ミ~ムミムミム! ミムは全身ネットミーム人間ミムよぉ!! 作:ヤチヨ 幸せ なれる 質問
感想その他もろもろありがとうございます! とても力になってます!!
だから 久々の 一日 2回投稿なんですね
第十七話 そういう君は酒寄彩葉
『――今は昔』
『ではなくて、遥か未来……という訳でもなくて』
『今この瞬間に、ゲームをしている普通の女子高生ありけり』
『母親との相性がちょ~悪い彼女は身一つで生きて行かんと上京して』
『せっせと、それはもうせっせとバイトも学業も頑張る、誰もがうらやむ優等生』
『その他は――予習したり、ゲームしたり、推し活したり、黄昏たり、推し活してくれたりして、過ごしていました』
『名をば
『彩葉って呼ぶべ――』
「ちょっと待て」
隣で浮きながらペラペラと無駄に演技派な感じのヤチヨを手で制止する。
「これ必要か?」
『止めないでよ~! それに当然必要に決まってるでしょ! スパイダーマンだっていつも最初に自己紹介があるでしょ?』
「デップーみたいなこと言いやがって……」
『はいはい邪魔しない』
どうやら必要な事らしいので諦めて続きを聞くことにする。無理矢理止める権力は俺には無い。
『えっと……そう、彩葉って呼ぶべし!』
『そんなめちゃ頑張り彩葉のいつも通りのある日の――帰り道の事』
『彩葉が超無理限界ギリながらも家路につくと、元七色に光るゲーミング電柱ありける』
『怪しがりて寄りて見るに、電柱の中光たり』
ヤチヨの言葉通り、少し離れたところで光り輝く電柱を前に呆気に取られている酒寄が居た。ははっ、目に見えて疲れてんな。
『それで彩葉はこう言ったの』
「す、すまん! 私手一杯ですので! 失礼いたします!!」
赤ん坊相手に伝わる訳もないのに手を合わせて謝罪してる所に、育ちの良さというか根の良い子さが出てるな。てか声デカ。
『――さて、話変わって今は昔』
『じゃなくて、やっぱり今この瞬間』
『そんな彩葉の事を遠くから見るストーカー男子高校生ありける』
「おい、お前に言われてやってんだぞこっちは」
『現国と体育だけで何とか留年を回避して、運動部からの勧誘を全て断って』
『科学部で好き勝手にはっちゃけるこの彼』
『名をば
『万夜って呼ぶべし!』
「”呼ぶべし!”じゃないんだよな」
『そんな万夜は、赤ちゃんを抱いて焦ってる彩葉に近付いて……近付いて?』
……あっ、俺が行かなきゃいけないのね。はいはい分かりましたよヤチヨ様。
「すみません。お忘れ物ですよ!」
赤ちゃんが出てきた後、元の電柱に戻った元ゲーミング電柱を叩いてみても、ウンともスンとも言わない。
完全にやられた。これでは深夜の路上で赤ちゃんを手に立ち尽くすしかない。
「この状況じゃ、私が攫ったみたいでは……?」
実際には変わってない筈なのに、腕の中の赤ちゃんの重さがドッと増えたような気がした。これが責任の重み……なんて思ってられる状況じゃない。
「たい♡」
「無理! 無理無理無理無理無理!!」
目が合って、無邪気に柔らかそうな頬っぺたで笑う赤ちゃん。可愛いとは思うけど、そこを何とか頼まれたって無理なもんは無理!
だけど、だからって、この子を路上に放置なんてできない。一体どうすれば――
「ふえええええええええええ!!」
――考えてる間に、赤ちゃんが伝家の宝刀を抜いた。深夜の住宅街に響く赤ちゃんの泣き声。どう考えても事件性しかない。
「ああっもうっ!」
とりあえずここは自分の家であるアパートの目の前! 赤ちゃんの安全のためにも一旦自分の部屋に入ってから考え――
自室へと踏み出そうとした瞬間に、フッと腕の中に抱いていたはずの赤ちゃんの重みが消えた。
「ふえ?」
「へっ?」
私と赤ちゃんの困惑の声が同時に聞こえた。そしてこれも同時に、アパートに向かおうとしたはずなのに、なにか壁にぶつかって――靴履いてる?
