儚い系うすほそエルフになったので自由を謳歌する 作:うすほそ~(挨拶)
この世界にやってきて、一週間。
こちらの呼び方でいうと、一週間(翻訳済み)だ。
実際には別の呼び方なのだが、私の翻訳によれば意味は同じのようなので一週間と呼称する。
とにかく、初日にリンファさんに拾われて冒険者になって、次の日からグラリエ婆さんのところで仕事をした。
するとどうなるかというと――
「というわけで、無事にリリアさんの冒険者等級が六級に上がりました! ふうー!」
「ありがとうございます、です」
冒険者等級が上がった。
早くない? と思うけれど、成人している冒険者ならちゃんと仕事をしていれば一週間で六等級までは上がれるらしい。
あくまで、人として大きな問題がないかどうかを確認するための期間、といったところか。
まぁ、七等級の仕事は子どもでもできるわけだから、当然と言えば当然だ。
「これで、外に出られるようになる……のです、よね」
「はい! あ、でも討伐系の依頼は四等級まで受けられませんよ。危険ですからね、ほんっとうに危険なんですからね」
ナタリーさんは、何度も何度も討伐系は危険だと言ってくる。
説得には成功したものの、未だに私が外へ出るのは心配が勝るようだ。
「そういえば聞き忘れてたのですが、六級も五級も討伐依頼は受けられないのに、何が違うのです、か?」
「ええとそれはー、あははー、まぁいいじゃないですかぁ」
ナタリーさんの言動が明らか歯切れが悪くなった。
何やらいいたくないことがあるのだろう、きっと過保護が原因だ。
少し睨むと、あわわーと声に出しながら視線をそらした。
身長はそんなに違わないのだが、若干見上げる形になるのでそれが愛くるしさを演出してしまっているのだろう。
「――五級になれば、四級以上の冒険者と組んで討伐依頼を受けられるようになるのよ」
と、その時、後ろから話に割って入ってくる人物がいた。
聞き馴染みの声であることも確かだが、私に声をかけようとする冒険者は今のところ一人しかいない。
「あ、リンファさん! もー、なんで言っちゃうんですか!」
「六級に昇格した時点で、その話をリリアにするつもりだったからよ。冒険者になってすぐは生活も落ち着いてないでしょうし、何事も少しずつね」
「リンファさん、こんばんは」
やってきたリンファさんが、手を上げて挨拶をしながら話をしてくる。
順当に行けば今日六級に上がれるのだから、当然と言えば当然か。
冒険者になってからは、二日に一度顔を合わせる程度だった。
きちんと話をするとなると、グラリエ婆さんを紹介してもらって以来かもしれない。
「こんばんは、リリア。まずは昇級おめでとう。ちゃんとグラリエのところで仕事してきたみたいね」
「はい、厳しいです、けど、やりがいはありました」
「あの人に対してそう言えるって、結構すごいことよ? 私だって逃げ出したのに」
「リンファさんでも、逃げ出すんです、か?」
「そうそう、もーこんなところで仕事してやるかって感じ」
それは結構意外だ。
真面目なリンファさんだから、結構根気強くやり遂げるものかと思っていた。
なんて思っているのが、向こうにも察せられたのだろう。
少し恥ずかしそうに視線をそらしながら、リンファさんはこぼす。
「……当時は若かったのよ」
「えーっと、もう三年くらい前ですね?」
「……結構最近です、ね?」
「エルフ基準で言わないでちょうだい!」
いや、すいません社畜基準です。
三十路をすぎると、時間の流れが早いこと早いこと。
三年って……つまり一年くらい前のことだよね?
「でも、グラリエ婆さんはいい人です、よ」
「悪い人ではないでしょうけど……いい人っていう子は初めて見たわね」
「だって、わからないことがあったら聞けと言った後に、それくらい自分で考えろ、とか言ってきたりしません、から」
「それは流石におかしいでしょ!?」
「……一体どういう環境にいれば、そんな矛盾の塊みたいなこと言われるんですか?」
現代みたいに、死ぬほど仕事が多くて忙しい場合……ですかね。
昔からパワハラ気質な人はいっぱいいるだろう、何だったら手が出る頻度は昔のほうが多い。
だけど、こういうタイプのパワハラは本人が忙しくて手が回らない場合に発生するもの。
ブラック労働で上司も心の余裕がないから、支離滅裂なことを言い出す……のだと思いたい。
「まぁ何にしても、今日は昇級祝いよ。いいものを上げるわ」
「いいもの、ですか」
話を切り替えたリンファに、首を傾げる。
一体何をプレゼントしようとしているのだろう。
ただでさえ色々お世話になっているのに、これ以上は迷惑をかけられないぞ?
