魔法勇者ダイデンダー ーDDDー   作:夏目八尋

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Bパートスタート!


第13話 Bパート① ー自分の立場ー

 

 鳴り響くサイレン。

 赤く点滅するオペレーションルーム。

 

「何事だい?!」

 

 司令官の顔をした(くるる)が状況を確認する。

 

「別件任務中の魔女が、ソウルイーターと遭遇しました! ……新型です!!」

「「「!?」」」

 

 オペレーターの魔女から上がった報告に、誰もが驚いた。

 

 

「そんなっ! さっき倒したばっかりなのに!?」

「っ!」

「ネネちゃん、場所は!? モニターに出せるっ!?」

「今出します!」

 

 円が求めたタイミングとほぼ同時、オペレーターの魔女が映像を出す。

 映画のスクリーンサイズで表示されたモニターに映るのは、どこかの河川敷で蠢く、10m級の巨大な異形。

 

「これは……!」

「スライムっぽいけど、魔法界でワタシが見たのと全然違う」

「あ、見て! 透明な体の中! 普通のスライムとは違う核があるよっ!」

 

 夕方に倒したイソギンチャク風の個体と同じく触手を伸ばし、ホウキに乗って逃げ惑う若い魔女とその相棒らしき黒猫を狙うそれは、間違いなく――。

 

「あいつ、あの子から命の力(プラーナ)を奪おうとしてるのか!」

 

 ――看過できない害意を働く、倒すべき敵だった。

 

 

「……出るわ!」

 

 誰よりも早く声を上げたのは、哀だった。

 戦士の目をした彼女はすぐさま身を翻すと、ドアに向かって駆け出して。

 

「円! 絵瑠!」

「任せて!」

「いけます!」

 

 間髪入れずに枢が声を張り上げれば、呼ばれた二人も即座に動き出す。

 

「DDDたまな市支部、緊急オぺレーション始動! お前たち、気を張りな!!」

「「「ディサイド!!」」」

 

 続けて杖を力強く床に打ち付け指示を出せば、それ以上に力強い返事が飛ぶ。

 

 

(す、すごい……!)

 

 先程までの和やかな雰囲気はもうどこにもなく、代わりに特殊部隊さながらの緊張感と、鋭く深い真剣な空気が部屋を包んで。

 

「お、俺も……!」

 

 部屋の空気に半ば呑まれた格好で、照也も自分にできることをしようと声を出した……その瞬間。

 

「照坊!」

「!?」

 

「お主はここで待機! ジッとしてな!」

「なっ……えぇぇぇぇっ!?!?」

 

 枢から与えられた予想外の指示に、駆け出そうとしていた体をギクリと止められたのだった。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「どうして!? 俺だって戦える! 行かせてくれよ、枢ばあちゃん!!」

「声が大きい!」

 

 到底受け入れられない指示に詰め寄る照也に、負けないくらいの勢いで枢が返す。

 あまりに大声だったやり取りは、現場に向かおうとしていた哀たちの足すら止めた。

 

「枢ばあちゃん!」

「お主の力は未知数じゃ! 何がどうして戦えるのかもわからぬ力を、ホイホイ使わせるわけにはいかんじゃろうが!!」

 

 お互いに怒ってはいない。

 役に立ちたいという気持ちと、無茶をさせたくない気持ちとがぶつかり合って。

 

「俺のこの力は、ああやって危険な目に遭ってる人たちを助ける力のはずなんだ!」

「それをしっかり調べるために時間が必要なのじゃ! 今はまだ、お主に行けとは言えぬ!」

「ちょ、二人とも! 落ち着いてくださいまし!」

「お願いだ、枢ばあちゃん!」

「ダメじゃダメじゃ! お主はここに残っておれ! 照坊!」

「あー、もう! 言い争ってる場合じゃありませんでしょうに!」

 

 樺奈羅が止めに入るも、意見が平行する二人の口論は止まらなかった。

 

 

「お義兄ちゃん!」

「!?」

 

 そこに、愛らしくも怒気を孕んだ声が差し込まれる。

 声のする方を照也が向けば、絵瑠、円、そして哀の三人が、凛と並び立っていた。

 

「お義兄ちゃん。ここはワタシたちに任せて、待ってて!」

「絵瑠……」

「そうだよ、弟くん! お姉ちゃんたちは、これでも何回もソウルイーターと戦って勝ってるんだから!」

「円姉ぇ……」

 

 腰に手を当て胸を張り、絵瑠と円は得意げに、力強く頷いてみせる。

 いつだったか、大殿家のキッチンに二人で立って料理をした時のように。

 

 自分たちの得意なことを、十二分にやりに向かう、頼りがいのある笑顔で。

 

 

「大殿照也!」

「黒羽?」

 

 次いで声をかけたのは、照也に鋭い視線を向ける哀。

 

「私はあいつら、ソウルイーターを狩るために存在する魔女よ。さっきの戦いでは不覚を取ったけれど、同じ過ちは二度はしないわ……!」

 

 どこまでもストイックに、彼女もまた己の役割に自負を持っている力強さで言い切って。

 

「だからあなたは、そこで見ていなさい。私たちが積み重ねてきた、力を!」

「……!」

 

 真っ直ぐに向けられた黒い瞳の圧に、言葉を畳みかけられた照也は、遂には声を失った。

 

 

「……行くわ。サポートをお願い」

「「ディサイド!」」

 

 動きを止めた照也を確かめ、哀たちは今度こそ背を向けオペレーションルームを後にする。

 

「………」

 

 照也はそれを、どこか呆けた様子で見送った。

 

 

(俺は……余計なことをしようとしただけ、なのか?)

 

 少しでも役に立ちたい。

 その気持ちは今も照也の胸の内に燃え盛っていたが。

 

「……正論、だよな」

 

 何度繰り返し考えてみても。

 枢たちの正しさが、覆ることはなかった。

 

「照也さん」

「天常先輩……」

「信じてくださいませ。円たちを。そして、ワタクシたちDDDを」

「……はい」

 

 樺奈羅からの慰めの言葉に頷きながら。

 

「………」

 

 それでも照也のこぶしは、悔しさに小さく震えていた。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「さぁて。弟くんに大見得切っちゃったからには、お姉ちゃんも頑張らないと!」

「ソウルイーターを倒したって言ってたけど、あくまで小型の群れまでだもんね」

「これまでに見たことのない相手……慎重に、そして全力で行くしかない」

 

 緊急任務下で警戒態勢に入っている基地の中を、三人の魔法少女が駆ける。

 彼女たちの行く手を阻まぬよう、妖精たちが魔法で空間を捻じ曲げ、通路を真っ直ぐに変えていく。

 

「あのイソギンチャクの異形との戦いで、データはしっかり取ってるから、そう簡単には負けないよ!」

「お義兄ちゃんとまだ晩ごはん食べてないし、早くやっつけて帰ろうね!」

「……仲が良いのね」

「ワタシは哀さんとも仲良くなりたいですよ?」

「っ! お戯れを。エルリーゼ姫様」

「絵瑠でいいですよ。いえ、絵瑠って呼ばれるのが好きなんです。ワタシ」

「……わかりました。絵瑠さm」

「絵瑠」

「……絵瑠」

「はい! 哀さん!」

 

 そうこう話すうちに、三人は目的の場所まで到達した。

 

 

「みなさん! 3番ゲートです!」

「ありがとう~」

 

 そこは、大きなドーム状の空間にいくつもの扉が並ぶ、不思議な大部屋。

 

 DDD(ディーディーディー)大転送室(だいてんそうしつ)

 

 魔女たちを導く、儀式の間だった。




わらわら出てくる新型。

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