くでコロコロしていたFUSHIの声に視線を向ける。くそぅ、モフモフコロコロしやがってからに……そっちだって不安が目に出てるじゃん。
もちろん、ヤッチョの心配しすぎっていうのは自覚してる。だけど前科が
……万夜の様子を見に行くべき、だと思う。いつもみたいに適当な電子機器越しに部屋に入って、ぱっと無事を確認して、珍しく心配させやがってと笑って安心する。そうするべき。
DMが来た時からそんな事は解ってるのに、覚悟だけが足りなくて、最後の一歩を踏み出せない。
みんな大好き”シュレディンガーの猫”状態。十中八九、99%大丈夫だとは思うけどもしかしたら80年前のような事が起こっているかもしれない。でも、それを私が観測しなければ、少なくとも今は確定しない。
「なんて、言い訳してみたり――って既読ついてる! いつの間に!?」
「ヤチヨが頭抱えて空中3回転してる時にはついてたぞ」
「もぉ~~それなら早く教えてよFUSHI~~!! じゃぁ行ってくるね!」
少なくともDMを見れるくらいには無事、そう分かってしまえばこっちのもの。呆れた表情のFUSHIを残してあっという間に視界が現実の万夜の部屋へと切り替わ――また私のグッズ増えてない……?
溢れんばかりのヤチヨグッズ。本当にこんなに大量のグッズ買うくらい推してくれるなら配信とかも見て欲しいんだけどなぁ……なんてことを、目の前で胡坐で座り込む万夜に思う。
「やぁやぁ、珍しく自分から謝った万夜さん。いったい何があったのですかな~?」
「……来たのか」
「そりゃねえ? このまま放置してたら心配で心配で、ヤッチョなんにも出来なくなっちゃいそうだから」
地面に座り込んでいる万夜とは目が合わない。当たり前だ、今の万夜はスマコンを着けていない。ただイヤホンから私の声が聞こえているだけ。
「そうか、ごめんな心配かけて……ただまぁ、ちょっと疲れてるだけだよ」
「それなら良いんだけど――」
そこでふと気が付いた。万夜のイヤホンの線を辿った先、スマートフォンの画面に見知ったMVが流れていることに。
「――私の曲、やっと聞いてくれたんだ」
「ん? あぁ……寝れなくてな」
いつもの元気狂人な万夜と違って、年相応(実年齢は考えないものとする!)なナイーブな感じ。とっても新鮮でちょっと涎とか出ちゃいそうになりつつ、懐かしい記憶に思いを馳せてしまう。
まだ万夜が巨人で、私がウミウシだった頃。万夜がスリープする時に何度か私の歌を聞きたがった記憶。万夜の方がずっと年上なのに、私が歌うとすぐに静かになるのが子守歌を聞いた赤ちゃんみたいで……ギャップ萌えの破壊力を思い知ったよね。
本当に懐かしい、
「でもやっぱダメだわ、かぐやじゃないと」
「っ……そっか」
自分で思うよりも先に、答え合わせが来た。
さも当たり前の様に万夜の吐き出した言葉が、鋭利な刃物の様に私の心を抉る。まるで急に後ろから鉄パイプで殴られた気分。鉄パイプで殴られた事無いんだけど。
……ノンデリクソボケ万夜に言われなくたって自覚している。私はもうキラキラのかぐや姫じゃない、8000歳のおばあちゃん。
自分の中で改めて言葉にすると、とっても悲しい気分。身体も無いのに、思わず拳を震えるくらい握り締めてしまう。
やっぱり、長い時間の流れの中で擦り切れてしまったボロボロの私なんかじゃ――
「だから、歌ってくれよ」
「――へ?」
さも当たり前の様に万夜の吐き出した言葉が、今度は頭の中を駆け巡って大きなハテナマークを形作った。
本当に意味不明で、握っていた拳から力が抜けて解ける。酷い落差で整うってこういう事なのかな、サウナ入った事無いから解んなかったけど今なら解るかも。
いやだって、そうでしょ?? たった今”お前みたいな成れ果てじゃ無理”みたいなこと言われたのに急に歌えとか……え? なに?? どういうことなの????
