WORLD TRIGGER ~Change The World~   作:S'PADE

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第1話 幕開

●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○

 

 

三門市に初めて異世界の(ゲート)が開いたのは4年半前。異世界からやってきた侵略者は後に近界民(ネイバー)と呼ばれ、三門市全体を恐怖に包み、街を壊滅へと追い込んだ。

そんな危機的状態の中現れたのは界境防衛機関『ボーダー』。彼らは街を襲った近界民(ネイバー)を退け三門市を恐怖から解放した。

彼らはその後わずかな期間で巨大基地を作り上げ近界民(ネイバー)の防衛対策を整えた。

 

 

それから、時は流れ……

 

 

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「…暇だ」

 

とあるビルの屋上で一人の青年が寝そべりながら呟く。

 

「任務がないのはいいが、こう何もすることが思い浮かばないのいかがなものかな」

 

暇を持て余しているこの青年の名は南條 昴(なんじょう すばる)、19歳。界境防衛機関『ボーダー』に属する隊員である。

 

 

「何でこんな日に限って、誰誘っても予定があんだよ。迅なんてぜってー暇なくせに、何が"今日は忙しいんだ"だよ。あの似非実力派エリートが」

 

この場にいない同僚の隊員の名を挙げ悪態を付くのはいささかどうかと思うが、彼から言わせれば"あいつにはこれぐらいの扱いが丁度いい"らしい。

 

「そういや昨日陽介が変なこと言ってたっけ…」

 

体を起こした昴は昨日本部に赴いた際に後輩に聞いた話を思い出す。

その後輩の話によると昨日警戒区域内に大型近界民(ネイバー)が現れたが、後輩の所属する隊が現着した際には既に大型近界民(ネイバー)は撃破されていたらしい、しかしも現場に他の隊員の姿はなく、オペレーターの話では後輩の隊が一番手のようであり、先着した隊はなかったらしい。さらに不思議なことにその近界民(ネイバー)を撃破したトリガーはボーダーのどのトリガーでもなかったみたいだ。

 

「ボーダーのトリガーでないとするともしかして…」

 

「おい、昴…こんなとこにいたのか」

 

そんな時昴に声を掛ける人物が現れる。

 

「ん?なんだ静也か」

 

振り返るとそこには昴の同僚である御影 静也(みかげ しずや)の姿があった。

 

「お前ら今日防衛任務じゃなかったのか?」

 

「それは夕方からだ。それまでは各自自由時間だと昨日も話していたはずだぞ」

 

「マジか!?全然聞いてなかった」

 

いつものことながら昴の態度に呆れて頭を抱える静也ではあるがそれも半ば諦めかけているようである。

静也は昴の横に腰掛ける。

 

「昔から全く変わらないなお前は…変なところで抜けているのに任務には人一倍取り組んでいる」

 

入隊時期こそ昴の方が早いが、同い年で同じ部隊に所属していたということもあり静也は昴と行動を共にすることが多かった。

 

「あはは…それこの間迅にも言われたよ…それより防衛任務は夕方からなんだろ、それまでどっか行かないか?」

 

「悪いがこれからバイトなんだ…また今度な」

 

「んだよお前もバイトかよ…玉狛の京介もバイトだって断れたし最近のボーダー隊員はバイトをするのがブームなんですか」

 

不機嫌になる昴に対して静也は笑みを浮かべ

 

「京介は家庭の為だって話だろ…俺は短期のバイトなんだよ。ちょっと買いたいものがあってな」

 

「ほほー"彼女"へのプレゼントか何かですか?」

 

静也の目的を理解した昴は不機嫌な様子から一転してニヤニヤとしだして静也のわき腹を突いていく。

 

「そんなところだ…バイト代が余ったら今度何か奢ってやるから今日は勘弁してくれ」

 

「ホントか!サンキュー静也…そういうことなら仕方がない今日はバイトに励んでくれたまえ」

 

「現金なヤツだな…それと聞いていると思うが最近イレギュラー(ゲート)の発生が多発している。出歩くのはいいが十分警戒しておけよ」

 

