魔法勇者ダイデンダー ーDDDー   作:夏目八尋

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今回から第2章……アニメで言うところの第2話です。
よろしくお願いします!


第2章 ようこそ、DDDへ!
第09話 アバン ーお姉ちゃんは心配性ー


 

 長い廊下を、騒々しい一団が早足で駆けていく。

 

「バイタルチェック!」

「心拍正常! 健康です!!」

 

 白衣を着た複数人の女性が、目に包帯を巻かれストレッチャーに寝かされた少年――大殿照也(だいでんでるや)の顔や体の変化を細かに観察しながら言葉を交わす。

 

「弟くん! 弟くぅんっ!」

 

 一団の中でひときわ悲壮に満ちた声を上げる少女――樫木円(かしぎまどか)に、照也は笑みを浮かべて答えた。

 

 

「大丈夫だって、円姉(まどかね)ぇ」

「でも! でもぉ!!」

 

 照也の体には、いくつかのコードが繋がれている。

 それを目に入れるたび、円の表情は曇り、涙目になっていく。

 

「弟くんに何かあったら、わたし、わたし……!」

「心配性だなぁ、円姉ぇは」

 

 いやいやと首を振る円の、クリーム色の長髪がふわふわと揺れる。

 照也の口元には、そんな彼女を心配させまいとしてか、微笑みが浮かんだ。

 

 

「弟くん、私は」

「失礼、ご家族の方はここまでです」

「そんなっ?! 弟くん! 弟くぅ~ん!!」

 

 さらに何かを告げようとしたところで、白衣の一人に割り込まれ、二人は引き剝がされる。

 照也を運ぶストレッチャーは、円からぐんぐん離れていき、廊下の先にある個室へと迷わずに進んでいく。

 

「弟くん!」

「ダメです! あなたは入室禁止!」

 

 追いすがろうとしたところを別の白衣の女性に捕まって、円はそれでも歩みを止めず手を伸ばす。

 ついには両目に涙を流し、思いのままに叫ぶ。

 

「弟くん! もしも弟くんに何かあっても、お姉ちゃんはずぅーーーっと、一緒だからねぇーーーーーー!!」

 

 それは嘘偽りのない、心からの叫びだった。

 聞くものが聞けば涙を流さずにはいられないだろう、愛に満ちた言葉。

 

 そんな慈愛の声に後押しされて。

 

 

「ありがとう、円姉ぇ」

「!?」

 

 小さくも確かな声で、照也は感謝を口にして。

 

 ビシッ!

 

 円にちゃんと見えるよう、右手を挙げてサムズアップしてみせた。

 

 

「弟くん! わたしを心配させないために、あんなに、あんなに健気に気を遣ってくれて!」

 

 三人がかりになった白衣たちを引きずりながら、円は涙をぬぐい、手を振り返す。

 

「弟くん……お姉ちゃん信じてる、信じてるから。どうか無事に……帰ってきて、ね?」

 

 ようやくそこで立ち止まり、彼女は柔らかな胸に手を当て、静かに祈りを捧げた。

 

 

(弟くんなら大丈夫。だって弟くんは、わたしの弟くんなんだから……!)

 

 心からの信頼。

 それを向けられた照也が運ばれていった、その部屋は。

 

 『第2特別診察室』

 

 ごく一般的な治療を施す部屋……ですらなく、ただの精密検査用の場所である。

 

 

「ねぇ、あの子の目に巻かれてた包帯って何? 別にケガはしてないって聞いてたんだけど」

「なんか目をゴシゴシしてたって、そこの自称お姉ちゃんが」

「あー」

「……うう! 弟くんっ、やっぱりお姉ちゃんがそばに」

「はぁ~い、円さんは遊んでないで、とっとと司令部に報告しに行ってくださ~い!」

「あ゛あ゛あ゛~~~!! 弟くぅ~~~~~ん!!!」

 

 ポーンッ。

 

 白衣たちに引きずられていく円をよそに、扉の上に取り付けられた使用中を示す緑のランプが、やれやれといった様子でのんびりと点灯した。




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