「じゃん、これ。顔を隠せるフード付きのローブ。そろそろリリアも買おうと思ってたんじゃない?」
「これは……」
なるほど、これは確かに”いいもの”だ。
無地のローブは、羽織ると体全体を覆うことができる。
雨の時にも使えるし、もし仮に遠出をすることになっても便利なのではないだろうか。
袖を通し、フードを被る。
その様子に、リンファさんはうんうんと頷いていた。
「似合ってるじゃない。顔もいい感じに隠れるし、これで視線を集めることもなくなるでしょう」
「……ありがとうござい、ます」
それから、何度か腕を動かしてみたりして感触を確かめる。
周囲の視線は……まぁ、普通に集まってるけれど、それはさっきからリンファさんやナタリーさんと会話しているから仕方ない。
私だけでなく、二人も普通に美人なのだ。
「――ところでリンファさん、あのローブ結構いいやつじゃないですか?」
「うっさいわね、あの子の今の手持ちで買えるローブなんて、ほとんどボロ布じゃない。いいでしょ、将来的には誤差よ!」
――で、フードに気を取られている私は、何やらぼそぼそ話をするリンファさんとナタリーさんの会話を聞き取れないのであった。
「とにかくこれで、変に注目を集めることはなくなるでしょう。六級の仕事、頑張りなさいね」
「はい、です」
「そうだ、この後何か夕飯でも食べない? こっちもお祝いってことで、奢るわよ」
「え、いや、その……」
流石にこれ以上は受け取れない、申し訳なさすぎるぞ。
とは思うものの、厚意を無下にするのもどうなのだという気持ちもある。
何かいい案はないものかと考えて、思いついた。
「あ、じゃあ……ギルドでお食事でも、どうです、か?」
「え、ギルド? そんな大したものないけど、いいの?」
「ちょっと、ここに職員いるんですけど!?」
「そういうアンタは、そろそろ仕事に戻りなさいよ」
言われてみれば、先程からずいぶんと長く話し込んでいる。
今は受付に人がいない時間帯とはいえ、普通にサボりだ。
まぁでも、それで問題ない時代なんだろうなぁ。
時間の流れが遅いと言うか、なんというか。
ともあれ、ギルドの料理を提案した理由は簡単だ。
「実は……ギルドで食事、とったことない、ので」
「え、ないの!?」
「……一人だと、目立ちすぎてしまいます、から」
「あー……」
なのだ。
食事はもっぱら、宿でいただいていた。
昼食はグラリエ婆さんの商店で買うか、婆さんが買ってきてくれた屋台の料理を賄いとして貰う感じ。
実は今まで、こっちにきてから外食を一度もしていないのである。
「そういうことなら、そうしましょうか」
「ありがとう、ございます」
「いいのいいの、じゃんじゃん頼んで!」
というわけで、リンファさんに色々と奢ってもらいつつ、私は一日を終えた。
冒険者ギルドは実に冒険者の酒場らしく、賑やかだ。
中には飲み比べなんてことをしている人もいて、私も少しお酒をいただいた。
久しぶりのお酒は、達成感も相まって極上だ。
明日からは六級。
外での仕事だ。
受けれる依頼の自由度も増えるだろう。
どんな仕事を受けようかな、いっそ一日がっつりサボって街を散策してみるのもいいかもしれない。
このフードがあれば、これまでのように視線を集めまくることはないだろうから。
なんて考えつつ、私は宿へと戻るのだった。
「――――あ、フードを被ると、それはそれで別の問題が発生するんだけど、話忘れてたわね」
無論、そんなリンファさんのつぶやきなど、聞こえるはずもなく。
○
――翌日。
朝早くからギルドを訪れた私は、依頼ボードとにらめっこをしながらあっちこっちへふらふらしていた。
依頼ボードは非常に大きい。
貼り付けられている依頼も多く、目移りしてしまう。
受けれる等級ごとにざっくりとまとめられているが、上位の等級のところにちょこんと六級用の依頼も貼ってあったりするので、吟味は慎重にならざるを得ない。
だからだろう、少し不注意になってしまった私は――
「あっ」
「あぁ!?」
別の冒険者と激突してしまった。
そして凄まれて、びくっと震える。
すると冒険者は――
「ドコ見てんだガキ! 目ぇツイてんのか、あぁ!?」
――因縁をつけてきた!?
て、定番イベント!?
あの子がここに来る前の環境どうなってるのよ……(ひそひそ)
奴隷みたいな立場なんですかね……ある程度自由裁量があるみたいなのに……(ひそひそ)
※記憶がないのはそうしたほうが都合がいいから、と理解されています。
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