視線を上に向ける。人が居た。人にぶつかってしまったんだ。
その人はさっきまで私の腕の中に居た赤ちゃんを抱いていて、サングラスをしてて――明らかにヤバい類のお兄さんじゃん!?
「ふええっ!」
「ちょっ何やって――」
「……ぅおっ」
――何をやってるんだ私は。胸に”DETHE”と書かれたTシャツなんて着てる明らかに関わっちゃダメなタイプのヤバいお兄さん相手に、このままじゃ赤ちゃんが危ないと咄嗟に食ってかかってしまった。なんなのその誤字Tシャツ。
あぁ、これはもう私の人生は終わったかも……
「ほら、メンダコちゃんあげるから泣き止みな~?」
「ふぇ?」
「これサングラスがダメなパターンか……」
以外ッ! それはメンダコッ! 予想外にも、どこからか取り出したメンダコのキーホルダーを使って赤ちゃんをあやし始める怖いお兄さん。でも流石に怖すぎたか赤ちゃんは泣き止まな――あれ、サングラスを外した瞬間凄く見たことある顔になった?
「可愛いメンダコちゃんが友達になりたいってさ……コンバンハメンダコチャンダヨ!!」
「たぁ! たい!」
変な声でメンダコのキーホルダーに声を当てて、今度こそ赤ちゃんが泣き止んだ。
一仕事終えたぜ、といった風な怖いお兄さんと目が合う。やっぱりどこかで見覚えが――
「ふぅ……とりあえず泣き止ましましたけど。どういうことか聞いても良いですかね、酒寄さん」
「へ?」
「ゲンキカナ!?」
「たい!」
「ヨロシクネ!!」
「たいたい!」
月見万夜。うちの高校イチのフィジカル強者にして科学部部長。そして何より、うちの高校イチの問題児。
遅刻常習犯で成績も――体育と現国以外は赤点ギリギリか赤点。
その上、校庭でロケット花火打ち上げたり、異臭騒ぎを起こしたり、化学室でボヤ騒ぎを起こしたり、廊下でロケット花火を打ち上げたり、指導室でロケット花火を打ち上げたり、職員室の冷蔵庫を爆破したり――
それ以外にも学外ですら問題を起こしていると変な噂の絶えない、やっぱり正真正銘の問題児。あと漢字だけとはいえ
そんな彼が、私の家で電柱から出てきた赤ちゃん相手にメンダコ人形劇であやしているこの状況……ダメだ、疲れもあって意味が解らない。絵面だけならほんわかなんだけどな。
「たいたいたい!」
「はいはい、このメンダコちゃんは君の友達だからねぇ~っと……はいはい、こっちのかぐやもうるさいな。分かりましたよ聞きますよ聞けばいいんだろ」
メンダコのキーホルダーを赤ちゃんに握らせて、こちらを向いた彼と目が合う。
「えっと、月見君、だよね……? 同じクラスの」
「はい、そうですよ。そしてそういう君は酒寄彩葉――改めてこんばんは……それで、これは一体どういう事なのかな、酒寄さん」
明らかに何かを怪しむ目線。どうして優等生の私が問題児の彼にこんな目で見られなきゃなんだ。どう考えても逆じゃないか。
……それに、七色に光るゲーミング電柱から赤ちゃんを拾った、なんて言って信じて貰えるだろうか。
いや、絶対信じて貰えない。頭のおかしい彼に頭のおかしい奴を見る目で見られるだけ。
「えっと……し、親戚の子を急に預かることになって――」
我ながら苦しい言い訳だ。ゲーミング電柱よりはマシだけどこんな言い訳じゃ信じて貰える訳が――
「へぇ、迷惑な親戚も居るもんですね」
し、信じた……!?