「分かってるって。てか俺の心配するなら自分の心配しておけよ…それより他の連中はどうしたんだ?」

 

昴はここにいない他の隊員の所在を尋ねる。

 

「全員支部(ここ)にはいない。巽は俺が起きた時には既に支部にはいなかったし…綾子は学校、円さんはいつものように支部長と一緒に本部に出向いている」

 

「んだよ!みんな忙しいってか」

 

他の同僚の不在を知り残念がる昴…どうやら支部に在籍していた場合は暇つぶし相手にと考えていたようだ。

 

「それとこれはさっき本部に行った際に嵐山に聞いたんだが、どうやら昼頃に警戒区域外の中学校にモールモッドが出現したらしい」

 

それを聞いた昴も驚愕の様子を見せる、それもそのはずモールモッドは戦闘能力が低い一般的な近界民(ネイバー)であるバムスターとは違い、戦闘能力が高く好戦的なタイプの近界民(ネイバー)である。

 

「警戒区域外にモールモッドが!?それで被害状況は?」

 

「いや、現場に嵐山隊が現着した際には既にモールモッドは撃破されてたらしい。どうやら撃破したのはC級隊員らしいぞ」

 

「マジかよ…バムスターならまだしも、モールモッドのあの硬い装甲を訓練用のトリガーで倒すとは…そのC級隊員はよほど腕がいい隊員なんだろうな」

 

腕組みをしながら"これでボーダーの将来は安泰だな"などと呟いている。

 

「まぁC級隊員が無許可でトリガーを使用したことでどうやら処罰の対象となったらしいがな」

 

「へぇー…でも嵐山がその場にいたなら頭ごなしに処罰って…」

 

「木虎が抗議したらしい」

 

「あーあ…納得した」

 

昴の言葉を遮った静也の言葉に昴は即座に同意した。

 

「そういうことで今日中に本部に呼び出しだそうだ。まぁ被害にあった中学に嵐山の弟と妹が通ってたらしいから嵐山は随分そのC級隊員に恩を感じてるみたいだったぞ、少しでも処罰が軽くなるよう尽力すると嵐山は言っていたしな」

 

「あのブラシスコン隊長め…ちなみにそのC級隊員の名前は?」

 

「確か…三雲 修(みくも   おさむ)だったかな」

 

「三雲修か…」

 

昴が何か考えてるようだが、静也の方は時計を見てバイトの時間が近づいているのか、立ち上がると扉のほうへ振り返る。

 

「さっきも言ったがお前も十分警戒をしておけよ」

 

「だから俺は大丈夫だって。俺の実力はよく知ってんだろ」

 

昴のその言葉に静也は柔らかい笑みを見せ"…そうだったな"と呟き屋上を後にした。

静也が出て行った扉の方を見ながら昴は、

 

「ふむ…あいつがモテる理由がなんとなく分かるな」

 

昴がこう思うのも無理はなく実際に静也は物腰柔らかい振る舞いでバイト先でもかなり人気があるようであり、静也に注文を取って貰いたいがために女性客が無駄に注文をする、バイトの女性スタッフは静也と同じシフトに入るための壮絶な争いが裏で行われているといった話があるのだが、もちろん当の本人には既に意中の相手がいるためどこ吹く風といった様子である。

…と言うより気付いていない。

 

そしてそれはここにいる昴にも言えることなのだが、もちろん本人は気付いていない。

 

 

 

静也が屋上を去ってからしばらく経ったところで昴はまた呟く

 

 

 

「…暇だ」

 

冒頭の状況と同じく再び寝そべり空を見上げていた。

昴が本日休暇を与えられた理由(わけ)としては所属している支部の中で誰よりも働き、ほぼ休みなく任務をこなし続けていたのを見かねた支部長が昨日から無理やり休暇を命じたためである。

いきなり与えられた休暇に戸惑い、とりあえず知り合いに一しきり連絡をするが、不運なことに全員に断られてしまったため、現在の状況が完成してしまった。

 

昴はため息をつきつつ目をつぶる。

 

 

「…近くに誰かいるか視てみるか(・・・・・)

 

 

昴が意味深なことを呟いたと思ったら、

 

