衛宮士郎がサーヴァントとしてジェラルドを召喚する話。   作:夏目陽光

2 / 2
序章

二〇〇四年、二月。

既に、太陽は地平線に溶けた暮れ頃。

開けっぱなしの扉から月光が差し込む、土蔵の中。四つん這いの俺に近づく青タイツの男が問いかける。

「そら、これで仕舞いだ」

男の持つ赤い槍が迫り、

「うおぉぉ!」

咆哮と共に、強化魔術を施したポスターで、その槍の一撃を防ぐ。しかし、強度が足りずにポスターが貫かれ、男が振るう槍の勢いのまま、壁に吹き飛ばされる。

その衝撃で、俺の口から力無く息が漏れ、床に尻餅をついて、持っていたポスターが手から離れた。

もう一度、ポスターを握ろうとした時、

「今のは少し驚いたぜ。坊主。

お前さん。七人目のマスターだったのかもな」

目の前に立つ男が槍を突き出した。世界がスローモーションに映る。赤い閃光。

死を覚悟して、昔に交わした、じいさんとの約束を思い出し、

「…俺はまだ、こんな所で」

と後悔が漏れた。

それに呼応して思考が引っ張られ、不条理だと怒りが込み上げる。

そうだ、何も成してないのに、こんな終わりは間違っている。

俺の胸を槍が貫く直前、ガギンと音が鳴る。

「え?」

それはきっと、奇跡だった。

「何!?」

俺の背後から現れたそいつは、大男としか分からない。

鈍い金属音が響き、俺の目の前の槍を振り払い、間髪入れずに俺と男の間に挟まり、睨み合う。

「まさか、七人目のサーヴァントだと!?」

弾かれた槍を構える男と右手の片手剣を握る大男。

先程の槍を薙ぎ払った影響なのか、大男の片手剣が欠けた。

瞬間、ブシャッと槍を持った男の腹が裂け、青タイツが血で汚れる。

それを不利と悟ったのか、目にも止まらぬ速さで男は土蔵の外へ、飛び出していった。

撤退する男を警戒しつつも、それは、豪快に振り返える。

風に流され、雲一つ存在しない夜。土蔵に入る月明かりが照らすそいつは、何処かで読んだ本の戦士に似ていた。

大男は、羽の付いた仮面の中の瞳で俺を見据え、

「問おう。貴様が我のマスターか」

力強い声で、そう言った。

「…マスター?」

いきなりの事で、状況が飲み込めず。

彼が何を言っているのか、分からなかった。

大男は逡巡し、

「サーヴァントアーチャー、召喚に応じ参上した!我が名、ジェラルド・ヴァルキリー!

マスターよ、案ずるな!貴様の敵は我が屠ってくれよう!」

上半身の裸を覆う、赤いマントを風ではためかせ、声を張り上げる。

彼の言葉に戸惑っていると、左手に焼きつく痛みが走り、手の甲を右手で押さた。

苦痛に悶える俺の姿を一瞥した後、大男は背を向け、扉に向かう。

「いきなり、何を言ってるんだ」

俺の一言は、ーー彼の背には届かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。