「”へ?”じゃなくてな。寝るには
「わ、わかったけど……ヤチヨで良いの……? ほら、もうキラキラのかぐや姫じゃないんだよ? 変わっちゃったの。それにほら、私って色々と万夜の趣味とも合わないし……」
「――は?」
今度は私の言葉に万夜が大きなハテナマークを浮かべる番だった。”心底お前が何を言ってるか解りません”って表情と、いつの間にか着けていたスマートメガネ越しに目が合う。
メガネ万夜はレアだから一旦スクショだけ取っておこう。うん。
寝ようとしていただけに頭の働きが鈍ってたのか、そこそこ長い時間万夜と目が合っていた。流石のヤッチョもそろそろ照れるなぁ~なんて思い始めた頃、はっと何かに気付いたような表情に変わった万夜が笑う。
「……あぁ、なるほど。そう言う事か……ならコレを言うのは俺の役割じゃなさそうだな」
「えぇ~それもまた原作知識って奴?」
「どちらかというとメタ読み展開予想だな」
万夜のことだからどうせ間違ってるんだろうなぁ、と思いつつ言葉は飲み込む。
最近思うんだ、万夜って本当にこの世界を知ってる転生者なのかな……って。だってArcadiaとかハーメルンで沢山読んだssのオリ主達と比べて、ちょっと知らなすぎる気がするんだもん。
いや、確かに転生者ではあるよ? 80年前に確かに死んで、今こうして生きてる時点で一回転生はしてる。でもそうじゃなくて、こう……私達の事を物語として知ってる転生者にしては知識が無さ過ぎるって言うか……ね?
よくあるテンプレオリ主的なアレと違いすぎるんじゃないかなってヤチヨは思うんだ。何にも知らなすぎるし。
もしかしてあの掲示板も含めて全部デッドプールみたいな妄想なんじゃないかなとすら最近は思えてきた。だって”原作に関わりたくない”なんて言ってるのに、あの2ヶ月で
オタ公ちゃんとかの方はこっちが手回ししたけど……Black onyXとのKASSENコラボとか、ヤッチョ本当に何も知らなくてビックリしたんだからね??
「……なんかグダグダ考えてるな?」
「誰かさんのせいでね~」
もうほんと、君の事はいつまで経っても解らないよ。いつも予想外でヤチヨを悩ませてからに……あ、お互い様か。8000年も一緒に居たからそこら辺も似たんだね、ちょっと嬉しみ。
「ま、とりあえず歌ってくれよ。そうだな……あの曲が良い。はじめましての時に歌ってくれたあの曲」
なんてヤッチョが喜んでると、万夜が催促してくる。目を閉じて、完全に曲を聞く体勢。
くっそう我儘ボーイめ……一番悔しいのは嬉しく思ってるヤッチョ自身なんだけどね!! そりゃ自分からヤチヨの曲を聞きたいなんて言ってくれるの嬉しいに決まってるでしょ!? ようやくだもんようやく!!
でも、曲のリクエストだけはちょっと……
「……別の曲じゃ、ダメかな?」
「ヤダね、あの曲が良い」
うぅ……あの曲を、私が歌うのはちょっと解釈違いと言いますか~……あの曲はかぐやが彩葉に貰った曲であって、ヤチヨが歌うべきじゃないと言いますか……
「…………ダメか?」
「ヴぅ……ッ!!」
万夜が下で私が上。ねだるのが万夜で、ねだられるのが私。普段とは逆転した目線からの、普段とは攻守逆転したやり取り。この破壊力は彩葉の「あそぼ~?」と同じ種類の攻撃……!!
しかーし! ヤッチョはチョロくないウルトラスーパー美少女AIなのでここでしっかり断ることが――
「――1番だけね!」
出来ないんだよねぇ! これが!!
月見万夜:ガチでヘラったメンタル超無理限界ギリな人間モドキ。ヤチヨが自認ヤチヨになった理由とかそれ関連のアレコレに気づいたが、こういうことは原作主人公が言うやろの精神でケアしないことに決めた。ヤチヨの曲をあまり聞かないのは惨めになるから。かぐやの歌を聞きたがるのは声が聞こえなくなるから。
月見ヤチヨ:自認8000歳のおばあちゃん。原作に時点で大概こっちもチョロいと思う。今回は0歳の頃の自分が作詞した曲を歌わせられる拷問を受けた。1番の途中で万夜は寝落ちしたし、ちゃんとラストまで歌ってからツクヨミに帰った。万夜の視聴履歴に自分が乗って滅茶苦茶嬉しい。
声:我等、或いは彼等。罪。