「んっ?木虎じゃん」

 

木虎とは先程の話題にもあがった嵐山隊に属している木虎 藍(きとら あい)のことである。

彼女はまだ中学生ながら既にA級隊員というボーダーの中でも有数のエリートであり、昴も何度か一緒に訓練をしたことがある。

 

木虎の発見を昴は好機と捉え、彼女に声を掛けるべく急ぎ屋上を後にした。

 

「おーい、木虎!」

 

彼女の姿は隊服ではなく学校指定の制服であり、どうやら任務ではないようである。

自分を呼ぶ声に気付いた木虎が昴の方へ振り向く。

 

「え!?な、ななな南條さん!!」

 

「なんだよ、そんな驚くことないだろ」

 

木虎のあまりの驚きように昴は若干ショックを受ける。

 

「い、いえ別にそんなんじゃ」

 

ほんのり顔を真っ赤に染めた木虎が必死に否定する。

 

「まあいいや、木虎は何やってたんだ?」

 

「は、はい!私は先程のイレギュラー(ゲート)発生の際に規律違反を犯したC級隊員を本部まで見張りに行くところです」

 

木虎のあまりにも堂々とした宣言に昴は数秒呆気に取られてしまうが、すぐに我に返る。

 

「ごめん木虎…俺少し耳が遠くなった気がするからもう一回頼む」

 

「私は規律違反のC級「ごめん…やっぱいいや」…」

 

どうやら聞き間違いではなかったらしく木虎の言葉を遮る。

 

「木虎…C級隊員を本部まで見張るってそのC級隊員が逃げるって思うのか?」

 

「簡単にボーダーの規則を破る隊員の言葉を信用できません。彼はもう少し自分の立場を自覚するべきです」

 

昴はやれやれと言った表情をする。

この少女木虎藍…昴の中では決して悪い印象は全くなくむしろ素直で真面目な優秀な後輩だと思っている。それと同時にその真面目さが今後仇とならないか昴は心配していた。

 

「(木虎にはもう少し柔軟な思考が必要なんだがな…)」

 

しかし昴はそれを決して口にしない。それは木虎が自分で気づかなければいけないことだと考えているからだ。

 

「てことは今から昼のイレギュラー(ゲート)が発生した中学に行くのか?」

 

「はい」

 

「それ…俺も行っていいか?」

 

「へ!?」

 

昴の一言に今度は木虎が呆気に取られてしまうことになった。

 

「だから…俺も一緒にそのC級隊員の中学に行ってもいいか?」

 

木虎の脳内では今の昴の台詞がリピートされていた。特に"一緒に"の部分を強調して。

 

「ええ、えーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

あまりの驚きについ柄にもない大声で叫んでしまう。

 

ここまでの会話で分かるように木虎は昴に憧れている。正確には憧れの先輩は2人いてその一人が昴だ。昴に対して憧れ以上感情を抱いているかは木虎自身もまだ分かっていない、それはもう一人の憧れている先輩にも同様の感情を抱いているからだ。そんな尊敬する先輩と2人っきりで一緒に歩くと考えるだけで木虎は心臓が張り裂けそうになるような思いでいっぱいであった。

 

「お、おい木虎…そんな大声出すことないだろ」

 

「すすすすすいません」

 

真っ赤にしながら何回も頭を下げ謝ってくる木虎に昴は可笑しくなったのか笑みを見せる。

 

「あはは…木虎にしては珍しいとこ見れたな」

 

「もう!からかわないでください!」

 

「悪い悪い、それで…俺も同行していいか?」

 

その言葉に木虎は再度頬を染め、

 

「はい…よろしくお願いします」

 

こうして二人は先の大型近界民(ネイバー)撃破のC級隊員三雲修が通う三門市立第三中学校へと向かった。

 

 

●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○

 

 

三門市立第三中学校校門前

 

 

現在二人は校門前で三雲の到着を待っているのだが、学校指定の服を着ていない人間が校門の真ん中に立っているという構図は目立つことこの上なく、すれ違う生徒が二人の横を通る度にチラチラと視線を向けてくる。

 

