そして、最後のページには   作:やよなぎ

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1話 始まりの話をした日

「夜宵くん! 私たち、スクールアイドルを始めます!」

「……はい?」

 

放課後。

呼び出されたと思ったら、いきなりアイドルを始めると宣言された。

どうも、小鳥遊夜宵です。

……って、誰に挨拶してんだ俺は。

いや、それより。

 

「……スクールアイドル?」

「そう! スクールアイドル!」

「聞こえてる聞こえてる。店ん中なんだから静かにしろって」

 

身を乗り出してくる穂乃果の額を押し返す。

 

「穂乃果。まずは夜宵に事情を説明するべきでしょ

う」

「そうだよ、穂乃果ちゃん。夜宵くんにはまだ何も説明してないんだから」

「お、2人とも流石ー」

「えー! スクールアイドルだよ!? 分かるでしょ!」

「その情報だけで全部分かったら怖いわ」

「むぅ……」

 

頬を膨らませる穂乃果。

その横でことりがくすくす笑って、海未が小さくため息をつく。

昔から何度見たか分からない光景だった。

違うのは、今日の話題くらいだ。

 

「で、何があったんだよ」

「実は、音ノ木坂学院が廃校になるかもしれないんです」

「廃校?」

 

話を聞けば、音ノ木坂は入学希望者が減っていて、このままだと学校を存続させるのは難しいらしい。

 

「それで、入学希望者を増やすためにスクールアイドルをやろうってこと?」

「うん! 私たちがスクールアイドルになって学校を盛り上げれば、音ノ木坂に興味を持ってくれる人も増えると思うの!」

「なるほどなぁ……」

 

音ノ木坂、そんなことになってたのか。

 

「でも、なんでスクールアイドルなの?」

「夜宵くん、スクールアイドル見たことないの!?」

「名前くらいは聞いたことあるけど、ちゃんと見たことはないな」

「じゃあ、これ見て!」

 

待ってましたと言わんばかりに、穂乃果がスマホを差し出してくる。

画面に映っていたのは3人の女の子。

 

「A-RISEっていうの。すっごく人気なんだよ!」

「へえ」

 

高校生が学校でやっているアイドル。

正直、そこまで期待してなかった。

穂乃果が動画を再生する。

 

「…………」

 

想像してたのと全然違う。

歌もダンスも、詳しいことは分からない。

それでも、素人目に見てもレベルが高いことくらいは分かる。

気づけば、そのまま最後まで黙って見ていた。

 

「どう!? すごいでしょ!」

「……すげえな」

「でしょー!」

「これ、本当に高校生?」

「そうだよ!」

「マジか……」

 

もう一度、止まった画面を見る。

……これを、3人がやるのか。

スマホから顔を上げる。

穂乃果。

ことり。

海未。

 

「…………」

「何ですか」

「いや、別に」

 

海未の冷ややかな視線が刺さる。

 

「なぜ私を見たところで黙るのですか」

「気のせいだろ」

「気のせいではありません」

 

……誤魔化せそうにない。

 

「まあ、それは置いといて」

「置かないでください」

 

やっぱり誤魔化せそうにない。

 

「ごめん。やっぱ海未がアイドルは想像つかん」

「なっ…夜宵!」

 

穂乃果が吹き出して、ことりも口元を押さえて笑う。

怒る海未を横目に、俺も笑った。

 

「でもほんと意外だな。海未なら断ると思ってた」

「私も最初は断ったんですよ?」

「なんかあった?」

「まあ……色々と」

「そっか」

 

うん、これ以上は何も聞くまい。

 

「で、穂乃果」

「ん?」

「本気?」

 

穂乃果がまっすぐ俺を見る。

 

「うん!」

「そっか」

 

ほんの少し、間が空く。

 

「……応援してくれる?」

「当たり前だろ」

「ほんと!?」

「嘘ついてどうすんだよ」

 

3人が顔を見合わせて、嬉しそうに笑った。

……何より。

まあ、1人だけもう少し静かに喜んでほしいけど。

ここ店内だよ?

 

***

 

店を出ると、外は暗くなり始めていた。

 

「よーし! 明日から頑張るぞー!」

「穂乃果。その前にやるべきことをきちんと考えないといけませんよ」

「分かってるってー!」

「本当に分かっているのですか?」

 

前を歩く2人を見ながら、ことりがくすくすと笑う。

 

「練習もだけど、衣装も考えないとね」

「衣装かぁ。どうしよう?」

「私、作ってみたいなって思ってるの」

「ことり、作れるの?」

「うん。やってみたいなって」

「へえ、すげえじゃん」

「えへへ。ありがとう、夜宵くん」

 

ことりが笑ったまま、こっちを見る。

あ、すっごい嫌な予感がする。

 

「…………」

「何?」

「夜宵くんのも作ってみようか?」

「なんで?」

「え?」

「いや、なんで?」

「似合うと思うよ?」

「何が」

「アイドル衣装♪」

 

……やっぱり。

 

「私も見たい!」

「穂乃果まで乗るな」

「いいじゃん! 1回着てみようよ!」

「着ない」

「全く……穂乃果、ことり」

「う、海未……!」

 

やっと味方が現れたか……!

 

「それより、今は自分たちのやるべきことについて考えるべきです」

「それさっきも言ってたじゃん。てか助けてくれないんかい」

 

ことりが笑って、穂乃果もつられて笑い出す。

海未はそんな2人に呆れたような顔をしていた。

……頼むから、俺の衣装の話は忘れてくれ。

 




1話です。
読んでくださりありがとうございます。
次回もよろしくお願いいたします。
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