魔法勇者ダイデンダー ーDDDー   作:夏目八尋

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約束されたバンク回。


第14話 Bパート② ー変身!ー

 

 DDD、大転送室。

 それはここ、DDDたまな市支部から各地へと転移するための一大施設である。

 

 転移魔法は大魔法。

 儀式を必要とするそれを行なうための空間が、ここ、大転送室にはなんと8つも存在する。

 

 DDDがインフラ開発の長である天常家と連携することで導入された新時代の施設であり、この用意があったおかげで、DDDたまな市支部は各地で巻き起こる問題にいち早く対応することができるのだ!

 

 ――第3転送室。

 大転送室から繋がるゲートをくぐった先にあるのは、巨大な転移の魔法陣が敷かれた台座。

 

「……!」

 

 そしてそれを囲うようにして立つ、5人の見目幼き魔女たちが、すでに大魔法への魔力充填を開始していた。

 

 

「ネネちゃん、現場は!?」

『大丈夫! 現場の魔女が上手いこと結界を張ってくれたから、人払い済みだよ!』

 

 通信用の魔道具(ガジェット)ごしに円が問えば、彼女の近くで小さなモニターが展開し、オペレーターの魔女から最新の情報が届けられる。

 その一連の流れの淀みのなさに、いち早く魔法陣へと辿り着いた哀が感心する。

 

「ここの魔女たちは、驚くほど練度が高いのね」

「たまな市支部は規模とかノリが独特だからねぇ~」

「ここまで大きくなってる支部は他にはないっていうか、独自色って呼ぶには枢お婆ちゃんたちの趣味がハジけ過ぎてるというか……ねぇ、円さん?」

「秘密結社なんだからこれくらいは当然、だよっ!」

「「………」」

 

 瞳をキラキラさせながら言い切る円に、哀と絵瑠は顔を見合わせ苦笑した。

 DDDたまな市支部は、界隈からしても規格外な支部だった。

 

 

「さぁて、哀ちゃん!」

「……ええ。二人とも、ここからは私――魔法協会直轄部隊“魔法戦士”ブラックスワンの指揮下についてもらうわ」

「「ディサイド!」」

 

 戦いの前の小さな団らんの時間は終わり、哀は意識を完全に切り替える。

 ここから先には、命のやり取りがある。

 

「各員、魔道具準備! 万全の状態で……現地へ跳ぶわ!」

 

 魔力の充填が進み、彼女たちの立つ魔法陣が青白い輝きを放ち出した。

 

 

 バッ!

 

 3人同時、その手に力を呼び起こすキーアイテムを取り出す。

 

 絵瑠の手には、豪奢な宝石飾りの護符(アミュレット)が。

 円の手には、ガチャガチャとした球体(ガジェット)が。

 哀の手には、黒鳥を象った装飾品(アクセサリー)が。

 

 それぞれに強い魔力(マナ)を受け、光り輝く。

 

「……変身っ!」

 

 哀の掛け声とともに、全員がそれを天へと掲げ。

 直後。

 

 カッ!

 

 まばゆい輝きが、3人を包み込んだ。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「ロイヤルジュエル! ドレスアーップ!」

 

 絵瑠の……エルリーゼの掲げた宝石飾りの護符が煌めき、彼女の周囲を一変させる。

 そこはキラキラに満ちた不思議な空間。淡くまばゆく光り輝く宝石たちが舞い踊る世界。

 

 キィンッ!

 

 その中央に立つエルリーゼが両手を広げると同時、彼女の衣服が弾け飛ぶ。

 生まれたままの肢体は細やかな光をまとい、伸び盛りのボディラインを白く染め。

 

 シュルル、フワッ♪

 

 ピンク色のツインテールがふわりと浮かんで風になびけば、髪を結ぶリボンがほどけ、光とともにツーサイドアップの色鮮やかなプラチナゴールドへと変わった。

 

 

「キラキラに、着飾って!」

 

 祈るようなポーズとともにエルリーゼが乞い願えば、新たな5つの宝石が飛んでくる。

 宝石たちは彼女を囲うように周囲を舞って、それぞれのカッティングされた鏡面に、エルリーゼの体の各部を写し出す。

 

 頭、肩、腕、足、そして腰。

 

 宝石鏡が写す姿は、彼女の願いを叶えた姿。

 リボンとフリルで着飾った、キラキラ輝くお姫様。

 

 キィンッ!