「なぁ木虎…俺ら目立ってないか?」

 

「ええ、そうでしょうね…私は嵐山隊としてボーダーの広報活動やテレビにも出演してるので顔が広まっているのでしょう」

 

通り過ぎる生徒からは"ボーダーの木虎藍だ"という声が多く、その場に立ち止まって様子を伺っている生徒も少なくない。

 

「じゃあ俺は!?俺はテレビに出てないけど、なんかさっきから俺の方見ながらヒソヒソ話してる女の子がたくさんいるんだけど!!」

 

「…南條さん…どれだけ鈍いんですか?」

 

「はぁ?」

 

木虎の呆れた様子に昴は意味が分からないと言った表情をするが、もちろん昴は道行く女子生徒が昴に見とれていたことには気づいていない。

 

「あのぉ…写真撮ってもいいですか?」

 

一人の女子が木虎に話しかけてくる。

 

「あー悪いけどやめてくれる?写真とかそういうの正直迷惑なの」

 

パシャリ

 

そう言いつつもシャッターを切られた木虎は儚げな表情を浮かべしっかりとポーズを決めていた。

 

「木虎…何やってんの」

 

そんな木虎の姿に今度は昴が呆れる番であった。

 

「何やってんだ?こいつ…」

 

「ん?」

 

昴とまったく同じことを呟いた声が聞こえたので見てみると、そこにはメガネをかけた少年と白い髪に中学生にしては身長が低めの少年がこちらを見ていた。

 

「はっ…!!」

 

二人を見た木虎は慌てだし始め、昴はこの少年のどちらかが三雲修であることを確信した。

木虎はコホンと一呼吸置き、

 

「…待ってたわ…三雲くんだったわね。私はボーダー本部嵐山隊所属の木虎藍。本部まで同行するわ」

 

木虎のその言葉に周りの生徒は何を勘違いしてるのか"三雲先輩すげー"だの"さすが三雲先輩"と賛辞声が聞こえる。

 

「俺は南條昴だ。一応俺もボーダー隊員だから、君が三雲くんか?よろしくな」

 

昴はメガネの少年に握手を求める

 

「あっ、はい!三雲修です…よろしくお願いします」

 

そう言うと修も昴の握手に答える。

 

「それで…そっちの君は?」

 

三雲との挨拶を終えると昴はもう一人の少年へと視線を移す。

 

「おれ?おれは空閑 遊真(くが ゆうま)。オサムのクラスメイトだよ」

 

「空閑くんね、さっきも言ったが俺は南條昴だ…よろしくな」

 

先程の修の時と同じように昴は遊真にたいしても握手をするため手を差し出す。

 

「遊真でいいよ。よろしくな南條さん」

 

遊真も修と同じように握手に応じる。

 

「(こいつ…なるほどそういうことか)そうか…それじゃあ俺のことは昴と呼んでくれ、遊真。それから修も」

 

「…ちょっと南條さん!!呑気に挨拶なんかしてる場合ですか!?」

 

木虎が慌てて話を戻そうとする。

 

「分かってるって…じゃあ修は俺らといっしょに本部へ行こうか」

 

「は、はい!」

 

この言葉をきっかけに本部へと3人は歩き出した。後ろから遊真もそれに続いている。

 

 

●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○

 

 

「言っておくけどこれはエスコートじゃないわ。私はあなたが逃げないためにこうして見張りにきたの」

 

ボーダー本部への道中に木虎が修へそう告げる。

 

「いや…修だって別に逃げようとは思ってないだろ…なぁ?」

 

「はい」

 

昴は修を擁護すると修もそれに同意する。

 

「甘いですね南條さん…こういうことは例外を認めてしまっては他のC級隊員に示しがつきません。三雲くんはしっかりと自分の立場を自覚するべきなんです」

 

「またそれかよ…とにかく処分は上が決めることだ。俺らが決めることじゃない、嵐山や時枝(とっきー)にも同じこと言われなかったか?」

 

「それは……」

 

昴の言葉に木虎は黙ってしまう。なぜなら昴が名前を挙げた先輩にまったく同じこと言われたからである。

 