いや、好都合だ、これは好都合! 赤ちゃんを泣き止ませて貰ったのは助かったけど、流石に同年代の男子、それも超ド級の問題児を家に上げてるこの状況は色々嫌!
ここはもう早急にお引き取り願おう! うん! そうしよう!!
「えっと、その……色々と助かりました、ありがとう……メンダコのキーホルダーも、お金払うから!」
「そんな良いですよ。僕がプレゼントしたいからこの子にプレゼントしたんです」
「そういう訳には――」
「細かい事は気にしちゃいけませんよ、酒寄さん……あぁ、ちゃんと新品ですしさっき一応消毒はしておきましたから。万が一赤ちゃんが口に含んじゃっても飲み込まなければ大丈夫だと思いますよ」
「そう言う事でもないんだけど」
いつの間に消毒なんて……いやまぁそういう安全性への配慮は凄い助かるけど。そう言う事じゃない。
ダメだ、この感じ多分どう言っても向こうの意見を通される。全然違うのにお母さんを相手にしてるみたい。
「っと、そろそろ引き時? 了解……まぁ、あんまり他所の事情に踏み込み過ぎてもアレですから、僕は帰りますよ」
そう言って、彼は玄関へと向かって靴を履い――やっぱデカいな月見君。身長2m30cmって、何食べたらそんなに大きくなるんだろう。
って思ってる場合じゃない。一応お世話になったんだから見送りくらいはちゃんとしなきゃ。
「えっと、改めて色々とありがとう」
「良いですよそんな。これからスゲェ苦労するだろうし」
トントンと靴を鳴らした月見君が玄関扉に手をかける。
「あぁ、そうそう。これで
「縁って……悪いよそんなの。わざわざ呼び出すのもだし連絡先も知らないし」
「連絡先なら大丈夫ですよ。隣に住んでるから、いつでも呼んで貰って大丈夫です」
……え? 隣……隣?
た、確かに今までずっと隣に誰が住んでるかは知らなかったけど……え?? 仮にも2年間クラスメイトだった相手が隣に住んでて気付かないとかありえる??
「じゃあ、そう言う事で」
「えちょ――」
「それともう一つ……親戚のゲーミング電柱さんにもよろしくお願いしますね」
イタズラっ子のような笑顔の月見君と目が合った。
なんとなく、笑ってる時はタレ目っぽくなるんだなぁなんて思っていると、そのままバタンと玄関の扉が閉まる。数秒して、隣の玄関の扉が開いて閉じる音。
本当に隣に住んでるんだとか、手助けの事とか、お金の事とか。
色々と言いたい事はあるけど――
「――見てたんなら最初から言ってよぉ」
もう疲れた。色々と言いたい事もあるけど。今日の所はもう寝よう。警察への通報はもう明日で良いや……。
それにもしかしたら、今夜の意味の分からないことは全部夢で寝て起きたら元通りだったりするかもだし――
「ふえっ、ふええええええええっ!!」
「わっ!? また泣き出し――メ、メンダコチャンダヨ~~……ダメだ泣き止まない……!」
また急に泣き出した赤ちゃん。月見君みたいにメンダコちゃんでの人形劇を試してみたけど泣き止まない。
アレでちゃんと赤ちゃんを泣き止ませるの上手だったんだ月見君って……!?
