そして、最後のページには   作:やよなぎ

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2話 練習と準備

 

昼休み。

ことりからメッセージが届いた。

 

『今日ね、神社で練習するの』

『へえ、頑張れ』

『夜宵くんも来てよ』

『なんで?』

『練習するからだよ』

『理由になってないだろ』

『だめ?』

『……別にいいけど』

 

そう返すと、すぐに嬉しそうな返事が届いた。

 

***

 

放課後。

言われた通り神社まで来た。

境内へ入って少し歩くと、階段の辺りに3人の姿が見える。

どうやら、もう練習は始まっているらしい。

 

「あ……夜宵くん……」

 

階段の上で、ことりがこっちに気づいた。

 

「来て……くれたんだ……」

「来てほしいって言ったの、お前だろ」

「えへへ……そうだけど……」

「夜宵く〜ん……」

 

今度は穂乃果が、今にも地面に溶けそうな声を出す。

……いや、声だけじゃないな。本人も地面と一体化しかけてる。

 

「……何してんの?」

「見れば分かるでしょ……休憩……」

「いや、それは分かるんだが」

「なら聞かないでよぉ……」

 

その地面一体化はなんとかならんか。

 

「2人とも、休憩は終わりです」

「えぇ〜!?」

「もう少しだけぇ……」

「駄目です」

 

海未だけは、まだ余裕がありそうだった。

 

「夜宵くんからも言ってよ〜!」

「俺に言われてもな」

「裏切り者ぉ……」

 

何に対する裏切りなのかは知らない。

 

「では、もう1本行きますよ」

「うそぉ……」

「ことり、立ってください」

「はぁい……」

 

2人がどうにか立ち上がり、海未と一緒にまた階段へ向かっていく。

俺はその場に残って、その後ろ姿を眺めた。

……めっちゃきつそう。

 

「あの3人、頑張ってるみたいやね」

「……?」

 

不意に聞こえた声に振り返る。

巫女服を着た女の人が、少し離れたところに立っていた。

 

「……そうですね。だいぶ疲れてますけど」

「ふふ、それでもちゃんと続けてるやん」

 

そう言って、彼女は階段を走る3人へ目を向ける。

 

「君、あの子らの知り合い?」

「幼なじみです」

「へえ、幼なじみなんや」

「あっ自己紹介まだやったね。ウチは東條希。音ノ木坂の3年やよ」

「小鳥遊夜宵、2年です」

「よろしくね、小鳥遊くん」

「こちらこそです。東條さん」

 

東條さんは、また3人の方を見る。

少しして、こっちへ視線が戻ってきた。

 

「ところで、小鳥遊くんは一緒にやらへんの?」

「いや、俺は見に来ただけです」

「そうなん?」

「そもそも俺、アイドルじゃないですし」

「う〜ん。いけるんちゃう?」

「なにがいけるんですか」

 

東條さんが小さく笑う。

その向こうでは、穂乃果がまた地面と一体化しかけていた。

……ことりも一体化しそうになってる。

どうなってんのあれ。

 

「なあ…あれどうなってるん?」

「……こっちが聞きたいですよ」

「面白い子たちやなあ」

 

東條さんは、もう一度3人の方を見る。

 

「じゃあ、ウチはそろそろ行くな〜」

「はい」

「小鳥遊くんも練習、頑張ってな」

「だから俺はやりませんって」

「ふふ。ほな、またね。小鳥遊くん」

「……はい。また」

 

軽く手を振って、東條さんは歩いていった。

その後も、俺は3人の練習をしばらく眺めていた。

穂乃果とことりは何度も限界を迎えていたけど、それでも最後まで走っていた。

本当に始めたんだな。

そんなことを、改めて思った。

 

***

 

練習が終わり、4人で神社を出る。

さっきまであれだけ疲れていた穂乃果とことりも、少しは回復したらしい。

 

「そういや、練習以外はどうなってんの?」

「練習以外?」

「曲とか衣装とか」

「衣装ならね、もう考えてるよ」

「もう?」

「うん♪ ほら」

 

ことりが鞄からノートを取り出して、俺の前で開く。

そこには、衣装の案らしい絵がいくつも並んでいた。

 

「この前言ってたの、これか」

「うん♪ どう?」

「アイドルっぽい」

 

再度ノートに目を落とす。

思っていたより、ずっと本格的だった。

 

「それでね」

「ん?」

 

ことりが楽しそうにページをめくる。

 

「こっちが夜宵くんの♪」

「…………」

 

そこには、どう見ても俺が着ることを想定した衣装の案が描かれていた。

 

「なんであるんだよ」

「ふふっ、冗談だよ〜」

 

いや、案まで描いてるし。

冗談に聞こえねえ。

 

「着てくれる〜?」

「……で、他は?」

「…………」

 

ことりがじっとこっちを見る。

 

「……歌詞は海未ちゃんが考えてるんだよ」

「海未が?」

「はい」

「ああ、そういや中学の頃も――」

「夜宵」

「はい」

「それ以上は言わなくて結構です」

「まだ何も言ってないけど」

「言おうとしたでしょう」

「何のことやらさっぱり」

 

横を見ると、穂乃果とことりが揃ってニヤニヤしていた。

 

「……なんですか、2人とも」

 

2人はずっとニヤニヤするだけで何も答えない。

海未の顔がさらに険しくなった。

 

「それで、あとは曲なんだけどね!」

 

何事もなかったみたいに穂乃果が話を戻す。

 

「作ってほしい子がいて、お願いしてるんだ」

「へえ」

「1年生の子なの!すっごい歌上手なんだよ!」

「へえ、それで作ってくれそうなの?」

「それが……1回断られちゃって」

「断られたのか」

「うん。でも、もう1回お願いしてみる!」

「そっか。作ってくれるといいな」

「うん!」

 

そこからも、3人の話はしばらく続いた。

衣装のこと。歌詞のこと。これからの練習のこと。

まだ始まったばかりなのに、話したいことは山ほどあるらしい。

俺はそれを聞きながら、3人と並んで帰った。

次に会う頃には、また何か増えているのかもしれない。




2話です。
読んでくださりありがとうございます。
AIを活用しても、中々上手く作れない自分の力不足をすごく感じています。
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