「懐かしいな、これ」
棚の奥から出てきた1冊のノートを開きながら、俺は小さく呟いた。
いつからそこにあったのか。
いや、しまったのは俺なんだから知っているはずなんだけど。
少しくたびれた表紙。
端の折れたページ。
ところどころ滲んだ文字。
綺麗に残していたつもりはない。
それでも捨てずに持っていたらしい。
「これ覚えてる?」
隣にいる妻へ、開いたページを見せる。
忘れているどころか、俺が忘れていた細かい部分までしっかり覚えていた。
「いやいや、そこまで覚えてんの怖いって」
失礼だと怒られた。
「褒めてる褒めてる」
褒めていない、と即座に返された。
結婚してからも、こういうところは変わらない。
たぶん、俺も人のことは言えないんだろうけど。
ページをめくる。
忘れていた出来事。
今でも覚えている出来事。
今になってみれば笑えること。
当時は笑えなかったこと。
どうでもいいような1日まで、そこには残っていた。
「……もう10年近く前か」
口にしてみると、思っていたより長い。
それでも、こうして読み返していると昨日のことの様に思える。
「……こんなことまで書いてたんだな」
それにしても忘れすぎだ、と言われた。
「しょうがないだろ。もう10年近く経ってるんだから」
言い返しながら、次のページをめくる。
忘れていたはずの内容も、
たった数行の文章なのに、その日のことが少しずつ蘇ってくる。
声とか。
顔とか。
空気とか。
どうでもいいことで笑っていたこととか。
今ならもう、二度と戻れない時間だと分かる。
でも、あの頃の俺はそんなこと考えていなかった。
明日も同じように誰かと会って。
くだらないことを話して。
たまに喧嘩して。
でも、また次の日になれば普通に顔を合わせる。
ずっと、そんな日が続くと思っていた。
読み進めている中、ふとあるやりとり思い出す。
「……そういえばさ、犬って――」
言いかけたところで、止められた。
「言い切ってないんだけど」
何を言おうとしたのか分かる、と返された。
「言わせてくれてもいいじゃんか……」
彼女は呆れたように笑った。
俺はまたノートへ目を戻す。
――そういえば。
全部の始まりは、どこだっただろう。
少し考えてから、俺は何枚かまとめてページを戻した。
まだ文字の少ない、最初のほうへ。
高校生だった俺が書いた、拙い記録。
そこには、今では当たり前に知っている名前がある。
けれど、この頃の俺は何が起こるかなんて知らない。
もちろん、あいつらも。
ページの端へ指をかける。
そして俺は、
最初のページを開いた。
はじめまして、やよなぎと申します。
まずはこの物語の最初の1ページを読んでいただき、本当にありがとうございます。
この作品の原型は、数年前から自分の中にありました。
大まかな設定や物語の構成は考えていたものの、それを小説として文章にすることに自信がなく、長い間形にできずにいた作品です。
今回その物語を形にするため、生成AI(ChatGPT)を制作に取り入れています。
物語の展開や設定については自分で考え、相談を重ねながら決めています。
本文についても、自分で確認・修正したうえで投稿しています。
何年も自分の中にあった物語をようやくこうして1つの作品として形にすることができました。
数年越しに始動したこの物語を最後のページまで見守っていただけたら嬉しいです。
長くなりましたが、改めてこの作品に出会ってくださりありがとうございます。
これからどうぞよろしくお願いします。