「えっとえっと、どうすれば……」
他に方法は無いかとスマートフォンを起動し、検索欄に”赤ちゃん 泣き止ませる”なんて入力して検索ボタンを押す。
検索結果に出てくる中でやれそうな事と言えば……
「子守歌……なんて、記憶にないよぉ……」
「ふええええええっ!! びえええええええっ!!」
「あーもうどうすれば――!?」
ふと、ヤチヨのアクスタが目に入った。
……ミムミムも言っていた。ダメで元々、人生はギャンブルだって。やってみる価値はある。
「――大切なメロディは流れてるよ~」
……。
……泣き止んだ。
……ヤチヨパワー、すげぇ~。
「やっ、おはようございます酒寄さん」
「……おはよう月見君」
朝、赤ちゃん用の諸々を買い出しに行こうと扉を開けたら、目の前に月見君が立っていた。
余りの大きさに一瞬声が出そうになったけど、流石に失礼かと思ってなんとか我慢した。身長2m30cmある人間は急に人の家の前に立っていちゃ駄目だと思う。
それに、昨日は夜なのと疲れてたのもあってあんまり意識しなかったけど、月見君の私服は滅茶苦茶怖い。どうしてそんなに全身にドクロが描いてある服なんて着てるの。あとなんで”DEATH”を”DETHE”に誤字ったシャツを着てるの。
というか何の用で――って、用自体は多分この赤ちゃんの事だろうけど。具体的には何の用で朝から来たんだろうか。
「何の用って顔してるね。これを渡しに来ただけですよ」
「わわっ……オムツ? それに粉ミルクまで……」
そう言って雑に渡されたのはビニール袋。そしてその中には赤ちゃん用のオムツと粉ミルク。それも新品――
「科学部の実験とかで使ったやつの余りです。ご入用じゃないかなって思って持って来ました」
「あ、ありがとう……?」
実験で使った奴の余りが新品な事があるのだろうか? 買いすぎた、とかなのかな。だとしたらそれって部費で買った奴だろうし、こうやって横流しするのはマズいんじゃ――
「ちゃんと自腹で買った奴ですから、横流しとかは心配しなくても大丈夫です」
「それなら……ってそれなら払うよ、お金!」
「大丈夫大丈夫。置き場所に困ってた物ですから。それにほら、言うじゃないですか。”ライダーは助け合い”って」
「それは知らないけど……」
「――どうか僕を助けると思って、お願いします!」
何故か助けてもらった側の私が頭を下げられてる状況。てかこれ傍から見たら結構酷い光景になってるんじゃ……!?
それとこう、上の目線から見下ろす月見君って意外と顔良いんだな……じゃなくて!
「そんな頭下げなくても――!!」
「――そう? それじゃあ、貰ってくれるんですね、ありがとう! 助かった! それじゃあ僕は用事あるのでこれで!!」
あっという間に頭を上げたかと思えば、笑顔で早口にお礼を言われて。かと思えば身軽に柵を乗り越えて飛び降り――
「えっ!? ここ2階ってもうあんな遠く……速すぎやろ……」
あっという間に遠くの曲がり角に消えた月見君。フィジカル強者が過ぎる。
はぁ……とりあえず、貰ったオムツと粉ミルクだけ家の中において、あとは服とか色々買いに行くことにしよう。
それにしても、赤ちゃんをあやすのが上手かったり、こうやって助けてくれたりする辺り、もしかしたら月見君は思ってるよりは怖い人じゃないのかも――
「うるせぇ~~!! 殺すぞ~~!!」
遠くから聞えてきた、滅茶苦茶聞き覚えのある叫び声。
「……やっぱり怖いかも」
声デカ……どうしてあんなに叫んでるんだ月見君。なにも意味がわからない。
「……あ、ゲーミング電柱の事とか言ったり聞いたりするの忘れてた……まぁいっか、隣に住んでるなら不本意だけどいつでも聞けるし言えるし」
とりあえず赤ちゃん関連の諸々を終わらせてから聞こう。今優先するべき事項はそっちだ。
『やっぱり敬語、似合わないねぇ』
「うるせぇ~~!! 殺すぞ~~!!」
月見万夜:学校では敬語+一人称僕。なお擬態が十分に出来てないせいで友人達(数人)にはバレてる模様。典型的問題児タイプの科学部部長。めっちゃ疲れた。
酒寄彩葉:ようやく出てきた、”超かぐや姫!”の超の方担当。今まで関わりが無かったと言うか、関わろうとしていなかった問題児が隣に住んでたし、ゲーミング電柱から赤ちゃんを拾ったりして未だに混乱中。
赤ちゃん:コイツこんな赤ん坊の頃からずっと可愛いんだな。by万夜
月見ヤチヨ:色々とノリノリだった。まずはこれが第一歩だと思ってる。ちゃんと輪廻が回っててニッコリ。