「とにかく本部へ行こう…それにしても修は腕がいいな。C級隊員のトリガーで大型近界民(モールモッド)を倒すには相当のトリオンが必要だし、何よりそんな条件で動いている相手への正確な攻撃はA級隊員でも中々難しいからな」

 

「い、いやあれは…」

 

「まぁ安心しろよ修…そんな腕のある隊員ならボーダーとしても無碍にはしないだろうし、嵐山も上へ掛け合ってくれてるんだ、大丈夫だろ……多分」

 

途中までは頼もしく聞こえた昴の言葉であったが最後の一文によってその期待は脆くも崩れることとなってしまったため、修は気落ちしてしまう。

 

「三雲くん…あなた少し活躍したからってあまり調子に乗らないほうがいいわよ」

 

「別に調子になんか乗ってないよ」

 

「あなたは私たちよりも近くに現場に居ただけ、あなたがいなかったとして私たちの隊があの場を収めていたわ」

 

修へと指を差し木虎は自信満々に宣言する。

 

「いやいや、ムリだから」

 

「ああ、俺もそう思う」

 

そんな中に割り込んだのは遊真と昴であった。

 

「なっ!?」

 

「おれは近界民(ネイバー)が出た時学校にいたけど、お前らを待ってたら確実に何人か死んでたから。おまえはもっとオサムに感謝するべきじゃないか」

 

「部外者は黙ってくれる」

 

「俺は現場の状況は聞いた話しか知らないけど、あの中学と本部は結構な距離もあったし、嵐山隊の到着を待っていたら確かに被害はもっとすごかったと思うぞ」

 

「そんな南條さんまで…」

 

遊真に言われたことよりも昴に自分の考えを否定されたのがショックだったのか木虎は俯いてしまう。

 

「…けど、ボーダーにC級隊員が許可なくトリガー使用を禁止するってルールがあって修がそれを破ったのも事実だ。木虎の言う通り修が処分を受けるのは当然だとも思う」

 

「南條さん…」

 

昴が自自分の考え全てを否定したわけではないと知り、木虎は少し安心する。

 

「遊真も友達が悪く言われるのは腹が立つかもしれないが木虎の言い分も分かってやってくないか」

 

ポンと遊真の頭に手を乗せ、昴は優しく撫でながら遊真へと告げる。

 

「ふむ…昴さんがそこまで言うなら」

 

「サンキュー。木虎ももうつまんないプライドで修に突っかかんな」

 

木虎がなぜ修へと絡むのかを理解していたうえで昴は木虎へ忠告する。

 

「私は……はい…分かりました」

 

木虎の同意に昴はニコリと微笑むと、

 

「それでよろしい…ああそうだ修には言っとくけど今日の近界民(ネイバー)のことだけど…」

 

「そのことなんですが…どうして学校に…警戒区域の外に近界民(ネイバー)が出現したんですか?」

 

「ああ、それなんだが…木虎、説明を頼む」

 

「…どうして私が…それに」

 

木虎は遊真の方をチラリと見る。

 

「遊真は被害者だ。聞く権利ぐらいあるだろ」

 

「…分かりました。詳細はまだ不明なんだけどどうやら最近ボーダー基地の誘導装置が作動しないイレギュラー(ゲート)が発生しているみたいなの」

 

「…イレギュラー(ゲート)!?」

 

木虎言葉に修は驚きの表情を見せるが木虎は構わず続ける。

 

「今日の事以外にもイレギュラー(ゲート)の発生は6件確認されているわ…まぁどれも近くに非番の隊員がいたから犠牲者は出なかったけど、この先はどうなるかは分からない」

 

「(なるほど…イレギュラー(ゲート)はどれも近くにボーダー隊員がいる場所で発生しているのか…近くで視た(・・)わけじゃないから、確信はないけど、イレギュラー(ゲート)発生の原因はなんとなく掴めた)」

 

「今この三門市はいつどこに近界民(ネイバー)が発生してもおかしくないのよ」

 

木虎が修へそう告げたその瞬間、

 

 

 

ウウーーーーーーーーーー

 

