新章です!
第17話 アバン ー休み時間の鬼ごっこー
3年前に建て直された真新しい校舎の長い廊下で。
「だから、断ると言っているでしょう!!」
「そこをなんとか!
黒鳥と、赤トサカがチェイスしていた。
「うおっ、なんだなんだ?」
「
つむじ風のように吹き抜けていく二人を見る生徒たちの目は様々で。
「ああ、なんだ。またその二人か」
「またって?」
中でも訳知り顔の男子生徒が、問いかけた女子生徒に鼻を大きくしながら解説する。
「なんでも、歓迎会がしたいらしい」
「歓迎会?」
「そう。転校してきた黒羽さんと仲良くなりたいって生徒会長が言ってるみたいで、このところ毎日あの手この手で誘いをかけては断られてるんだってさ」
「なるほど。
納得した様子の女子生徒と男子生徒が頷き合う。
“あの”生徒会長ならやるかやらないかでいえば“やる”だろう、と。
「今夜も
「それは……申し訳ない、けれどっ! 断ると言ったら、断るのよっ!」
逃げる
陸上部もかくやという速度で廊下を駆けながら、けれど他の生徒とぶつかることは決してない。
「弟くん! 哀ちゃん!」
逃げる哀の正面に、
「
「くっ!」
「こらっ! お二人とも、廊下を走ってはいけませんわ!」
樺奈羅が注意するも、逃げる哀はその脇をするりとくぐって突破して。
「ちょ、黒羽さん?!」
「弟くん! 事故らない限り生徒会長権限で許します! 哀ちゃんを確保して!」
「ナチュラル職権乱用してんじゃねぇですわよ円ぁっ!?」
「うおおおおっ! ごめんなさい天常先輩! でも俺も、黒羽と話したいんでっ!」
「ちょ、照也さんまで! んもぉー! おイタが過ぎますわよぉー!!」
円が許可を出したことで、照也も二人の横を駆け抜けた。
一日一回。
授業の合間の20分休みに行われる魔法戦士と魔法勇者の鬼ごっこ。
「黒羽っ!」
「しつこいし、声が大きい!」
「だって!」
チャイムが鳴るまであと1分。
渡り廊下で対峙して。
「俺も、黒羽ともっと仲良くなりたいんだっ!」
「!?」
追う照也から飛び出た言葉に、哀の白い肌にほんの僅かに朱が混じる。
けれど、彼の生来の大声は当然周囲にも聞こえてしまい「ひゅ~」なんて茶化す声も混じってくれば。
「っ! ダメなものは、ダメっ!」
「黒羽っ!!?」
直後。
表情を引き締め直した哀は、渡り廊下の手すりを越えて、言葉の通りに飛び降りる。
ひらひら、シュタッ。
「うおおおっ!? 黒羽さんすげぇっ!」
「キレイ、本物の鳥みたい……」
体のしなりを使った美しい動きで、見事に着地し逃げていき……。
キーンコーンカーンコーン。
……チャイムが鳴って、照也は今日も己の敗北を悟った。
「弟くんっ! 哀ちゃんは!?」
「ごめん、円姉ぇ。今回もダメだった……」
駆け寄るついでに抱き着いてくる円を受け止めながら、少し考えて、照也は口を開く。
「黒羽、あれだけ嫌がってるんだから、もうやめた方がいいんじゃないか?」
今日までのやり取りで、照也は、彼女との間に明確な壁があるのを察していた。
それは自分に限らず、クラスメイトたちの誰に対しても同じで。
(あいつ、何でも真面目に取り合ってはくれるけど、遊びの誘いとかは全部断ってるんだよな)
これ以上追い立てるのは、良くないことなんじゃないかと思って。
「んー、と」
だが。
円の見立ては違っていた。
「哀ちゃん。誘われるのが嫌ってわけじゃないんだと思うんだよね。あの子なら本気で拒否するなら正式な抗議文出してくると思うし。だからあれは……何か理由があってそうしてるっていう、感情的にはありだけど、理性で断ってる感じなの」
「円! 3年生は移動教室行きますわよ!」
樺奈羅に照也から引っぺがされながらも彼女は言う。
「そうしなきゃいけないわけがある。それを知らないと、わたしたちは何も始められないんだよ……って、樺奈羅ちゃん! 弟くんが離れていくよ? 弟くんっ! 弟くーん!!」
「移動教室だっつってるでしょこのブラコン! 照也さんもとっとと教室にお戻りになられてくださいましっ」
「あ、はい」
樺奈羅にずるずる引きずられ、ドナドナと遠ざかっていく円を見送って。
「そうしなきゃいけないわけがある、か……」
残された言葉を噛み締めながら、照也は手すりに手を置きつつ、哀が駆け去っていった方を見る。
「魔法戦士の、黒羽哀……」
教室に戻ればしれっと席についているだろうクラスメイトにして戦友。
彼はまだ、彼女について何も知らなかった。
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