 

 宝石たちが輝いて、エルリーゼの姿を変えていく!

 

 白い肩出しワンピースドレス。二の腕まで伸びる白手袋。

 膝上スカートの先、羽飾りのついた白いブーツから、白のニーハイが太ももの半ばまで覆う。

 

 キンッ! キンッ! キキンッ!

 

 衣装の随所にフリルと細かな宝石飾りが足されたら、リボンが踊り、締め上げて。

 

「んっ!」

 

 背面。

 腰から伸びる純白の翼が、大きな大きなリボンに変わる。

 

 王家を示す豪奢なティアラが頭にのれば、くるりとその場で一回転。

 宝石たちが写し出す、光り輝くお姫様が完成した。

 

 

「キラキラは、いつだってここに……」

 

 勇ましくも愛らしいポーズとともに、青い瞳が前を向く。

 

宝石姫(ジュエルプリンセス)、エルリーゼ!」

 

 キンッ! キンキンッ! ピカーッ!

 

 祝福の輝きが、金白(きんはく)の宝石姫を照らし出した。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「ナーサリーライム、起動!」

 

 カチリ。

 手に持つ球体(まどうぐ)にスイッチオン。

 

「レッツ、お着替え!」

 

 掛け声とともに、円が手に持っていた球体(まどうぐ)を、空へと放り投げる。

 

お着換えだっ(モターレ・ベスティス)!』

 

 直後。

 投げられくるくる回る球体から景気のいい声がして、絹のようにさらさらなカーテンが展開。円の周囲を覆い隠す。

 

 カーテンの中に広がる特殊なフィールド。

 円の姿がプリズムのシルエットに変われば、まとっていた衣服が消え、彼女の体のラインをくっきりと映し出した。

 

 

「いえいいえいっ!」

 

 ご機嫌にくるりとターンを決める円がお尻を叩けば、そこにポンっとショートパンツが装着される。

 さらにくるっと回って両肩を次々叩けば、胸を揺らしてタンクトップが現れた。

 

「~♪」

 

 TAP TAP TAP♪

 

 光の中で円が踊り、太もも、足先、手を叩く。

 叩いた先から現れる、ガーターリングにスニーカーブーツ、指ぬきグローブたちにガチャガチャとした“遊び”が施されていく。

 

 左右の鎖骨をポポンと叩けば、タンクトップの上に前を開けたジャケットが被さって、同時に彼女のクリーム色なふわふわロングヘアと、素肌が再び色を得た。

 

 

「ふんふふ~んっ♪」

 

 かかとを鳴らして飛び跳ねる。

 くるりと回る円の体に、ゴテゴテしたベルトが幾本も絡み巻きついて。

 

 チリリンッ

 

 ベルト据え付けのシリンダーでは、カラフルな色の試験管たちが歌うように鳴り響く。

 

 

「仕上げだよ!」

 

 円が両手を振り上げる。

 見上げた空から舞い降りるのは小さな化粧道具たち。

 

 まつ毛や頬、唇を、それぞれ綺麗に手を入れて。

 

「♪」

 

 最後に左右の耳を優しくタッチで装飾付きのピアスがキラリ。

 

 遅れてふわりと舞い降りる、魔女のローブに袖を通して。

 

「んーーーー、んっ!」

 

 ツバ広帽子を被って笑顔、飴色の瞳でウィンクする。

 

 

 くるくる、くるくる。

 ひらひらり。

 

「魔法のお姉ちゃん、お着替えか~んりょうっ♪」

お似合いだぜ(ティヴィ・コンヴィーニット)!』

 

 最後はホウキを手にしてポーズを決めて、灰緑(はいりょく)の魔女が完成した。

 

 

     ※      ※      ※

 

 

「……ナーサリーライム、起動」

 

 哀の静かな呼び声に応え、月影に染まる闇が、世界を覆いつくす。

 空に浮かぶ幻の月は、青白い輝きを放つ妖しげな三日月。

 

「変身シークエンス、開始」

 

 淡々と続く言葉に彼女の手に持つ黒鳥が鈍く輝き、瞬間。

 

 シュババッ、シュビビッ!

