衛宮士郎がサーヴァントとしてジェラルドを召喚する話。 作:夏目陽光
サーヴァントとは、何なのか。
ただの魔術使いである、衛宮士郎は何も知らなかった。彼に出来ることは少なく、強化魔術と空間把握の魔術だけ。
ジェラルド・ヴァルキリーと名乗るそいつは、自分を守った。それだけで、彼が何者でも構わない。
土蔵の扉に寄り掛かり、息を整え静かに呟く。
「
握っているレンチがジジと音が鳴り、1回、緑色に明滅した。
衛宮邸の庭。
土蔵の外で、対峙する青と赤。
方や、顔上部を北欧の仮面を付け、金髪のロングヘアー。
裸の上半身を赤いマントで覆い、左腕に盾を持ち、右手に欠けた片手剣を握る、2メートル超えの大男。
もう一方は、野生味を感じる赤い瞳で大男を見据え、首元まで伸びる青髪を結んだウルフカット。
全身を青タイツで装い、金属の肩パッドを付け、両手で真紅の槍を握り締める、約185センチメートルの男。
その二人による、人智の理外が目の前で、繰り広げられていた。
「ほう、よく逃げなかったではないか。ランサー」
アーチャーがそう言って、
「アーチャー。…貴様の剣、因果を遡る宝具か」
傷を負ってる筈なのに、苦もなくランサーが槍を構え、言った。
「我は奇跡の体現者。民衆の希望を束ねて剣と成した、この希望の剣を敵が傷つければ、相応の絶望を与える。まさに、奇跡!」
アーチャーの体に魔術回路にも似た、青白いラインが走り、ランサーに大振りで斬りかかる。
「そうかよ、アーチャー!」
ランサーは先程受けたカウンターを警戒し、槍で片手剣を逸らす事に終始する。
二人の拮抗が崩れたのは、数回、アーチャーの攻撃をいなしている時だった。
ランサーは何事かに耳を傾け、
「悪いな、アーチャー。俺のマスターは臆病でな。ここまでだ」
ランサーはそう告げると、獣の如き速さでアーチャーから離れ、指で大地にルーン文字を書く。
その瞬間、衛宮邸を眩い閃光が照らす。
アーチャーは左腕の盾で顔を隠し、怯む。
その隙を見逃さず、ランサーは霊体化をして離脱していった。
彼はランサーを追う事は無く、盾の裏に片手剣を仕舞うと一度、長く息を吐き。再度、大きく息を吸う。
そして、星々の光跡が満ちる夜空を見上げ、
「我はジェラルド・ヴァルキリー!此度はアーチャーのクラスで召喚された!次こそは決着を望むぞ!ランサー!」
雄叫びを上げる。
赤髪の少年が土蔵から庭に出て、アーチャーに近づき、
「……アーチャーで、良いんだよな?その、助けてくれてありがとな」
頬を掻きながら、感謝を伝えた。
セイバー。
アーチャー。
ランサー。
ライダー。
キャスター。
フォーリナー。
バーサーカー。
斯くして、冬木の地に7騎のサーヴァントが出揃い、第五次聖杯戦争が幕を開ける。
冬木の寺。
山門に座る者、一人。
紅色の器に漆黒を注ぎ込む。
顎髭を撫で、
「すまんのぉ。すまんのぉ」
ひたすらに謝っていた。