(ゲート)発生を知らせるサイレンが鳴り響き、4人は一斉に空を見上げる。

 

"緊急警報 緊急警報 市街地に近界民(ネイバー)が発生しています 市民の皆様は直ちにに避難してください 繰り返します 市民の皆様は直ちに避難してください"

 

ボーダーの緊急警報が聞こえるのと同時に上空に(ゲート)が開き、中から巨大な近界民(ネイバー)が現れる。

 

視えた(・・・)

 

近界民(ネイバー)の出現すると昴がそう呟く。

 

「何あの近界民(ネイバー)!?あんなの見たことないわ」

 

どうやら昴も木虎も現れた近界民(ネイバー)を知らないらしい。

 

現れた近界民(ネイバー)は空を飛びながら街の方へと進行し、腹部から何かを落とすと地面に落下した瞬間に爆発した。

その爆発によって街は爆撃に巻き込まれ建物が倒壊を始め、市民はたちまちパニック状態となってしまった。

 

「ほかの部隊を待つわけにはいかないわね…私が行くわ」

 

「ぼくも行く」

 

木虎の言葉に修も続く。

 

「あなたまた出しゃばるつもりなの!そもそもあなたに何ができると言うのよ」

 

「それは後で考える」

 

『トリガー起動(オン)

 

二人が叫ぶと二人の体が通常の体からトリオン体へと入れ替わる。

 

『トリオン体』

それはトリオンで構成された戦闘用の体。この体の時はトリオン以外の攻撃はほとんど受けず、身体能力も通常の体よりも格段に強化される。

 

「えっ!?武器が出ない」

 

「修は学校での戦闘でトリオンを消費しすぎたようだな…修はこの戦闘時に武器を作ることは多分無理だ」

 

昴が冷静に修の状況を分析し忠告する。

 

「そこでおとなしくしてなさい。あの近界民(ネイバー)は私が始末するわ」

 

「待て!木虎…相手は未知の近界民(ネイバー)だ。俺が行く」

 

「大丈夫です。私はA級隊員です…南條さんは市民の救助へ向かってください」

 

昴へそう告げると木虎は近界民(ネイバー)への進撃を開始した。

 

「あのバカ…そういうとこがお前の悪いとこなんだよ」

 

木虎の姿が確認できなくなると昴は頭を抱える。

 

 

 

 

「…昴さん、オサムあれを見ろ」

 

横で傍観していた遊真が別の場所を指さす。

 

「おいおい…ウソだろ」

 

そこには別の(ゲート)が開きそこから修と遊真の学校を襲った近界民(ネイバー)のであるモールモッドが5体出現していた。

 

「なんでこの場所にイレギュラー(ゲート)が2つも…」

 

修は予想がつかない事態にパニックになっている。

 

「落ち着け修!C級隊員でもお前はボーダーの一員なんだ…こんな時こそまずは自分のやるべきことを見極めろ!!」

 

「昴さん…」

 

昴の叱咤に修も幾分か冷静さを取り戻す。

こうしている間にも現れたモールモッドは街の破壊を始めている。

 

「確かに木虎の言う通りほかの部隊を待つ余裕はない。あっちは俺が行く…修はすまないが、街の人の救助へ向かってくれ…遊真はどこか安全な場所へ避難するんだ」

 

「は、はい!」

 

修は昴の指示を受けると街の方へと走り出し遊真もそれに続いて走り出す。

それを見送ると昴は上空を見上げ近界民(ネイバー)の状況を確認する。

そこにはたった今近界民(ネイバー)の背中に着地した木虎の姿もあった。

 

「数が複数いる分まずはモールモッドの撃破が第一だ。木虎のカバーに入るのはその後だな」

 

昴は自分のやるべきことを再確認し一目散に暴れているモールモッドへと走り出す。

 

「まったく…せっかく貰った休暇が台無しになっちまったな…」

 

そう苦笑いを浮かべた昴は黒いトリガーホルダーを取り出し呟く。

 

 

「トリガー起動(オン)

 






ワールドトリガー始めました。
時々意味が分からないところもあると思いますが、
生温かい目で見ていただくと嬉しいです。

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