 

 黒く薄い帯が次々と伸びて哀を縛り、そのスレンダーなシルエットを浮かび上がらせる。

 

「……っ」

 

 かすかに浮かぶ苦悶の表情。

 影は強くキツく、彼女を絡めとる。

 

 

「……んんっ!」

 

 哀が、黒い拘束を身をよじりながら引きはがす。

 

 ビシャリッ!

 

 引きはがした部分が素肌をさらす。

 

 ビシャリッ! ビシャリッ!

 

 全身を覆っていた拘束が破られるたび、それらは哀の身を守る黒いレオタードやアームカバー、ニーハイソックスやロングブーツへと姿を変える。

 

 黒い装束と垣間見える素肌とが、幻の月明かりを受けて白く艶めいた。

 

 

「……んっ」

 

 哀が手の中の黒鳥に口づける。

 口づけを受けた黒鳥から、シャボンのように大きな膜が玉のように膨らんで。

 

 パンッ!

 

 瞬間。

 玉が弾けて広がって、数多の泡になって黒の装束に銀のラインを足していく。

 

 パンッ! パンパンッ!

 

 小さなシャボンが弾けるたびに、細かな紋が刻まれる。

 

「フゥッ……!」

 

 かすかな吐息を合図に、残るシャボンが吹き散って。

 腰回りにふわりと飾りスカートを広げたら、体のラインに沿って光が踊り舞い上がり。

 

 彼女の首に、黒銀のチョーカーを取り付けた。

 

 

「……んっ!」

 

 水鳥がゆっくりと伸びをするように、その身を大きく仰け反らせ。

 次の瞬間ピンっと張り詰めた矢を放つがごとく、ビクリとその身を躍らせて前を向く。

 

 決意の黒い瞳と漆黒の髪。

 そこに混ぜ込むように右耳に白の耳当てが取り付いて。

 

 ヒュンッ! ヒュンッ!

 

 闇より出でし身の丈を越す大鎌を手に、三日月に重ね演舞のように振り回し。

 

「魔法戦士……コードネーム、ブラックスワン。変身シークエンス、完了……」

 

 青白い月明かりの下、黒銀(こくぎん)の戦士が舞い立った。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「「「………」」」

 

 三者三様の変身を終えた、ちょうどそのタイミングで。

 

「転送準備完了! ポータルステージ、起動します! 行っくよー、みんなーー!」

「「「「ディサイドー!」」」」

 

 魔力充填が完了し、スタッフの魔女たちが転送魔法を起動した。

 

「ぴるぴるぽっぷる、どこまでも!」

「らーたるらーくす、すぐにでも!」

「ふるふるぷわっぷ、あんぜんに!」

「てくたくかるかる、とうぜんに!」

「ばるーらだるーら、飛んでいけ!」

 

「「「「「ポータルステージ……イグニッション!!」」」」」

 

 小さな魔女たちによる多重詠唱。

 大魔法の奇跡が哀たちを包み込み、光の先へと導き誘う!

 

 

「目標地点……とうたーつ!」

 

 一瞬の浮遊感の後、魔法少女たちは夜の鞠智川(きくちがわ)沿岸部――戦場へと舞い降りる。

 

「ド~レ~イ~~~~~ンッ!!」

 

 いったいどこに声帯があるというのか。

 スライム型の異形、新型ソウルイーターが驚異の到来を察して咆哮を上げた。




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